すいーと きゃんでぃ 舌の上に、ふわりと甘い風味が広がった。
買い物中に新製品と書かれたアイスキャンディを見かけた。
すれ違った女の子たちが、そのアイスが美味しくて最近話題になっている。なんて話をしていたものだから、気になってついつい買ってしまったのだ。
「なんだか幸せそうな顔をしてるね」
不意にかけられた声に視線を向ければ、綺麗なオッドアイがこちらに向けられていた。
「キャロルせんせっ!」
びっくりさせてごめんね、と言って先生は私の向かいの席へと座った。
「通りがかったら、君が今にも溶けてしまいそうな顔でそれを頬張っていたものだから、つい」
テーブルに頬杖をついたキャロル先生が、クスクスと悪戯っぽく笑う。
「っ!」
そんなにだらしない顔をしていたのかと頬が熱くなるのを感じて、私は慌てて視線を反らした。
「君を幸せな気持ちにさせたのは、それかな?」
キャロル先生の視線が私の顔から手元のアイスへと移る。
食べかけの、あと数口分ほどが残っているアイスキャンディ。それを見てキャロル先生はにっこりと目を細めた。
「僕が途中で声をかけてしまったから、アイスが今にも溶けてしまいそうだ」
「え?あっ!」
すっと伸ばされたのは先生の手。
何だろうと思っているうちに、キャロル先生の手が私の手をそっと取った。
「うん。これは、君があんな顔になるのも分かる気がするよ」
残りのアイスを食べてしまった先生が、突然のことに驚いている私に笑いかけた。
「だけど……」
不意に低くなった声音に、え?と顔を向けた途端、唇に何かが触れた。
そして……
冷たくて、甘い風味が口の中にふわりと広がる。
「君に溶けた顔をさせるのは、アイスじゃなくて僕の仕事のはずだよね、違う?」
離れた唇が囁くように、そう告げた。