女王が見出だした魔性ジャガイモ畑に紛れ込んだ小石。
それがあの子──ユウに対して抱いた最初の感想だった。
肉体的な性別は男でも女でもない、と初めて聞いた時はとても驚いた。
『そういう病気』の存在は一応知っていたけれど、こんな形で『実物』を見ることになるとは思いもしなかった。
遠目に眺めている内にエペルの『指導』が一区切りついたら次はあの子を、と一考するようになった。
──今思えばとても不純な動機だ。
この頃のアタシが見ていたのはあの子の身体的特徴だけ。
要は身体目当て、という奴だ。
「どちらでもない身体は仲間外れの理由にしかならない」と徐に呟いたあの子の顔は今でも鮮明に覚えている。
憂い、寂しさ、諦め。
ほんの一瞬とはいえその顔に美しさを見出だしてしまった己をこの時ばかりは恨んだ。
アタシはあの子との向き合い方を変えた。
どちらでもない身体だからこそ出来ることを教え、挑戦する意欲を尊重した。
それを続けていく内にアタシは気づいた。
あの子の魅力は男物も女物も違和感なく着こなせる絶妙なプロポーション、だけではないことに。
素直、直向き、懸命。
そして無邪気に振り撒く純粋な好意。
あの子はこれが依存性の高い毒であることを理解していない。
扱い方を叩き込み、男も女も魅了する魔性の宝石に磨き上げること。
それが現状の目標。
──さぁ、今日もレッスンに励みましょう?