ヒュゴォォッ!!
(庇うコーちん)
「!?うわぁぁぁっ!!」
(七瀬)「 コーちん!! …!?」
(雪崩) .. !
ドドォッ!‼︎‼︎
(亜乱)「 七瀬!!」
(抱える)
ガバッ!
(七瀬)「 亜乱っ!?」
(苗場ノ白雪姫)「そぉ~れ!ぽよ~ん!」
” 吹雪の舞!!” (3撃目)
(亜乱)
「 ーー・・ッ!このっ..!!」
ブチッ .. !
胸の首飾りの玉を強引に引きちぎると、
亜乱は、最後の手段に踏み切り
玉を空高く投げつけた。
(亜乱)「 ( 母さん!) 」
※” 七光の御玉!!”
【七光の御玉】
(※親神の力を借りられる)
キイィン‼︎
【氏神・麟子】「!!」
亜乱の母親 麟子は少しの間、敵の動きを止め行動不能にした。
バシンッ!!
(4体全員)「うぎ…っ!?動…けない…!」
ズザッ
(亜乱)「うっ… ! 」
(七瀬)
「 亜乱っ! 亜乱!!しっかりして…!」
(亜乱)「 …七瀬、俺達の負けだ。退却しよう、万里姉ちゃんも季子姉もみんな限界だ… お前だって 」
(七瀬)「 !? ───────── … 、..ッ ! ! 」
(刀)
カシャン・・ッ
(七瀬)「 …う・、うぅ..っ ! 」
(亜乱)「 ……。」
初めての敗北だった。
「ボウッ ! … 」
── (時の炎) ──
討伐期間、二ヶ月が終了した。
「 ──・・ザザ…。」
(船で帰還)
………………。
1ヶ月前、
(当家の屋敷)
(鳥) ピチチチツ… 。
──── 修練場 ────
(陸)「 …ーーー、」
(弓) ギリリ..ッ。
「ビュンッ!!」
ストッ。
(的外れ)
(陸)「 …。うーん…、」
(当主)「 今のは 指先近くで取り懸けをしたからだ。弓の荷重が中指先に集中してそうなると、余計な手首の力みから肘や背中に意識が届かず引く力を上手くつかうことが出来てないんだ。」
「 弓技は手首で引くな、肘が基本だ。指先に力が入る取り懸けは 初段のときに肘を意識して持っていけてないと、この先 後の引き分けや離れの動作全てが崩れてくるぞ。」
(陸)「 うっ!重い… 」
ググ…ッ
何度も矢を指先にかける取り懸けの形を直してやりながら陸の様子を見た当主様は、
(当主)「 一度、撃たなくていいから父さんのをよく見てるんだ 」
(陸)「うん。」
(当主)「 ……、」
ギリィィィーー..。
「ヒュンッ!!」
ガッ!!(的確に命中)
(陸)「!?」
(当主)「 懸け口十文字がちゃんととれていれば離れの動作は一つもブレていないだろ?」
「 会のねらい目は頬付、胸弦をつけた右目で見て、弓の左側が的の中心の半分に来るように持っていかないと矢の方向が平行にならなくなる 」
(陸)「 平行に ? 」
(当主)「 最初は難しい。…弓の射的は、自分でねらい目を調節しても、懸け口の指の使いによって矢と弓の方向が的から平行線上にあるとは限らない。
訓練の内にどれだけズレているかを見てやらないと正確なねらい目を抑えることが出来ないからな、
(当主)
「 だから初めは一緒にやるぞ 」
(横に並ぶ)
(陸)「 ……、」
(弓矢)
ギリ…ッ
(当主)「 人差し指の力を抜くんだ。」(手を添えながらの親指と弦の縣口十文字交差する矢のわずかな固定のズレを修正する)
(陸)「 くっ… 」
(矢)
キリィィィ…. ーー・・、
(当主)「 ……。」
十分に矢を引いて限界まで達した時だった。
(手を離す)
(当主)「 今だ、」
(陸)「 ──っ!!」
「ギュンッ‼︎! 」
…バスッ!!
「ビイィィィィン…ッ」(命中)
(陸)「 …、..!?」(びっくりする)
「 あ… 当たった、父さんっ‼︎ 当たった!」
(当主)「 今のが弓構えにおいて基本の形になる。これを頭の中でちゃんと感覚を覚えるんだ。いいな? 」
(陸)「 ……! うんっ!」
まだ未熟な内は中々上手くいかなくなると、父さんは何度も何度も癖や形を直してくれながらどこがどう悪いのか色々とサポートしながら的確に教えてくれた。
そして、初めの一ヶ月が過ぎて最後の訓練の二ヶ月目の月日が少し経った頃、
(当主)「 よし、次 」
(陸)「 ….ーーー、」
(弓矢)
ギリッ…!
「ギュンッ‼︎‼︎」
ドスッ!
的の真ん中ではないものの、わずかその右斜め上まで命中していた。
(当主)
「 これが最後だ、敵の大将の首だと思え 」
(陸)「 ……、」
(息を深く静める)
(陸)「 … ───。」
明らかに一ヶ月前の陸とは思えない落ち着いた姿勢だった。
(陸)「 ……….、」
(思い出す父の言葉)
─── “ 大丈夫、お前なら… ”
(陸)
「 ( 見える、的のねらい目が ) 」
” 平行線上に… ”
ギギ..ッ
(当主)「 ……。」
“ ちゃんと立派な弓使いの素質を確かに持っている ”
(嬉しそうに微笑む)
(当主) “ お前は父さんの子だからな ”
(陸)「 …!!」
「ビュンッ」
ズガッ‼︎
「ビイィィン…ッ! ……。」
ど真ん中に命中した。
(陸)「 よしっ!」
(当主)「 ───・・、」
信じてた表情に安心の微笑みが浮かんだ。
その目の前で、
いま嬉しそうに後ろを振り返る陸の笑った姿を見ながら当主様は最後の言葉を口にした。
(当主)
「 この二ヶ月よく頑張ったな陸、今日から正式にお前は当家の討伐部隊に任命する。……、
「 合格だ。」
(陸)「 ──…僕、やっと父さんたちと一緒に…みんなと戦えるんだね!」
(当主)「 ……、」
カタン…。
(弓をしまう)
(当主)「 ( これでいい…。) 」
“ 陸もやっと・・”
“ これからの道を一歩、ようやく踏み出した ”
(当主)「 ( 父上…。) 」
“ あなたから 託されたこの名弓もようやく自分の息子に…… ”
(陸)「 ねっ ね、父さん あともうちょっとだけやってっていい?」
(当主)「 あぁ、何百回、何千回でもいい。これに慢心せず、何度でも腕を磨いて日々精進するんだ。」
息子の成長が
何より今の当主様にとって一番幸せな時間だった。
(当主)「 ーー…。」
(うっすらと首に蛇形のアザが浮かぶ)
───その日の夕方、
氷結道から帰還した討伐部隊はみんな無事に生還して帰ってきたが、誰一人顔を上げない
重い雰囲気に当主様は隊長の万里に全てを聞かされた。
戦果は上げられず敗北したと…
(当主)
「 ……そうだったか。 …… 」
(万里)「 申し訳ありません当主様、私達が付いていながら亜乱や七瀬に一番無理をさせたあげく、二人には手負いまでさせてしまいました、全て隊長たる私の責任です。」
(季子)「 万里だけじゃない、私も不甲斐なかったの 」
(コーちん)
「 当主様… あの、みんなの事叱らないでいてあげて。皆すっごく頑張ってたんだけど、本当に敵も強くって… 」
(亜乱・七瀬)「 ……。」
(亜乱)「 違う…、俺は自分の実力不足で敵を甘く見ていたんだ 」
(陸)
「 …お兄ちゃん、お姉ちゃん… 父上…。」
陸が心配そうに当主様の顔を見上げると、
(当主)「 …いや、そんな事はもういい。それより、皆よく無事に帰ってきてくれた。万里、隊長の責任は討伐部隊の生還にある。」
「 誰一人死なせずにお前はちゃんとその責務を果たしたんだ、何も恥なくていい。」
(当主)
「 みんなも良くやってくれたな、今日は遠征での疲れをゆっくり癒して休むんだ 」
心の傷を気遣うように当主様は万里の肩を優しくたたいた。
(当主)「 お前もご苦労だった。ありがとう、万里。 」
(万里)「 当主様…。!?」
(首のアザに気付く)
何も言わず当主様はいつもの様子で部屋を出て行った。
(万里)「 ( そんな…っ ) 」
・・ズキ…ッ。
(当主)「 …! ───・・、」
(首を気にする)
(当主)「 ……。」
今は余計な心配をさせたくはなかった。
……………………………、
二月中旬。
その日の朝はいつもと違う夜明け前だった。
(外のたいまつが静かに燃える)
パチッ…!
(コーちん)「 急げ!急げ!」
「バサァッ!」
「 …………、」
..シュル。
(薙刀士専用の討伐衣装に着替える亜乱)
その横で
(陸)「 う…んと、あれ…?」
(弓使いの討伐服の着付けがイマイチよく分からない)
(陸)「 …???」
(亜乱)「 ? あぁ、陸ほら貸してみろ。ここの腰周りの帯と紐はこうやって巻いて結ぶんだよ。ちゃんと結んどかないと後で討伐の時が動きにくいぞ、しっかり結んで…っと よしっ! 」
キュッ!
(亜乱)「 前の襟の紐止めはちゃんと止めてあるな?履物は後で教えてやるから 」
(少し緊張気味の陸)「 う…うん。」
(亜乱)「 その弓使いの討伐服、よく似合ってるよ陸。初陣の時の姿ってみんな新鮮だよな、俺の時もそうだったけど、みんな初陣の子の晴れ舞台は家族の祝い事のように喜んでくれたっけ 」
(陸)「 そうなの…?」
(亜乱)「 緊張もするんだけどな、けど周りの皆が心配いらないって顔してくれるからお前も訓練で積んできた通りに戦えばいい。難しいことは俺達に任せておけ 」
優しく励ますかのように亜乱兄ちゃんは僕にそう言ってくれた。
(陸)「 うん。ありがとう 」
(亜乱)「 それと陸、出発前に当主様にもその姿一度見せに行っといたほうがいい。きっと喜んでくれるよ、お前の初めての討伐衣装 」
(陸)「 え.. でも 父上も後で一緒に行くのに? 」
(亜乱)「 バカ、当主様だってお前の実の父親なんだから自分の子供の晴れ着姿見たいに決まってるだろ。ほら、行ってこい 」(背中を押す)
(陸)「 う、うん…、………。」
何となく緊張と気恥ずかしい思いを抑えながら父の部屋の前までやってくると、
父さんとコーちんの話声が中から聞こえてきた。
(陸)「 ーー…、あれ?」
(コーちん)「 …当主様、本当に今回の討伐はどうしても出陣するの…?」
(当主)「 あぁ、今日は陸の大事な初陣だからな。それと… お前も首のアザのことは心配しなくていい、今のところもう少しは持つだろう 」
(コーちん)「 …だけど、」
コーちんの様子はいつもと元気が無かった。
(陸)「 ( 父上とコーちん、大事なお話してるみたいだ…。) 」
どうしようかと部屋の前でためらっていた時だった。
(???)「 あら…?」
向こうから支度を整えた万里と亜乱が廊下を歩いてきた。
(亜乱)「 って 陸、こんな所でずっとつっ立ったままで当主様にちゃんと挨拶してきたのか?」
(陸)
「 あ.. 亜乱兄ちゃん 万里姉ちゃん… その… 」
(万里)「 亜乱から聞いてるわよ、全く...しょうがないわね。ほらっ 」
面倒見がいい兄と姉のような二人に背中を押されながら陸もついに意を決したようだった。
ガタッ。
(当主)「 ん?」
(陸)
「 ち.. 父上、失礼します…。」
「 ーーーー… 」
陸の後ろで万里と亜乱も双手礼し入ってくる。
(万里)「 …当主様、討伐部隊の身支度が整いました。」
(亜乱)「いつでも出陣出来ます。ーーーー、陸、(小声) 」
(陸)「! ち、父上… 」
(コーちん)「 陸様?」
(当主)「?」
(陸)「…ッ」
” ちゃんと言わなきゃ ”
(当主)「 陸…?」
(畳に手をついて一礼)
(陸)「 ──歴代、現当主の息子としてまだ未熟ではありますが、………..
当代の次期あと目に恥じぬよう これから立派な戦いに努める所存であります。だから… その…… 」
「 ーーー…、」
言い慣れない難しい言葉に、
陸が顔を赤くしてしまってる横で 亜乱と万里は、心配そうに見守っていた。
(万里)「 …… 」
(亜乱)「 ( 陸… ) 」
(陸)
「 逃げないよ。 臆さない強くなるって自分に約束したんだ。 晴明は、…皆や父さん達と絶対に、
「 僕が討つ。」
(当主)「 ..!」
(驚くコーちん)「!!」
はっきりと告げた、息子の思いがけない立派な一言に当主を含めみんな驚いた。
(陸)「 ……。」
(万里)「 陸 、」
(亜乱)「 …お前・・ 。」
(当主) (一番驚く)
「 ──────.. 。」
きっと、
…今はまだ
この子は将来とんでもない獅子に化けるのではないかと内に秘めた計り知れない強さを時折、感じさせられた。
(当主)「 陸、」
(陸)
「 …?」(頭に手を置かれる)
(当主)「 ..、“ (生きている内に) ” お前の成長を、この目で間近に見られたこと、嬉しく思う。……
ようやく今、お前の成長過程があって これから立派な力をつけていく、まだこれからだ。焦らずしっかり大地に根ざすんだ 」
「 いいな? 」
(陸)「 うんっ。」
父親としても当主としても二人の言葉が同時に聞こえた気がした。
(亜乱)「 ( 良かったな、陸..。) 」
(当主)
「 ────… 時間だ、皆準備はいいな?」
(三人)「 はいっ 」
(見送る季子と七瀬)「 当主様、みんなも気を付けて、..ご武運を。行ってらっしゃいませ 」
コーちんもイタチ姿で当主の肩に乗った。
(当主)「 晴明に奪われた祭具を見つけだし、これより百鬼祭りの居場所を突き止める!ーー…出陣だ!! 」
(コーちん)「 当主様、ご出陣っ!! 」
(万里)
「 行くわよ、亜乱、陸。」
(陸)「 …!」
父さんにとってこれが最後の戦いとなった。
……………………、
────────────────────。
ピチョン…ッ 。
(龍穴鯉のぼりの滝)
「ザァァァァァアーーーーーーッ…!」
(静かに眠る黄川人)
「 ………。」
“ …人、”
(黄川人)「……。」
“ ………川人、”
(黄川人)「 ───…。」
(???)「 黄川人ったら。」
(黄川人)
「……、ーー..?」
ボンヤリと人魚のような人影が自分の名前を何度も呼びかけていた。
(ゆっくりと目を開ける)
(黄川人)「 ーー、…? なんだ 真名姫か。あっ、そっか、ここは君の聖地でもあったっけ? 元気にしてた?」
【※敦賀ノ真名姫】
(※天界の女神。かつて朱点童子に支配され黄川人と深い縁を持っていた元鬼女。)
「 おかげさまで。それはこっちが聞きたいんだけど。
でも.. 久しぶりね、黄川人。あなたがこんな所へ来るなんて、」
「 …何 考えてたの? 」
(黄川人)
「 ちょっとね、懐かしい夢を見てただけさ。昔のね……。ふわぁぁ~あ。・・ーーーー 」
(真名姫)「 フフッ。相変わらずその姿をしてる方があなたらしいわね、天界の神様だってらしくやってるじゃない。」