What is your gender?「いよいよもって男か女かを一目で見分けるのが難しくなってきたな」
「……それ、誉めてませんよね?」
「さてどうだろうな」
煙に巻くようなジャミルの言い草に監督生は溜め息を吐く。
「ジャミル先輩は髪が長くても短くても男の人だってことが一目で分かりますね」
「何だ、仕返しのつもりか?」
「純粋な感想ですよ」
不服そうな顔をする監督生に対し、ジャミルはくつくつと笑う。
「カリム先輩は……髪を伸ばしたらどっちか分からなくなりそう……?」
「急にどうした、ストレスで頭がバグったか?」
「そんなガチめの心配をされるようなことを言ったつもりは無いんですけど」
「君がいつも以上に変なことを言うからだ」
「猫被り止めてから辛辣さが顕著になりましたね」
「話を脱線させるんじゃない。良いか、髪が長かろうと短かろうとカリムは男に──」
「……ジャミル先輩?」
突然ジャミルが言葉を詰まらせたことに監督生は首を傾げる。
「お、ユウも一緒にいたのか」
「あぁカリムせんぱ──ってどうしたんですかその髪!?」
「コレか?錬金術の授業でやらかした!」
肩にかかる髪の一房を指で弄びながらカリムはからからと笑う。
「えっと……大丈夫なんですか?これ」
「切っても問題ないってクルーウェル先生は言ってたな」
「ならすぐに散髪の準備を──」
「待ちなさい」
頭に置かれた手から伝わる力の強さにジャミルは青ざめる。
「散髪は写真を何枚か撮ってからでも遅くないでしょう?」
「…………そう、ですね」
「お、写真か?良いぞ!」
「いやいやカリム先輩、快諾する前にジャミル先輩がヴィル先輩に圧を掛けられてる現状に触れましょう?」
監督生の指摘にカリムは首を傾げた。
「ところでアンタ、ジャミルと何を話していたの?」
写真撮影と散髪を終えてカリムたちと別れた後、不意にヴィルが投げ掛けてきた問いに監督生はきょとんとする。
「えっと……髪型の話を」
「髪型、ねぇ」
「その時ちょうど話題にしてたロングヘアのカリム先輩が突然現れてびっくりしました」
「噂をすれば何とやら、って奴ね」
「タイムリー過ぎてジャミル先輩は言葉を失ってました」
「それだけが原因じゃないと思うわよ」
「え?」
「髪型一つで変わるものはアンタが思う以上に多いのよ、よく覚えておきなさい」