サメ太朗 おうちクリスマスの計画を聞くモネちゃんがホンドの三階のおうちにお引越しして2週間。新しいおうちは、スガナミが東京で住んでるおうちみたいにエルディーケーって名前のお部屋と寝る用のお部屋があって、さらにもう一つお部屋がある。すごいねー、って思ったけど、スガナミ曰く、東京の4分の1だって。もうそれは気仙沼が安いのか東京が高すぎるのか、わけわかんないね!
モネちゃんは組手什で僕専用のサメ棚を作って、エルディーケーのモネちゃんのお仕事スペースの横に置いてくれた。僕の定位置はおうちを見渡せるそこ。んで、寝る時には寝る用のお部屋に連れてってくれる。お引越しした最初の週はモネちゃんも家具をいろいろあれこれしたり忙しくしてたけど、だんだん生活のリズムができてきて、段々とモネちゃんと僕の「ひとりといっぴき暮らし」も慣れてきた感じがする。ねー。
モネちゃんの一人暮らし(ってスガナミはいつも言うけど、「ひとりといっぴき暮らし」だ!フカー!)を心配するスガナミとの電話もたくさんで、そのたんびにモネちゃんは苦笑もしてるんだけど、そうやってスガナミがお構いしてくるのがちょっと嬉しいってにおいもして、もーモネちゃんもばくはつしろ!って思う。いや、しちゃだめだけど。
お風呂上がりのほかほかのモネちゃんが、今日もスガナミと電話してる。スガナミも家から電話できてるみたいでビデオ通話してる。わーい。ビデオ通話だと、スガナミが何言ってるか聞けるから、僕そっちの方が好きなんだよねー。ふむふむ?スガナミはさっき帰ってきて賞味期限切れの食パンを食べた、と。腹壊すなよー。腹巻き巻けー!モネちゃんもスガナミの話にくすくす楽しそう。
「もう、笑いすぎですよ」
「すみません。でも、ちゃんとしたもの食べてくださいね」
「はい。で、話題変わるんだけどね」
「はい、なんでしょう」
「今年の年末年始なのだけど」
「あのね、12月19日週の週末土日と、大晦日から三が日の4日が休みになったんです」
スガナミの言葉にモネちゃんが一瞬止まって、机の上に置いてるカレンダーを手に取って何かを確認する。確認したモネちゃんがびっくりのお顔になって、ビデオの向こうのスガナミに勢い込んでる。
「12月19日週の土日…って、クリスマスイブとクリスマスじゃないですか!え、それに大晦日から三が日?先生がお休み?ほんとに?」
「百音さんが信じられないのも分かります。自分でもシフトが出て目を疑ったから」
「明らかに気を遣われてますね」
「まぁ、ずっと遠距離なことも結婚したこともすっかり知られてしまって。ずっと盆暮れの勤務を引き受けてた利子が戻ってきた感じ、なのかな」
「利子、って面白い」
スガナミの言い分に、モネちゃんがまたくすくす笑う。わー、なんかめっちゃいいことなんだね!
「でね、もし永浦のおうちが良ければ、正月にそちらに帰らせてもらえないかなと」
「菅波のおうちには帰らなくていいんですか?」
「この正月は兄夫婦のところに両親が行くらしいんです」
「あぁ、釧路の」
「ええ。来年にはまた動くだろうから、その前に行ってみる、と。なので」
「ウチはもちろん、先生が帰ってきてくれたら」
モネちゃんがうんうん、って頷いてて嬉しそう。そだねー!スガナミと一緒のお正月なんて、いつぶり?ん、でクリスマスは?クリスマスはどーすんの?
「それで…クリスマスなんだけど…」
「あ、はい」
「百音さんの仕事の都合が合えば、東京で過ごしませんか?」
スガナミの言葉に、モネちゃんが急いで手帳を取り出して何かをふむふむしてる。ふむふむし終わったモネちゃんが、ぱぁ!って笑顔になって、画面の向こうを見てる。あぁ、今ぜったい、モネちゃんかわいいなぁ、ってスガナミがデレてる。まぁしゃあない。けどばくはつしろ。
「26日は大谷海岸の道の駅の仕事があるんですが、24日と25日は大丈夫です!」
「じゃあ…」
「東京帰ります!」
「うん」
「先生とクリスマスを当日に過ごせるのって…」
「2016年の登米以来」
「ろくねんぶり…」
スガナミの言葉に、モネちゃんもしみじみしてる。ろくねんかー!
「どこか行きたい、とかありますか?」
うっわ、スガナミの声色があっまあま!そりゃモネちゃんがクリスマスに東京に来るってんだから、甘やかす気満々だよなー。モネちゃんが到着する前に溶けてなくなっちゃわないかな、だいじょぶかな。
「うーん、そうですねぇ」
ってモネちゃんもウキウキ考えてる。えー、モネちゃんどうしたいんだろ!
「結婚して初めてのクリスマスでもあるし、先生とゆっくり、おうちクリスマスしたいです!今まで、クリスマス前後に会う時って外だったから」
モネちゃんの言葉に、スガナミがなんだか感極まった感じで「うん」って言ってる。もー、マジでスガナミがカホーモノすぎる!ゼンセでどんな徳積んだんだ!
「なにか支度しておくことはありますか?」
「うーん、また考えてメッセージ送ります。先生もそんなお休みもらう分、前後は忙しいだろうし、無理しないでくださいね」
「ありがとう。でも、せっかくだから、遠慮はしないでね。あぁ、小さいクリスマスツリーぐらいは買おうかな」
「ツリー、いいですね」
モネちゃんがクリスマスツリーって単語にニコニコしてる。こんなモネちゃんが見れるなら、スガナミはツリーを10個ぐらい買っちゃうかも。
「23日の夜に移動で予定組んじゃいますね。楽しみです。あ、お正月の件は両親に伝えておきます」
「うん、よろしくお伝えください」
「はい」
それじゃあおやすみ、って言い交わして、二人のビデオ通話が終わる。
終わった瞬間、モネちゃんが隣の組手什にいた僕をむぎゅー!って抱っこした。あがー!
「さめたろう~!先生とクリスマスだよ!うれしいねぇ、うれしいねぇ」
あががー、うん、うれ、うれしいよね!うわぁ、むぎゅむぎゅー!
「ね、サメ太朗も一緒に行こうね。サメ太朗はいっつもクリスマスはお留守番だったし」
え!連れてってくれるの?!僕もクリスマス一緒にできる?!ジンベエくんたちにも会える!
わーい!
「いろいろ準備しなくちゃね」
ってわくわくしてるモネちゃんとおんなじぐらい僕もわくわくする!
クリスマスかー!赤いボーシ、もらえるかなー!