11月11日「というわけで、こちらをドウゾ」
にこにこと楽しげな笑みを浮かべながら差し出されたものに、さてどこからツッこめばばよいだろうかと私は溜め息を吐いた。
カレンダーは11月11日を示していて、指先に挟まれこちらに向けて存在を主張しているのがチョコレートを纏う細長い菓子ということは、これは『ポッキーゲーム』と呼ばれるものへの誘いなのだろうけれど……
「どうして青くしちゃったんですか?」
「オヤ、アナタの興味はそこなのですか」
「他にもツッコミどころ満載ですよ!」
私の問いに乱歩先生が目を瞠ってくすりと笑う。
「ふむ……まあ、そんなことはどうでもよろしい。サアサア、司書さんドウゾ」
ずいと私の方へと近付く青色になったポッキー。ドウゾじゃない!と渋い顔をして見せても、乱歩先生は引き下がらない。
仕方がない……と口を開ければ、目の前の顔がにんまりと笑みを浮かべた。
「アナタ、そんなに素直だと簡単に騙されてしまいますよ」
え?と目を瞬かせた私の唇に触れたのはポッキーではなかった。
「このように、ね」
ああ、今のは乱歩先生の唇だったのかと思い当たり、私は目を瞠る。何をするのだと抗議しようと開いた口の中へと差し込まれたのは、青いチョコを纏うポッキー。
「フフフ……では、ゲームを楽しむことにいたしましよう」
やけに嬉しそうな声が耳に届いた。