──────・・、
時は平安、舞台は京の都。
1017年12月24日、
【大江山朱点閣】。
「 …!!」
(雪山越えを急ぐ一組の男女)
これは、
呪われた運命に抗う
一族の物語である。
パサッ..! パサッ!!
(鳶)
「ピ─────ンッ! ……。」
..パサッ!
……………………。
シャン…。
─────【天界】─────
金色の雲が、静寂に流れる時の光の中
昼子はゆっくりと瞑想からの目を開けた。
【太照天昼子】
「 ………。」
───────・・。
霧掛かるぼやけた視界のような記憶には、
誰かが挑発的な笑みを浮かべて何かを口にしている。
微かだが…
少年の発した言葉は、
昼子に向けて確かにそう口にしていた。
” 姉さん ” ..と。
(手のひらに降りてくる小さな光)
(太照天昼子)「 ( ……、) 」
更にもう一つ、
気になるこの気配は…
新しい命の魂が、
今まさに、京の都で産声を上げて
泣いていたのである。
(太照天昼子)
「 いよいよ…なのですね 」
” お輪…。”
ザワッ。
(昼子の後ろに控える天界の神々たち)
「 ………………、」
【ト玉ノ壱与】を始め【太照天夕子】、
【鏡国天有寿】
【雷王獅子丸】、【常夜見お風】、
【上諏訪竜穂】、【日光天トキ】といった天界上位の神達が戦闘体制に待ち構え、地上界を見下ろしていた。
(太照天昼子)「 ………。」
ゴウッ!
(京の都が凄まじい炎に巻かれる)
(赤子)
「 …──! ────..!!」
(太照天昼子)「 ……目覚めなさい…。」
※
積まれ、重なる屍の上に立つ一族よ
流した血の川に立つ一族よ
呪に閉ざされし明日
歪められた刻に足掻く一族よ
我らの敵は朱点
安寧の光が欲しくば
ともに朱点を滅ぼさん
(※俺の屍を越えてゆけ 新説・公式指南書より)
ザクッ
(死んだ両親の墓に刃こぼれた薙刀と刀を突き刺す一人の剣士)
(剣士)「 ……。」
青年は、衣服の下に大事な首飾りに付けていた七光の御玉を取り出し
最後にそれをぎゅっと握りしめると、
生前 両親の最後の形見だったその刀に
優しくかけた。
……………。
「 お願い… 」
“ もう一度、もう一度だけ、
この子を抱かせて… ”
「 ────・・おぉ…よしよし.. 」
“ 坊や・・・ ”
「 大丈夫だからね.. 」
“どうか… 元気で ”
「来い、女。」
──────・・・ カシャン…ッ。
(お輪の薙刀)
朱点童子は、
卑劣な手段で母上を陥れ、
下劣な声を高らかに上げ
笑っていた。
(朱点童子)「ヒャ─────ッ!ハハハハハッ!!!」
(赤子)
「 …!!、……!!!」
(朱点童子)
「 安心しな、約束は守ってやる。グヒヒヒヒヒ… 」
“ そうそう…
お前に おまじないをしてやろう ”
「 …せいぜい
父ちゃん、母ちゃんの分まで 」
(朱点童子)
「長生きしな。」
…………。
そして、
一年の月日が流れた。
────【修羅の塔 終界】─────
ドクンッ・・
(鎖を締めつける鬼)
「 ……グルル..。」
ジャラララ…ッ‼︎
・・ギシッ!
(呪にかけられた体に苦痛を上げる女性)
「 …!、……ぅっ…ッ!!、… 」
ジャラ・・。
( ヒタ、ヒタと誰かの足音が近づいてくる)
(???)
「 いいね、これだけの数がいれば天界の連中も、姉さんも、京の都の人間なんて一晩で滅ぼせる。」
「 ……なのに、その為の鬼の頭目を討つはずがまさか、腹を痛めて今じゃ元凶を生まされていく鬼達に・・
(???)
「 京の人間どもが、喰い殺されてくやりきれない絶望感は誰にも想像出来ないだろうね。…フフフフ、」
(女性)「 …!、お前は・・?!」
…クスクスクス..、
「 ………。 」
(???)
「・・・、クククク………ッ! 」
「!アッハハハハハ…ッ‼︎‼︎ ハハハハ…!」
(女性)
「きつ…ッ、・・!」
(???)「会いたかったよ。」
“ お輪母さん…。”
(剣士)
「 ─────… 親父、おふくろ。」
(剣士)
「 約束する。朱点の首は…
俺が必ず討ち取ってやる! 」
「 討ってやるから…っ 」
「…ッ‼︎‼︎」
……………………、(悲しくも冷たい風)
昔むかしの物語。
時は数百年前の彼らの祖先の時代に溯る。
(???)
「 うっ!、・・うぅっ……‼︎、」
(荒れる大雪)
「 ──────────!!!」
抱きしめている体は誰のものか
青年は気を取り乱すかのようにその小さな弟の体を強く抱きしめ、
声を上げて泣いていた。
【早苗】(槍使い)
「……ッ!! 晃太ぁ──────────っ!!」
いくら回復を上げても冷たくなった体からは全ての血がすでに地面に流れ尽き
それでも最後の力をふりしぼって、
重傷を負った弟は…
「 ………。」
(兄の回復の手を止める)
(早苗)「!」
(晃太)「 いいんだ……。 もうやめて、……。いつか… 父上やみんなの仇、早苗兄ぃ達なら朱点童子を討ってくれるから・・。」
(早苗)
「 晃太っ!、…お前…… 」
「..っ!」
(晃太)「 ……、…兄ちゃん…… おねがい・・。
いつか…… 」
” きっと、あいつを倒したら…
僕らの分まで…… ”
(晃太)
「 ─────…。」
(たすく・叶)「!!」
【晃太】
(弓使い) 0才4ヶ月。
朱点童子の放った敵の襲撃で重傷を負い、まだ幼い初陣の年でその生涯を閉じた。
(叶)「 ……!? 晃太ちゃんっ!!」
「 そんなっ…⁉︎ 」
(たすく)「 晃太!」
(晃太) (息を引き取る)
「 …………。」
(早苗)
「 ──…うっ…ッ‼︎」
“ 守って…やれなかった…。”
(早苗)
「 くそッ、くそぅ…ッ!! 晃太は……まだっ!うっ!!」
(初めて当家に迎えられた頃)
「…?」
“ 晃太、”
(イツ花)
「 兄上の、早苗様ですよ。」
“ ずっと、母上さまが言っていた、ぼくの..早苗兄ちゃん…? ”
“ よく来たな。”
“ …!兄ちゃんっ”
ギュッ..。
俺の…
” 俺の弟を返せ…!! ”
(早苗)「 朱点童子─────────────ッッ!!!」
────────、
……………………………………。
────数ヶ月後────
(大江山)
【朱点閣】。
「 ─────ォォォォオ…!!」(雪嵐)
「 ハァ…ハァ…ッ 、…ッ!ハッ… 」
大雪が
急ぎ走る体力を徐々に奪ってゆく。
朱点閣に待ち構えている鬼の頭目にたどり着くまで
あともう少し…
…………、
(弓使い)「 当主様っ!」
「あれが、」
【隼人】
21代目当主 (槍使い)
(隼人)「 ……間違いない、覚悟はいいな?行くぞ 」
(全員頷く)
(扉)「 ……キィィィィ──…
ギギギギ……!
ガシャンッ!!
「 …………。」
(全員)「!!」
鬼の頭目【朱点童子】。
「 …………、・・随分前に、男と女が来て以来だったか、誰も俺を訪ねて来ねぇから、ちょっと寂しかったゼ。」
「朱点童子っ!!」
(朱点童子)
「 ぞろぞろと、性懲りもなくまた来たか、ククク…。」
(当主)
「 …呪いに抗う日々、死んでいった親達の遺志を、一日たりともみんな忘れはしなかった 」
「 数え切れないほどの… 短命の無念を今日でようやく晴らせる時が来たんだ。」
(弓使い)【月影】
(剣士)【義律】
(踊り屋)
【里穂】「 ……。」
(朱点童子)「 …んん?」
(当主)
「 お前が殺した …俺の父さん 」
強い憎しみの眼差しを向けた一人の青年の面影を思い出した。
(朱点童子)「 …! その額の光は…っ まさか、…あの時の、呪いのガキ? 」
「 ヘヘヘ、俺がなぶり殺してやったのは親の方か。そうか…… またあいつら、こっちの世界にチョッカイ出したのかい。」
(朱点童子)
「 凝りねぇなぁ子供を残してやがったとはなぁ、そういや似てやがるぜ、ククク…。」
「……だがなぁ!」
(当主)「 ッ‼︎」
ギリ..ッ
(朱点童子)「 たとえ鬼でもなぁ、一度生まれりゃ、命はてめェのもんだ! そっちの勝手な都合で、死ねるかよ!!」
「 締め上げに全身の骨を潰してやったいい声 上げてたぜェ…? お前の親父。ククククク …、ヒャーーーッ!ハハハッ‼︎‼︎……
ハッ?」
ボトッ!
(腕が一本切り落とされる)
(朱点童子)「 何!?」
(槍)
ヒュンッ
一撃だった。
(当主)
「月影!!」
(弓使い)「いけます当主様!」
(踊り屋)「 七天爆ッ‼︎‼︎」(剣士)
(朱点童子)「 …⁉︎、チッ!」
「 ( 左右から?!) 」
更に当主と弓使いの併せの鳳招来の火術が真正面から朱点を追い詰めた。
「ピィィィィィィィィィ──────────‼︎‼︎‼︎」
ゴウッ!… (炎)
「ドドドドド!!……
(七天爆)
(剣士)「焼き尽くせっ!!」
「 ‼︎‼︎‼︎ 」
(朱点童子)
「..!? グアァァァァァァッ───────────────ッッ!!!」
(踊り屋)「 …、やったの?!」
(朱点)「………ッ‼︎
ちィとばかしは、骨のある連中か。」
「 だが、地獄業火ってのは骨まで焼きつくさねぇとな。ククク… 」
埃を払うように煤をはたく。
(剣士)「 わざと受けたのか 」
(朱点)「…… 」
(腕も再生)
「( 槍使いの当主は油断した )」
(当主)
「 俺達は生まれて今日まで死ぬまで戦えと、親の成せなかった悲願の為に、戦う力を蓄え今まで機をうかがっていた。」
「 お前のその首を、仕留めるまでは何があってもここで終わらせない‼︎ 」
(朱点)「 その殺気、威勢だけはいいな。」
(弓使)「覚悟しろ」
(剣士)
「 地獄への旅路は… 」
(踊り屋)「 あたし達がいくらでも付き合ってあげるわよ、朱点! 」
ニィ・・。
(朱点童子)「その様子じゃ尽きるお前らの命の方が先か」
「 時間も無いンだろ。」
(剣士)「黙れっ…」
ビシ…!、
・・ビシィッ…‼︎(亀裂)
(当主)
「 ……。……今度こそ、俺達が終わせてやる…。」
「………………。」
(変わり果てた父親の最期の姿)
” !?
父上────────っっ!! ”
隼人は子供の頃にかつてない肉親の悲惨な死を目の当たりにし、朱点童子に対する討伐心に
深い憎しみを背負っていた。
(朱点童子)
「 成り上がりのガキ共が!いいぜ、また返り討ちにしてやるよ、ヒャハハハハハッ!!」
(当主)
「 これが最後の戦いだ、行くぞ!」
(迎え撃つ全員)
「 ──────────‼︎‼︎‼︎」
…しかし、核心に迫った終止符はここからが
本当の始まりだった。
「 …!?」
(弓使い)「 様子がおかしい 」
(当主)
「 …! まだだっ、」
“ クククク…
・・とうとう、鏡を割っちまいやがった…。”
(目覚める黄川人)
“ やっぱりキミたちだったね、
こいつの中からボクを助けだしてくれたのは”
ありがとう
やっと会えたね。
「…………………………。」
“…だから、同じお返しをしたくらいじゃ、ゼンゼン足りない ”
(踊り屋)「当主様!」
(当主)
「黄川人、お前は…っ」
「アッハハハハハ…‼︎‼︎‼︎」
(黄川人)「 そうそう、君たちには感謝してるよ。」
「 あのカッコの悪い鬼のまんまじゃ…ボクの力は、半分も出せなかったんだからね。」
” さぁ、ここからが復讐の本番だ!!”
(黄川人)
「 僕は君たちを断じて許さないっ!」
” また会おうぜ 兄弟 ”
ボクはあの日、誓ったんだ
奴らと奴らの家族、子孫まで
ひとり残さず呪い殺してやるってね。
“生まれ育った都を焼き払い
両親を殺した ”
“ あいつらと、
京の人間ども ”
【※天界と黄川人達の戦い】(※小説より)
「!!!」
(黄川人)
「 ..ッ 姉さんまで…僕を…… 」
「 …裏切ったなっ!!?」
(太照天昼子)
「 …。おやすみ…黄川人……。」(封印の口づけ)
「 ───────────────ッッ!!!」
(黄川人)「 …妙だとは思わなかったかい?君らが今まで倒してきた迷宮の鬼達、中には同じ術まで使う奴らがいた。そう、その秘密の正体こそがこいつさ!」
「 ………我らが、母さんだ。」
(お輪)
「 は…っ早く迷うな…!切れ!!この鬼ごと私を切れ!」
【片羽ノお業】「 お願い…っ黄川人を…!あの子達を助けてやって!」
” いつか きっと、
願いは叶うのよ ”
(イツ花)「 当主様…っ!!」
(数百年前の一族達)
「 ────────────ッ‼︎‼︎」(立ち向かう)
そう…、彼らこそが
今の時代を生きる短命と種絶の呪いに抗う
子孫達の礎となった始祖であった。
いくつも屍を積み重ね、
培った素質だけを我が子に託し、
亡骸は踏み台にしてでも失った
未来への希望の道を作り出す
その執念は今の阿部晴明を宿敵とする子供達にも
色濃く受け継がれ、
これから話す物語は
その後の子孫達の歩んでいった新たな歴史を語ることになる。
────そして時は… 数百年が過ぎた。
『 俺の屍を越えてゆけ2 』
オリジナルセカンドストーリー
【阿部晴明編】
1131年6月。
その日は外にも出られないほど雨が土砂降りの日だった。
(雨)
ザァァァァァーーーー…ッ・・・
「 ………。」
(雷)「ゴロゴロ… ゴロ…。」
(遠くの稲光)
!!(雨風)
ビュゥゥゥゥゥゥ…ッ‼︎
(???)「 ( 父上.. ) 」
【若宮】0才3ヶ月
(弓使い)
第9代目当主【右京】の息子である。
(若宮)「 ………、」
(右京)
“ 討伐に戻ったら、お前もすぐに初陣だ。その間しっかり修練を怠るなよ ”
“ 必ず帰ってくる。”
(コーちん)「 “ 大丈夫、あっしが当主様たちのことしっかりサポートするから! ” 」
【光輝】(壊し屋)
「 “ 麟子もくれぐれも油断するなよ?一人前になったばかりなんだ、気を抜かずしっかり当主様をお助けしろ ” 」
【麟子】(薙刀士)
「 “ 大丈夫よ兄様、任せてちょうだい! ” 」
【伊吹】(槍使い)
「 “ 武比古も銀平も、お前ら無茶だけはするんじゃないぞ ” 」
(右京)
“ 行ってくる。留守を頼んだぞ、お前たち ”
(雨)
ーーーーーーーーーーーー…。
(若宮)「 …… 」
「 ( もう…2ヶ月以上も帰ってこない ) 」
(???)
「 ……眠れないのか?」
(若宮)「 伊吹さん 」
(伊吹)「 当主様、討伐部隊はみんな今、他国の地へ行ってるからな…連日の大雨に船の出港帰還さえも、すぐには戻れないんだと思う。」
「 さ、ほら..お前も、雨に当たると初陣前に風邪を引くぞ。今日は寒さが冷え込む 」
(光輝)「 こんな日は大人しく中で待っていた方がいい。」
(若宮)「 うん…分かってる……。でも… 」
(伊吹と光輝)「 ……。」
“ 通常なら2ヶ月でもう戻ってくる頃だが…。”
(光輝)「 ( 一番長くても3ヶ月… ) 」
(伊吹)
「 ( 何事も無ければいいんだが…。) 」
伊吹達はそればかりが気掛かりになっていた
だが、その時だった。
「ドンドンドンッ!!」
(三人)「!?」
「 …誰か!誰か 開けてくれ!!」
正門から慌ただしい声がした。
(若宮)「 ……! 銀平さんの声だ!? 父上っ!」
(光輝)「!? 当主様っ!」
(扉) バンッ!
しかしそこで目にしたのは…
(若宮)「父上ッ⁉︎ 」
(伊吹)「!」
(武比古)「 ……。」
ずぶ濡れになった全員、当主は武比古の肩を借り息はかろうじて呼吸をしていたが、すでに弓を持つ力もなく顔色もひどく悪かった。
(若宮)「 父さんっ! 父さん!?」
(伊吹)「 武比古、…まさか御当主は…… 」
(武比古)「…もう 寿命だ……。最後の【根の子参り】での奥の暗闇渡りで戦って…それきり…。」
(伊吹と光輝)「!!」
(光輝)「 そんな… 」
(雨)
ーーーーーーーーーーーー…。
(銀兵)「 ……。」
(麟子)「 ……… 」
言葉が見つからずみんな黙ったままだった。
(当主)
「 ……、すまない武比古…、皆を……奥の間へ、集めてくれ……。」
(全員)「!!」
(コーちん)「とにかくみんな一度、当主様の部屋へ」
……………………。
(若宮)
「…父上、父上……っ…うぅっ!」
(武比古達)「 ………。」
(涙ぐむコーちん)
「 ……当主さま…。」
皆が心配そうに見守る中、寝床で静かに眠っていた右京が目を覚ました。
(当主)「 みな…いるな……。」
(銀平)「 御当主っ 」
(若宮)「父上…!」
(麟子)「 当主様!!」
(当主)
「 コーちん、もう…あまり時間がない…。最後に… 」