飯焼き3※以下のネタバレを含みますのでご注意ください 【0】プロローグ その日、私は運命に出会ったのだ―――
その日、私は人生で初めて一目惚れというものを経験したのかもしれない―――
私が所属しているアイドルユニット【Knights】は、今をときめく人気アイドルグループである―――
メンバーのほとんどがイケメン揃いということもあって、デビューして間もない頃から爆発的な人気を博していたのだけれど、中でも私が最も注目していたのは、センターを務める瀬名泉くんだったのよね―――
すらりと伸びた手足に、陶器のように白い肌、まるで彫刻のような美しさを誇る容姿は、まさに王子様そのもの―――
歌はもちろんのこと、ダンスのキレも抜群で、パフォーマンスには一切の妥協を許さないストイックな性格も好感が持てたのよねぇ―――
そんな彼が私の通う高校に編入してきたときには、心が躍ったものだわ―――
クラス中の女の子たちが彼に熱視線を送っていたのは、きっと気のせいではないと思うのだけれど――彼はそれを当たり前のように受け流して、私に声をかけてきたりするものだから困ったものである――それでも私はやっぱり、彼のことが好きだったりしたのです(笑)
まあ、その、あれですよね?恋をするなら、まずは相手をよく観察するところから始めるべきだと思ったんですよ、はい……(苦笑)
私の場合、その対象は彼以外にありえないというだけです、はい……メルク(いずみさんの背中を見送っているのです)
メルク(なんだか、少し元気がないように見えるのですよ?)
メルク(やっぱり、いずみさんも、本当は……)
メルク(あ、あれ?なんか、変な感じになってるのですよ~っ!!)
メルク(どうしよう、どうしたらいいのですかっ!?)
メルク(わ、わたしは……)
メルク(私は……!)
メルク(私は、いずみさんに、笑顔で帰ってほしいですっ!)
メルク(私は、いずみさんを、大好きですっ!)
メルク(いずみさんが、どんなに辛くても、悲しくても、それでも笑顔を崩さない理由がよくわかったのです……)
メルク(大切な人のために、自分の感情を押し殺してまで笑える強さがあるからこそ……)
メルク(だからこそ、あんなに魅力的なのですね……?)
メルク(私もいつか、いずみさんのようになりたいのです……)
―――それから、二週間後 メルク(泉さんは宣言どおり、次の日から学校に来なくなったのですよ……)
メルク(もちろん、理由はわかりません……)
メルク(でも、きっつい表情は一瞬だけですぐに笑顔になったのですよ?)
(そしてそのまま立ち去っていくのです)
メルク(なんだかんだ、面倒見がよくて優しい人なのですよね、いずみさんは……)
メルク(さぁて、そろそろ次の町に向かうのですよ~!