恋の記憶
ヘキサルト「あっはっはっは、ごめんごめん! 顔を見たら嬉しくなっちゃってさー。」???「『ふんっ、相変わらず能天気でいいな、お前は。
だが俺だって負けてはいない。
お前のような、中途半端なヤツよりはな。』」
ヘキサルト「また怒られちゃうかなって思ったんだけどね。
思わず言っちゃったんだ。」
ヘキサルト「『あなたと一緒に踊れることが嬉しいです。』って。」???「『・・・・・・。
そろそろ時間だな。じゃあな。
・・・・・・ああ、そうだ。俺はあの時―――???「『よし、わかった。こうしよう。俺の動きをよく見てろよ。』」
ヘキサルト「そう言って、私の両手を持って、くるっと回し始めるんだよ。」???「『ほら、できただろう。これならもう大丈夫だ。』」
ヘキサルト「それからは、また音楽に合わせて二人で踊る。」
ヘキサルト「最初の頃とは全然違って、息ぴったり。」
ヘキサルト「まるで最初からこうなることがわかってたみたい。」
ヘキサルト「『楽しいな。もっと早く、こうしていればよかった。』」
ヘキサルト「『うん。そうだね。これからはずぅっと、一緒に踊っていこうね。』」
ヘキサルト「そして、そこで夢が終わる。」
ヘキサルト「今まではそこで終わっていた。」
ヘキサルト「でも最近、続きがあるんだ。」???「『ありがとう。君のおかげで、僕の心の穴が埋まる。
これで僕は、明日からも頑張れる。
君は僕の希望だ。僕にとって、光なんだ。
だから、どうか幸せになってほしい。
君の未来が、明るいものであるように。
そう願ってる。』」
ヘキサルト「・・・・・・。」
ヘキサルト「これが、最近の夢の終わり方。」
メルク「それはつまり・・・・・・?」
ヘキサルト「次の段階に進むってことだね。」
メルク「次・・・・・・!?」
ヘキサルト「まだ、ちゃんとした告白とかされてないんだけど、 なんというか、すごく嬉しかったんだ。」
ヘキサルト「私と同じ気持ちでいてくれているんじゃないかって、そう思えて。」
ヘキサルト「・・・・・・。」
ヘキサルト「それに、あの人が誰なのか、何となくわかるような気がするし。」
メルク「ええええええ、なんでです?」
ヘキサルト「だって、すごい勢いで煽ってくるんだよ? そりゃ悔しくなるってもんじゃん。」
メルク「ヘキサルトさんの負けず嫌いが出たのです・・・・・・。」
ヘキサルト「それに、なんだか嬉しくもあったんだ。」
ヘキサルト「私が足を踏んでしまうたびに、少しだけ眉間にしわを寄せながら、それでも楽しそうに踊るんだよ。」
ヘキサルト「その顔を見てると、こっちまで楽しくなってきて、 自然と笑顔になる。」
ヘキサルト「『ほら、また笑っている。』」
ヘキサルト「『君は、笑っている方がいい。』」
ヘキサルト「その言葉を聞いて、胸がキュンとする。」
ヘキサルト「ああ、なんて素敵な人だろう。」
ヘキサルト「そう思った瞬間、音楽が止む。」
ヘキサルト「そして、真っ暗な世界に光が差し込む。」
ヘキサルト「気が付くと、朝になってるんだ。」
ヘキサルト「その人の顔は、もう思い出せない。」
ヘキサルト「だけど、忘れたくない。」
ヘキサルト「絶対に、覚えていたい。」ヘキサルト「そう思って、必死になって食らいつくんだ。」
ヘキサルト「すると、相手も私の頑張りを認めてくれたのか、 だんだん優しくリードしてくれるようになってきて・・・・・・。」
ヘキサルト「最終的には、一緒に踊ることができている。それもすごく楽しそうな顔で。」
ヘキサルト「・・・・・・って感じかな。」
メルク「いいなぁ・・・・・・。」
ヘキサルト「へっ?」
メルク「いや、なんでそこで怒るのですか・・・・・・。」
ヘキサルト「だって、私が上手ければ、こんな風に言われずに済んだんだよ!?」
ヘキサルト「『俺のほうがうまいな』『俺はもっとうまく踊れる』みたいな感じで!」
ヘキサルト「それに、相手の姿が見えないままだと、余計なことを考えてしまうし・・・・・・。」
ヘキサルト「例えば、『どうしてここにいるのか』、『どこから来たのか』とか・・・・・・。」
ヘキサルト「あと、一番気になるのは、やっぱり相手の姿が見えないことなんだよね。」
ヘキサルト「でも、怖くはない。
むしろ楽しいというか、心が落ち着いてくる。不思議な感じ。」
ヘキサルト「それからどれくらい踊ってたんだろう・・・・・・。
もうそろそろ終わろうって雰囲気になってきて、そこで初めて相手が男だってわかるの。」
ヘキサルト「意地になって頑張っちゃうんだろうなぁ。」
ヘキサルト「そしたら、いつの間にか曲が終わってるんだよねぇ。」
ヘキサルト「相手の姿はどこにもないの。
私の手を取ってくれた時と同じように、いつの間にかいなくなってる。」
ヘキサルト「そして目を開けたら、もう朝なんだよね・・・・・・。」
ヘキサルト「これが最近見るようになった、新しい夢。」
ヘキサルト「・・・・・・。」
ヘキサルト「あれ? なんでだろう・・・・・・。」
ヘキサルト「別に、私が上手になりたいとか思ってるわけでもないのに・・・・・・。」
ヘキサルト「気がついた時には、こう言ってるんだ。」
ヘキサルト「『次はもっと上手くなってやるからな!覚悟しろよな!!』」
ヘキサルト「って。」
ヘキサルト「そう言いながら、また手を取るんだ。
今度は、私の方から。」
ヘキサルト「そして、二人で笑いあう。
すごく楽しい時間。」
ヘキサルト「こんな時間が、ずっと続けばいいのになって、思うんだよね。」
ヘキサルト「そしたら急に、音楽が止んで、周りが真っ暗になるの。」
ヘキサルト「そしてそこで、私の目は覚めちゃうんだって。」
ヘキサルト「で、今日見た夢なんだけど、続きがあったんだ。」
ヘキサルト「今言ったように、音楽が止まって、真っ暗闇の中。」???「『また会おう』」
ヘキサルト「って、言われた気がする。」
ヘキサルト「もちろん、姿は見えなかったし、誰の声かもわからなかった。だけど、なんかすごく親近感があったんだ。」
ヘキサルト「そして、不思議なことに、その人は私の動きに合わせてくれるんだよ。」
ヘキサルト「こう動くと、次はこう来るだろうな、って。まるで鏡を見てるような感じ。」
ヘキサルト「だから私も、次はこれが来るってわかるようになってくるんだ。すると今度は、私がこう動いて欲しいんだなってことも伝わるようになる。」
ヘキサルト「そうやって、お互いの動きを読み合って、踊ってるんだ。」
ヘキサルト「・・・・・・もっと上手くなってやるんだから!って思うんだよ。」
ヘキサルト「そうやって頑張っているうち、曲は終わっていて、相手の姿はない。」
ヘキサルト「また明日、同じ時間にここに来ようって、そう思って、目が覚めるんだよ。」
ヘキサルト「・・・・・・。」
ヘキサルト「えっと、これが私の恋バナ。
どうかな、メルク?」
メルク「最高なのです!」
メルク「ヘキサルトさんの想いは伝わったのです! 絶対成就する