ロナドラ短歌まとめ〈赤と黒〉

やって来たまっかな秋を見渡して一等きれいな赤は君だな

夜を知り夜を知らないことを知るおれの不思議をおまえが笑う


〈砂恋事情〉

極東の南関東の新横の浜の真砂はわたしの一部

感情の水位が上がって出てこない言葉を砂がさらおうとする


〈セロリ畑でつかまえて〉

もし君がセロリ畑に旅立てば同じ笑顔はつくれないけど

クソザコよ慈しむような眼差しでセロリ畑におれを送るな


〈大怪我の始末〉

目が覚めて耳が拾った細い声そんな顔する必要ないだろ

強いから大丈夫なんて言わないでまだ乾かない君の傷痕


〈告白現場〉

なにもかも思ったとおりにいかなくてだけどおまえはわたしもと言う

名を呼んで好きだと告げる君はいまよりにもよってダチョウの衣装


〈冬とにっぴき〉

冬が来たふわふわ腹毛と骨ガリがおれを挟んでくすくす笑う

湯たんぽの栄誉を君に与えよう命の炎燃やせいつまでも


〈不在時の禁煙〉

棒付きの飴をくわえてひと休みひとりの部屋は味気がなくて

鬼の居ぬ間に紙巻きは吸わせない君はイージー私はノイジー


〈経理のマジロさん〉

領収書ぜんぶ見つけた？そろってる？さあ頑張ろう確定申告

新しい電卓掲げて勇ましいマジロの指が帳簿をめくる


〈シャッターチャンス〉

咲き誇る高嶺の花の顔をして君はスーパーで駄菓子を選ぶ

瞬間の一度しかない光だとおまえは俺にカメラを向ける


〈季節のお裾分け〉

箱いっぱい柚子をもらった帰り道きっとあいつがなんとかするさ

おすそ分け洗ってきざんで火にかけて空きビンずらり柚子ジャムとろり


〈おでんとにっぴき〉

もち入れて巾着のくちきゅっと結ぶキッチンいっぱいお出汁の香り

おでんの具ひとりとひとたま頬張れば見ているひとりとびきり笑顔


〈味わうふたり〉

知ることで知らないことを思い知る彼が教えた執着の味

朝飯を温めながら頬ゆるむあいつがつくる無傷の日常


〈ベッドの上〉

ちまちまとボタンをはずす指先を食い入るように見つめてしまう

眼差しの強さに穴があきそうだ杭打つような青い情熱


〈落葉〉

はらはらと風に舞う葉の鮮やかさ手をすり抜けて遠くの方へ

一枚の枯葉の重さで死ねるバカ風を背に受け塵かき抱く


〈まばゆい夜空〉

街灯が月の明かりが星空がおまえの命を照らし続ける

あの月も数多の星も街の灯もずっと同じままそう信じてる