(万里)「 あなたの父親は、先代当主様はとても立派な人だった。………限りある 短命と言われたあたしたち、先代当主様の背中があったから、自分達は一族の生き方を受け入れてこれたんだと思ってるわ。」
(万里)
「 父親の代わりをする兄。…… 私や季子が子供の頃にも、親に会えずに生まれた七瀬や亜乱にとっては特にあなたの父親の存在は何より大きかったのよ。 」
(陸)「 ……… 」
(万里)「 、最初はみんな 親を亡くした後は誰だって自分の気持ちに整理がつかなくなるわ。突然、ひとりの世界に取り残されたような不安にどうしようもなく駆られる時だって私達は知ってる、陸も今がその時なのかもしれない。でもね.. 」
(優しく抱きしめる)
(陸)
「 ーーー・ ・ ・ … 。」
(万里)「 あたしたち、たとえみんな親兄弟血は繋がっていなくたって一族みんなが家族として支えあっている。陸も…これからはあの人の代わりはまだ重いかも知れないけど、皆側にいるんだから… 」
「 一人で何もかも抱え込んじゃダメよ。 」
そしていつか…
(万里)「 先代当主様を越えなさい。いいわね? 」
(陸)
「 万里… 姉ちゃん 」
父の優しさと何故か重なる。
───────────・・
(陸)
「 …、うん。大丈夫、俺は父さんをいつか越えてみせる。その為にここへ来たんだ 」
「 だけど今日で終わりにするよ、またいつかここへ来る時はきっと、父上が喜んでくれるそんな土産話を持って来るんだ。」
だからそれまでは…
(陸)
「 おやすみなさい、父さん。」
(揺れる彼岸花)
──────… サワ. . 。
… ──────────
(静寂な光の中)
………………………………… 。
” 若宮… ”
(若宮)「 …… 」
” 若宮… 聞こえるか…? ”
(若宮)
「 う…っ、……………… … ? 」
自然と脳が声の主に反応し
深い霧が覆った地面の上、若宮はゆっくりとまぶたを開けた。
(若宮)「 ───… 、ここ… は…?」
” 若宮、”
「!」
(若宮)
「 父上っ それに、… 武比古さんに伊吹さんや銀平さん、みんな…っ 」
父に並び亡くなった麟子さんに光輝さんも皆一緒で、この時はっきりと意識が理解した。
自分はもうこの世にいないことを。
(右京)
「 大丈夫か?」(ゆっくり手を差し伸べる)
(若宮)
「 はい…、… ………… 」
(右京)「 すっかり立派になったな。 …… 後のことは、後の時代に生きる世代に任せよう 」
「 お前も一緒に行くぞ 」
(若宮)「 ... ──── 。」
父上に続き
武比古さん達もその先にある光の扉へとみんな歩み始めた。
きっと その道は、来世に続く
振り返ればまだ 戻れるような気がして、
(若宮)「 …… 」
「 ( でも 大丈夫、陸達ならきっと.. ) 」
新しい世代達の希望を信じて、再び歩き出した。
自分も新たな人生に生まれ変わるときが来たのだ
だから今度こそ、
この先 二十年、三十年、五十年先でも……
ずっと大切な誰かのそばで、長く生き続けていけたらと切に願う。
(若宮)
「 ーーー … 」 (扉の先へ包まれる)
……………………………… 。
────… 、あれからどれくらいの月日が経ったのだろう
子供たちは ……
あとに託した者たちは、
1134年1月。
──【月乃階】──
4つの祭具と最後に【冥王宮】へ向かう鍵となる5つ目の祭具の鍵が機能する。
(光の柱)
──────────────── ! ‼︎ . . . … 、 、 、
……………… 。
(太照天昼子)
「 これで、晴明との最後の決戦場となる冥王宮への入り口が開かれました。」
(夜鳥子)「 … ようやく、 わしもこれであやつとは決着をつけられる。元々、何の罪のないお前達をこんな事に巻き込んでしまって本当にすまないと思っている。ーー… 御当主、」
「 晴明との最後の戦い わしも共に連れてってくれ 」
【陸・11代目当主】(1才5ヶ月)
「 お前の気持ちが 今もそう望むなら、俺は止める理由はない。………、」
「 ( 長かった… ) 」
” ここまで来るのにどれだけ大切な人達との別れを見てきたか... ”
万里、季子はすでにこの世から他界していた。
代わりに、
ザッ。
【久遠】(拳法家)
【京華】(槍使い)
(亜乱)
「 お前達、準備はいいな? 」
「………… 」
【樹里亜】(踊り屋)
【美剣】(薙刀士)
【宗近】(大筒士)
(亜乱と七瀬も参戦)
一族総勢で今は亡き万里と季子の血を引く子供が久遠と京華。
更に現役の親子でいる樹里亜と宗近は七瀬の子として、
美剣は亜乱を父に持つ若い集大成達がしっかりと親の意志を受け継いでいた。
───【冥王宮】───
(包囲を囲む鬼頭もどき)(4体)
「 ヴウゥゥ…ッ!! 」
(当主)
「 気をつけろ、久遠。こいつは… 」
(かまえる久遠)「 …。はい、油断はしません。」
「 ( 当主様が言っていた、こいつが俺のおふくろを.. ) 」
あの先代当主だった若宮や久遠達の親でさえ苦戦にまで追い詰めたあの鬼頭が、
(大筒士・宗近)
(狙い撃ち)「 ……。」
ドンッ!、
「 ドンッ!!!」
!…ッ!ズガッッ!!
「 ドォォン ! ! 」(百発百中)
(樹里亜)
「 …【※夷三郎】!!」
(※敵全体 水属性特大ダメージ)
ザパァ…ッ
(大津波)
「 ーーードドォォォォッ..!!」
(京華の奥義の槍)
ドシュッ!!
(鬼頭もどき)「 グゥゥ…ウッ!!ガッ!」
ヒュパッ…!
(京華)「!!」
(強烈な爪攻撃をかわす)
(京華)「 【火祭り】!!」
「 【萌子】っ!」(コーちん)
(宗近の大筒)「…ッ!!」
カチッ!
「 バァァァァァーーンッ!!! 」
ヒュンッ!!
(久遠)「 樹里亜っ!頼む!! 」
(樹里亜)「 【速鳥】ッ!! 」
(速鳥の補助で高速に乗る)
(久遠)「 くらえっ!」
!、!!……‼︎ ‼︎、 ‼︎、‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎ … 、
(12連撃)
ズダンッ!!
拳法家の隙をつかせない打撃技が襲いかかる。
(久遠)「 はぁっ!」
ドゴォッ…!!
会心の蹴りが鬼頭の腹をへこませた。
(鬼頭もどき)
「 グ…ガッ!!」
反撃させる間も与えない内に、
(背後)ヒュッ!
(鬼頭もどき)「!? 」
(薙刀士・美剣)「 後ろがガラ空きだ 」
(薙刀)
フォンッ!!
「ザシュッ…!!」
美剣が斜め真っ二つに切り離した胴体に七瀬のハヤブサの太刀筋が再起不能にまで斬り刻んだ。
(矢)
ギリィ… ッ!!
(陸)「 …。」
ィィンッ…!
「 ーーズパァァァァァン!!」
(鬼頭)
「 ウッ…!? ゴァァァア…ッ!!!」
(子供達)「 ……。」
強力な闘気を宿らせた当主、陸の矢が頭を跡形もなく吹き飛ばし、敵を殲滅。
今や晴明と対等に戦える力を全員が付けていた。
(当主)「 奴はもう目の前だ!!走れっ 」
─── 冥王宮 (最深部) ───
青白い通路の炎が一本道を不気味に照らしている…。
ここから先は下へ下へと階段を降りてゆく
─── 【禊の間 】───
(コーちん)
「 当主様 着いたよ。ここが… 」
「 ………。」
(全員 巨大な扉を見上げる)
(七瀬)「 あたしたち、やっと晴明と… 」
(夜鳥子)「 ……、」
(亜乱)
「 ここまで、本当に長かった… なぁ、陸 」
(当主)「 ……。みんな覚悟は出来ているな、もう今更だがこの先はこれまで以上の死闘になる。だが、」
七瀬と亜乱に続く子供たちは全員 力強く頷いた。
(当主)
「 這ってでもあの家に帰るぞ。晴明を倒して今度こそみんな普通の人生を取り戻すんだ。」
「 生きて 生きて 生き続けて、親達が死ぬ思いで繋ぎとめた命、決して無駄にするな。」
(久遠)
「 ( 母さん… ) 」
──── 亡き万里────
“ あたしの命の半分は、晴明を倒した後のあんたの人生の貯金だよ。”
誰とも結ばれる、短命に怯えない平穏な家庭を子孫達に築いてやれるところまであんた達はすぐそこまで生きてるんだから
辛い歯を食いしばる一瞬だけで全てが決まる
戦う日々なんてものは、もう終わりにしなさい。
” 当主様が必ず みんなを 背中に守ってくれるから “
だから、
” しっかり前を向いて 未来を歩きなさい ”
(万里)「 ” いいわね?久遠… ” 」
(宗近)「 ………、おふくろ」
(七瀬)「何?」
(宗近)
「 おふくろはもう、これ以上無理すんな、ここに残ってあとは俺達が全部やっといてやるから 」
「 体に響くぞ。」
(美剣)「 親父もそうしろよ 」
(久遠)
「 お、おい二人とも… 」
(樹里亜)「 ちょっと宗近、美剣まで 」
悪気はなく親の体調を気遣ってか息子なりに不器用な言葉を掛けたつもりが、
(七瀬)
「 バカッ そう言う大きな口を叩くのは、もっと実戦経験を多く積んでから言いなっ!あんたにゃまだ早いよ。」
(亜乱)「 美剣、お前もだぞ。己の実力の過信も調子に乗るな 」
まだ現役バリバリの親たちに絞られた二人は顔を見合わせてやれやれと笑った。
(夜鳥子)
「 親子の心境というのも中々複雑なものだな…。」
(当主)「 ーー… まぁな。 さぁ、行くぞ 」
ガゴンッ !
「 ギギイイイイイーーー…。」(開く扉)
ザッ、
一歩足を踏み入れた瞬間、全員これまでの表情が一変した。
(全員)「!!」
(晴明)
「 …………… ようこそ皆さん、これはまた一族総勢で夜鳥子も連れてきましたね。」
「 丁度良い時に来てくださいました。」
(???)
オオォォォォッ…。
(夜鳥子)「!! 晴明っ!! 貴様そやつは…っ!?」
(宗近)「 何だあいつは!? 」
(京華)「!?」
(美剣)「!!」
(晴明)「 えぇ、そうです。ようやく封印からの解放が叶い、お会いする事が出来ました 」
「 我が… 父上。」
(当主)「!!」
(亜乱)「 なっ…!?」
(久遠)
「 晴明の父親って……… あいつは…っ!」
(美剣)「とんでもない化け物じゃないか 」
(当主)「 ( …奴の、父だと?) 」
特別な五芒星の魔法陣を張った結界の中で今にも完全な封印から出そうな勢いで晴明の父だと言われた化け物は半分巨大な腕を出して活発に動いていた。
(夜鳥子)「 ッ!! 分かっているのか晴明っ、そやつはもうすでに貴様の父親などではない 」
「 … 400年前、己の欲望を叶えるために鬼頭の面に宿る狂気に蝕われ、お前の肉体を奪おうとした化け物なのだぞ!!」
(夜鳥子)「 二度と復活出来ぬよう わしが封印した筈なのに、今更 奴と対話など叶うはずもなかろう!」
(晴明)
「 フフ.. 冷たいですね、貴方は。えぇ、対話など出来ずとも彼の思念の中を探ることは容易でした。ようやく、あなたと親子三人揃ったのですから今度は私が父上の願いを叶えて差し上げようと思いましてね…。」
(当主)「 …! 晴明っ! ! まさかお前… 」
(七瀬)「 あんた、天界の黄川人が話していた父親と同じことをやろうとしてんじゃないでしょうね!? 」
(夜鳥子)「………ッ!、やはり貴様・・っ 」
(晴明)
「 そのまさかですよ、夜鳥子との関係、自分の親との関わりを探るうちに私も段々彼の成そうとした考えに興味がわきました。」
「 ですが今や、こんな姿では父上の成そうとされた実現など永久 叶わないでしょう。」
「 それならば、せめて私がと思いましてね、ようやく真実を知れたのですから 」
(晴明)
「 … そう 私を殺したのは夜鳥子、貴方だったとはね..。」
(亜乱)「!? 夜鳥子、お前が…?」
(夜鳥子)「……… 」
──── 400年前、
晴明の父親は人と神と、冥界の三世界統一に向けて己の欲望を叶えるべくその一つの手段として実子だった赤子の晴明の肉体を奪おうと不穏な異変を見せ始めた。
この時、すでに自分の子供の存在に危険が迫っていることに気づいた夜鳥子は、自ら我が子を手にかけ、反魂の儀によって可能な不死身の体に転生させる為に晴明を再びこの世に蘇らせた。
その後、晴明から引き離した夫の狂気との死闘の末、二度と復活出来ないよう封印を手掛け禁断の式神の使用による消耗で彼女も長い眠りについた。
天界にとってこの一連の黒い歴史は男神の名を抹消。夜鳥子を罪人とし厳重に監禁した上で幕を閉じたのである。
晴明は何も知らないまま……
──── 地上界 ────
(気を失う)
(晴明)「 ーーーー …。」
1人孤独に蘇った彼の体には五体の式神達の契約印が刻み込まれ自分を守るようにと母親の命令をうけた式達の中には太照天昼子の元を離れた天界の神がいたという。
(晴明)
「 …… おかげで何もかも私の存在意味は初めて、父上と同じ事を成し得てこそこんな体になった甲斐がありました。貴方には感謝しなくてはね…。」
(京華)「 ……、どうかしてる… 」
(当主)「 …… 」
ギリッ..‼︎
(樹里亜)「 結局 あんたはただ、親の過ちを歪んだ受け入れ方しか出来なかった人間、…いいえ、今、存在そのせいであたし達みんなの命は…っ 」
(久遠)「 勝手なこと言いやがって… 親の間違った背中にすがって父親の代わりになる…? ふざけた寝言に甘えるのも大概にしろよ!! 」
(京華)「 同情なんかしないわ。あんたのしてきたことは、誰にだって許せない罪を平気で犯してきた父親と何にも変わらないじゃない 」
(夜鳥子)「 …… やはりお前という奴は力ずくでも戦う以外に止められる選択肢は無いようだな。 」
(晴明)「 邪魔はさせませんよ、夜鳥子。それにあなた方も 」
「 フフフ… あなたが私にくれたこの式神、」
バキバキ…バキ…ッ
(当主)「!? 」
「メキキ.. ッ‼︎ 」
(夜鳥子)「!」
(晴明)「 式神【アスラ】の攻撃に耐えられるでしょうか? 」
(晴明)「 すぐには殺しませんよ、母上。」
(背中に巨大な蜘蛛の足が生える)
(コーちん)
「 気をつけて!夜鳥子様、みんな!!」
すぐさま全員戦闘体制に構えた。
チャキッ!(武器)
(当主)「 行くぞっ!!これが本当に最後の戦いだ!晴明の首、全員死ぬ気で討て!! 」
… バッ!
「 ──────────────────!!!!」
激しい掛け声とともに彼らの最後の死闘が今始まった。
…… (とある天界の一族の氏神)
(???)「 太照天昼子様、」
(太照天昼子)「 ついに… 始まりましたね、貴方がたにもこの戦いには力を借りなければなりません 」
「 最後の一族の希望、彼らを失うわけにはいかない 」
(太照天昼子)
「 その為に氏神としてこれまでずっと一族の行く末を見守ってきたのですから 」
(霧が晴れる)
スゥ…
(太照天昼子)「 どうか力を貸してあげてください 」
───────…、