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    どこで生れたかとんと見当けんとうもつかない……何でも薄暗いじめじめした所でニャーゴニャーウ鳴いていた事だけは覚えている……」
    ある日の事先生が大きなつづらを出して来た、生徒達はこれで一服やるのだろうと思って静聴していましたが、蓋ふたを開けると煙管きせるしか入っていませんでしたので大失望です、その代り先生は箱の中から小さい金だらいのような茶碗を出しました、それなら吸えるだろうと安心してまたも聞いているうちに先生は何所からかもう一本煙草を取り出されてそれで喫すった後マッチも消さずにこう云いました、諸君も一人前になる日にはこうしてはいけないよ、では御苦労さんでした、それから五分も立たないうちに出て行って仕舞しまいました、みんなはこれで授業は終わったと思い込んで元気に運動場へ遊びに出掛けてしまいますと向うの森の方で雷さまのお呼びになったような凄じさがします、これは大変だと森の上まで馳せ付けてみると、丁度雲が低くたれ込めて時々稲妻が光ったりするのでもう嵐の前ぶれではないかと思われている中にいきなり空一杯に大爆発が起こりそうな音と共に黒白の縞柄しまがらの電光が天地の間を引き廻されるようにして閃めいたり消えたりしたのですがその模様は非常に短かくまた奇抜でしたから普通の人にはちょっとわかり兼ねますが私の家内だけは例によって始終見ているために事の次第に気がついたものと見えて俄かに怖ろしい顔をいたしましたがすぐあとから心配そうに附添って来ました私の弟の小供たちは何時でも雷を見ると泣き出す癖がありましたが今日は不思議にも誰一人泣くものがないのですから驚いたと云えば驚天動地の結果でしたが、こんな時に泣けば雷様が来ると云う事がちゃんとわかっていたらしい様子なのです、すると今度は今まで隠れていた太陽が西の方から出るらしく東の方ばかり暗くなりかけていた空気の中に段々赤い色がさして参りましたがその間わずか数秒の間の出来ごとなので別にこれといって取り乱した風もない処がかえって不思議な感じを受けました、そのうちにだんだん赤い色が増しましていつ迄立っても同じ状態が続いているようでしたのでつい眼を上げて見上げると真紅の巨大な円盤状のものが我々の頭の上一尺ばかりのところに忽然と出現しているではありませんか、驚いて上を見上げたものは誰もないはずですが何分非常に小さく見えたのと距離の問題もありましてハッキリ見えるほど高くはなかったようでありまた空全体が余り明かる過ぎるためにただ漠然と赤みがかった色合が認められる程度に過ぎなかったためでもありましょう、しかもその赤みが非常に鮮やかであったため余計大きく見えましたのでしょうが、それが即ち先程まで我々がいた場所で、今朝方お話をした星雲でございます、この時はまだ大ていの大きさを判断し兼ねる程度でございましたが次の瞬間にはまるで火の玉のごとく輝いて来る様子が見られましたがそれについて別に異様とも思われなかったのかも知れませんが少しも恐れる様子を見せないばかりか一層面白がりだしたもののように記憶していますのは何しろその時の印象が非常なものだったために一種の超自然的な力を認めたような心持であったせいかもわからないと思います、それからいよいよ猛烈な速度で落ちてまいりました時はちょうど西の方がまだ一面暗くなったばかりであります上に向って斜めに照らされていますから妙な風に赤く見えまするがこれも間もなく元の状態に戻れば夜が明け切って朝の日の光線が射込む頃には前よりもずっと明るいに違いないと思っておりますうちに遂にどしんという凄じい音が響き渡ったと思った途端物凄く輝き出したかと思うとぱっと消えてしまいますと同時に空が明るくなったのです、この時はどう云うんでしょうか全く不意打ちのようなものでしたので私は思わずアッと叫んだくらいでございますが弟や妹の方はまるで気がつかなかったのかあるいは気づいていたとしてもその意味がわからなかったのでしょう、依然として平然たるものでしたから後から考えて見れば却って可笑しかったろうと思われるくらいです、もっともその時はそれどころではなかった事は勿論でして私どもは顔を見合せながらお互いに変にキョトンとした間抜け面を並べて突っ立っていたようでしたが突然我れに帰ったものは誰でも同じ事だったらしくすぐ二手に分かれてそれぞれ逃げ出そうといたしました時すでに前後左右上下どこを見ても真っ暗闇になっていて右にも左にも一歩進むのすら容易なことでなくほとんど方向というものを失ってしまいますとその次に来る現象はこれでもかというほどで、どこからともなく烈しい風が起こりますと我々は四方八方に吹き飛ばされまして再び立とうとすると足の下は地面ではなく大きな海のような深い闇で到底立つことが出来ぬほどの深さでございます、それでも懸命になって立とうとするのですが次第に手足を動かす事が出来ず全身が痺れたようになって意識だけが残っていますところへ恐ろしい声がきこえて来ました時には何ともいえぬ戦慄に襲われて夢中で神の名を念じましたところ不思議な力が働いたものとみえてやがて私
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    2022/01/14 9:10:09

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