②錬成しましょあれから二日後、今日はちょうどモストロラウンジの店休日だ。
日曜日ということもあり、授業も全日休みで完全にオフの日である。
一昨日、イデアさんのもとから帰ってきた僕の表情を見るなり、
双子が楽しそうな笑みで「「また面白いことでも考えてる(の~/ですか)」」と話しかけてきたので、事の経緯を説明すると、自分たちも手伝うとノリノリだったので、休日ではありますが、3人で白衣を身にまとって、実験室にいる。
「さて、性転換薬を作りますよ!さあ、二人とも依頼していた材料を並べてください!」
「性転換薬とか~、材料なかなかえげつなくね?」
「雌になるか、雄になるかで微妙に調合も変わるのですね」
「生物の雌雄は本来遺伝子レベルの話ですからね、それを変える薬ですから、そこそこ薬学に関する知識レベルは高くなりますよ」
「お砂糖、スパイス、素敵なものをいっぱい……アズールが持ってきたこの著書アバウトすぎて、笑いが止まりませんでしたよ」
「それは僕も頭を抱えました…なのでクルーウェル先生にも試験勉強の参考というていで詳しい材料を教えていただいたのです。」
「にしても変身する本人の種族によって材料変わるのおもしれ~」
「人魚だと、ヴィーナスの貝殻からできた大粒真珠、セイレーンの叫びの石、繁殖地域が極寒エリアでしか入手できないメロウの海藻……たった二日間で準備するには苦労しましたよ、ねえフロイド?」
「ホント~俺めっちゃ頑張ったんだからね~?」
「流石、僕の優秀なウツボたちです。よしよし。」
流石に急ピッチな依頼でしたし、二人ともしっかりと働いてもらったので、ご褒美がてら二人の頭を抱え、感謝の意を込めて頭を撫でた。
「あは~~!もっと褒めてくれていいんだよ~」
「…ごほん、なんだったら今日の夜ごはんは僕たちの好物にしてくれると嬉しいですね」
「……薬がうまく成功してから考えましょう。」
そういえば、以前イデアさんにも同じように頭を撫でたら、青い炎が赤く変わってめっちゃどもっていたな…ふふっ身長が高い人は頭を撫でられるのに慣れてないらしいですしね。あれは面白かったのでまたやってやろう。
そう思いながら僕は二人と一緒に調合を始めたのだった。
数時間後ーーーー
「そして液の色がピンク色に変われば………やりました!!二人とも成功ですよ!!!!!!」
「俺天才~!」
「匂いも先生から教えていただいたものと一緒ですね」
「成功したから今日の晩ご飯は蛸ちゃんコースで決定ね~」
「いいえ!性転換薬は無事にできましたが、先程伝えた最後の仕上げがまだですよ!」
最後の仕上げ、著書には直接体に塗るという手法で載っているのだが、錬金術の専門家のクルーウェル先生いわく、僕たち人魚が服用する場合…たださえ人間に変身するための薬を服用しているため、著書のように直接体に服用するのは副作用が出る可能性が高いとのこと。
「あっ、そっかこれを一晩漬けておかなきゃいけないのか」
そういってフロイドが手に持っているものに目線を落とす。
それは、金色に華々しく輝くチェーンと、僕たちの故郷の深海の真珠からできている【髪飾り】だ。
「直接体に塗るのではなく、装飾品を薬品に漬け込むことによって変身グッズとして身に纏うことで、体への負荷を減少する…さすがは専門家ですね」
「…そして、僕はこの仕上げと効果継続呪文を約3時間かけ続けなければいけません。」
「え~~~…でも俺お腹空いた~~~~~」
「ええ、なのでお前たちはこの後はもう自由にしていただいていいですよ」
「おや、それでは僕とフロイドはアズールの分の夜ご飯も準備してきましょうかね」
「……言っときますけど、僕は蛸は食べないですからね」
「美味しいのになあ~♪あはっ」
「ふふふっ、それでは軽くつまめるサンドイッチと紅茶でも準備してきましょう」
そういって二人は実験室から仲良く寮のキッチンへ向かって行った。
「これが出来たら明日はあの人の元にいかなければならないですね…はあ、忙しい日になりそうだ。」
その後、キッチンから戻ってきた二人は、たこやきと蛸のカルパッチョを僕の近くの席で優雅に食べ始めた。
むかつく笑顔つきのエールを送られつつ、三時間、僕は最後の仕上げの呪文を唱え続ける破目になるのだった。