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    しおり
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    相縁奇縁誰かに優しく揺り起こされた気がした。
    目を開けた時、暁人は自力で寝返りすら打てない満身創痍の状態でベッドに横たわっていた。目を覚ましてから暫くは意識も記憶も混濁していて、長い夢でも見ているような気分だった。
    自分は渋谷の交差点で交通事故に遭い、丸二日意識不明で目を覚ますかすら分からない状態だったらしい。妹が居る病院に運ばれていて、妹の見舞いの時に顔見知りになった看護師が数人様子を見にきた。
    即死して不思議でない事故だったという。バイクで車と衝突し、暁人は身に着けていたヘルメットが吹き飛ばされるレベルの衝撃を受けた。アスファルトに全身を強く打ち、特に頭部は大規模な緊急手術を要する程損傷が大きかったそうだ。助かる見込みは五分五分、運良く一命を取り留めても目覚める可能性は低いと医師は判断したが、暁人は五十時間超の昏睡状態を経て何の前触れもなく目を覚ました。時間の経過と共に意識が混濁することも減り、事故当時の記憶が欠けてはいるものの会話は問題なく行えることに医師は驚きを隠せない様子だった。
    医師のその反応もやむなしと思う程暁人の状態は酷かった。
    車体とバイクの間で潰れた右脚は大腿骨、腓骨の単純骨折、脛骨は剥離骨折している。これらは綺麗な折れ方をしていたおかげで完治は可能である点は不幸中の幸いか。
    衝突した勢いのままアスファルトに体が強く叩き付けられた時、体の下敷きになって衝撃を受け止めた右腕は前腕尺骨、橈骨の複雑骨折、肘頭の粉砕骨折。指は親指の第一中手骨の剥離骨折から始まり第二基節骨、第三基節骨の単純骨折、第五中手骨にも亀裂骨折が認められる。折れた尺骨が皮膚を突き破る際神経を傷付けてしまっており、完治すれば動かせはするが、繊細な動作は難しくなるとのこと。
    右腕と同じく強い衝撃を受けた頭部は頭頂骨に五百円硬貨大の陥没骨折、右側頭骨に亀裂骨折、右眼窩底骨折。加えて強く頭を打った衝撃による脳震とう、MRI検査を経て硬膜外血腫の初期症状が見られ、そちらは搬送直後の緊急手術で既に処置が済んでおり経過も問題ないとのことだった。
    右眼球は失明こそ免れたが若干の乱視と極端な視力低下の後遺症が残った。
    脊椎の一部に亀裂骨折、及び軽度の脊髄損傷からくる左足の麻痺は生涯残ると宣告された。リハビリ次第で日常生活に杖を必要としない程度にはなるらしい。
    その他、頚椎捻挫を始めとした折れはしていないものの肋骨数本、骨盤の亀裂骨折、全身に及ぶ強い打撲とそれに伴う内出血、各所の筋挫傷等、中、小規模の負傷は数え始めたらキリがない。
    しめて入院予定期間一ヶ月超の全治三ヶ月、社会復帰のためのリハビリも含めると年単位でこの怪我や後遺症と向き合わねばならない。
    事故から生還しただけでも奇跡なのだと医師は繰り返し述べた。理解は出来るが、連日眠れない程の激痛と病室の天井を見つめることしか出来ない日々は苦痛でしかなく、「こんなに苦しいのなら助かりたくなかった」と思った回数は知れない。
    食事も排泄も自分一人で済ませることも難しい現状では、ただ諾々と治療を受ける以外に選択肢はなかった。
    ベッドの上で体を起こしていられるようになるまでが只管に長く、車椅子である程度の自由が許されてからはストレスもぐっと減った。白い壁や天井以外のものを見られる解放感は何にも代えがたかった。
    入院中、医師や看護師の言うことは従順に聞いた。投薬の副作用やリハビリは辛くて堪らなかったが、一日でも早く怪我を治したい一心で尽力した。
    事故からひと月後、無事退院の許可が下り暁人は世話になった看護師達に見送られながら慣れない車椅子で病院を後にした。
    何度も引き止められた。退院後に身の回りのことをサポートしてくれる親類が居ないことは既知であり、どう生活していくのかと心配されたが、暁人には無理を押してもやりたいことがあった。

    普段の倍以上の時間を掛けて帰宅して、部屋に一人きりになる。
    入院から今日まで、他の誰の目もない環境というのは酷く久し振りだった。
    友人に最低限部屋の維持を頼んではいたが、やはり長らく使う者の居なかった部屋の空気は沈殿し淀んでいる。
    暁人は徐ろに左目を掌で覆った。途端に視界が滲むようにぼやけて歪む。不快感に眉根を寄せつつも、暁人は右の視界のみで周囲を見渡した。
    事故の怪我か、治療中に感染したのか、はっきりとした原因は分からない。いずれかのタイミングで暁人は右眼のみに虹彩毛様体炎を発症していた。
    ステロイド薬の点眼を行い、炎症そのものは収まったのだが、後遺症により視力の低下と共に虹彩の色が変異しており現在暁人の右眼は左側とは異なる色をしている。元々色素が薄く、虹彩も日本人には珍しいアンバーに近い濃褐色だったが右眼のみ黒に近いダークブラウンになっていた。
    健常な左目と視力差が開き過ぎた影響で距離感も上手く掴めない。右目のみで物を見ることは殆ど不可能に近かった。事実左目には問題なく見えていた部屋の様子も、ぼんやりとした形や色しか伝わってこない。
    「……居るんでしょ、出てきなよ」
    左目を隠したまま呟く。室内には暁人の他に誰も居らず、言葉は独り言として誰にも聞き拾われることなく埃っぽい部屋の空気に融けて消えるだけかと思われた。
    が、いくらかの間の後視界の端で何かが動く。そちらへ視線を向けると男の靴先がこちらに向いているのが見える。
    そう、はっきりと『見える』のだ。未だ他のものは正体も判然としない程滲んで見えるのにも関わらず、男の靴は側面のロゴまではっきり見て取れる。靴先から順に視線を上へと持ち上げていき、男の全身が視界に収まった。
    存在は感じる、姿も見える。手を伸ばせば触れることさえ出来そうだった。顔に余り馴染みはなかったが、その気配はよく知っていた。
    「KK」
    呼ぶと男は応える代わりにゆっくりと目を細めた。その様子さえつぶさに見ることができた。
    「……いつからだ?」
    「それはKKがずっと僕の後をついて回ってるのに気付いたのがいつかって話?それとも、こういうものが視えるようになったのがいつかってこと?」
    「どっちもだ」
    「視えることに気付いたのは、入院してすぐの頃だよ。右目の包帯を外してもらった時には視えるようになってた」
    特に病院はその手の存在が多く、ひとならざるものが視えることを認識するまでにそう時間はかからなかった。人や獣に似た形をしたもの、実在するどんな生き物にも似つかない姿をしているもの。言葉を扱う知能が伺えるもの、意思疎通が期待できそうにないもの、様々なものがいた。
    「視えてたとして、オレぁお前に見つかるようなヘマはしなかった筈だぞ」
    「あんな別れ方したからね。成仏したって思うよね、普通は」
    「うるせえな、あの世にも事情があんだよ。死んだからってすぐに案内してもらえるわけじゃない」
    「たしか四十九日って、そういう意味なんだっけ」
    「厳密にゃちと違うが、平たく言えば此岸から彼岸へ移住するための準備期間だな」
    宗派によって解釈は異なるが、死後の魂はあの世とこの世の境を彷徨いながら七日に一度、生前の行いについて七つの審判を受けるとされる。人生のうちどのような罪を犯したのかを審理され、それらによって来世の行き先を決定するのだ。
    「それじゃ、凛子さんも?」
    「分からん。戻って来れなかった絵梨花の傍についてやってるのかもしれんし、どこかで静かに行き先が決まるのを待ってるのかもしれん。エドたちとは接触してる可能性もあるが、オレは姿を見てない」
    「……そっか」
    「心配すんな、オレほどじゃないがアイツも遣り手だ。滅多なことにはならんさ」
    「だといいな」
    彼女もあの動乱の中、安らかとはとても言えない状況で命を落とした内の一人だ。世話になったし死にゆく彼女の悔恨を思うと、せめて穏やかに旅立ってくれればと思う。
    「KKは、行き先が決まるまで暇だから僕のとこにきたの?」
    暁人が事故に遭った日にKKが落命したと仮定して、既に丸一ヶ月が経過している。審判が終わり、魂の次の行き先が決定すれば、KKは今度こそ彼としての人生を終え現世から旅立つのだろう。
    「他に言い方あるだろ。誰のおかげで生きてると思ってんだ」
    「……やっぱりKKのおかげなの?」
    確証はないか心のどこかでそんな気がしていた。事故から初めて目を覚ました時、自分を優しく揺り起こしたのはKKの気配だったように思う。ただの願望からくる錯覚だと自分を納得させてきたが、あれは現実だったのだろう。
    「オマエがせっかく家族に大見得切ったってのに、すぐ出戻ったんじゃ格好つかねえだろ。生きてた頃ほどの力はもうないが、オレだってオマエには借りがある。オマエが生き抜くつもりで足掻くなら、手助けくらいしてやるさ」
    「……ありがとう、KK」
    「なんだよ、急に殊勝だな」
    KKは居心地が悪そうに頬を掻いて歯切れ悪く言った。
    「……で、結局どうやってオレの存在に勘づいたんだ?」
    「一度エドから連絡があって、その時にもしかしてって」
    エドは入院中一度だけ暁人に接触を図ってきた。ただそれも直接的なものではなく、ボイスレコーダーを用いての一方的なものだったが。
    「KKの意向でこれをキミに託す。受け取ったものをどう扱うかは一任する」
    あの夜何度も聞いた、抑揚のないまくし立てるような声からの指示はそれだけだった。
    「エドと僕は直接やりとりしたことはなかったのに、どうやって僕の居場所を知ったんだろうって。KKの意向っていうのも、生前に聞いてたって感じじゃなかったし。もしかしたらKKが直接僕のことをエドに教えたんじゃないかって思ったんだ」
    託されたのはなんの変哲もない無記名の茶封筒で、中身はKKが書いた遺書の写しだった。本来無関係である筈の自分がこれを手にすることに躊躇はあったが、エドからこれらの扱いについて一任されたことを免罪符にして内容にざっと目を通した。
    遺書には、KKが生前所有していた財産をすべて息子に贈与し、相続によって発生する手続きに関しては既に弁護士に依頼済みである旨が書かれていた。封筒の中に弁護士の名刺も同封されていて、遺書の原本はこの弁護士の手元にあるのだろう。
    簡潔で事務的な書面だった。遺書とは本来そういうものなのかもしれないが、曲がりなりにも元妻と血を分けた実の息子に関わる最後の機会なのだから、もう少し手心というか、そういう類の姿勢を見せても罰は当たらないのではなかろうか。
    正直な所感を指摘するとKKは口角を曲げて顔を逸らした。
    「手紙は苦手なんだよ。それに、言いたいことはオマエが伝えてくれるんだろ、そういう約束だ」
    「え、僕だけ行かせるつもり?もちろんKKも一緒だからね、なんのために僕が無理して退院したと思ってるの」
    「まさかオレのためとか言うなよ」
    「そのまさかだよ、約束したのはKKの代理として行くつもりだったからだ。でも本人が居るなら代理の必要はないよね」
    「死人に口なしって言葉を知らんのか。言っとくが妻も子供も適合者じゃない、行ったってオレの姿は見えんぞ」
    「口は貸してあげるよ。そのために僕を生かした後も傍にいたんでしょ?」
    KKはすぐに返答しなかった。ただ彼の指が僅かに跳ねたのが見えた。
    「四十九日のこと知らなかったけど、偶然でも退院を急いで良かった。KKの気持ち、ちゃんと伝えられるといいね」
    KKがどれ程過去の行いを悔い、自責しているかは知っている。死後であっても、そんな彼の生前の苦しみが少しでも報われたらいいと思った。

    弁護士経由でKKの妻子と面会が叶ったのは半月後のことだった。
    相手方も別れた夫の知人を名乗る存在からの接触を不審がってはいたが、短時間、弁護士立ち会いの元という条件付きでこちらの要求を飲んでくれた。
    弁護士事務所の客間で待機していると、扉がノックされ壮年の女性と少年が入ってきた。写真と比べて時の流れを感じる。特に息子は成長期に入ったのか、写真で見た面影はそのままに精悍な青年へと変わりつつあった。
    二人は入室して初めに、自分を待ち受けていたのが車椅子に座る若い男であることに驚いた様子を見せたが暁人が頭を下げると二人は何も言わず対面にあたるソファへ腰掛けた。
    KKとは事前に打ち合わせをして、二人を混乱させないためにも飽くまで暁人がKKから生前に言付かった遺言を伝える、というスタンスを貫くことにした。実際に話をするのは暁人の中に入ったKKだが、二人がそれに気付くことはない。
    KKはこれまでにない程饒舌だった。 暁人越しの謝罪と懺悔を、二人は一言も口を挟まず静かに聞いてくれていた。
    すべてを語り終えた後、二人は暁人に礼を述べた。彼女らも、KKに対する家族としての情のすべてが枯渇したわけではなかったのだろう。僅かに残った愛情が、彼が遺した謝罪と懺悔を受け入れるという結論を出した。
    「伊月さん、でしたか。あの人の言葉を届けてくださってありがとうございました」
    KKの妻だった女性はそう言って深く頭を下げた。年相応に皺を刻んだ彼女の表情はどこか穏やかだった。
    「伊月さんから話を聞かなかったら、オレたちはきっと父のことを嫌い続けてたと思います。今日、話を聞けて良かった」
    少年も穏やかに、吹っ切れたような顔で微笑む。笑い方がKKに瓜二つだと感じた。
    面会後、二人が退室してから少しの間そのまま休ませてもらえることになった。そもそも特殊な条件下でなければ一つの体に二つの魂を入れることは相当な負荷がかかる行為である。大きな怪我で肉体が弱っていることも相まって、KKが中から抜けた瞬間、暁人は強烈な虚脱感に見舞われぐったりと息を吐いた。
    「お疲れさん」
    そう言って笑うKKの表情はとても安らかだ。その顔を見れただけで、暁人は自分の行動の全てが報われた気がした。
    「二人に分かってもらえて良かったね」
    「ああ、オマエのお陰だ。もう返せねえのに、また借りを作っちまったな」
    「……うん」
    KKがこちらの世界に留まれる時間はもう余り残されていない。それに、用が済んだのだから彼が暁人の傍に居る理由もなくなってしまう。
    二度目の別れも近いのだと突きつけられ、暁人はそれ以上何も言えなくなってしまった。

    その日の夜、疲労が祟ってか暁人は原因不明の高熱を出して寝込んだ。ほうほうのていで解熱剤を服用したが夜半になっても熱は下がらず、ろくに身動きも出来ない状態でうなされる暁人の容態をKKは少しでも軽くしようと尽力してくれた。霊体の彼に直接的な看病は出来ないが、死にかけていた暁人にしたように外部からエーテルを送り、衰弱している体のエネルギーを一時的に補い容態を安定させようとした。彼から注がれる純度の高いエーテルを暁人の体は乾いた土が水を吸うように受け入れ、ほんの少し呼吸が楽になった。
    「……熱が下がらんな。これ以上続くようなら救急車呼ぶぞ」
    「……大丈夫、だから……」
    「どこがだ。普段はバカ素直なくせに、なんでこんな時に限って意地張るんだ」
    「バカって言った……」
    「事実だろ」
    言い方は怒っているが、口調は柔らかい。きっと責任を感じているのだろう。
    はっきり見えている筈の左目の視界も、今はぐるぐる回っている気がする。そんな状況でもKKだけは揺らがず傍に居るのが分かった。その事実が自分でも意外な程熱で不安定な心を安定させている。
    「……KK……」
    暁人はKKに向かって手を伸ばす。反射的にKKもその手を取ろうとしたが、霊体と肉体で触れ合うことはそもそも叶わない。暁人の指先はKKの手の平をすり抜けて空をかいた。
    「いか、ないで……僕を、ひとりに、しない、で」
    ずっと堪えていた筈だったのに、気付けば口に出していた。
    「利用、していいから、……オレ、なんでも、役に立つ、から……はなれていかないで」
    ずいぶん身勝手で無茶な我儘だ。頭の理性的な部分では分かっているが、熱に浮かされた心身は今にも崩折れそうな程不安で堪らず、傍らに寄り添ってくれている存在へ縋り付かずには居られなかった。
    「KKまでいなくなっ、たら、オレ、本当に、ひとりぼっちだ」
    友人や知人が居ないわけではない。人間関係の構築はこれまでそつなくこなしてきた。幸運なことに怪我をすれば心配し見舞ってくれて、身の回りのサポートを買って出てくれる善き友人に恵まれている。
    だというのに血を直接分けた人たちが既にこの世に居ない事実が、暁人の胸の中央に大きな穴を空けている。魂を分けた相手すら、もうすぐ居なくなってしまう。それが寂しくて堪らなかった。
    「……暁人」
    名前を呼ぶ声はどこまでも優しい。
    自分の態度はきっと彼を困らせている。折角妻と子供に言葉を伝えることが出来て、心残りもなくなったというのにこんな風に未練がましく縋られては、彼も安心して旅立つことが出来ないだろう。
    「ごめん……ごめん、なさい。ワガママ、言って、ごめんなさい。もう、KKが僕と、一緒にいる理由なんて、ないのに」
    相棒だと言ってくれた。彼の力を上手く扱えたことを褒めてくれた。あの日の夜の記憶は、おぞましくて、恐ろしくて、良いことばかりではなかったけれど、思い出そうとすると体の内から聞こえるKKの声ばかりが鮮明に蘇る。
    あの日、怖気付き逃げ出そうとする自分を叱咤し麻里のところまで導いてくれた彼の存在に救われた。
    だが、逆も同じことが言えるとは限らない。KKにとって、あの場で入り込める肉体があったのなら、それが暁人でなければいけない理由はないのだ。
    「……もういい、今は何も考えずに寝てろ。寝て起きたら、きっと熱も下がってるはずだ」
    再度謝ろうとした暁人の視界をKKの掌が覆う。途端に不思議なことに急激な眠気に襲われ、暁人は半ば気を失うような形で眠りに落ちた。意識が途切れる最後の瞬間まで、すぐ傍に彼の気配を感じていた。
    「おやすみ、暁人」
    その夜熱に浮かされながら夢を見た。
    怪我のない健常な体でKKに抱かれる夢だった。思うまま自分に触れるKKを暁人は受け入れ、両腕を相手の背に回し、必死にしがみついてKKを呼んだ。こちらが呼ぶたびKKは律儀に名前を呼び返してくれて、それだけで暁人は幸せでたまらなくなった。
    次の日夜明け近くに目覚めた時、熱はすっかり引いていたが同時にKKの姿も部屋に無く、以降、KKが暁人の前に姿を現すことはなかった。


    いくら落ち込もうと、生きている限り時間は全ての生き物に平等に巡る。
    何をするにも身体的負担は大きく、心も大きな喪失感を抱えたままだったが、生き抜くと決めた以上、どのような形でも生きて行かなければならない。
    大学側や友人知人にあらゆるサポートをしてもらいながら講義に出席し、そして週に数回の経過観察のための通院とリハビリを受け、日常を取り戻そうと必死に努力した。
    日々やるべきことやらなければならないことをこなすのに精一杯で、余計なことを考える暇がないのはありがたかった。
    KKが暁人の前から姿を消して五日、病院側から指定された通院日であったため暁人は病院を訪れていた。自分の定期検診を終えるとそのまま麻里の病室へ向かい、もう二度と目覚めることはない妹を見舞う。
    あの夜、麻里の魂は儀式の生贄として捧げられこちら側へ戻ることが叶わなくなった。父と母が迎えにきてくれたから、彼女の魂の行く先については心配していない。ここに残された身体は、延命装置の力でただ心臓を動かし、弱く呼吸をするだけの空っぽの器に過ぎない。
    もう無理矢理に生き長らえさせる意味も必要もないのだが、こうして目の前にするとその決意も揺らいでしまう。
    麻里はまるで眠っているような穏やかさで、今にも瞼を震わせて目を覚ますのではないか、等という馬鹿馬鹿しい夢想が止められない。
    「……またくるよ、麻里」
    点滴の管が繋げられた華奢な手の甲をそっと撫で、暁人は車椅子の車輪を回し病室を出ようとした。
    視界の右端に人の足が見えた。
    思わずぎくりと身を強張らせその場で硬直してしまう。期待とそれを否定する感情がせめぎ合い、それ以上視線を動かせなかった。
    あり得ない、その筈だ。彼が真実を述べていたのであれば、彼の魂は既に流転している。だから今視界の端に見えているのは自分に都合の良い幻覚か何かなのだ。無視していればその内消えるだろうと思いじっとしていると、幻覚は消えるどころかこちらへゆっくりと近付いてきた。
    「悪い、ちょっと遅くなっちまったな」
    間近で声が聞こえてしまってはもうその存在を否定することは出来なかった。そろそろと視線を持ち上げた先に、想像通りの姿がある。俄に潤んでくる目を見られたくなくて暁人はぱっと顔を背けた。
    「なんで、まだここに居るんだよ。四十九日はもう過ぎただろ」
    「驚いたか」
    「お……ッ、驚くに決まってるだろ!ちゃんと挨拶もできないまま、いっちゃったんだって、ずっと後悔してたのに……戻ってくるならちゃんと言ってよ!」
    話す内に感情が昂ぶっていき、この場が病室であることも忘れ涙声で半ば叫ぶように詰った。
    個室とは言え部屋のすぐ外は不特定多数の人が行き来する廊下がある。事故で頭部に大怪我を負った暁人が、常人に見えないものに声を荒げている様が他人の目にどう映るかは想像に難くない。正気を疑われ、果ては自由のきかない病棟への隔離も考えられる。入院中、他人に見えないものへの対処には一番神経を割いたし、傍に居たKKとの接触も退院まで我慢した。
    だが今回ばかりは堪えることが出来そうになかった。
    この男は分かっているのだろうか。自分が何も告げずに姿を消したことで暁人がどれだけ喪失感と後悔に苛まれたか、その孤独がどれ程深いものだったのか、きっと理解していない。分かっているなら呆気なく唐突に姿を消すことも、悪びれもせず戻ってくることも出来ない筈だ。
    暁人の取り乱しようが意外だったのか、KKは両手を肩の高さに上げて弁明してきた。
    「本当に悪かったよ、オレも戻ってこれるか確証が持てなかったんだ。変に期待させて待たせるのも酷だろ」
    黙って肩を震わせながら潤んだ半眼で睨む。KKは居心地が悪そうに頬を掻いていた。
    「冥界の主に直談判してきたんだ。仕事を手伝う代わりに、もう少しこっちに居させてくれってよ」
    彼の言っていることが理解出来ず、暁人は顔を顰めたまま微かに首を傾ける。暁人の反応を見てKKは少し思考する間の後言い方を変えた。
    「魂の流転を管理する存在と交渉して、現世に不当に留まり続ける霊や何かしらの要因で成仏できない魂を向こうへ送ることを条件にオレの逗留を許可させた」
    酷くシンプルな言い方をされたのは分かるが、その内容は完全に暁人の中の常識と理解の範疇を超えていた。
    「魂ってのは流動性が高い不可逆なものだ。ゆえに現世への意図的な魂の遡上と逗留は罪に問われる、普通はな。だがオレとオマエは、運の良いことに"ヤツ"が冥界の蓋をこじ開けた件で向こうにデカい貸しをひとつ作れた。二つの世界の均衡が崩れかけたのを防いだからな、向こうも雑な扱いは出来ない。冥界の蓋がたかだかひとりの人間に開けられちまうような状態だったってのも、どうにか取り繕いたいところだろうしな」
    元は此岸と彼岸どちらの世の危機をも救ったKKの魂をより良い環境に転生させることを褒美とする判決が出ていたようだがKKはその権利を放棄し、引き換えに現世へ留まる権利を要求したのだという。
    「結果はこの通り」
    ここまで説明されて尚、暁人は今の状況を上手く飲み込みきれていなかった。家族を喪って、KKも自分の元を去った寂しさから、本当に幻覚が見え始めてしまったかと自分の正気を疑った。自分はとうとう正気を失ってしまったのだと考える方が余程信ぴょう性を感じられた。
    「そこまでしてこっちに残りたいくらいの未練があったの?」
    KKの未練は妻子のことだけだとばかり思っていた。彼の口から彼女ら以上に執着している人や物のことを聞いた覚えはない。
    「未練と言うと少し違うかもな。いや、もっと良くないものかも知れん」
    一度病室を移ろったKKの視線が再度暁人に結ばれる。こちらをじっと見据えたままゆっくりと目を細める様は何かに似ている気がしたが、暁人は上手く思い出せなかった。
    「オマエを連れていきたくなった」
    驚きと困惑が同時に押し寄せどういった反応が正しいのか決めあぐねた結果、暁人は眉根を寄せて硬直した。
    暁人の戸惑いを感じ取ったのだろう、KKは場違いな程快活に笑ってその場の妙な空気を払拭した。
    「別に今すぐ無理矢理連れていこうって話じゃねえから安心しろよ。さすがに生きてるヤツを向こうに連れていくのは見逃しちゃもらえねえしな」
    咎められなかったらやったのかと聞くのは墓穴を掘る行為だろうか。何とも言えず沈黙を継続していると、KKは笑みを納め少し真面目な顔をして続けた。
    「オレとオマエはちょっとばかし特異な縁で繋がっちまってる。オレは死ぬはずだったオマエを生かして、オマエは体内にオレを引き入れることで魂の霧散を長引かせ最期を見届けた。お互いの生死に関わる縁だ、簡単にゃ切れない。きっとこの先、ことあるごとにまとわりつき続けるだろうな。オレと関わったことでオマエは生き長らえたかもしれんが、引き換えに普通には生きられなくなった」
    事故から、正確にはあの正常な時間と切り離された夜から生還して、暁人はこれまで見えなかったものが見えるようになった。人ならざるものの気配に敏感になり、負の気が強い場所では体調を崩すようにもなっていた。何も知らなかった頃にはもう戻れない、見て見ぬふりも許されない。多くの人々は知覚すら出来ない薄い膜を隔てた向こう側からの干渉を、暁人は拒む術を持たない。
    「オレの責任だ。無関係のオマエを巻き込むべきじゃなかった」
    「KKは、僕と関わったこと後悔しているの?」
    「……結果論でしかないが、オマエとじゃなければあの夜のことは解決できなかった。現世も冥界も救えたのはオマエが居てくれたおかげだと思ってる。だがそれとこれとは話が別だ。人の命や人生を他の何かと天秤にかけて計るのは好きじゃない」
    「KKと出会ったせいで人生が変わったんだとしても、僕はそれで良かったと思ってる。後悔なんてしてないよ。感謝してる」
    「相変わらず、底抜けに素直なヤツだよオマエは」
    KKは肩の力を抜くようにふっと短い溜め息を吐いた。
    「……オレだって、あの時の選択に後悔はない。するもんか。あの日出会えたのがオマエで良かったと心の底から思ってる」
    KKの言葉が頭に浸透し、暁人はまた目の奥が潤むのを感じた。その言葉だけで苦労も苦痛も帳消しにしてしまえる気がした。
    「でも、だからこそ、オマエの人生を捻じ曲げて引き伸ばした責任をオレは取らなきゃならん」
    「責任なんて、」
    反論しようとした暁人の言葉を、KKは手を振って遮った。
    「頼むから、遠慮なぞしてくれるな。オマエの傍に居るための尤もらしい理由を、オレなりに必死に考えてきたんだからよ」
    恐らくぽかんと口を開けた間抜けな顔をしたと思う。KKは自嘲的な笑い方をした。
    「オレはオマエと違って、ひねくれた面倒臭い男だからな。こじつけでも理由がねえと戻ってこれなかった」
    「それで、責任?」
    余りに想定外のことに、暁人の感情は驚きを超過してただ言われたことを飲み込むことしか出来ずにいた。
    死に際の暁人をKKが強引に延命させたことで、二人の間には暁人の命にまつわる縁が出来た。一度繋がった縁はその根本的な原因である暁人の命が尽きる瞬間まで途切れることはなく、KKと繋がりがある限り彼が接していた世界からの干渉はなくならない。
    あの夜相対したような悪霊や妖怪らは、容易く干渉出来る上明確な自衛手段を持たない暁人を挙って狙うだろう。
    KKは自分から繋がった縁を辿った先に居る暁人に害が及ぶことが看過できなかった。
    「幸い、こっちに戻る時に生前と変わらないくらいの力は残してもらえた。オマエを守るにゃ申し分ない」
    言ってKKは掌の上にエーテルを集めて見せた。実際は色の概念があるものではないのだろうが、男の手に集約したその力は新緑を連想させる。
    「オマエに集る害悪はオレが全部追い祓ってやる。だからオマエは普通に生きろ。普通に生きて、年食って、新しい家族作って、その家族を大事にしろ」
    恐らく、優しい激励なのだと思う。隘路を歩ききった死者から先の見えない道の途中に戻った生者への、これ以上ない程の。
    だが暁人はKKから強く突き放された気がして、何も言えなくなってしまった。黙り込んだ暁人に、KKは淡々と続ける。
    「今はまだ、先のことなんか考えられないかもしれないが、オマエの人生はオレが守るから。もう二度と理不尽なことが起きないように遠くから見守ってる。オマエの人生だ、邪魔はしない」
    「遠くって……どこだよ」
    「遠くは遠くだ。オマエの私生活を覗く真似はしないし、この先オマエの前に姿を見せないようにする。守るのに支障はないから心配はいらない」
    「……いやだ」
    暁人が首を振るとKKは少し寂しそうに笑った。
    「嫌か」
    「いやだよ!もう会えないなんていやだ。遠くになんか行かないで、傍に居てよ。僕を見守ってくれるんでしょう?それなら近くても遠くても一緒じゃないか」
    噛み付くようにそう言うと、KKは突然鼻先に拳をもらったような顔をして涙目で鼻をすんと鳴らす暁人を凝視した。
    「ああ、そっちか……」
    「そっちってなにが」
    「いや、何でもない。オマエ本当にすげえわ、オレには真似できん」
    「よく分からないけど、今僕馬鹿にされてる?」
    「してねえよ。……ただ、オレも少しはオマエを見習わなくちゃな」
    KKは懐に手を入れて、それから何かに気付いた素振りを見せて空手で頭をガシガシと乱暴に掻いた。習慣づいた行動が無意識に出たらしい。恐らく、生前そこに入れていた煙草を探して見つからなかったのだろう。
    「煙草か……せめて酒がありゃあな」
    その状態で飲酒や喫煙が可能なのか、仮に出来たとして酩酊出来るのか気になったが、一先ずKKの話の続きを聞くことにした。
    「さっき言ったことはすべて本心だ。オマエにはそこらに居る普通の人間と変わらない人生を送って欲しいと思ってる。だが、その時オレが傍に居たら邪魔になる。オレの存在がオマエの中の選択肢を潰すことになるのは本意じゃない」
    既に言い返したいことはあったが黙っておく。無言で続きを促すと、KKは口をもごつかせながら酷く話しにくそうに言葉を絞り出した。
    「本気でそう思うなら、もう姿を見せるべきじゃなかった。あのままオマエの中から存在を消して、遠くから見守っていれば良かった。守るだけならそれで何も問題はないんだ。なのにそれをしなかった。どうにかオマエの中にオレを残しておきたくなったからだ」
    「そんなことしなくてもKKは僕の恩人だ、忘れたりしないよ」
    「いや違う。そういうことじゃなくて、……ああ、クソッ」
    「KK?」
    「オレがこう言えば、オマエは至るところでオレを思い出して、どこかにオレを探すだろ。オマエが自分の家族を作って年を取っていっても、その視線の先だけは永遠にオレのもんだ」
    話している間もKKは落ち着きなく檻の中の猛獣のようにその場でぐるぐると歩き回る。
    「ああ、クソ、クソッ。言うんじゃなかった、そもそも柄でもねえことやるんじゃなかった!」
    何故か急激に悔恨の念に囚われているらしいKKの背中を眺めながら、暁人はどうにか今言われたことを噛み砕き飲み込むことに成功した。
    「KK」
    「……ぁんだよ」
    「やっぱりさ、一緒に居てよ。僕はきっとKKのことこれから先もずっと忘れられないし、忘れたくない。僕の傍から誰かが居なくなってしまうのはもうたくさんだ」
    車椅子の上から手を伸ばす。当然触れられるわけはないのだが、彼の右手にあたる場所に手を翳すと不思議と温かく感じた。
    「お願いだよKK、僕からもうなにも奪わないで」
    懇願する声は情けなく震えてしまった。卑怯な言い方をしたと思う。冷淡なように見えて情の深い男がこんな、未練を産み出すような言い方をされて到底無碍に等出来ないと知って口にした。
    果たして効果は覿面で、深く溜め息を吐いたKKの右手が自分の伸ばした手に重ねられ、手の甲の皮膚が触れる熱を錯覚する。
    「……後悔するぞ」
    「しないよ」
    低く唸るような言葉に断言で返してみたものの、先のことは分からない。もしかすればどこかのタイミングでそう感じる日がくるのかもしれない。死者と生者の関係なんて歪だとも思う。
    それでもここで諦めてしまって後悔するよりずっとマシだ。
    「ハ、こんな及び腰じゃ、若さの勢いに勝てるわけねえか」
    彼は気が抜けたように笑って呟いた。
    「オマエがそこまで言うなら、いいぜ。お望みどおり傍で見守ってやるよ。言質は取ったからな」
    「言質取ったは僕の台詞じゃない?」
    「そう思うか?」
    KKはまた目をゆっくり細め、首を傾げて見せた。
    「この先お互い長い付き合いになるんだ、腹のうちを早めに見せておいて損はねえだろう」
    そう宣言したKKは再度、自分の感情を「未練ではない」と述べた。
    これは未練ではない、そんな言葉では到底追い付かない飢えにも似た強い執着である。
    このような感情を抱えたまま全うな転生はできないと自覚した。魂が流転しても今生の記憶を忘れきれず、無意識に暁人を探すだろう。次の人生を擲ち、身を窶すことも厭わない程に。だから無理を通して魂のままこちらへ残る選択をした。
    お前の人生を見届けたい。
    見届けて、その時こそお前を伴い冥界へと渡りたい。
    自分の言動はすべて、このような所以からくるものだったとKKは話を締め括った。彼の不器用だが逃げ場の一つ一つを丁寧に潰していくような吐露に口を挟むことも出来ず暁人は黙って聞いていた。恐らく常軌を逸した感情をぶつけられているのだろうが、不思議と不快には感じない。単に自覚が追いついていないだけかもしれないが、この人がいる限り自分は孤独と無縁で居られるのだと安堵さえした。
    「どうしてオレがここまで話したか分かるか」
    素直に首を横に振る。
    「オマエがオレから逃げることはないと確信したからだ。オマエはキャパオーバーすると逃げ腰になる癖があるからな、土壇場で怖気付かれて踵を返されたら敵わん」
    随分身に覚えがありすぎる見解だった。思わず首を竦めたが、KKはそれについて特段責めるつもりはないらしかった。
    「僕が本当に逃げたらどうするつもりだったの」
    「今更オレから逃げられると思ってんのか」
    「それは、……そうだね。無理かも」
    「言質取ったの忘れたか?言葉は口に出したら因果を結ぶぞ」
    自分の世話もままならない今なら考えるまでもなく、例え怪我が完治し万全の状態にあっても彼の追跡を逃れる展望が一切思い浮かばない。
    「オマエに残ってた選択肢は、一生、オレから逃げられないことを自覚して生きるか、無自覚に生きるかの二択だけだった。そして、後者の選択肢をオマエは今投げ捨てた」
    「……なるほど。なんだか今ごろ分かってきたよ。ちょっと早まったかな」
    「恨むんなら後先考えずにした手前の発言を恨むんだな」
    「うん……次からもう少し慎重に言葉を選ぶことにする」
    げに後悔というのは決して先には立たないものだと痛感させられた。自分の発言が迂闊だったとは思うが、この先の人生全てと引き換えに彼と共に在ることが出来るのなら、それで構わないかとも思う。
    そんなことを考える時点で自分も相当だ。
    「これから末長い付き合いになるだろうが、またよろしく頼むよ。相棒」
    不敵に笑う彼の言葉がまた因果を生んで暁人とKKの間を繋ぐ。いよいよ自分をどこにも逃がすつもりがないのだなと察されて、暁人は苦笑しながら頷いた。
    「ふつつかな相棒だけど、こちらこそよろしく。KK」
    亮佑 Link Message Mute
    2023/03/04 0:25:42

    相縁奇縁

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    本編後ご都合自分解釈大盛りハッピーエンドK暁(ほぼ概念)
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