美術大学に通うようになってから、先生に言われた言葉だ
『このくらいでしょうか?』
『まだ薄いですけど』
「うん?」
『これでも昔に比べればずっとマシになったんですよ?』
「……そうだな」
確かに、以前に比べるとかなり安定しているように思う――いや、これはきっと、俺が慣れてきたということなんだろうが……しかしまぁ、なんだかなぁ、この……
「どうしました?何か不満でも?」
「……いえ、なんでもありませんわ」
「では、これで登録完了です」
「ありがとうございます、ミスズ様」
「仕事なので礼はいりません」
「そうですか」
「それでは私は次の方を見に行きたいので失礼します」
「えぇ、ご苦労さまです」
「お疲れさまでした、セツナさん、キサラギさん、カグヤさん」
『おつかれー』
『うぅ~緊張しましたぁ』
『うん、これでよし』
作成できたキャラを確認して、満足げにうなずく少女がいた――もちろんそれは、きさら自身だ……つまり、これはゲームのキャラクターシートなのだ!そしてここはゲームの製作会社の会議室であり、目の前にあるパソコンモニターには、彼女が作成したキャラクターのステータス画面が表示されていたのである……彼女の名前は「きさら」
年齢は17歳身長165センチ体重45キロです髪型はセミロングで色は白に近い灰色の瞳孔は茶色の虹彩異色症(オッドアイ)の設定です性格は正義感が強く自分に厳しい努力家で誰に対しても平等に優しく相手の立場に立って考えることができるけど時々頑固な一面もあり融通がきかないところもあるけど思いやりのある優しい心の持ち主で他人のために怒ることができるような人物設定でお願いします「……はい?」
そのメールを見たとき、俺は思わず間抜けな声を出してしまったと思う――何しろ『あなたが作成してくださったキャラクターの外見は完璧でした!あなたのことは忘れません!』なんて書いてあったんだから当然だ……俺だって最初はイタズラかなにかかと思ったくらいなんだし……だけど差出人はあの『I'm』の連中だし、内容にも間違いはない……つまりこれは本物ってわけで…… それなのに、俺は素直に喜ぶことができないでいた……