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    オンイベ中に小説書けるかなチャレンジ3 解放軍にならず者の集団をまとめ上げているテラ・マクドールは多忙であるが分身ができるわけではないのでどこかには一人いる。今日も意外なところで見られた。もとは自然岩石だっただろう本拠地の砦は、長年の風雨で侵食を受けた外形や窓に曲線を描いて、どこか仙境の趣きがあるが、そのカーブした外囲の上に碁盤をくくりつけて、棒術の師であるカイと差し向かいに正座をして、テラが碁を打っているのを、行き過ぎる解放軍のものたちがおのおのの表情で横目していく。
     碁盤をまっすぐに「置く」ことのできない、極せまい塀の上でどうやって正座しているのかちょっと見ただけでは分からない。相手のカイの方もゆるりとした片あぐらであるが、ゆるりと座ることはできない向きである。おおかた、カイが課した身体修練の一環であろう。パチ、と碁石が打たれるが、よく見ると傾いているようでもある。
     カイはちっと舌打ちをした。
    「せせこましい手を打ちやがって。」
    「恐縮です。」
     テラに碁を教えたのはカイだった。無論相手をさせるためである。が、なにぶんテラの物覚えが良すぎたため、それに、カイは碁は棒術ほどには修めていないため、テラのほうが強くなってしまったのだが、それを認めたくない師であった。健気な弟子はカイに碁で勝てないふりをしている、もう何年も。
     砦の騒がしさの中で、碁石の置かれる音が交互して、カイが煙管の灰をその辺に捨てた。テラはそれを無言で見つめて言い咎めないように努めた。しかし打ち筋が少しだけ攻撃的になった。
     座るにはバランスの悪いところに碁盤を据えたのも、カイがテラに押し付けたハンディである。旗色が悪くなってきたのでカイはそこを通りかかった若者を呼び止めた。
    「おい、お前、テラの足の裏をゲンコツで押してやれ。」
    「は? えっ……。」
    「師匠。」
     正座もかなり鍛えているテラであるが足場の悪いところでこれほど長く正座していれば、足が痺れているはずなのである。そこをつこうというのである。若い兵は相手が解放軍で一番偉い人間だと知っているのでどうしたら良いかわからない。
    「おら、さっさとやれ、ボケナスが」
    「いやっ、しかし……」
     若い兵はついに視線でテラに伺いを立てた。伺いを立てられるのはかえってテラには都合が悪い。否か諾かどちらかは言わなければならないからだ。しかしリーダーの役割とは「やれ」というか「やめろ」というかをはっきりさせるところに極まる。彼は観念した。
    「師匠のお言葉だ。やってくれ」
     若い兵は大変な恐縮を見せて、十分に躊躇したのち、「いいですか、やりますよ、本当にやりますよ」と言って、やった。テラは我慢づよいほうである、が、兵士が加減もしてくれなかったので土踏まずにゴリっと入った拳に悶絶して塀から無惨に転げ落ちた。
    「ひぇっひぇっひぇ」
     とカイは邪悪な子供のような笑い声を立てて、いそいそと碁石を動かした。
    「なんて大人げない……!」
     と若い兵士が言ってくれた、テラは弟子の分際というものがあるので思っても口には出せないのである。「じゃかあしわい!」とカイは若い兵士を追っ払った。テラはため息を出る寸前に分解しつつ塀に座り直すが、盤面はしっちゃかめっちゃかになっている。引き継いだばかりの解放軍のほうがまだマシな状況にあった気がする。そこへ、
    「テラ殿はこちらですか。」
     と、解放軍の軍師を務めるマッシュが現れた。渡りに船、とテラの顔が明るくなった。
    「マッシュ。急ぎのようだね、そうだと言ってくれると今は助かる。」
    「おう、師匠との碁の稽古がいやか。あとでみっちりしごいてくれるわ。」
     テラは悲しそうに口をつぐんだ。テラに対しては絶対権を行使する師ではあるが、解放軍のことには口出しができない。やつあたりが向かうのもあくまでテラ個人に対してであった。
    「逃げるのか? ならこの局はわしの勝ちだな。」
     テラは師匠の機嫌が良ければそれでよいので、さっさと投了を示そうとした。が、そこへマッシュがすいと腕を伸ばしてテラを止めた。何事かとテラが問う前に、マッシュが碁石を一つ拾って静かに打った。それで盤面がひっくり返ってしまったことに、テラですら分かるまで数十秒かかった。カイはテラの気配でなにかまずいことをされたと分かるらしいが、だからといってどうすればいいのかはわからない。
    「カイどのの詰みです。テラどのを連れて行って構いませんね?」
     カイは大仰に腕を組んでフンッと鼻を鳴らした。「勝手にするが良いわ」と負け惜しみも添えた。テラとマッシュが去る後ろで晩の上をしばらくじろじろ見ているのだった。
     テラとマッシュはならんでえれべーたに乗り込んだ。他に乗客はいない。
    「君も碁を打つんだね、マッシュ。」
    「当然です。」
    「僕は別に師匠に負けても悔しくない。構わないで良かったんだが」
    「いいえ、勝ってもらわなければ。」
     ちん、とえれべーたが4階について、ドアが開いた。
    「……勝たせないと私の気が済まないのです。」
     碁のことかもしれないが、おそらくは戦争のことなのだった。テラは小さく息をついて、不条理な棋譜の事を頭からさっぱり消した。
    goban_a Link Message Mute
    2022/12/11 23:03:57

    オンイベ中に小説書けるかなチャレンジ3

    3本目
    よんさまとにすを曇らせたままなのだ
    でもマッシュ先生とお師匠様とぼちが書きたい気がする
    ぼち…テラ

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