飯妬きー吾輩は猫である。名前はまだない。
そんな吾輩は今、どこにいるかと言うと……
「うわあああぁぁぁん!! ママァー!!」……絶賛迷子中です。
どうしてこうなったのか説明しよう。
俺がいつものように仕事から帰る途中のことだった。
家に帰るには電車に乗って二駅ほど行けばいいだけなのだが、俺は電車賃節約のため徒歩で帰宅していた。
今日も今日とて残業し、くたくたになりながら歩いていると、ふとあるものが目に入った。
「こんなところに神社なんてあったんだな……」
そこは小さいながらもきれいに手入された神社の境内だった。
普段なら気にも留めず素通りするところだが、疲れていたせいか吸い寄せられるように社務所へ足を向けた。
「すみませーん」
声をかけると巫女さんが出てきた。
その人は清楚な雰囲気をまとっており、黒髪ロングヘアーがよく似合っていた。(おおぅ、かわいい)
そう思った瞬間、俺は我に返った。
初対面の女性に向かって可愛いとはなんだ!失礼だろ!!……というわけで俺は急用を思い出したふりをしてその場を去った。
それからしばらく歩いていたのだが、突然目の前に白い霧のようなものが現れた。「うお!?なんだこれ?」
驚いて立ち止まるとその霧はみるみると濃くなり、あっという間に辺り一面真っ白になってしまった。
慌てて走り出そうとしたが、なぜか一歩も前に進めなかった。
「なんなんだよ一体!?」
焦って何度も進もうとしたが、やはり足を動かすことができなかった。
その時になってやっと気づいたのだ。これは霧なんかじゃない。何か得体の知れないものに閉じ込められているということを。
それからどれだけ時間がたっただろう? 相変わらず動くこともできず、何も見えない状況では時間の感覚などあるはずもなかった。
どうしたものかと考えているうちに次第に眠気が襲ってきた