イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    氷華の騎士熱く湿った吐息を漏らし、俺は手元のカップを一旦テーブルに戻す。
    たっぷりのミルクを入れたコーヒーと真っ白な生クリームのケーキ。
    ケーキの上には真っ赤で瑞々しいイチゴがきらりと光っていた。

    「あーむ……んー、やっぱりここのケーキは最高の一言……厳選されたミルクを使ったクリームとふわっふわのスポンジ生地に旬のフルーツがシンプルながら王道のハーモニーを奏で……」

    「いや、そういうのいいから……用件はなんなのさ?」

    俺はぽりぽりと頬の毛を掻きながら、目の前で心底楽しそうにケーキを頬張る黒兎に呆れ混じりで呟く。
    午前中、コロシアムでの試合を終え、日銭を稼いだ俺は街をぶらついていた。
    そんな俺の元へ、突然現れたのがこのエヴァン・ポートだ。
    仕事の合間の僅かな休憩時間で仮眠よりも糖分補給を優先してケーキを食べに来た、と言っていたがわざわざ俺を探して連れ立った理由をまだ聞いていなかった。

    「えー、せっかくの美味しいケーキなんだから、味わいたいじゃない~」

    「……まあ、美味しいけどさ」

    「あはは、うそうそ。ヒョウカ君を探してたのは、ちょっと耳寄りな情報を聞いたから教えてあげようと思ってさ!」

    えへんと大した厚みのない胸を張る兎を、俺は期待半分不安半分で見つめた。
    その頼りない体格に反し、第二騎士団団長補佐という肩書を持つ彼が魔術師として高い技能を持つのは俺の目にも分かっているが、最近のエヴァンの噂はショタ化だの節操なしだのと悪い噂ばかりだった。

    「あ、そんな目で見ないで、夜勤明けで辛いのにもっと悲しくなっちゃう」

    俺はまたカップのコーヒーを飲み、口を挟むのを止めて続きを待った。
    エヴァンはこほん、と咳払いを一つ挟み、

    「実は、あと一か月ほど先だった騎士登用試験が臨時で開かれることになったのです!」

    自慢げな顔で言い放つエヴァンを見ながら、俺はフォークをケーキに突き刺した。
    そのまま一口大に分け、口へと運ぶ。

    「……なんでまた急に? そういう内部情報って外に出していいものなの?」

    「いや、まあ公式発表もされてるからね! 実は第六と第八の団長が退任されて新しい団長が就任することになったのだよー」

    既に食べ切ったエヴァンは、何故か羨ましそうに俺の手元のケーキを見つめる。
    その視線をフォークで牽制しながら、俺は疑問を口にした。

    「新しい団長が来るのと、騎士の募集が臨時で行われるのは関係あんの?」

    「うん、この国の騎士団は各団毎に主とした業務が違ってるんだけど……例えば第二うちは緊急時の作戦指揮や統制、平時は解析業務なんかを担当してるんだけど……あ、このモンブラン追加で」

    それでも未練たらしく見つめ続けたエヴァンは、我慢の限界を超えたのか新しいケーキを注文する。

    「で、えっと、その団の方針っていうのは団長が決めることが出来て、新しい団長に変わった時に団の方針が変わることがあるんだ」

    「へー」

    最後の一欠片を口に放り込み、俺はクリームの甘さをコーヒーで流した。
    なんで豆の香ばしい苦味はこんなに落ち着くのに、野菜からするあの生々しい苦味はあんなにまずいのか、とふと考えて内心で嘆息した。

    「……ヒョウカ君って、ときどきすっごい大人びた顔するよね。かわいいのに」

    「褒めてるのか馬鹿にしてるのかどっちなんだよ!」

    「あはは、怒った顔は可愛い可愛い」

    「……話しが逸れてるから、続きしゃべってよ」

    「はいはい。えっと、それで、団の方針が変わるとなると、そこに所属してた人達とは合わなくなることもあるんだよね。あとは前任の団長を慕ってた人とかはそのまま辞めちゃうこともあるし……だから人員の再編成が行われて、新規募集も臨時で行われるんだよ」

    俺のじと目をごまかすように笑ったエヴァンは、運ばれてきたモンブランに視線を移しながら、説明を続ける。

    「今回第八は今までと方針が変わらないけど、第六は変わるらしいからねー。……ああ、栗の甘みが……さいこー!」

    「ふうん……ま、理由は納得したけど、肝心の試験はいつなのさ?」

    「明日だよー。申し込みは今日までだけどー」

    「……なんでそういうことは先に言わねえの!?」

    俺は呆れ半分焦り半分で叫んで椅子を蹴り飛ばすように立ち上がると、急いで店から飛び出した。
    エヴァンから聞いた話では各騎士団の詰め所で受け付けはしているらしい。
    ここからなら一番近いのは第二騎士団だった。
    俺は猛烈な速度で石畳の通りを駆け抜け、俺は建物に飛び込んだ。
    幸いにも受付の終了時間はまだ先の様で、入り口から入ってすぐの所に白熊と黒熊がその巨体を並べて座っていた。

    俺は溜息一つで呼吸を整え、机に置かれたペンをとって用紙に必要事項を記入する。
    申込者は俺以外に既になく、受付に座っていた白熊と黒熊は二人で対応してくれたが、どちらも真面目なのか実に丁寧な対応だった。

    「……はいっす。記入漏れとかないっすね。これで申し込みは完了っす」

    真面目そうな表情で書きこまれた内容を確認した白熊は、頷きながら割符を差し出す。

    「これ、明日の試験の時必要なんで、なくさないように持ってきてくださいっす」

    その他注意事項も説明され、俺は忘れないように記憶していった。

    「明日は実技試験も行われるから、そのつもりの準備も忘れないでください」

    「了解! あんがとな、熊の兄ちゃん達!」

    俺は安心から、ほっと肩の力を抜いて笑みを浮かべた。
    ぺこりと会釈をしてから意気揚々と騎士団の詰め所を後にした。




    「レンゲさん……今の子、めっちゃいい子でしたね。あんな後輩が入ってくれたらいいっすね」

    小さく白熊が零すと、隣の黒熊がちらりと目を隣に向けた。

    「うん……まあ、真面目そうな子でしたけど。ただ……」

    「ただ?」

    「……エヴァンさんが、ちょっかいかけそうだなって」

    「ああー……」

    白熊は頭痛を抑えるように頭を抱えた。
    魔力も魔術も一流で解析、作戦立案、広域伝達魔法による指揮も担当できる優秀な騎士の顔を思い出し、その裏の性格を思い描いて深くため息を吐いた。
    二人の想像の中で、黒い兎は新人の少年に対し、言葉巧みに近寄っては過剰すぎるスキンシップを図ったり、果ては魔法の実験と称してあられのない姿にしたりとやりたい放題だった。
    熊二人が互いにげんなりした顔で見合うと、深く嘆息する。

    「失礼な!」

    「って、うわ! エヴァンさん、いたんすか!?」

    突然二人の背後に溶け出るように黒兎が姿を現す。
    周囲に漂う魔法の残滓から、二人は隠蔽魔術でこっそり回り込んだことを察する。

    「既に、もう手はつけてますよ! あの子はかなりかわいい、もとい優秀です! だから僕が推薦したんですし」

    「……厄介事にはしないで下さいよ。また始末書を書かされますよ?」

    「始末書なんてなんのその。ところでアイギス君はショタ化に興味ある? あるよね? なくてもいいよね?」

    「何一つ良くないっす!! 自分に何するつもりっすか!?」

    「ちぇー、ちょっとくらいいいじゃんかー。アイギス君のけちけち。身長縮めー」

    「邪念増し増しの呪いかけないでください?! あと、セクハラっすよ!?」

    わざとふてくされて見せながら、腹をつついたり撫でたりするエヴァンと焦って憤るアイギス。
    その両方を、達観した様子で黒熊は眺めていた。
    今日一番の盛大な溜息を吐きながら。
    午後一番、騎士団の修練場にて騎士登用試験の実戦試験が行われていた。
    地面がむき出しで四方の壁に覆われた広い修練場にて、今は一人ずつ現役の騎士との手合わせを行っている。
    午前中の筆記試験や面接を終えた俺は、受付時間の関係で最後の順番だった。
    そして、ようやく俺の名前が呼ばれ、修練場の中央に歩み出た。

    「これより、実戦試験を開始します。……準備はよろしいですか?」

    真っ白な長い洋裁にその大きな緑の肉体を包み、背中から同色の翼を広げた竜人がその碧眼を俺に向ける。
    俺は金の角と白い髪を見上げ、こくりと頷いた。
    背負ったブーメランと腰の短弓、そして二本の刀。
    その柄に、片手をかけた。

    「私の名前は、アウルム。アウルム・アブルム・ウィリデルーメン。第二騎士団所属の騎士です」

    「俺は、ヒョウカ・D・スカイクレイン。……よろしくお願いします」

    ぺこりとお辞儀をして、俺は少しだけ重心を落とした。

    「私と星々の全力を以て、お相手いたします」

    審判役の黒熊の騎士、レンゲが俺達の様子を確認して、合図の鈴を鳴らした。

    「……せっ!」

    俺は鋭い呼気と共に、地面を奔る。
    これは実戦でもなければコロシアムでの試合でもない。
    それでも、俺は握った刀に純粋な殺気を込める。

    ……斬る

    すらりと左腰の鞘から柄を引いて虎杖丸の刃を抜きながら、俺は身を横に振る。

    「はっ!」

    アウルムは俺を牽制するように自身の弓を構え、魔力の矢をつがえる。
    俺は炸裂する魔力の奔流を紙一重でかわし、更に間合いを詰め、刃を振るった。

    甲高い金属音。

    竜人の白い弓は手元で瞬時に剣へと姿を変え、白刃が俺の刀を防いでいた。
    筋力差で俺の刀は弾かれる。

    「魔法の武器……!」

    俺は勘でその場を飛びのき間合いを取る。
    宙で翻す俺の身体を、今度は槍へと変わったアウルムの武器がかすめた。
    そして、また武器を弓に変え、魔力の矢が俺を狙う。
    着地した直後、体制の整わない俺の胸に、白い一筋の奔流が飛び込んだ。

    「……破っ!」

    俺は左手でウパシトゥムチュプを引き抜き、そのまま魔力の矢を打ち払う。
    刃に触れた魔力はことごとく赤い冷気へと代わり俺の左腕を凍りつかせた。
    肘まで燃えるように煌めく氷に覆われ、その赤い光に俺の目がらんらんと輝く。

    「魔法無効化、ですか……なかなか、厄介な能力をお持ちですね」

    「……瞬時に変形する武器も大概だと思うけどなあ!」

    微笑みながら余裕を持った口調のアウルムからかなりの年長者の印象を受けながら、俺は口を尖らせる。
    俺は溜息を吐きながら左手の氷を一閃して振り払い、鞘に戻す。
    そして、今度は右手の虎杖丸を握り直した。
    ぱちり、と虎杖丸が紫電を散らしていく。

    「……次、行くぜ」

    「はい。どうぞ」

    アウルムはそっと弓を構えながら魔力を巡らせていく。
    俺は弓の狙いから外れるように大きく円を描くように走りながら、紫電の残像を残す。
    全身の白い毛が紫に光り、静電気によって逆立っていく。
    俺の赤い目が紫電によって赤紫にきらめいた。
    アウルムも集中して俺を狙い続けるが、ほんの一瞬。

    「……破ぁっ!!」

    逆光に目を細めた瞬間に、俺は咆哮と共に向きを変える。
    アウルムの反応が一瞬遅れ、矢を放つのが遅れる。
    太陽の逆光、紫電の稲光、二つの光でまともに狙いもつけられないにも関わらずアウルムは矢を放った。

    「『女神銀矢アルテミスメガレイ』」

    先程と同じ魔力の奔流。
    しかし、それは先ほどよりも正確に俺の顔面に迫る。
    魔術的な補正を感じ取った俺は、反射的に避けることを諦め、溜めていた紫電を全て光の奔流に叩きつけた。
    光と光がぶつかり合い、物理的な衝撃波を伴って霧散する。

    その、一瞬の意識の空白。
    俺は『残心』を残してアウルムの死角へと回り込む。
    残像に気配を纏わせ、自身の気配を完全に殺す俺の奥義。
    初見のアウルムは完全に俺を見失い、驚愕の表情を浮かべる。

    俺が間合いに入った瞬間、アウルムは振り返り、弓を剣へと変化させ迎え撃とうとする。
    どうやら、俺も気付かないうちに感知魔法に触れてしまったらしい。
    完全な不意打ちにはならなかったものの、このまま剣の速度勝負なら俺に分があると一合目の斬り結びで察していた。

    しかし、俺は視界の端に映った奇妙な泡を、野生の勘が告げるままに紫電でなぎ払った。

    紫電が泡の表面を貫き、水分を蒸発させると爆音と共に泡が弾け飛ぶ。
    途端に修練場内に風が吹き荒れた。

    「な……?」

    アウルムは唖然としながらも俺を庇って踏ん張っていたが、爆風をもろに受けて壁際まで吹き飛ばされる。
    その代わりに、俺は爆風を耐えることが出来た。

    「へえ……勘がいいんだなあ、ちびすけ」

    壁の上に腰かけ、煙管から煙ではなく泡を吹かせた白い犬科の獣人。
    心底楽しそうな笑みを浮かべ、ぶらぶらと足を振っていた。

    「ちょっと、レンカさん! 試験の邪魔をするなんて、何考えているんですか?!」

    眉を寄せて睨むレンゲの表情は、額の傷も相まってかなりの迫力だが、睨まれた当のレンカはまさにどこ吹く風とばかりに泡を弄んでいた。

    「そう怒んなって。今年は第二が試験担当で、人手足りないっていうから第八から駆り出されてに来たのによー。ペーパー試験の監督やら回収やらつまんねー仕事ばっかりで飽きてたんだよ。最後くらい実戦試験に参加したっていいだろー?」

    こきりと肩を鳴らし、ふわりと軽々と地面に降り立つレンカ。
    とりあえず状況の全て掴めていない俺は、わかっている事を確認することにした。

    「……じゃあ、俺はあんたをぶっ飛ばせばいいのか?」

    「お……! いいじゃねえか、話しが早い奴は嫌いじゃねえぜ」

    出来るならの話だが、とレンカは見下すような視線を向けてくる。
    平時ならかちんとくる所だが、既に俺の頭はスイッチが入っている。
    そんな安い挑発には耳を貸さず、ただレンカの身体を観察していた。

    「……なんだよ、意外と冷静じゃねえか」

    「あんた、俺と同じ匂いがする。森で育った、狩人の匂いだ」

    戦士ではなく狩人は、相手を観察しあらゆる手段を用いて合理的な狩りを行う。
    俺の嗅覚はレンカの身体に染みついた魔物や森の匂いを察知して、彼が純粋な騎士というよりも自分と同じような狩人だと直感した。
    狩人なら、獲物を怒らせて罠にはめることくらい、平気でする。

    「……面白えガキんちょだ」

    「ガキじゃねえ。ヒョウカだ」

    「俺に勝てたら、覚えてやるよ!」

    レンカはにやりと笑い、真剣な目に変わる。
    ぷかぷかといくつかの泡を吹かし始め、周囲には十を超える泡が浮遊する異常な状況だった。
    触れれば爆発することは先程分かっているが、ちょっかいをかけた時とは比べ物にならない殺気に俺の野生の勘が警鐘を鳴らし続けている。
    うかつに俺から仕掛けることはできそうになかった。

    一触即発という雰囲気に、それでも平然と割り込んでくる声があった。
    強力な身体強化の魔法を纏い、怒気を滲ませたレンゲだ。
    服をはちきれんばかりに筋肉で押し上げ、肩をいからせる様子はまさに鬼の如し。
    流石のレンカも本気のレンゲと俺の二人相手は分が悪いと思ったのか、肩をすくめて泡を霧散させる。

    「勝手に話し進めてますけど……審判の自分は許可してませんよ、レンカさん」

    レンゲは腕組みをしてレンカを睨みつける。
    面白くなさそうにレンカは特大の泡を吹かし、腕を頭の後ろで組む。
    レンゲの雰囲気が更に険悪になるが、お構いなしだった。

    「そもそもレンカさん。第八の団長の代替わりの式典が面倒だからって勝手にこっちの手伝いにきたんでしょう?」

    「あーんな堅苦しいの、やってられねえからなー。ひよっこを苛める方が楽しいだろう?」

    「動機が不純過ぎですね……」

    「お前ら第二が、真面目すぎるんじゃねえの? あー白けた。俺帰るわ」

    レンカは先程までの剣呑な雰囲気を引っ込め、最初の飄々とした表情に戻る。

    「じゃーな、ちびっこ。……名前覚えるのは、今度にしといてやるよ!」

    ひょいと特大のシャボン玉に足をかけ、それを踏み割る。
    その爆風で宙を高く舞い上がり、レンカは壁の向こうに消えていった。

    「嵐みたいな人ですねえ、相変わらず」

    アウルムは危うく怪我をさせられそうになったにも関わらず、柔和な笑みのままレンカを見送る。
    俺はやり場のなくなった殺気を仕方なく収め、ふと疑問を口にする。

    「……俺の試験、どうなるの?」

    「あー……どうしましょうね、レンゲ君」

    「……はあ」

    どっと心労を表情に出しながらレンゲは深々と溜息を吐いた。
    どうにも真面目な性格らしいレンゲには、いろいろと積るものがあるようだった。

    「まあ、さっきの動きも見ましたし……そもそもエヴァンさんがコロシアムで何度もヒョウカ君の試合は視察して実力があることはもう分かっているので、合格と言うことでいいんじゃないですかね」

    「え、いいの?」

    「はい。そもそも闘技場で何度も勝利してる時点で実力があるのは分かっていたことですし、後は基本的な事務業務の適正とかコミュニケーション力を確認する程度でしたからね」

    とはいえ、レンカさんの事はあとで上に報告してきっちり始末書書いてもらいますから、とレンゲは決意を固めた目をしている。
    俺は消化不良気味な身体の熱を持て余しながらも、嬉しさに笑顔を浮かべ、小さく拳を握った。
    「……以上が、今回の臨時登用にあたって新規登録された騎士と既存騎士の人員編成の変更のまとめです」

    第二騎士団、団長室。
    大きな窓を背に大きなデスクに書類の山を左右に築き、その隙間から差し出された資料に目を通す、まだ歳若き竜人。
    白い腹側の鱗に、赤茶けた背中側には頭頂から尻尾の先までとび色の毛がふっさりと覆っていた。

    竜人は真面目一辺倒な表情で資料に目を通して、その表情を崩す。
    そして、大きく肺からありったけの空気を吐き出した。

    「エヴァン……まさかとは思うが、職権乱用などしていないだろうな?」

    「え、何言ってるんですかガルガンだんちょー、証拠はあるんですかー?」

    鋭い視線にも黒兎はとぼけたように返す。
    しばらく視線を交錯さえるが、やがてガルガンの方が目線を外して資料に戻した。

    「最近うちの団に人員が集まりすぎな気もするんだが……?」

    「そりゃ忙しいですから、人員はいくらいても足りませんよ? ちゃんと合法的に集めてきてる優秀な部下に感謝してくださいよー」

    「その合法的な部分がひっかかると言っているんだ」

    「企業秘密です」

    「俺はお前の上司だぞ?! 報告義務はどうした!?」

    「やだなー、プライバシーの侵害ですよう?」

    「公私混同を知って……はあ……もういい。第六、第八の団長も変わり、団長間でもこれから会合やらなんやらで忙しい上に、もうすぐあの夏が来るからな……人が多いに越したことはない、か」

    そう言いながら、ガルガンは憂鬱気味に別の通達書を持ち上げる。
    そこには、『レプス・リヴァルディ ~海開きにあたっての各団への通達~』と題された一纏めの紙束だった。

    「……はあ……」

    「なーに陰気臭い顔してるんですかー。海ですよ海ー。夏ですよ―?」

    「いや、やっぱり団長の俺は首都に残りたいんだが……」

    「だめですよー。参加するように要請きてたじゃないですかー!」

    「分かってる。だから憂鬱なんだ……っ!」

    楽しげに笑うエヴァンに対し、頭を抱えるガルガンは投げ捨てるように書類を放った。
    採用者名簿と書かれた書類が押し出されるように机から落ちる。

    その名簿の末尾には第二騎士団配属者が並んでおり、ヒョウカ・D・スカイクレインの名前が記されていた。
    忠犬 Link Message Mute
    2018/08/11 9:14:26

    氷華の騎士

    トラストルさん(https://twitter.com/Trustol)主催、ファンタズマコロッセウムの交流小説です。

    騎士キャラ作ろうとしたのにやっと騎士になったのは回りくどい性格の僕のせいなのか……?

    エヴァンさん(https://twitter.com/Cait_Sith_king
    アイギスさん(https://twitter.com/Hagane_kemo
    レンゲさん(https://twitter.com/dai66ot
    アウルムさん(https://twitter.com/Seitaro15014
    レンカさん(https://twitter.com/masiki_siro
    ガルガンさん(https://twitter.com/hachidairyuo)お借りしてます。

    https://galleria.emotionflow.com/57962/458008.htmlの続き
    #ファンタズマコロッセウム #ファンコロ #ケモノ #獣人

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品