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    江夏優は××が足りない「――寝れるかっ」
    何度目かの入眠を挫折し、エコーはやり場のない苛立ちを物言わぬ枕にぶつけた。
    此度の任務での命令違反、単独行動に対する罰則として謹慎令が下されて丸二日、任務で負った外傷はドク含めた有能な医療班の献身によって順調に回復の傾向にある。そもそも殴られ蹴られた時に出来た内出血や些細な切り傷なんかが主で骨や内臓系は無事だった為、半日程夢も見ず泥のように眠って起きた時点で痛みは殆ど引いていた。
    今エコーを悩ませているのは外因的な苦痛ではなく、体の内側を焼く熱源の方だ。
    違法薬物の投与と長時間に及ぶ性的暴行、それに元々始まる筈だったヒートが重なった結果瞬間的に免疫力が著しく低下したエコーの体温は平時のそれをかなり上回っている。精密検査を経て感染症等深刻な疾病からくる発熱ではないことは判明済みだが、現在エコーはベッドの上で唸ることしか出来ない状態を余儀なくされていた。
    体が不調だろうと構わずヒートは居座り続け、解熱剤の副作用で眠気が来た頃を見計らったように腰の奥にずんと重たい衝動を投げ込んできては体力の回復に努めようとするエコーの睡眠の邪魔をしてくる。解熱剤を服用せざるを得ない状況の為、抑制剤は飲み合わせが考慮され普段飲みつけているものではなく別のものを使っているのだが如何せん効きが弱い。飲まないよりはマシ、といった程度で、エコーの睡眠の手助けまではしてくれなかった。
    生まれてこの方自身の第二性に感謝等したことはなかったが、ここまで疎ましく思ったこともないかもしれない。何もかもが最悪のタイミングだ。
    「ああ、くそ……あつい」
    額に貼り付けていたぬるくなった冷却シートを剥がしてゴミ箱に投げ込む。とうとう眠ることを諦め、エコーはのっそりとベッドの上で体を起こした。途端に世界がぐわんと回る。半身を起こした体勢で目を閉じ、三半規管の誤作動に伴う不快感にじっと耐えた。
    暫くしてそっと顔を上げ、視覚が正常に動作していることを確認し浅く息を吐く。まったく言うことを聞かない自分の体に辟易していた。
    ドクからせめて熱が下がるまでは大人しくしていろと釘を刺されているし自分としても眠りたいのはやまやまだがこんな状態では不可能だ。せめてヒートがピークを過ぎてくれればまだ何とか堪えようがあるのかも知れないが、それが何日後になるのかは気が遠くなりそうだったので期待することを止めた。
    室内にぼんやりと視線を彷徨わせ、ベッド脇の机の上に乗った時計の文字盤を見つめる。今が何時か理解するのに数秒掛かった。頭の回転の余りの鈍さに盛大な舌打ちが一人きりの部屋に響いた。
    発熱で脳が溶け出しているのではないだろうか。自分が何に対して苛ついているのかも分からなくなってきた。
    「……」
    苛立っても尚去らない情欲に心の中でのみ毒づき、エコーは体にまとわりつくシーツを払い除けベッドから抜け出した。適当に服を掴んで袖を通し、急な招集に備え携帯端末のみをジーンズの尻ポケットに捩じ込む。焼け石に水だとは思うが一応パーカーのフードを目深に被り、首輪をつけた首元を隠して静かに部屋を出た。
    時刻が夜半も間近なこともあり廊下ですれ違う職員も居らず、気を揉むことなく基地から出ることが出来た。無意識に詰めていた息を吐き出し、頤を大きく持ち上げて夜空を仰ぐ。満月には少し足りない、歪な形の月に薄らと雲が掛かっている。部屋に籠りきりだった窮屈さから解放され少しだけ気分が良くなった。
    目的地は基地最寄りの歓楽街、その奥まった立地にあるバーだ。エコー自身は同僚に連れられて数度行った程度だが、言わばレインボー部隊御用達の店である。客層の安全性は元より、店主の口が堅いのは確かだ。道楽として飲む程酒が好きなわけではないが、今回の目的はそちらではない。バーで適当に後腐れなさそうな男を引っ掛けてこのどうしようもない熱を発散してしまおうと、身も蓋もない言い方をすれば一夜の相手を探す為にエコーは街へ出たのだ。
    歓楽街も中心部に差し掛かるとこの時間帯でもそこそこに賑わっており、すれ違いざまにちらちらと視線を感じる回数も増えた。視線を寄越しはするが、オメガにしては上背があり鍛えてもいるエコーに積極的に声を掛けてこようとする者は居ない。エコーも視線に気付かない振りを決め込んで、コンクリートの階段を下り半地下にあるバーの扉を押し開けた。
    店内に客は疎らで、エコーはカウンターの一番端に陣取ると弱い酒を頼む。さすがに今の体調で飲酒してただで済むとは思っていない。磨き抜かれたグラスに注がれた、ジュースと変わらないような酒をちびちびと舐めながら一先ず様子を見ることにする。店に入った後も相変わらず不特定多数の視線は背中にまとわりつき続けている。余り悠長に構えて熱も引いていない内から無断で外出したことがバレるのは避けたい。適当に目が合った奴に声を掛けてしまおうかと考えていると、エコーの隣の席に小さく音を立てて男が一人座ってきた。
    「やあ、一人?」
    返事はせず横目で男を一瞥する。顔付き、服装、所作、ざっと品定めして危険そうな男でないことを確認し、微かに顎を引いて応えた。
    「今晩相手をしてくれる奴を探してる」
    「直球だな」
    髪を丁寧に撫で付け高級感のあるスーツをまとった男は、繕わないエコーの物言いを受け微苦笑を浮かべる。気取った仕草が少し鼻につくが、一夜の相手に深入りしてくるタイプでもなさそうだ。
    間合いを取る為にゆっくりとした動作で一口酒を煽る。隣の男の視線が喉元に吸い寄せられるのを感じながら、唇に残る甘い余韻を舌先で舐め取った。
    「あんたが相手をしてくれるのか?」
    「きみさえ良ければ、よろこんで」
    仕掛けた針に魚が掛かった。悪くない、まずまずの釣果だ。
    「こんなデカい図体したオメガに声かけるなんて、あんた物好きだな」
    一般的にオメガは小柄で華奢で男女の性差を余り感じない。エコーはそんなステレオタイプからは程遠い体型をしている為、こうしてヒート中でもなければ大抵のアルファはエコーの第二性に気が付かない。仮に気付いたとしても、自分より体格の良いオメガを相手にしようとはしなかった。隣の男はと言えば上背はエコーと同程度、立って並べば多少は差がつくかもしれないが、スーツの上から見る限り特に鍛えてはいないようだった。ただそれは日々過酷なトレーニングと激務をこなしている職業軍人と比べたら見劣りするというだけで、傍目には均整の取れた体つきと言っていい。
    「そうかい?きみはとても魅力的だと思うよ。生まれはどこ?中国?それとも台湾?もっと顔をよく見せて……」
    甘く囁くように言った男が体を寄せてくる。不躾な距離の詰め方ではなかった筈だが、エコーの体は反射的に頬に触れようとしてきた男の手から逃げた。一瞬気まずい沈黙が二人の間に落ちる。
    「すまない、急すぎたかな」
    「いや……」
    自分でも何故そんな反応をしてしまったのかよく分からず、内心で首を傾げる。
    記憶から心当たりを探して、つい数日前アルファの男から暴行を受けたことを思い出した。恐らく体がそれを覚えていて、同じアルファ性を持った男との接触を忌避し咄嗟に回避行動を取ったのだろう。原因は判明した。であれば理性でコントロールすることも可能だ。
    「あんたは俺を殴る?」
    こんなことで男の機嫌を損ね、掛かった魚を逃してしまうのは勿体ない。意識して流し目で相手を見やり、少し怯えたような相手の庇護欲を誘う表情を作る。
    「まさか。誰がそんな酷いことを……この傷もそいつがつけた?」
    まだ傷は癒えきっていない。頬の腫れも随分よくなってはきたが、近くで見ればそれが暴力の痕跡だと分かる。気遣わしげに伸ばされた指先を、今度は逃げずに受け入れた。男の指は触れるか触れないかの距離でエコーの頬の輪郭をなぞっていく。ぞわぞわと腰が浮き上がるような落ち着かない気分を押さえ付け、自分から男の手に顔を擦り寄せた。
    「まだ痛むんだ……忘れさせてくれるか?」
    エコーの従順な様子に男はかなり気分を良くしたようだった。
    「もちろん、きみにとって最高の夜にしてあげよう」
    品を損なわない程度に笑みを深め、頬に触れていた手を肩に回してくる。抵抗せず相手に体重を預けようと体を傾けた時、突然背後から見知らぬ人物の腕が伸びてきてエコーの首に巻き付いた。
    「ぐえっ」
    首に回った腕に気道を締め上げられ潰れた声が漏れる。腕の主はそのまま力任せに男からエコーを引き剥がした。
    「そこまでだ」
    耳元で聞き覚えのある声がする。無理矢理体を捩って背後を振り返ると予想通りの顔がそこにあった。
    「なんの用だ、ジャッカル」
    あとは餌に食い付いた魚を釣り上げるだけだったというのに、一体どういう了見で邪魔をするのか。思わず不機嫌さを滲ませて問うと、向こうも何故か不機嫌そうな視線を寄越してくる。
    「余程ドクの胃に穴を開けたいらしいな。お前が脱走したことでちょっとした騒ぎになってるぞ」
    「げ」
    さっさと目的を果たして気付かれる前に戻る算段だったがこんなに早く露呈するとは。
    居場所を特定されたことについては部隊支給の端末を所持している時点で別段何の驚きもない。何故この人選なのかと問えばジャッカルが数軒先の別のバーで飲んでいたところ、ドクからエコーの回収依頼をされ渋々ここにきたということらしい。
    「ドクはちょっと過保護過ぎやしないか?用が済んだら戻るし心配要らないって伝えといてくれ」
    「自分で言え」
    ジャッカルの視線がエコーから隣に座る男に移る。
    「そういう訳だ。そこのあんた、悪いがコイツは回収させてもらう」
    穏便な口調とは裏腹に視線には有無を言わせない圧力が込められている。威圧的な存在感に男が僅かにたじろいだことを承諾と受け取ってか、ジャッカルは勝手に会計を済ませエコーを連れて店を出ようとする。
    「何がそういう訳だ、俺は帰るなんて言った覚えはないぞ離せ」
    どうにかジャッカルの腕から逃れようと藻掻くが相手にこちらを解放する気はさらさらないようで、半ば引き摺られる形で店を出る羽目になった。急に動いたことでアルコールが回ってきたのか目眩がする。ジャッカルについて歩くことも立ち止まるために踏ん張ることも出来ず、結果エコーはその場に崩れ落ちるようにして座り込んだ。
    「おい、往生際が悪いぞ」
    苛立ったことを隠しもしないジャッカルの声が頭上から降ってくる。食ってかかる気力もなく、エコーは弱々しく首を振った。
    「ちが……気持ちわるい……」
    頭の中が洗濯機宜しくぐるぐる回っている。動悸もしてきてエコーは座り込んだ体勢で大袈裟に胸を喘がせた。周囲の音が近づいたり遠ざかったりを繰り返しており、ジャッカルが何か話し掛けてきている気もするが答える余裕はなかった。
    せり上がってくる感覚を飲み込むことに集中していると、不意に腕を掴まれ強引に引っ張り上げられ思わず伏せていた目を開ける。回る視界に頼りなく自立している自分の足とそれを隣で支える男の体が見えた。行先も分からず背中に添えられた手に押し出される形で歩かされ、薄暗い路地に少し入り込んだ場所まで連れてこられた。
    促されるまま錆び付いたごみ箱の上に腰掛け、年季の入った建物の壁に背を預け息を吐く。暫くそのままじっとしていると目眩が治まってきた。反転しない視界に安堵し、エコーは体内に籠る熱を緩和しようと目深に被ったフードを払い除ける。頬に触れる夜気はひんやりとしていて、心地良さに小さく息を吐いた。
    「抑制剤はどうした」
    「…なに、……?ああ、抑制剤か……持ってる、はず……どこだ」
    覚束無い指先で懐を探っていると一際大きな溜め息が路地裏に響く。
    「お前それでよく一人で帰れるなんて言えたな」
    呆れ切ったジャッカルの言葉に消えかけていた理性が苛立ちとして頭を擡げ、エコーは微かな気力を振り絞って目の前に腕を組んで立つ男を睨み付けた。
    「あんたのせいだろ……」
    「俺の?」
    「さっきバーで、俺が引っ掛けようとした奴フェロモンで牽制したろ……密着してアルファのフェロモン浴びたら、嫌でも、こうなる……離せって言ったのに」
    恨み言を漏らすと案外素直な謝罪が返ってきた。
    「悪かった。確かに迂闊な行動だった」
    「もう、いいから、ほっといてくれ。ひとりにしてくれ。基地には、今はもどりたくない。あそこは、いろんなアルファの気配が混ざってて、よけいきもちわるくなる……」
    その内口を開くことも億劫になりエコーは体を折りたたむようにして俯いた。丸くなり外からの情報を遮断するととじっとしていられないような気分が少しだけ落ち着く気がする。ジャッカルは暫くの間黙ってその場に立ち尽くしていたが、やがて足音が遠ざかっていく。離れていくアルファの気配に名残惜しいような、逆に安心するような気持ちがしたがどちらでも良かった。
    望み通り一人になり、これからどうしたものかと回らない頭で考える。ヒートは本格的に進行し、歩くのも苦労する状態だ。なってしまったものは仕方がない。この不測の事態に対しどう対処すべきか。
    このままじっとしていても当然だが事態は好転しないだろう。むしろヒートの匂いに誘われて、バーで釣ろうとした男とは対極の――つまりは品がなく、こちらに対し最低限の礼節も弁えない――アルファが寄ってくる可能性がある。油断している相手と一対一ならまだ勝ち目もあるかもしれないが複数で来られたらそれこそひとたまりもない。数日前の二の舞だ。
    やはり先程のバーに戻って相手を探すのが安牌か。しかし店内にいた客はジャッカルが他のアルファを牽制してまでエコーを迎えにきた光景を見ているだろうし、事情を知らない者からすればエコーは『別のアルファのお手付き』だ。今晩中にあの店で相手探しは不可能と考えるのが妥当だろう。
    では別の店で相手を探し直すか。普段余り飲み歩かないエコーは周辺の店の客層を知らない。ヒート中のオメガが店を利用するのを嫌がるところも多い。
    諦めて基地に戻り、ドクに副作用を承知の上で強い抑制剤の処方してもらうよう交渉するか。今の自分の姿を同僚に見られるのは極力避けたかったが、事態を鑑みるとそうも言っていられない。恐らくこの選択が最も無難なのだろう。しかし戻るとして、目下の問題は果たして自分は徒歩で、自力で基地まで戻れるのかということだ。タクシーを利用するにしても運転手と密室になることを考えると危険な手段と言わざるを得ない。
    部屋から出るべきではなかったのかもしれない。否、あのまま部屋に居続けるのもある種の拷問だ。
    どうするべきか。思考が堂々巡りに入っているのが分かる。分かるが名案が浮かばない。
    ふとこちらに近付いてくる足音に気付き、エコーは思考から一旦意識を浮上させ伏せていた頭を僅かに持ち上げた。
    足音の重さからして男、重心にぶれのない足運びは熟練の軍人のそれだ。表通りから差し込むネオンの軽薄な光を背に負い路地に入ってきた男を見上げ、エコーは思わず気の抜けた笑みを浮かべた。
    「ひとりにしろって、言ったはずだ」
    「それを了承した覚えはない」
    ジャッカルは冷淡に聞こえる声でエコーの文句を切り捨て大股にこちらへ肉薄してくる。恐らく意図的であろう威圧感に、背筋が甘い寒気と奇妙な熱を同時に感じて震えた。
    「外泊許可は取ってきた。行くぞ」
    「行くってどこに」
    エコーの問いにジャッカルはやはり温度の感じられない声音で答えた。
    「大人しく着いてこい、俺から逃げられんことはお前も知ってるだろう。――先の失態の責任を取ってやる」


    近場の安ホテルか、街の外れにあるモーテルにでも連れ込まれるのかと思い大人しくついて行った先が街の大通りに面したフルサービスホテルであった為間髪入れず踵を返そうとしたエコーの首根をがっしりと捕まえて、ジャッカルは何食わぬ顔でチェックインを済ませた。
    夜半、事前予約もなく、仕事や旅行目的とは到底思えない出で立ちの二人組に対し受付を担当したフロントスタッフは顔色ひとつ変えず手続きを進め、恙無く部屋が取れたことを告げると恭しく宿泊する部屋のカードキーをジャッカルへと手渡した。
    「なんでわざわざこんなところに部屋を取る必要があるんだ……」
    宛てがわれた部屋へ向かうエレベーターの中でエコーが呻くように文句を垂れるが隣に立つジャッカルは涼しい顔をして答えない。
    エレベーターを降り静まり返った廊下を渡った末に辿り着いた部屋は広々としており、たかだか寝るためだけの空間に何故こんなに広さが必要なのかと現実逃避気味に考える。
    勝手知ったる我が家の如く部屋に入りソファの背もたれに脱いだ上着を投げているジャッカルの後ろ姿を、エコーは入口から数歩入ったところに立ち尽くしぼんやりと眺めた。何だか妙なことになってしまったと事態を俯瞰していると、視線に気付いたジャッカルがこちらを振り返り不審げに眉を顰める。
    「なんでそんなところに突っ立ってる?はやく入れ」
    無造作に手招きされ、意を決してその場に根を張ろうとする足を動かし室内へ足を踏み入れた。
    ジャッカルの長駆は室内で見ると余計に大きく感じる。エコーもオメガにしては規格外の高身長を有しているが、目の前の男はそんな自分より更に一回り程は上背があった。
    「責任を取るとか、本気で言ってるのか」
    男の間合いの外で立ち止まり、エコーは少しだけ顎を引き上目遣いに男の顔を見上げる。
    「ここまできて嘘吐く理由もないだろ。なんだ、俺が相手じゃ不満か?」
    否定も肯定も出来ずエコーは返答に窮した。同僚に借りを作っているこの現状そのものが不満と言えば不満だが、それはジャッカル個人に向けられたものではない。注文を付けられる状況と立場ではないことくらい分かっている。
    「……不満、はあんたの方じゃないのか」
    ジャッカルの方にこそ、何か自分に対して言いたいことがあるのではないのか。些細な失態がなければ、こんな大男を抱く義務を負う必要もなかっただろうに。その失態もエコーが無断で外出しなければ発生しなかった筈だ。
    ここに至るまでにお前が余計な真似をしなければ、と一度も詰られなかったのが意外な程だった。
    「不満、不満ねえ」
    咀嚼するように言葉を繰り返し、何がおかしいのかジャッカルは喉の奥でくつくつ笑う。思えば今日初めて彼の笑顔を見た。間接照明の薄暗い光源の中でその表情の仔細までは分からず、男の瞳がこちらに向けられているのだけが見える。
    「……なんだよ」
    「なに、大したことじゃない。シャワーはどうする?」
    少し考えてエコーは首を横に振った。
    「あんたの匂い嫌いじゃない」
    エコーの言葉に、薄闇の中でジャッカルの瞳が愉快そうに細められたのが分かった。
    亮佑 Link Message Mute
    2022/11/12 13:14:58

    江夏優は××が足りない

    pixivからの移設です
    #R6S #カルエコ

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