そこにはある特別な条件を満たし立派な氏神装束を身に纏った見覚えのある歴代子孫達が何人か並んでいた。
一族の身に迫る危険を案じ
太照天昼子の元に全員馳せ参じたのだ。
(太照天昼子)「 ………。行きましょう 」
………………………、
かつて 一組の男女が一族の始祖となる1人の子を産み その子の子供が親となり孫に伝えてく…
その時代に課せられた宿命の敵は鬼であり、
また神の子でもあった。
そして世代を越えてゆくにつれ
子供達は普通の人生を失った代わりに自分の後を託せる者達の血を絶やさない棘の道を歩み
呪いの元凶たる鬼の頭目を討ち果たす遺志を子孫達に伝え続けた。
たとえその子が倒れたとしても
またその子の子供が… 何百年にも渡りようやく宿命の楔を絶つことが出来たのだった。
──────── …。
あれから時代は、
過ぎる歳月を重ね一族の子孫だった者達は、
背景に映る彼らの勇姿を知ることもなく普通の生活をし、平穏な家庭を築いてきた。
やがて再び宿命に縛られるその時が来るまで
静かに… 血は眠り続けたまま…。
阿部晴明もこの世代の背景に映る宿敵であった。
「ドンッ!!!」
(京の都)
ビリビリ ビリ…ッ!!
周りの空気が凄まじい圧力にかけられているかのように重くのしかかる。
(都の人間)
「 なっ…! 何だ!? 」
(町人)「 見ろっ、あれは!!」
ザワザワ…。
(京の役人)「 あそこは京の…っ!? 」
(役人)「 御所じゃないか!? 」
「 ゴゴゴゴゴ…………。」
(暗雲の雲が次第に京の都全土を不気味に覆う)
「 どうなってる… 」
「 …!? 」
騒ぎに気付き兵士たちが次々と駆けつけて来た。
バタバタバタ…ッ !!
「 晴明様っ!!!」
(当主)「!」
「 ( 検非違使達…!? ) 」
(夜鳥子)「 バカなっ!お前達、何故ここへ来た!? 」
(晴明)「 ぐっ…!!ぐわあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー ッ!!!」
「 ーッ!!鬼…っ頭 貴様っ!!私を……ぐっ…!ガハッ!!」
(???)
” コノ男ノ肉体ト魂… 貰イ受ケル ”
(夜鳥子)「 その声は…っ!?貴様なのか!? 」
「■■■■■ッ!!」
(全員)「 …!!」
ゴゴ… 。(雷雲)
(■■■■)「 ヌエコ…… モハヤ全テノ神 、 コノ世ノ人間ハ、我ノ前二無ニ帰ス…。」
(夜鳥子)
「 …!!晴明を奪って完全復活したか…っ 」
(兵士)
「 せ.. 晴明様が あんな化け物に……… 」
(コーちん)「 当主様、」
(当主)「 これは俺達一族の戦い 邪魔だ、兵を退け!」
(兵士)「 ーー…!!こんな化け物、言われずとも…っ 退け!!退くのだ!! 」
(全員一斉に散る)
だが、
(雷)「 ─────────────────!!!」
(兵士)「 ひっ! 」
ドオォオンッ !!
次々と激しい雷が都の建物を襲い破壊してゆく。
(雷)「!! ! …!!!」
ドガァッ !!
「バキンッ…!!」
ボウッ!(火事)
(逃げ回る町人)
(亜乱)「 ーーー… 、」
人々の叫び声が…
京の都は完全に恐怖に陥っていた。
ズキン…ッ。
(当主)「…… 」
” 父上… ”
いつの頃からか先代の父を失って以来、時々陸の背中はあの時、若宮が自分の命をかばって鬼頭によって受けた傷と同じ場所に痛みを感じるようになった。
しかしそれは不快な痛みというよりもむしろ自分を守ろうとしてくれた父親の存在が失われずに陸の中で生きているかのようだった。
肉体は滅んでも魂は晴明への打倒悲願を掲げ先祖達は再び子孫達の元へ光となり力を貸す
(とあるひとつの魂)
ーー …ヒュンッ!!
(コーちん)「!? 当主様っ、あれ何だろ?何か来るよ!」
(当主)「!?」
───────── ─── … ……
(流星)
「キイィンッ!!」
カァッ!!
まばゆい光の集合体が膨張し、周りの景色を白く包み込んだ。
(夜鳥子)「 うっ…!」
(美剣)「 ッ! 何が起きたんだ!? 」
(驚く当主)
” 夢、なのか….? ”
(亜乱)
「 七瀬、気付いたか?この光が放つ気配って、」
(七瀬)「 えぇ、私達でさえ会うのは初めてなのにこの威圧感… 」
(宗近)「 当主様? おふくろ…?? 」
(何も知らない樹里亜や美剣達)「 …?」
(■■■■)「 ……。何者ダ 」
「 …………、」
その人は、
自分と同じ討伐衣装を纏い存在自体がこれまでに無い偉大さを物語っていた。
(当主)「 ( あのヒトは… ) 」
(目を見開くコーチン)「 ーー…ッ!! しょっ…!」
(???)「 ……。」(顔を上げる)
「 初代当主様っっ!!」
初代弓使い当主【千代丸】。
(夜鳥子)「 ………… そうだ、わしは ・・・」
「 ─── この者達には、見覚えがある 」
第3代目当主
【翡翠】。
第4代目当主
【創史】。
第8代目当主
【甲雲】。
第10代目当主
【若宮】。
そして、当主達以外にも太照天昼子と共に天界へ昇った氏神の彼らも地上界へ降り立っていた。
(千代丸)「 “ 子供達よ、我ら一族 宿命悲願今ここに ” 」
キィンッ!!
これまでの歴代先祖達がみな集結した。
その中でも、
(七瀬)「!? 父上 .. なのですか?」
(亜乱)「!? 母さんっ…!!」
(銀兵)「 …… “ 七瀬、” 」
一目会って俺の子だって気付いた..
(銀兵)
「 “ 樹里亜と宗近を立派に育てたんだな ” 」
(七瀬)「 っ!!父さま…っ 」
(麟子)「 あなたがいて、孫に会えて… ありがとう、亜乱 」(微笑む)
(亜乱)「 ーー… 母上、」
(京華)「 母様… 」
(季子)「 “ バカね 泣くんじゃないよ ” 」
(若宮)「 “ 陸 .. 、” 」
(当主)「!? 」
「 “ 今まで本当に、よく頑張ったな… ” 」
(当主)「 父さん…っ!! ──── … 。」
「 ( あの人は … ) 」
(右京)「 ……。」
ずっと前から初めてじゃないような
横顔が今でも忘れられない父の面影と重なる…
すぐに祖父だと分かった。
(太照天昼子)
「 さぁ、行きますよ 」
全員がそれぞれ最大奥義の構えに入った時だった。
「!!」
弓使いは弓使いの
槍使いは槍使いといった武器の闘気に引き寄せられ、同職業だった先祖達が今の世代達の元へ魂となって宿った。
「 “ 我らも共にゆく ” 」
そして今はいない壊し屋の魂は陸達に並び
全員奥義を構えた。
(■■■■)「 全テヲ無二…!!」
(初代当主)「 放てっ!!!」
“ 最大究極奥義っっ!! ”
(剣士・七瀬)「 両断疾風殺ッ!!」
(薙刀士・亜乱と美剣は併せ)「 双鋼旋刃斬!! 」
(拳法家・久遠)「 水龍乱撃爆!!! 」
(踊り家・樹里亜)「 金円水ノ宴っ!! 」
(大筒士・宗近)「 連炎暴風蛇!! 」
(槍使い・京華)「 崩山 大日陣っ!! 」
(夜鳥子)「 式神、アスラッ!! 」
ーーそして最後に
(初代当主と若宮、右京)
(若宮) “ … 陸、 行くぞ ”
(四人一体となる)
“ 全てを終わらせるために…っ ”
(陸)「 灼熱陸雨 三炎弓っ!!! 」
それぞれ歴代先祖達の力+(プラス)効果で一度に二種類の奥義を同時に発動可能にさせた。
(膨大な光の柱)
「 ──────────────────────!!! 」
(陸)「 …!! 父上っ!? 」
(七瀬)「 父さま!!」
(若宮と銀兵の魂)
──…! 、 ─────!!
(亜乱)「!!母上!?」
(久遠)「 母さん…っ!」
(麟子と季子の魂)
キィン!! … !!
(樹里亜・宗近)「!?」
(夜鳥子)「 どういう事だ…?」
先祖達はみな■■■■の元へ飛び込んで行く。
ーーッ!!
(太照天昼子)「 ………。」
(陸)
「 ーー… 初代当主様、」
(千代丸)「 “ …… 。さらばだ、子供達よ。” 」
(最後の魂)
キィィンッ!!
(■■■■)「 …!?ーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!」
(汚れが剥がれていく)
ザァァァァァァァァ………… ッ!!
(夜鳥子)「!!」
ドサッ!
「 …!、 ……。 夜鳥…子..。」
鬼頭の面をつけたままだったが肉体は晴明の体へと元に戻った。
そして懐かしいあの男の声が最後に自分の名をしきりに呼んだ
(■■■■)
「 夜… 鳥、子…… … 鳥子…… 。……いるのか..
お前が……… 見えないんだ…。」
(夜鳥子)「■■■■!! わしはここだ!ここにいるぞっ… 」
(■■■■)「 ….すまなかった・・ 夜鳥子… 。 私は… ただ.. お前と一緒に………… 晴… 明.…. 本当は… あの子に・・・」
(夜鳥子)
「 …もういい、■■■■。分かっている…、お前にだって間違いはある…。」
「 全く・・最後までバカな奴だ お前は… 。」
(■■■■)「 ーー… もう一度・・お前の声が聞けて… 良かった … ありがとう… 。 夜鳥… 子… ーーーーー … 。」
それを最後に男神は息を引き取った。
(夜鳥子)
「 !? …ッ!! うっ!、うぅ…っ!! ぐっ…!」
ーーー… 。(涙)
(夜鳥子)「 …ッ!! 、こんちくしょう!! 」
「!!!」
(■■■■)「 …….。」
決して取れる事の出来なかった鬼頭の面が持ち主の死をもって夜鳥子の手ではがされた。
(夜鳥子)
「 ….っ!! ホントに… どうしようもない、バカだお前は… 。だがわしは… あの頃の夫婦でいられたお前も嫌いでは無かったのだぞ… 。決してな 」
──────────────── … 、………
(薄れる呪いのあざ)
(当主)「!?」
(亜乱)「 アザが…っ!?」
(七瀬)「 消えたわ.. ! 」
(コーちん)「 !!、ねねっ 当主様っ!これってもしかして…?」
(美剣)「 親父… 」
(宗近)「 おふくろ 」
(当主)「 … あぁ。夜鳥子、」
「 …………。」
涙を拭いやがて夜鳥子は悲しみに決別し、微笑んだ。
(夜鳥子)
「 もう心配はいらぬ。御当主、お前達一族にかけられた晴明の呪いはもう消えている、」
「 これからは好きに生き、愛する者同士 子供を残して幸せな家庭を築くのも良かろう。」
(夜鳥子)「 良かったな。」
(全員)「 !!」
みんな心からの喜びに久しぶりに笑顔がこぼれた。
(樹里亜)「 母さまっ!」(七瀬に抱きつく)
ガバッ!!
(七瀬)「 ちょっ… ! ちょっと樹里亜ったら、……フフ。」
(久遠)
「 ーー・・良かったな、美剣 お前の親父さんも 」
(美剣)「 久遠… 」
(久遠)「 そんな顔するなよ、俺は嬉しいんだぜ やっと…やっと皆、平穏な日常の中で生きて暮らして行けるんだから。なっ?京華 」
(京華)「 えぇ、もちろんよ。当主様も皆もね 」
(当主)「 ───── ... 。」
「 ( 本当に全てが終わったんだな…. ) 」
(みんな空を見上げる)
「 ……… 、」
(夜鳥子)
「 礼を言う、御当主 」
(当主)「 夜鳥子? 」
(夜鳥子)「 本当なら彼らに言うべきなのかもしれぬが、… わしの代わりにあの男の呪縛を解いてやったのはそなたらの先祖達だ。本当に感謝している 」
(当主)「 そうか、じゃあ あれはやっぱり.. 」
父上達、初代当主様が…
(夜鳥子)
「 …… 晴明の事(魂)は、あやつはわしが昼子に頼んで神として祀り上げる。そうすれば一人もう迷うこともなかろう 昼子、頼めるか?」
(昼子)「!? うぇぇっ… とっ!そうきましたか… うぅ~んまた天界が荒れますね…これは。」
「 ま、しかし ここは私も最高神ですから、何とかしましょう 彼の身の上の保障は必ず約束します。」
(夜鳥子)「 そうしてやってくれ 頼む。……… 少し疲れた。わしはしばらくあの世で静かに眠らせて貰う 」
「 だが 御当主、」
(当主)「どうした?」
(夜鳥子)「 必要あれば、何かあったらわしをすぐに叩き起こしてくれて構わない。お前達とは縁あって本当の家族のように今まて過ごしてきた。いつでも力を貸そう 」
みんな名残り惜しむかのように彼女に別れを告げた。