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    【TF:WFC】That's All I Needed「スタースクリーム。俺とヤろう」
    「……一応聞くが、何をやるって?」
    「接続」
     にこりと笑ってそんなことをほざく同型機になんだか頭痛がしてきた。
    「あのさぁ……お前、俺がサウンドウェーブと付き合ってんの知ってるよな?」
    「おう、もちろん」
    「で、お前はショックウェーブと付き合ってるよな今?」
    「うん。付き合ってるな」
     サンダークラッカーは相変わらずにこにこしながらスタースクリームを見つめている。普段はディセプティコン全体でも相当に常識的な部類にはいるはずなのだが、今日は何処かで頭でも打ってきたのかもしれない。
    「……それじゃ俺もお前も浮気することになるだろうがよ」
    「いいじゃん。たまには火遊びしようぜ」
     サンダークラッカーはスタースクリームにキスしようと顔を近付けてくる。スタースクリームは慌ててサンダークラッカーの胸部を押し返してそれを阻止した。
    「ば、馬鹿!! んな事してサウンドウェーブがキレたらどうすんだよ、アイツああ見えて死ぬほど嫉妬深いんだぞ!?」
    「でも俺たちディセプティコンに入る前から接続してたじゃん、今更じゃね?」
    「そういう問題じゃねぇだろ! だいたいお前はどうなんだよっショックウェーブにバレたら解体されんじゃねーのか!?」
     サンダークラッカーは何故かショックウェーブという単語をスタースクリームが口にした途端不機嫌になってむすっと下を向く。それでスタースクリームも、サンダークラッカーがいきなりこんなことを言い出したのにも何か理由があるのだということを悟った。
    「ショックウェーブは俺が誰とヤったところで気にしやしねぇよ」
    「……なんだよ。アレか? 喧嘩でもしたのか?」
    「あいつ! 俺が誘っても全然乗ってこねぇし! なんだよ! 俺ばっかりあいつのこと好きで俺ばっかり嫉妬して俺ばっかり苦しい思いして、不公平だろっ!」
     サンダークラッカーは怒りながらスタースクリームにぎゅっと抱きつく。あーこりゃ完全にいじけてるな、と思いながらスタースクリームはサンダークラッカーの頭を撫でてやった。
    「誘ったのか?」
    「うん。でもあいつ性行為には興味無いから出来ないっつってさぁ……仮にも恋人だってのにそれは無くねぇ? 欲情できないとか酷くね?」
    「そりゃ確かに……ちょっと、傷付くな」
    「だろ!? 傷付くだろ!? だからもう、他の誰かと接続してあいつが反応ゼロだったら別れることにした」
    「それで俺か? 悪いが他を当たれよ、さっきも言ったけどサウンドウェーブ怖ぇんだよ」
    「やーだーお前とじゃなきゃ接続したくないもーん」
    「ガキみたいな声出すなアホか。軽蔑されたいか?」
    「ふふふ。それもいいかもな」
    「やだこいつキモい」
     スタースクリームは思わず呆れるが、サンダークラッカーは依然としていじけたままスタースクリームにべたべたと張り付いている。
    「なあスタースクリーム……おれ、ショックウェーブのこと好きだけどさ。だからってお前のこと好きじゃなくなったわけじゃないんだぜ」
    「今そういうこと言うわけか?」
     スタースクリームは溜息をつく。
     その気持ちを知らないわけがない。ずっと以前に彼から直接聞いたことだし、これこそが昔の関係につながるものだった。スタースクリームだってサンダークラッカーのことは好きだ。けれどもそれは、サンダークラッカーの言う好きとは種類が違う。サンダークラッカーだってそのことは最初からわかっていたが、それでも構わないと彼の方が言ったのだ。他の知り合いなら手酷く傷つけて二度と近寄らないようにするところだが、何せ相手がよりにもよってサンダークラッカーだったものだから、拒み切ることもできずズルズルと関係を続けていた。
     スタースクリームがサウンドウェーブに、サンダークラッカーがショックウェーブに出会ってからはようやく不毛な関係に区切りがついたはずだったのだが。ショックウェーブの鈍感冷血クソ馬鹿野郎めとスタースクリームは内心毒づいた。
    「むしろ今じゃなきゃ言わねえよ。俺本気だからな。まだお前のこと好きなんだよ。サウンドウェーブの次でもいいよ、二番目でいいからお前と接続したい。ていうか溜まってんだよおとなしく相手になれよ減るもんじゃないし」
    「お、おいおいどこから突っ込めばいいかわからん問題発言はよせ……っちょ、サンダークラッカー……よせってば!」
     スタースクリームの抗議を無視してサンダークラッカーはスタースクリームの上にのしかかって機体の表面を撫でる。さすがに何度も接続したことがあるせいか的確にスタースクリームの弱いところを狙ってきていてスタースクリームは思わずびくりと硬直する。
    「じっとしてろよリーダー、だいじょーぶ痛くしないから」
    「やめっ……!」
     そのときだった。
     もつれあっているふたりの後方、ロックがかかっていたはずの扉が突如解錠されてぱっと横にスライドする。
    「へ」
     びっくりしてふたりとも扉の方を見て、それから更に驚愕することになった。
     そこに立っていたのは、ショックウェーブだったのだ。
    「あ……」
     サンダークラッカーは、ぴたりと凍り付いたように動きを止める。スタースクリームを組み敷いている状態では、言い訳のしようもない状況だ。やば、とサンダークラッカーの口が動くのをスタースクリームは見て取り、自分も声に出さずにバーカと口だけ動かしてサンダークラッカーを押しのける。
    「あ、あの、その、ショックウェーブ……」
    「サンダークラッカー」
    「は、はい!?」
     無感情な声はいつも通りのものであるはずなのに、状況のせいかいつもより冷え冷えとしているように感じられた。もちろん、感情的になることのない彼に限ってそんなことはあるはずはないので、後ろめたさがそう思わせるのだろう。
     ショックウェーブはその平坦な声で続ける。
    「話がある。少し付き合え」
    「え!? あ、ああ……うん……」
     いつも冷静なサンダークラッカーが明らかに取り乱しているのがわかる声音だったので、他人事であるというのもあいまってスタースクリームは笑いそうになった。が、なんとか堪えた。今笑うとサンダークラッカーの立場が余計に悪化しそうだ。それはそれで面白いが、たぶんこれ以上行くとスタースクリームにも飛び火する。
    「おいショックウェーブ」
    「……なんだ」
     スタースクリームが、重い足取りでショックウェーブの元に向かうサンダークラッカーの後ろから声を掛けると、ショックウェーブは少し面倒そうな反応をする。おや、とスタースクリームは思った。たとえわずかなものであってもショックウェーブが何か態度に変化をにじませることは本当に少ないのだ。
     スタースクリームはニヤリと笑って言った。
    「俺の部下をあんまりいじめてくれるなよ、科学参謀」
    「……」
     ショックウェーブはちらりとスタースクリームを一瞥するだけで何も言わなかった。そしてサンダークラッカーを連れてとっととどこかに去って行く。
    「なるほどねぇ……」
     スタースクリームは独りごちて、くすりと笑う。そのとき、スタースクリームの回線に青い情報参謀からのコールが入る。
    「おっと。俺も他人にばっかかまけてられねーな……」




     サンダークラッカーは黙々と紫の科学参謀の背中を見ながら歩き続けていた。その足取りはかなり重い。ショックウェーブはさっきから一言も喋らないし、自分も話しかける気概がない。ショックウェーブは恋愛面に関しては本当に何一つ理解してくれないが、それはあくまで主観的な面に限られていて、客観的判断力に欠けるという意味ではない。本能で理解できなくたって彼はロジックで理解する。だからどう考えたってさっきのは浮気現場であると、この男にだってわかるだろう。なのに、彼は何も言わない。いっそ嫌味でも皮肉でも何か言ってくれた方がずっとましだった。
     怒ってるのかなぁ、とサンダークラッカーは思う。普通だったら、怒るところだろう。でも相手はショックウェーブなのだ。彼に常識なんか通用しない。ただ前を歩く背中を見つめながら、サンダークラッカーは「怒ってるんだったらいいのにな」と考える。サンダークラッカーは彼に嫉妬して欲しいのだ。スタースクリームに未練があるのは否定しないが、それでも最初からサンダークラッカーの狙いは一貫してそれだった。でも、同時に「怒っていたらどうしよう」とも思う。スタースクリームやスカイワープなら、どうすれば機嫌を直せるのかなんて今更考えるまでもなく分かり切っている。サウンドウェーブとか、ブレークダウンとか、他のディセプティコン相手でも何となく扱い方はわかるし、メガトロンでさえ余程のことでなければうまいこと怒りをなだめて処分を逃れる自信があった。
     なのに、ショックウェーブのことだけはいつもわからなかった。彼がどうすれば喜ぶのか、どうすれば怒るのか、悲しむのか、いくら考えても何も浮かばない。彼がそれらの感情を抱くことがあるのかさえ、サンダークラッカーにははっきりとは判断できなかった。そんな相手は初めてだった。だからこそ、こんなに彼に意識を奪われるのかもしれない。
     しばらくそうして彼らは歩いていたが、いい加減この沈黙を続けるのも精神的につらくなってきたので、サンダークラッカーは意を決して恐る恐る声をかけてみることにした。
    「なあ……ショックウェーブ」
    「なんだ」
    「怒ってる?」
    「私はむしろお前にそれを聞きたかったが。お前こそ怒っていたからスタースクリームと性交を企てたものかと思っていた」
     あまりにも歯に衣着せぬ物言いにさしものサンダークラッカーと言えど一瞬言葉に詰まった。
    「……お前って相変わらず直球だよな……まぁその通りなんだけど。お前俺のことちっとも好きじゃなさそうなんだもん! そこまでしたら流石に何かリアクションあるかなと思ったんだよっ!」
    「はじめに言ったはずだ。私に普通を期待するなと。私はお前の求めているものは与えてやれない。それでもいいと、そう言ったのはお前の方だぞ。サンダークラッカー」
    「……」
     その通りだ。返す言葉もない。サンダークラッカーは俯く。彼のことを好きだと思う。だから、それでもいいと思った。見返りのない恋なんて慣れっこだったから。理屈では、そうやって思うのに、心というものはそんな理屈の言うことを聞こうとはしない。やはり同じだけの愛を返して欲しいと思ってしまう。ショックウェーブはこんな自分に呆れただろうか? 面倒なことが嫌いなこの男のことだ、このまま別れを告げられてもおかしくない。
    「言っておくが、私だってお前のことを何とも思ってないわけじゃない。お前、そこを誤解しているのではないか?」
    「え?」
     けれどもサンダークラッカーの予想した言葉とは違う言葉が彼から発せられて、サンダークラッカーはきょとんと顔を上げる。ショックウェーブはいつの間にか立ち止まっていて、サンダークラッカーの方を振り返っていた。
    「私には心なんてものはないと思っていた。何があっても、悲しいこと腹立たしいこと嬉しいこと楽しいこと、そんなものとは一切無縁で、これからも死ぬまでそうなのだと、私はそう思ってた。だが……お前と出会って、私は、わずかとはいえ感情の揺らぎのようなものを感じるようになった。私を変えたのは、お前なんだ、サンダークラッカー。これからも私が変わることがあるとしたら、お前がいなくてはダメだと思う。だから、私はお前と一緒にいたいと思っている」
     そしてショックウェーブは、くそまじめなまっすぐな眼差しとともに言った。
    「簡潔に言うと、サンダークラッカー、私はお前を他の誰にも渡したくないということだ」
     サンダークラッカーは、聞き間違いじゃないかとブレインの簡易スキャンを行うが、メモリーユニットに記憶された音声は一句違わずその言葉を保存していた。サンダークラッカーは、フリーズしたようにショックウェーブの目を見返す。それから、頬にゆっくりと笑みが広がって行くのを感じた。
    「……お前、俺が望むものを与えてやれないだって? 馬鹿なこと言ってんじゃねーっての」
     肝心なところでわかっていないのは、こんなときも同じなのだなあと思いながら、サンダークラッカーはショックウェーブの腕を引いてぎゅっと腕の中に彼を収めた。
    「おれがいちばん欲しかったのはその言葉だよ」
     誰かの二番目ではない、一番目になりたかった。そう思うサンダークラッカーの脳裏をかすめる影をサンダークラッカーは無視して、戸惑っているショックウェーブのことを考える。
    「お前の考えることは、私には理解できない」
    「うん。でも、それでいいんだよ。俺だってお前の考えること全然わかんねえもん。だから一緒にいても飽きないんだろ?」
     サンダークラッカーが笑って言うと、ショックウェーブのまとっている気配がふと和らいだ。それがショックウェーブでいうところの微笑みに当たるのかどうかは、サンダークラッカーには判断出来ない。でもサンダークラッカーにとってはどっちだってよかった。今、何を言われても、何があっても、この科学参謀を離したくない。ただそれだけだった。

    (nextあとがき→)
    この話、実は書き始めたの結構前だったのですが、ショックウェーブがちょっと感情的すぎるかなーと思ってお蔵入りしてたのです。でもダークスパーク遊んだら割とショックウェーブさんがフリーダムで楽しそうに暴れてたので、別にこういう感じでも違和感ないかなと思って最後まで書いてみました。ダークスパークのショッキーはFoCみたいな冷たい感じではないですがあれはあれでかわいいですね!光波さん的な雰囲気あって素敵。
    日本語版がもうすぐ出ますが、私はキャラ口調は今のままで行こうかなと思ってます。そもそも箱版日本語版出ないし(涙)
    こんなところまで読んでくださってありがとうございました!最後に置き場がない衝サン140字SSも置いときます。(2014年7月24日)


    ラボの片隅にあるデータチップはサンダークラッカーの忘れ物である。これをラボに置き忘れたまま彼は慌しく宇宙へと旅立った。恐らく持ち主に戻る日は来ない、只のゴミだ。だがショックウェーブは、捨てようとする度にいつも別の用事を思い出して、いつまでもラボの片隅に忘れたまま一日を終えている。
    小雨 Link Message Mute
    2018/06/15 22:03:13

    【TF:WFC】That's All I Needed

    ダークスパークが発売した頃に書いたものです。音波スタとサン→スタ要素がナチュラルに混ざってるので苦手な人は注意です!!サンスタは昔付き合ってたようなないような微妙な関係です。
    サンクラがショックウェーブにかまって欲しくてあさっての方向に行く話。 #TF腐向け #トランスフォーマー

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