(当主)「 晴明、お前がここにいるなら話は別だ、今すぐここで決着をつけろ!」
(晴明)「 …残念ながら今は【夜鳥子】を連れてない以上、ここでの無意味なお相手は出来ません。 …いずれあなた方にも、このまま実力が及ばないなどとあれば、困りますからね。
(季子)
「 まさか、このまま逃げる気!?」
(朱星ノ皇子)「 いや..、まずは彼女が居なければ、これ以上、僕らとの話も彼の求めるものにとって進められない。下手に手を出さない様子を見ると、」
「 おそらくね。」
(晴明)「 ……。」
“ やはり世代を重ねる事に一族の力は強固に増してゆく。”
(晴明)
「 これは、先の将来が楽しみですね。」
(鬼頭)「 ……? あららら、結局静かに終わっちゃうワケ? 甘いなぁ、晴明は。なんなら俺がいっちょド派手に晴明の代わりに暴れちゃってもいいんだぜ? 」
(晴明)「 ……。それはまたの機会に 」
「 ───… 」
(黄川人)(姿を解く)「 …………。」
(晴明)
「 ──…私は400年前、何者かに一度殺され気が付いた時には不死身の体を背負わされていました。」
「 その時すでに夜鳥子のものと思われる式神達を連れていて いつ、誰が 何のためにそんな事をしたのか真実が知りたいのです 」
(晴明)
「 その為にはあの者の存在が必要不可欠なのです。今度の3月の【百鬼祭り】には必ず彼女をここへ連れてきてください。
…でなければ、あなた方にかけた呪いも永久に解かれることは無いでしょう 」
ドックン…ッ。(蛇のアザが暴れ出す)
(心臓)
(伊吹)「 …⁉︎」
(鬼頭)
「 なぁなぁ晴明、今度の祭りは千発花火でもドカーンッと派手に打ち上げるか?その方が戦いも盛り上がるだろ?みんなでた~まや~!なんてな。いい名案だろ?」
(当主)「 …お前だけは…絶対に…っ 」
….!
当主達の怒りが限界に達した時だった。
(万里)
「 ふざけるなっ!晴明‼︎ 」
(晴明)「!」
(全員)「⁉︎」
(飛び掛かる)
(万里)「 ..!はあぁぁっ‼︎ 」
(伊吹)「 …⁉︎ よせっ 万里…っ!!」
(晴明)「 おや? フフ…。」
────!!
「ガキィッ..!!!」
拳の一撃が見えない結界に弾き返された。
(万里)「!? くっ…!」
……ズザザッ!!
(晴明)「 無駄ですよ 」
(鬼頭)「 おーこわ。威勢のいい姉ちゃんだぜ、でも嫌いじゃないね 俺は 」
(万里)「 晴明っ!あんたが過去に…夜鳥子との間で何があったのかは知らないけどね、あたしら一族 あんたの過去なんて興味なんかないんだよ。それよりも… 」
「 あんたがかけたこの二つの呪いのせいで父さまは…皆が…… 」
言動からあとの気持ちを汲み取り当主は万が一、万里への危害を避ける為、戦闘行為を一旦制止させた。
(当主)「 万里、それ以上 今は下がれ。」
(伊吹)
「 御当主… 」
(季子)「 ……。」
(当主)「 晴明、言われなくとも俺達はいつか必ずお前の元へ行く。…この短命と種絶の二つの呪い、いまここにいる全員の命は、先祖が屍を積み重ね続け、
人ひとり 死ぬたびお前に苦しめられてきた呪いの連鎖は.. 」
お前の命を討たないかぎり・・・
(当主)
「 忘れるな、子孫の復讐はこのまま呪いに消えて終わらせるつもりは無い。たとえ、」
(晴明)「 ………。」
「 不死身の肉体を持っていようと、人の命の尊さを悪戯に遊ぶお前が今更 過去の体を受け入れられぬ僻みなどと笑わせるな。」
(当主)
「 その首、念入りに洗って今すぐ待っていろ 」
…ヒュンッ!!
(弓矢)
ズカッ‼︎‼︎
(コーちん)「 当主様ッ!」
(晴明)「 おっと、……いきなり不意打ちとは…中々貴方も油断できませんね、御当主。」
「 ですが、楽しみです。本当にあなた方なら私の探している真実に少しは近づけるかもしれません。」
(当主)「 退け、晴明。」
(黄川人)「 今は戦う気がないなら、これ以上の長居は無用だろ? 」
(晴明)
「 えぇ、では皆さん 今度の百鬼祭り楽しみにお待ちしていますよ。」
────────…。
(万里)
「 …っ!おのれ… 」
(季子)「 今度こそあいつの首を討ち取って皆の仇を討たなきゃ 」
(当主)「 ……。」
(黄川人)「 君たちもこれ以上の長居は危険だ。彼にはもう”時間”がない 」(ある人物に目をやる)
(伊吹)「 …っ!」
ガッ!!
(当主)「!? 伊吹…っ!! 」
(季子)「 父上っ!! 」
倒れ掛かる体を支えるように槍を突き立て伊吹は呼吸も次第に早くなっていた。
(伊吹)「 御当主。…お願いです、季子達を連れて先に帰還して下さい。俺はどのみちもう長くは… 」
(当主)「 …!」
伊吹の言葉は病人を捨てでも今すぐ行って欲しいという風にも聞こえた。
(季子)
「 そんなっ!?父様っ!嫌ッ… 」
(伊吹)「 季子、約束したはずだ。何があってもこの先一度戦いに出ればお前も泣くことは許さん 」
(コーちん)「 ……、当主様 」
(黄川人)「 立派な心構えだろうけど 」
「 ………。」
(何も言わず伊吹の腕を自分の肩にかける)
(当主)
「 季子、伊吹の槍はお前が持つんだ。」
(季子)「 当主様… 」
(伊吹)
「 御当主、なぜ… 俺にかまわず 」
(当主)
「 …短命に呪われて死んでまで、【鬼】なんかになるな。」
(伊吹)「 …!」
そう、何代前かの子孫の中には死期が近い仲間を迷宮へ残しそのまま戦地で死ぬことを本望とする先祖も中には存在した。
しかし、その先で待っていたのは
迷宮の鬼達にその屍をむさぼられ、
無残にも亡霊となって今もまだ何処かで彷徨い続けているという。
(当主)「 あんたがそんな風な事を言ったら、季子や父上達、武比古さんが悲しむ…っ!!」
(伊吹)「 御当主…。」
(当主)
「 走るぞっ 二人とも!急いで帰還だ 」
(二人)「 はいっ 」
……───────────────。
─────(天界) ─────
一方、
これまで下界で起きていた当主達の今回の一部始終は、既に天界の神々の目に届いていた。
※【太照天 昼子】
(天界最高神の女神)
「 ……….、百鬼祭り以外で晴明がかの一族と接触をするなんて もしかしたら焦っているのかもしれませんね。」
ヒソヒソ…。
【やたノ黒蝿】「 …奴の所持しているあの【鬼頭】とかいう奇妙な面、あれは神の手による神器ゆえに持ち主の内に秘めた欲望を顕在化し、理性を奪うもの。だが、アレは元々… 」
コツ…。
(???)「 400年もの間、不死身の体を持ってしまった晴明が己の出生の秘密と両親を知る鍵となる夜鳥子を引きずり出すため、あの一族を罠にはめたこと。その為の彼女の復活と【反魂の儀】をあえて許したのは何故です?昼子。」
※【反魂の儀】
(自分の命と引き換えに死者を再びこの世に蘇らせる術)
※【太照天 夕子】
(昼子が天界につく前の前最高神)
「 ……夜鳥子自身、あの女陰陽士がこの天界にどれだけの影響を与えたか、400年前…よもやあの男との罪を忘れたわけでは無いでしょう 」
【氷ノ皇子】「 奴の存在か…。」
消えた存在そのもの。
天界から完全に抹消され、今はその名を呼ぶことさえ許されない
かつて 大いなる力をもった男神だった。
(昼子)「 夜鳥子さんは、晴明との関わりが最も深い人。出来ることならかの一族を再びあのような運命に巻き込みたくはなかった 」
「 ですが… 数百年前、今の彼らの祖先は以前、“ 朱点童子 ”との戦いの中で短命の呪いを背負った一族としてすでにあの時代、晴明とは相反する者の存在として顔見知りでした。」
朱点との戦いから数百年…。
(昼子)「 一度はその呪いから解き放たれたとはいえ、今再びこのような事態になる事はこれも何かの因縁に結び付けられていたのかもしれません。
「 いずれ晴明が己の出生の秘密を探るのも夜鳥子さんの復活はどの道、天界も避けて通れない事態になっていたことです 」
(???)
「 ……それにしたって 神様ってのは、随分とおかしな連中やら身勝手な奴らばかりってのが妥当だね。
本当は罪を主張するなら天界にだって少しは責任あるんじゃないのかい?」
(氷ノ皇子)「 黄川人。」
(夕子側につく神々)「 …!」
(黄川人)「 姉さんも姉さんだけど、どっちかってったら、こっちのやり方は昔からあんたらだって僕は気に入らないさ。」
「 神々の勢力争いに振り回されるのはいつだって人間だ。」
(黄川人)
「 なにせ僕が言うんだから。」
【十六夜 伏丸】
「 何だと!貴様…っ!! 」
(昼子)「 黄川人、まだ肝心の調査の方は終わってないのでしょう? 」
(姿を変える)「 … ───。」
(朱星ノ皇子)「 現に二つの勢力、【保守派】と【改革派】にいがみ合ってる天界もこれだから何も知らない彼らにも少しは同情するってもんさ。」
「 姉さん、今あなただってこいつら以上に何か企んでるんでしょ?」
(氷ノ皇子)「 黄川人 …今、そのような話は。」
(朱星ノ皇子)
「 疑ってるわけじゃないんだ。けど、僕にはどうしてもこうなる事態をあらかじめ予測していたんじゃないかって思えてね、現に僕を“黄川人”として再びあの一族に使いをよこさせたのも 」
「 晴明が夜鳥子さんを探していると知った時、やけにあっさりと彼女の封印をあなたが解いたのも、彼らの為に反魂の儀をさせた動機が引っかかるんだ。」
(朱星ノ皇子)「 これも貴方が何かの因縁に仕組んだものなんじゃないの? 」
黄川人の言葉に天界の神々の視線が全員 昼子に向いた。
(神々)
「 ザワザワ…。」
【おぼろ 幻八】「 ……確かにこの方の言う、私もその辺の昼子様のお考えには興味ありますね。」
【黄黒天 吠丸】「 どうなんだ?昼子。」
(昼子)
「 ───…考えすぎですよ。確かにあなたは以前、彼ら一族と深い因縁をもった関係にいましたが、今は人間への先導役ではあなただからこそできる、あちら側の世界の彼らと情報も共有しやすいと思ったからです。」
(昼子)「 …朱点との戦いから少なくとも黄川人、あなたにもあの二つの呪いに関しては責任もあります。」
「 どんな形であれ、昔のあなたを本当の意味で救ったのは彼ら一族なんですから調査に協力するのは当然の事です 」
(朱星ノ皇子)「 ………。」
(昼子)「 私が、夜鳥子さんの封印を解いたのは、本来 何の罪もない彼らの無念をはらすため。
当時、晴明は 都におさめられていた【祭具】窃盗の罪を彼らに着せ、一族は帝の前で全員罪人扱いとして処刑されました。」
「 それも全て彼女を引きずり出すために仕組まれたこと 」
(昼子)「 そうすれば私が再び彼らを蘇らせるため、黄川人に反魂の儀を行える夜鳥子さんを通じて彼女の封印を解除せざるを得ない。
いずれこうする判断を、彼は見越してやったまでですから誤解はしないで下さい。」
(やたノ黒蝿)
「 なら、奴が夜鳥子にこだわるのは 」
(太照天夕子)
「 晴明が彼女の■■■■■だと言いたいからですか? 」
(昼子)「 事実上、彼の行動には少しばかり気にかかるのも理由の一つです。」
(朱星ノ皇子)「 けど、それは天界の連中だって知っている奴らもいる。だけど姉さんは今までそんな表面上の調査をしていたわけじゃなかったんだろ、きっと 」
「 彼らの力を借りてまで…夜鳥子さんって本当は何者なんだ? 」
(昼子)「 ………。」
(氷ノ皇子)「 昼子、あまり隠し立てしてもますます天界に混乱を招きかねぬ….。お前もまた、晴明とは違う理由において一族を利用していることは少なくともここにいる者達、みな薄々感づいている。……そろそろ話したらどうだ 」
氷ノ皇子の言葉に昼子は少しだけ胸の内を明かした。
(昼子)「 …えぇ、やはりこのまま話さない訳にもいきませんね…。確かに私は、晴明を討たせるため、これまで何度も命の転生による方法で力を維持してきた彼女の【転生能力】、【素質】には我々神ですら計り知れない可能性の秘密と、これは夜鳥子さんの力の解明に携わる私個人の見解であり、そうして見守る中で彼ら一族との行動が最も重要であると思ったからなんです。」
「 ただ…昔、あの男神のやろうとしていた事は、その事により夜鳥子さんの陰陽士としての優れた力が、“ 神が人間へと転生可能 ”な世の中が拓けたとすれば、今の天界はもっと違った世界で存在できたのかもしれません。」
(昼子)「 ですから、これは私自身の個人的な興味なだけで今の天界をどうこうと言うわけではありません。」
【月光天 ヨミ】
「 バカな、そのようなこと 」
【石猿 田衛門】
「 昼子姐さん、お前さんまさか あの男の戯言を本気にしてるんじゃあねぇだろうな? 」
【敦賀ノ真名姫】
「 昼子ちゃん…。」
(氷ノ皇子)「 ………。」
【鷲ノ宮 星彦】
「 だが その様な夢事、本当に実現できるものなら私たちはこんな…何百年も織姫と離れ離れにならずにすむのか 」
【琴ノ宮 織姫】
「 たとえ神の地位を捨てられるものなら.. 私達はこんな 互いを想うだけの日々なんて… 人に戻れるならどんなに幸せなのかしら 」
【ト玉ノ壱与】「 ……。昼子様、」
(昼子)「 分かってます。……ですが今、晴明の考えていることは恐らく、いずれ彼と同じような惨劇を再び招きかねない危険な領域まで踏み込んでいるのも確かです。
「 あの者が全ての真実を知った時、【鬼頭】は我々にとって危険な存在になるでしょう 」
(昼子)「 それを阻止するためにも、今は彼ら一族の安寧を取り戻さねばなりません。その為の夜鳥子さんや私達も全面的協力を惜しまないつもりです 」
(太照天夕子)「 ───…貴女の言い分はわかりました。しかし、我々天界の神として夜鳥子の封印を解いてしまったこと、いずれ取り返しのつかない事にならないとも言いきれません 」
「 かの一族にそれを止められるか、やはり納得出来ない者もいるでしょう。」
(昼子)「 では、彼らの信用を試す為にも一度地上界へ降りるのもいいでしょう。」
「 ですが、どんなに納得できない理由があっても三度まで。一族の力を試し、その都度三回負けた時はいさぎよく彼らを信用すると、天界への帰還を強制させます。」
【印虎 ひかる】
「 ふん、面白い。丁度 体が鈍っていたところだ。許しが出ればすべてを焼き尽くすまで 」
【敦賀ノ真名姫】
「 …あたしは別に信用してないわけじゃないけど、あの子達とは懐かしい思い出みたいなのもあるから。昼子ちゃん鍛えてほしいって気持ちもあるんでしょ? 」
【九尾吊 お紺】
「 そういうことなら あたしもあの子達にはずいぶん世話になったからねぇ、たっぷり奉納点を稼がせたげるよ。コ───ン!」
【氷ノ皇子】「 ならば私も行こう。事情は知ってるゆえ、力になれるやもしれぬ 」
【十六夜 伏丸】
「 悪いが、俺はどっちでもねぇ。だが、夜鳥子が来るってんなら、久々に暴れてやるぜ 」
【太刀風 五郎】
「 俺もあの女には色々と痛い目に遭ってるからな。」
【雷電 五郎】
「 ついでにまたあのガキ共のお守りと稽古、鍛え直してやるか。グハハハッ!また昔を思い出すぜ。なぁ、兄弟 」
【赤猫 お夏】
「 あたしゃ こんなとこ 退屈で絶対に天界になんか戻んないよ!…それよりもサ、また火遊びでもしてやろうか?ニャッハハハハ!!」
(昼子)「 では、異議のある者は各々地上界へ。黄川人、彼らの事 よろしく頼みましたよ 」
(朱星ノ皇子)「 ……はぁ~あ、全く姉さんは人(神)使いの荒い…それに、今は ” 黄川人 ” じゃなくて皇子なんだけど。───…気まぐれな女帝を姉に持つ弟の気苦労を少しは分かってほしいね 」
だが昼子は気にも止めない満面な笑顔で微笑んだ。
(昼子)「 頼みましたよ。」
そして
1ヶ月が経過した。
(討伐部隊の帰還)
(銀兵)「 当主様、お帰りなさいませ …!? 」
(光輝)「!! 伊吹っ…!」
(麟子)「 …っ!しっかりして 」
(当主)「 すぐに休ませる。コーちん、薬を持ってきてくれ 」
(コーチン)「 うんっ 」
────奥の部屋────
カタ…
(コーちん)「 当主様、伊吹様の薬だよ 」
(当主)「 ありがとう。……少し起こします、」
(伊吹)「 当主様、こんな高価な薬… ダメです…今の俺に使わないで下さい…。」
(当主)
「 薬より体の方が大事です。」