はじめての「……監督生ってさー、ケイト先輩と付き合ってるんだよな?」
「そう、だけど……どうしたの?改まって」
「キスとかしたの?」
「きっ……!?」
顔を真っ赤にして黙り込む監督生を見たエースは意地の悪い笑みを浮かべる。
「へぇ~まだなのか~」
「だ、だって、今までする機会とか、全然無かったし……」
「ハイそれウブ丸出しの発言~ファーストキスはエレメンタリースクールの内に済ませておくものなんです~」
「自分別世界出身ですから!」
「ハイハイそうでしたねー」
監督生の反論を雑に流し、エースは溜め息を吐く。
「てかさー、お前がそんなだからケイト先輩も迂闊に手を出せないんじゃね?」
「う、」
「そうと分かればここは一つ大胆に……な?」
「他人事だと思って適当なことを……」
「違いますー、マブダチからの真摯なアドバイスですー」
呆れ気味に言いながらエースは唇を尖らせた。
「っあー、もう疲れたー……ユウちゃんセラピーさせてー……」
「何と言うか……今日は相当キてますね、ケイト先輩……」
後ろからしっかりと抱き締め、肩口に顔を埋めて疲れきった声を発するケイトの姿に監督生は微笑を浮かべる。
「今日は何が大変だったんですか?」
「リリアちゃんとカリムくんの突拍子も無い思いつきへのツッコミー……」
「あー軽音部の……お疲れ様です……」
「うんありがとー……」
労いの言葉を掛け、監督生はケイトの頭を優しく撫でる。
「……あ、あの、ケイト先輩」
「うん?な──」
意を決してキスを試みた監督生の唇はタイミング悪く顔を上げたケイトの顎に当たる。
「に、」
「……ご、ごごご、ごめんなさい!失敗し──」
大慌てで誤魔化そうとする監督生の頬を撫で、ケイトは目を細める。
「け、ケイトせんぱ──」
紡ぐ筈だった言葉は、呼ぶ筈だった名前は、重ねられた唇の間に閉じ込められた。
「────、」
正真正銘のファーストキスを奪われた監督生は頬を赤く染めたまま呆然とする。
「奪っちゃったー、なーんてね」
「あ、あああ、あの、」
「──ねぇユウちゃん」
監督生の髪を指先で弄びながらケイトは微笑む。
「もう一回、しても良い?」
「──っ、は、はい……」
再び重ねられた唇は数秒の間を置い離れる。
「……うん、今日はここまでにしておこっか」
「こ、ここまでって……?」
「お楽しみはまだまだこれからってことだよ」
監督生の唇を指でなぞりながらケイトは笑みを深くした。