【閑話】 独白家族を殺された。
わたしの家族を殺した張本人がわたしの家族になろうとしている。
わけがわからない。
殺すか?
いや、まだわたしにはそんな力はない。
なぜわたしだったのだろう。
なぜわたしの家族だったのだろう。
なぜ死ななきゃならなかったんだ。
何も悪いことはしていないのに。
法も倫理もモラルも犯さず、ただ普通に生きていただけなのに。
誰が見たって、殺されてしかるべきな理由は何一つ見当たらない。
あいつは幸せを手にした。
結婚?
お前が歩くバージンロードは血まみれで腐臭が漂う死出の道になるだろう。
そう願ってやまない。
夢を見るんだ。
家族と過ごしていたころの幸せな記憶。
わたしはいつだって愛されていた。
みんなわたしの味方だった。
友人もたくさんいた。
わたしの家族の葬儀の時、祖父母を支えながらテレビのインタビューに答えていた○○○。
あの子はわたしの一番の親友だ。
生まれた病院も、母親の仕事先も一緒。
まるで姉妹のように育った。
わたしの妹も○○○のことを「○○姉」と呼び、親しくしていた。
なぜだろう、名前が思い出せない。
父も、母も、二人の兄も、妹も。
誰の名前も思い出せない。
恋しいよ、お母さん、お父さん。
今わたしの頭の中にあるのは、わたしからすべてを奪っていったやつらの名前だけ。
憎い。
悔しい。
死んでほしい。
優しくされるたびに、私の中の黒い糸が張り詰めてゆく。
これが切れたら、わたしはいったいどうなってしまうんだろう。
なにかのセーフティラインなのだろうか。
それとも、殺意の解放線か。
自殺は考えていない。
なぜなら、きっとこのままでは家族と同じ場所へは行けなさそうだからだ。
のこのこと殺人鬼と同じ家に住み、同じものを食べ、ましてや師弟関係を超えて娘に成り下がってしまった。
こんな大罪人のわたしが、天国など望めるはずもない。
死後、どんな拷問が待ち受けているのだろうか。
まぁ、それだけでもない。
わたしは復讐すると決めたんだ。
きっとあいつと同じ地獄に落とされるのだろう。
死んでまで一緒にいるはめになるなんて、最低の気分だ。
でもいい。
殺すと決めている。
この世界で与えられた力。
それを高め、殺傷能力をいかに強めるか。
それが今の生きがいだ。
それ以外のことはすべて額縁の中。
他人事。
わたしの人生には無関係。
わたしは優しい。
夫も殺してあげよう。
そうだ、最期くらい一緒にしてあげたい。
頭を切り落とそう。
そして付け替えるんだ。
それがいい。
あぁ、なんてわたしは優しいのだろう。
その時が来るのを楽しみにしているよ。
はやく、はやく殺したい。
はやく、はやく死にたい。