⑩答え合わせしましょ 嘆きの島の本島から小舟に乗ってかれこれ40分程。僕たちが乗った小舟はついに離島の沖に到着した。
僕はアズール氏からの不意打ちの殺し文句に時間停止魔法をかけられたような状態になり、気がついたら到着していたって感じだった。
「いやあ、今日はなかなかな光景が見れたの~」
船を漕ぎ終え、結界の魔法を解いたじいやが楽しそうにこっちを見てくる。
うっ…!どうせ結界の外から見てたんだろう!恋人の殺し文句にときめき限界突破して強火状態で固まってしまった童貞の姿を!
そんな僕の横では、結界が解けて改めて島の様子を興味深そうに、周辺を眺めているアズール氏。
「迷える魂というのはあんなにも沢山漂っているのですね…興味深いです」
「ワシから、やつらにはちょっかいを出さないようにお願いしておきましたから、ここから会場までは安心して進みなされ」
「…じいや、ありがとう」
「ありがとうございます。このお礼は今度必ず…」
「ハハハッ!坊ちゃんのこんな姿を生きているうちに見れただけで十分じゃ!さあ、この後はちゃんとエスコートするんですぞ坊ちゃん!」
僕はまたもや強烈な平手を背中に打たれた。
「痛いんですけど!?」
アズール氏はそれを見ながらまた笑っているような仕草をした。
じいやに見送られながら、僕たちは家に続く道を進んでいく。
僕の実家は離島の船乗り場から森の中に向かって20分程歩いたところにある。
「本当、ここって田舎過ぎるでしょ…」
「おや、そのようなことないですよ。ここで僕の将来の事業を展開するのに色々と開拓できそうなところばかりではないですか!」
「アズール氏が楽しそうでなによりっすわ~…あっ、そろそろ家が見えてくるよ」
「……あの坂の上にある屋敷ですか?」
「一応そうですな」
「それでは早く行きましょう、さあエスコートしてくださいませんか、イデアさん」
そういうとアズール氏は、道中ずっと汚れ除けのために羽織っていたフード付きマントを取った。
黒色のマントから現れたアズール氏が、身に纏っていたドレス、それは僕が想像していた黒色とは、正反対の…
「…………」
「イ、イデアさん…?」
「………し、白…」
あまりの衝撃にオタクの思考回路はショート寸前。えっ、アズール氏の事だから島の雰囲気とかもろもろ考えて落ち着いた色合いとか選ぶだろうなと思っていたのだが?かつボディラインが締まって見える黒色だと思っていたのだが?純白ドレスを身に纏う恋人兼推しの姿に『こんなのウェディングドレスじゃないっすか!!』という叫びが出そうになったが、何とか堪えた。拙者偉い。
「え、大丈夫ですか?瞳孔が開いてません?」
はあ~~~拙者の恋人、性別変わっても可愛いってすごくない?キラキラと輝くシルバーヘアーも映えてる…ああ…すごい。
「…その…ヴィルさんにご相談して見立てていただいたのですが…ご感想はどうでしょうか…」
アズール氏が、僕があまりにも固まってしまったせいなのか、不安げな表情でこちらを見上げてくる。
「ボーテ!!!!100点!!」
恋人の超ド級SSRスチルに興奮したキモオタは、某狩人氏の賞賛の言葉を思わず森中に響き渡るのではないかというレベルで叫んでしまった。
そんな僕のあんまりすぎる語彙力に、思わず吹き出してしまった恋人の姿にまた胸キュンクリティカルヒットされたのだった。