⑦待ち合わせしましょ僕の恋人が「任せてください!」と高らかに宣言をしてから一週間経った。
いよいよ明日、嘆きの島の実家の式典だ。
イヤリングをオルトに届けてもらった日から特に連絡がなかったアズール氏からメッセが届いた。
『遅くなってしまってすみません、素敵な贈り物ありがとうございます。当日必ず着けていきますね。当日の集合などについてご連絡ください』
僕は返信した。『変身した姿は他の人に見られたりするのはあれだよね…準備は自室で?』
『はい、当日は僕の部屋まで来ていただく事は可能ですか?難しいようであれば僕が集合場所まで向かいます。』
んんんんんっ!変身したSSRアズール氏♀を他のやつの目に入れたくはない…!!ないんだけど、あの洒落乙寮に拙者みたいな陰キャラが出入りするのは…式典前にMPが激減してしまう…転送魔法使おうかな
ピリリリリリリリ「おわっ!?ちゃ、着信!?」(ピッ)
「もしもし、突然すみません。直接電話した方が早いかと思いまして」
「……返信そんな待たせた?」
「返信テンポが遅くなったので、もしや転送魔法まで使って僕の部屋に来ようとでも考えているのかと思いましてね」
「君いつのまにエスパーになったの?」
「イデアさんが無駄に才能を発揮させようとする時は何となく僕の勘が当たりますね」
「…ひょえ」
「愛の力ですかね、ふふふっ」
はわっ…拙者の恋人、可愛すぎでは…?
「さて、当日ですが鏡の間を通って嘆きの島に行くという事でいいでしょうか?」
「あっ、う、うん。転送先は嘆きの島の拙者の家近くのボート乗り場に出られるように設定弄っておこうかなって」
「わかりました。集合は鏡の間でよろしいですか?僕もなるべく人に見つからないようにして行きますので…まあ休日なので、殆どは校舎か各寮内で皆さん過ごされてるので大丈夫かと思いますが」
「……あ、そうだこの間のイヤリングにちょっとした機能入れておいたんですわ、忘れてた」
「なんですかその機能って?」
「…え~~~~~っと、その、あのイヤリングには拙者の魔力をちょいと込めたりしているので、ブロットの貯蓄量をかなり抑えて、君の魔力を少しだけ込めてもらえれば、呪文の効力を上げられるというもので…」
(…プレゼントにしちゃ自分の魔力込めてるとか激重すぎてドン引きされるんじゃないかとか、作り終わってから気づいたんですよ~~~あ~~~)
「………イデアさん、あなたって人は本当に…」
「…!!激重すぎてすみませんんんん許してクレメンス…!!僕を捨てないでぇ!」
「なにを言っているのですか!本当に天才ですね!これは今度商品化などについていろいろ検討させてくださいね!いいですか!」
あ、アズール氏の商人魂は通常運転でしたか。さすアズ!
「それなら僕は人に見えないように鏡の間まで、目くらましの呪文をかけて向かいますよ。」
「おk。拙者もそうしますわ~。あ、観光とかする?ぶっちゃけそんな観光スポットとかないに等しいんだけども。それならちょっと早めに集合するけど」
「それはとてもありがたいのですが、今回は式典が目的なので集合はイデアさんのご希望で大丈夫です。」
「それじゃあ、午後3時に鏡の間に集合でいいかな」
「わかりました。それじゃあまた明日」
「うん、また明日」
僕は通話終了ボタンを押した。待ってください、このイヤリング、なにか細工されてるのか検討はしてましたが、まさかイデアさんの魔力が込められているものとは……え、そんな天才的なつくりになってるとは思わないじゃないですか…!
「……ふふふっ、僕って、あなたに愛されているんですね」自室でぼそりと独り言を呟いた。
そして式典の当日を迎えた。
オクタヴィネルの僕の自室には、準備のために来てもらったヴィルさんと、ジェイド、フロイド、現在ヴィルさんにコルセットを締められている僕の4人がいる。
「ヴッ…!!」
「おやおや、アズール、レディーがそのような声を上げるのはいかがなものかと」
(こいつ、まだ人魚姿で絞めあげたの根に持ってるのか…?)
「あは~!アズールめっちゃ絞められてんじゃん~!やっば!」
「…このっ、苦しみをっ…!お前たちにも分けてあげたいですね…!っ!」
「アンタたち、このあとにヘアメイクが控えてるの。あんまりモデルにストレス与えないで頂戴」
「今、アズールに一番ダメージ与えてるのベタちゃん先輩だと思うけどね~」
「ふん、初日に締めたときに比べれば、アズールも慣れたものでしょ」
「まあ…」
「さて、ジェイド!アンタはドレスをアズールに着せて頂戴。フロイド!アンタはそのオープントゥパンプスをアズールに履かせて頂戴。」
「かしこまりました」
「は~い」
二人の手際の良さに僕の準備はどんどん進んでいく。
「さて、仕上げのメイクはアタシに任せなさい。アイツのパートナーとしてふさわしい仕上げをしてあげるわ、さあ、目を閉じなさい」
メイクは、ヴィルさんがイヤリングのアズライトブルーを見てインスピレーションが沸いたとかで、当日のお楽しみと言われていたが、どんな仕上がりになるのだろうか、このあと鏡を見た僕は一瞬かたまってしまうのだった。
【一方、その頃のイグニハイド寮イデアの自室】
「なんでこうなってるのおおおおおおお」
「どうしたのだい!自室の君!」
「いやいやいやいや、なんでルーク氏がいるんでござるか!?」
「この間、イヤリングを届けに行ったときに僕がお願いをしておいたんだ!」
「努力の君があのように頑張っているのを見てね!私もこれは力になりたいと思ったのだよ!恋人の為にあそこまで…実にトレビアンだ!」
「ひいいいい」
「さあ!自室の君、服装は弟くんが素晴らしいものを見繕ってくれているようだ、私はヘアセットなどをさせてもらうよ!」
「待って待って拙者の心が持たない」
「ふむ、そのスタイルなら髪型をまとめて、前髪も流した方が美しいだろうね!おや、そのイヤリング……なるほど、素晴らしい色だね」
「…ヒッ!…もう拙者のMPは0…」
「あ!兄さんったら倒れないで!アズール・アーシェングロットさんも今頃頑張って準備してくれてるんだから!」
「………ぴえん…」
「任せてくれたまえ!」
「うんとかっこよく仕上げるからね!」
「……お手柔らかにお願いします…」
「「任せて(くれたまえ)!」」
二人の待ち合わせまであと2時間後となった。