家主スガナミ かんさつきろく僕が棲んでるスガナミんちは、家主のスガナミと僕と他のサメしかいない。そのスガナミも、あんまり家にいないし、帰ってきたと思ったら死んだように寝てるか、デスクでなんか用事してるか、不健康そうな顔して不健康そうなご飯食べてるとこしか見ない。
後は、洗濯物たたんでるとこ。スガナミは洗濯機持ってなくて、洗濯物を青い袋に入れて持って出ては、どっかで洗濯して帰ってくる。帰ってきたらベッドの上で、つまんなさそーな顔して、ぱたぱた洗濯物たたんでるんだ。
だけど最近、洗濯に行く回数が増えたよねってサメ仲間と話してたとこ。こないだまでは週2回とかのこともあったのに、ここ最近は帰宅したな、って思ったら、洗濯物もって出てくことが増えた。なんか洗濯の楽しさにもめざめたんだろか…。洗濯行ってから帰ってくるまでの時間もどんどん伸びてるし。
洗濯物たたむときも、前よりつまんなさそーな顔してないんだよね。別に洗濯物たたむのたーのしー!みたいなテンションではないんだけど、なんか、物思いにふけりながらたたんでる、みたいな。え、そんな毎日着てる服に物思いにふける要素あるっけ?とか思っちゃうけど、あれ、なんなんだろ。
ってサメ会議が開かれて、結局なんの結論もなくてしばし。ある日、洗濯から帰ってきたスガナミの目が赤かったことがあった。他のサメはざわついてたけど、あれ僕知ってる。スガナミは泣いたんだよ。泣くとねー、人間は目が赤くなるんだよ。サメには涙腺ないけど。お洗濯失敗したのかなぁ、ってジンベエザメは言ってたけど、それぐらいで泣くかなぁ。いつも通りベッドの上で洗濯物をたたむスガナミだったけど、なんてーか、物心にふけり度がいつもよりさらに高い感じだし、なんか考え事してて、「あぁ、そうか、僕は…」とか呟いてんのね。なんか最近は、いろんなスガナミを見るなぁ。前は不健康そうな顔して(以下略)
その次の次の日、昼前に帰ってきたスガナミは、いつものように洗濯物ひっつかんで出ていってたねー。今日はどれぐらいに帰ってくるかなぁ、なんて話してても、ずーっと帰ってこなくて、なんならこの後トーチョクだよね?え?スガナミどっかで倒れてる?ってサメたちでさすがにざわざわしはじめたころ、なんか洗濯に行ったとは思えないヘロヘロっぷりでスガナミが帰ってきた。
よかった!帰ってきた!っていいつつ、なんであんなにヘロヘロなんだろ、ってまたサメたちでざわついて。スガナミもいつもならなんだかんだすぐ洗濯物たたみはじめるのに、今日はベッドに倒れ込んで。スガナミにしちゃあ、なかなか珍しい。…ん?なんかしゃべった?うつぶせてて聞こえづらいけど「びっくりしたぁ…」って言った?いった、よね?何にびっくりしたんだろ…。
うつぶせてたスガナミが、ゴロンと体を回転させて仰向けになった。なんか心配そうにおなかのあたりさすってる。なんか落ちてる物でも拾って食べたのかな。いやー、スガナミだっていい大人だしなぁ。
「昼飯誘った日にお父さんとおじいさんが現れるとか、どういう日だ…。二人とも強面でサングラスとか、似合いすぎてて怖かったし」なんてぶつぶつ言ってる。お父さん?おじいさん?スガナミの?違うっぽいな…。にしても、スガナミがなんかビビる人たちとあって大変だったみたいなことは薄々わかった。でもなんでおなかさすってんの?
「生牡蠣、うまかったけど、あたらないといいな…。おじいさんは俺の牡蠣はあたらないなんて言ってたけど。まぁ、今から当直なら倒れるなら院内か…」
え、スガナミが生牡蠣食べたの?むかーし、3回食べて3回ともあたったからもう食べないって、牡蠣すすめてくれた誰かに超しおっしおな対応で話してたのに?なにがあったの?てんぺんちい?
うまかったのならいいけど、ホントあたらないといーね!でも、なんかスガナミがみょーに充実した顔してんだよね。てか、ほんとになんで食べたんだろ。どーしても食べないといけない理由があったんだろーな。しらんけど。
なんかよく分からないけど、やっぱりスガナミのなにかが動き出してる感じがある。それがどこに向かうのかは分かんないけど。でも、イソーロの僕たちサメとしては、やっぱりそれがスガナミにとっていいものだといいな、って思うよ。
しかし、とりあえずそろそろトーチョクの時間じゃない?って僕が時計を気にしたら、スガナミも気が付いたみたいで、慌てて支度して、洗濯物そのままにしてばたばたと出発していった。家にいたの、正味10分?うわぁ、タイヘン。でもまぁ、今日のなにかも、なにかいいことだったみたいだし、よいこと、なのかな。まずは当直、がんばー!