見初められ、捕えられ綺麗だけどちょっと怖そうな感じがするその人はポムフィオーレの寮長でマジカメのフォロワー五百万人超えのトップモデル。
自分より二つ学年が上で、高嶺の花と呼ぶべき人。
どういうワケかその人は自分のことを気に入ったらしく、色々と世話を焼いてくれる。
身嗜みを整えたり、勉強を教えてくれたり、ハードな個人レッスンをしてくれたり。
監督生は構い甲斐がある後輩だからつい面倒を見たくなると言っていたのはどの先輩だったか。
ともかく自分にとってその人──ヴィル先輩は面倒見の良い先輩の一人、だった。
「アタシの恋人になりなさい」
少なくともこんなド直球の告白をされるまでは。
「…………え?」
「何よその間抜け面は」
「間抜け面をさせた張本人が言って良いことじゃないと思うんですがそれは」
「一理ある言い分だけどそれはそれとして生意気よ」
「ひひゃいへふ」
頬を抓る指の力は思いの外強く、割と本気で痛い。
「……赤面ぐらいしなさいよ、このニブチン」
「へ、」
ぽかんとしている間に頬から指を離され、顎を持ち上げられる。
「──で、返事は?」
「えっと……」
「しらばっくれたらまた抓るわよ」
「横暴……」
「良いからさっさと答えなさい」
綺麗な顔が眼前に迫る。
鼻腔をくすぐる仄かな香りは香水のそれだろうか。
「……拒否なんて、させてくれない癖に」
「よく分かっているじゃない」
納得のいく回答を得られたからかヴィル先輩はにんまりとした笑みを浮かべている。
「それじゃあ話も済んだことだし、今日のレッスンを始めるわよ」
「恋人だから手心を加えてくれる……なんてことは」
「勿論無いわよ」
「デスヨネー」
「その代わり」
腰に腕を回し、軽々と持ち上げる。
「レッスンが終わったらたっぷり甘やかしてあげるわよ。アタシの部屋でね」
「ひょえ、」
前々から思っていたことだけど、この人物凄く押しが強いタイプだな。
嫌じゃないけど。