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    聞こえるかい 午前の練習が終わると、昼食後の休憩時間がある。三言たちが一日フルで練習をするときは、休憩時間を多めに取るようにしていた。何事も、がむしゃらにやれば良いという訳はなく、適切な休息も必要だからだ。三言の隣で、比鷺はスマホと一緒にとろけている。もう少し、体力をつけた方がいい。
     不意に、遠流のスマホが鳴った。遠流は飲み物を買いに行っていて不在だ。遠流の元にスマホを持っていこうと思って伸ばした手が、受話ボタンを押してしまった。
    「あ、」
     思わず声が漏れる。どうしよう。とりあえず電話を受けて、相手に遠流ではないことを謝罪して、遠流にも謝って、手間だけど掛け直してもらおう。そう思ってスマホを耳に当てた。
    「遠──から手────もら──たら────が──」
     聞こえてきた声は音飛びの酷いレコードのようだった。ラジオのチャンネルが合っていない時みたいなノイズ音も混じっている。遠流の名前が呼ばれた気がするから、遠流宛の電話で間違いないのだろうが、どこか奇妙だった。もしかして騒音が酷い場所から掛けて来てるんだろうか?
    「もしもし? すみません、俺、遠流じゃないんです。間違えて出ちゃってて。遠流は不在なので、掛け直してもらえませんか?」
     騒音にかき消されてしまわないように、大きなで伝える。三言が喋っている間も、聞こえてくる雑音は止まない。これで相手に聞こえているんだろうか、と少し不安になる。
    「──聞こ───み──」
    「もしもし? 聞こえますか?」
    「───────」
     再度の三言の呼びかけに、雑音が一際大きくなる。どうしたら良いのだろう、と三言が思案していると、突然、電話が切れた。ツーツー、という話中音に、なんだか取り残されたような気分になる。
     困り果ててしまって、手のひらの中にあるスマホを眺める。通話履歴には非通知の文字しか残されていない。
    「三言? どうしたの?」
     こちらもスマホ画面と睨めっこしていた比鷺が、三言の異変に気付いて問いかけてくる。
    「遠流宛の電話に出ちゃったんだけど、よくわからないうちに切れたんだ」
    「ありゃあ。……あ、遠流戻って来たよ、三言」
     比鷺の言葉に視線を上げると、遠流が戻ってきているところだった。手には3本のスポーツドリンクが握られている。
    「ただいま。どうかしたの?」
    「ごめん、遠流。遠流に電話が来たから知らせようとしたら、画面触っちゃって。代わりに出たんだ。けど、向こうの騒音が酷くて用事を聞き取れなくて、おまけに履歴は非通知なんだ」
     説明と謝罪をしながら、遠流にスマホを手渡す。そうなんだ、と言って遠流がじっとスマホを見つめる。思い当たる相手を探しているのだろうか。遠流の瞳が左上に揺れた。
    「非通知だったらイタズラか間違い電話のどっちかじゃないの? 本当に用事のある相手なら、また掛けてくるでしょ。今度はちゃんと電話できる環境でさ」
     そうだろうか。なんだか、スマホの向こうにいる相手は、切羽詰まっているような感じだった。もしかしたらもう掛かってこないかもしれない。あの騒音とノイズは、そう思うに至るには充分だったのだ。
    「…………間違い電話じゃないよ。たぶん、また、掛かってくる、と、思う」
     ひと言づつ噛み締めるように、遠流が言う。そうなのか。遠流がそう言うのなら、安心だ。遠流が持ってきてくれたスポーツドリンクを受け取りながら、午後の練習も頑張ろうと改めて思う。舞奏競で勝つために。
    櫻井タネリ Link Message Mute
    2022/09/10 16:07:48

    聞こえるかい

    ・微忘録くん!
    ・微忘録くん……?
     2020.11.25
    #神神化身 #かみしん二次創作  #櫛魂衆

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