①おめかししましょいつものように放課後ボードゲーム部の先輩であるイデアさんと部活動をしていた時の事。
今日のゲームは余興がてら「勝った方が負けた方にお願いを1つだけきいてもらう」という条件で勝負をしていた。
僕もイデアさんも全力で頭を回転させながら勤しんでいたが、最後の最後で僕はイデアさんに負けてしまった。
「はあ…まさかあそこでそんな隠し手を持っていたとは」
「ふひひっ、このゲーム2回目にしてはアズール氏もなかなかでしたぞ?」
「くそっ、次こそは必ず勝ちますからね!」
「はいはい、期待しておりますぞ~」とニヤッとしたあの笑みを浮かべているイデアさんに僕はイラっと来た。
「はいは一回で十分です!!それより先程のゲームの条件、勝ったのはあなたですから…願いとやらを聞かせていただきましょうか!なにがいいんですか?さあ!」
「ゔっ!えっ、めっちゃグイグイ来るじゃないですか…!えっ、今この場で決めなきゃダメ…?」
「そうですね。イデアさんもご存知のように、僕これでも忙しいので、今すぐ聞きたいたいです。内容によっては準備期間も必要ですので。」
「アズール氏はいつでも全力投球の努力家ですもんね」
「おや、お褒めの言葉ありがとうございます。で、願いはなんですか?」
えっと…その、あの…と語尾がだんだん小さくなっていき、何やら考え込んでしまったイデアさん、
それどころか何やら両手をいじり始めて、もぞもぞし始めた。…そんなに言いにくいことなのか…?
おそらく、たっぷりと約3分ほどその状態が続いてから、ついにイデアさんの口が動いた。
「実はさ……1週間後、実家から招集がかかってまして」
「ご実家……シュラウド家の招集ということは、何か式典的なものですか?」
「……そうですな」
「まあ、あなたそういうのに生身で参加とか難しそうですよね。あっ、もしかして分身薬をお求めですか?そうなると1週間…薬を準備する期間も必要となるので…」と頭の中でスケジューリングを組んでいたらイデアさんは慌てた様子で、僕に声をかけた。
「ちょ、ちょっとアズール氏タイムタイム!えっと、その提案も大変魅力的ではあるんだけど、
たぶんうちの実家のセキュリティ的にそれだと難しい…なんせ僕の魂、実家の冥界システムに登録済みだから、中身を伴わない分身なんて送ったら、怒りの手紙が部屋に溢れてしまう…」
「おや、僕の早とちりでしたか、それじゃああなたはその式典には参加はされるのですね?」
「…うん…、過去にバックレようとしたら部屋着のまま強制召喚されたから…いやあ、ガケモライブ映像鑑賞会(一人で)中だったのにさ!!…公開処刑まじトラウマすぎて…」
「それは自業自得なのでは?」
「ぐう正論っ…!!」
「それで!結局僕はなにをすればいいんでしょうか?」だんだん苛立ってきたので前傾姿勢でイデアさんに詰め寄るかたちになってしまった。
「ひいいいいいい!!あっ、えっとそのっ、」
「さあ!!早く言いなさい!!」
「あっ、あのさ、拙者たち、そのこれでもリっ、リア充じゃないですか…!!」
「…そ、そうですね」
そう、僕とイデアさんは実を言うと部活の先輩後輩の関係から、
世間的にいう恋人関係(イデアさん風に言うならリア充)になった。
この関係を知っているのは僕たち二人と、僕が相談相手として話していた双子、
あとなぜか寮長の皆さんに把握されている。この関係になるまで、それはそれはいろいろあったのですが、今は省略します。
唐突にそんな確認をされて、ちょっとどもってしまったじゃないですか。
イデアさんはそんな僕の様子にまたあのニヤッとした笑みを浮かべている。
「なんですか、【恋人】としてのお願いですか?…いいでしょう言ってみてください」
「こっ恋人ぉ!!えっと、そのあの、じ実は、実家から今回の式典に、その【パートナー】を連れて参加せよというミッションを出されまして…」
「パートナー…」
「自分の息子が通ってる学校が男子校だって把握してるはずなのに、意味不すぎてさ、しかも息子の【キモオタ】【引きこもり】というスペック忘れてるんかっ!!!と切れ散らかしそうになったんだけど、その招集が掛かる前に…実家からテレフォンが掛かってきたときに、オルトが出てくれたんだけど「兄さんなら、素敵な相手ができたから問題ないね!」とかポロっとリア充デビューしたよ報告しちゃって!!」と頭を抱えてしまったイデアさん。
「…なるほど、そのお相手をつれて来なさいというご両親からミッションをどうにかしてほしいということですね?」
「結論的にそ、そうなりますな…」
「でも僕は男です。あなたのご実家としては後継ぎとかいろいろありますよね、そうなると…」
「あっ、その辺りは「お任せください!!!!」えっ!??」
「そうなるとお相手は女性の方がいいという事ですね!」
「あっ、あのアズール氏」
「ふふふっ!!そうなると必要なのは性転換薬ですね!!今から準備となると完成するのに3日間…そしてもろもろ衣装の準備も必要です。その辺りはなにかドレスコードなどありますか?」
「えっと、特には無いですけど…」
「承知しました!!それでは僕は今から魔法薬の準備をしなければいけないですので!進捗はまたスマホに送りますので!」
僕は頭の中でスケジューリングし、早々部室を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ!?アズーっ」
僕は一人呆然と部室に取り残された…。
えっ、待って僕の恋人全然話聞いてくれないな!?
いや、きっと頭の中でスケジューリングして早々に実行に移しているんだろうな、さすが行動力の鬼。
待って、あの子性転換薬とか言ってましたよね、僕はアズール氏なら男のままで十分愛しているのですが………女の子………アズール氏…?
「なにそれSSRすぎでは…あ~~~~~~~~」
また違う意味で僕は頭を抱えてしまうのであった。