あまく、ひろがる 少しずつ冬へと向かおうとしている秋半ばの暖かな午後。
お休みだからと私物の日用品を買いに出た先で秋の味覚のアイスを見つけた。
甘いものは大好きだ。
そして秋のスイーツは美味しいものが多い。
ふらふらと吸い寄せられるようにアイスクリーム店に歩み寄り、私はそのまま秋の新フレーバー3種をトリプルで買ってしまった。
日向のベンチに腰かけて、まずは一口ずつ口に運ぶ。
和栗、安納芋、南瓜。
どれも甘くて美味しくて。自然と笑みが浮かぶ。
「こんなところで何をしている」
突然聞こえた声に顔を上げれば、ポー先生とラヴクラフト先生の姿。
「アイス……」
「ん?なんだ、アイスを食べてニヤニヤとだらしのない顔をしていたのか」
めざとくアイスに気付いたラヴクラフト先生の呟きに、ポー先生が呆れたように私を見た。
いや、それより……
「あっ、あの!私そんなににやけてましたか?!」
慌てて問えばポー先生はニヤリと口許に笑みを浮かべた。無言の肯定……私は肩を落とす。
「ポー様、アイス」
「先ほど食べたばかりだろう」
じっと私の手元を見ていたラヴクラフト先生の訴えは、ポー先生に即刻拒否された。しょんぼりしてしまったように見えるラヴクラフト先生がかわいそうになって、私はアイスを少しスプーンにすくった。
「一口ずつでよければどうぞ」
そう言って差し出せば、身を屈めたラヴクラフト先生がパクリとそれを口に含んだ。そして、ベンチの私の隣へと腰を下ろし再び口を開いて無言で催促する。
大型犬におやつをあげているような気分になり、私は他のフレーバーもすくって一口、二口と口に運んだ。
「貴様ら……」
盛大な溜息が聞こえて、私は振り向いた。
腕組みをし呆れた顔をしたポー先生が私たちに視線を落としている。
「何をしている」
「何って……」
ラヴクラフト先生がアイスを食べたそうだったからスプーンですくって一口ずつ………………
あれ?
「アッ!」
かぁっと顔が熱を持つ。
私、今何をした?
「アイス、溶けます」
アイスが溶ける心配をするラヴクラフト先生にカップを押し付け、私は赤くなっているであろう頬を両手で包み込んだ。
チラと隣を盗み見れば、アイスを食べながら私を見ていたラヴクラフト先生と視線が合って、不意にスプーンがこちらへと向けられる。
「え?」
「ハワードが食べさせてやるそうだぞ」
面白いものを見たという顔でポー先生がにんまりと笑みを浮かべる。
ラヴクラフト先生は、ずいっと私の口許にアイスの載ったスプーンを近付ける。
拒否権のない私は素直に口を開くしかなかった。