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    救済バーの中は相変わらずざわついていた。
    今日の出来事。のろけ話。ゲームの賭けの話。

    いつもはそのような話が飛び交うのだが。
    今日は違った意味でざわついていた。

    バーカウンターに座る一人の男。
    野球帽を深くかぶり、着ているユニフォームは真っ白で、傍らに寄りかかるバットには血、傷だらけで少々痛んでいた。

    男はバーに入るなり、バットを振り回すこともなく、カウンターに座っていた。
    バーテンダーが、通し代わりの酒を出す、が、一切口を付けずにグラスを手にし、遊ぶようにくるくるとまわしているだけだった。

    野球選手を想わせる風体。
    その男は誰とも話さず、ただそこにいるだけだった。

    本人も、なぜここに来たのか全く分からない。
    液体の揺れるグラスをじーっとみつめ、考える。

    そんな異様な空気の中。
    からん、とバーの扉についてる鈴が軽い音を鳴らした。

    その音に反応するように、野球選手の男以外の客はそちらをみて、きゃぁーと歓声を上げる。

    「よう!」

    扉の前に立っていた男はsansだった。

    「sans!まってたのよおお」

    sansが奥へと足を進めるたびに、周りの客から声をかけられる。
    野球選手の男にとっては、その歓声、声、すべてが煩わしいといった感じに顔をしかめる。

    「マスター」

    sansは野球選手の隣に座ると注文を投げつけた。

    「バーガー、一つ」
    「………」

    無口なバーテンダーはいそいそとバーガーの準備を始める。

    「おっと、隣のやつにはポテトを。ケチャップたっぷりとつけてな!」

    ぎょっと、野球選手はsansのほうをみた。
    かんべんしてくれという顔。

    「なぁに、遠慮はいらねえ」

    sansはにやりと笑うも、野球選手は、はあといきをついた。

    親し気にやり取りするsansと野球選手。
    顔見知りかとおもいきや、いま、この瞬間初対面なのだ。

    そう、これがsansの長所といってもいいのかもしれない。
    初対面でも、こうして人の懐に入り込む。

    「おまえ、名前は?」

    はいよ、と出されたバーガーを傍らにsansは野球選手に問う。

    「butter...」

    ぼそりと、野球選手の男がつぶやいた。

    「butter。」

    sansが繰り返す。

    「butter...お前さんはどうやら旅慣れているようだな。」

    sansはbutterの傍らに寄りかかっているバットに目を止めた。

    「…?旅慣れているとは、よくわからんが…。俺はずっと亡霊を排除してきた。」
    「亡霊?」
    「世界を蝕む亡霊だ。俺はそいつらを浄化し、世界を…」

    ぶつっとそこでbutterの言葉が不自然にとぎれた。

    「?」
    「いや、なんでもないきにしないでくれ。」
    「とりあえず、お前さんは、亡霊を浄化し世界を守っているというわけか。」

    こくりとbutterがうなずいた。

    「そっか、なら、」

    sansの軽快な声が消える。
    たった出会って数分なのに、なぜだか気になってしまう。

    これもこの男の魔力なのか。

    「なら、なんだ?気になることでも?」

    はじめてbutterはsansのほうに体を向けた。

    「いや。」

    言葉を濁すsansにbutterはそうか、と返事を返すことしかできなかった。

    「……。お前は、この世界をすべて破壊しようとしているものがいるのを知っているか?」
    「しらん。」

    butterがこの世界に迷い込んでから、数日ともたっていない。
    故に、この世界で起きている状況が全く見えない。

    「いるんだ。」

    ぐっとsansはこぶしを握り締めた。
    sansの脳裏に浮かぶのは

    undyne、toriel、そして、papyrus。
    数々の殺されていった仲間の姿だった。

    すべてを殺し。
    すべてを消し去り。
    あの子は。

    きっと世界を壊すだろう。

    「俺は、」

    不意にbutterがつぶやく。

    「今ここで会ったあんたが、他人事には思えない。何か手伝えることがあれば。」
    「そうか、それはありがてえな。」

    顔を上げたsansの表情は、いつもと変わらぬひょうきんな顔で。
    片目でウィンクをして見せた。

    「俺はいつか、あいつを裁きに行くだろう」

    sansの言っているあの子、裁き意味が分からないが。
    きっと手伝えることなのだろうか。

    「もし、俺が死んだとき、あいつを…殺してほしい。
    あいつを殺して、この世界を…救ってほしい、」

    あいつが誰だかわからない。
    しかし、なんとなく己が、sansが裁きを行うであろう場所へ行くことも。
    あのこと言われ人物も、いずれわかるような気がしていた。

    「俺は、そいつが誰だかわからない。あんたが裁きを行うであろう場所もわからない…。」
    「……、なに、もんだいないさ。」

    にかっとsansは笑った。

    「あんたはいずれそこへ行く。そしてすべてを見るさ。」

    根拠のない言い分。
    けれども、なぜだか、その言葉が真実味をおびていた気がして。

    「さて、俺はそろそろ行くかね。」

    sansはカウンター席から立ち上がった。

    「………。」

    butterはその様子をじっと見ている。

    「また、あんたとはあって話をしてみたい。」

    butterがそういうとsansはにやりとわらった。

    「すぐにあえるさ!じゃあな!」

    ふらふら出ていく後ろ姿に、二度と会えないように気がしたのはなぜだろう。

    butterの予感はその後大きく当たることになる。

    「sans...」

    ケチャップか。
    体を引き裂くような赤いものは。

    butterが名前を呼んでも、もう返事はなく。

    「sans...」

    消えていくsansの体を、ただ見送るしかないのか。
    もう一度話せるという、あの時の約束は何だったのか。

    「………。」

    ナイフを片手に、さらなる残虐を行おうと先へ進む彼の後ろ姿を「おい」と引き留める。
    sansとの約束を、果たさなければ。
    panic_pink Link Message Mute
    2022/06/17 17:49:25

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