レクイエム人死にします。グロです。要注意。
ぎちぎちとした音が倉庫内に響いた。すすり泣くようなうめき声と、ジャラジャラとした金属の擦れる音。
何人かの屈強な男達。髪を振り乱した女も混じり、全員口を塞がれ、鎖で縛り上げられては、天井から同じように吊り下げられていた。
その人間たちを、見上げるように眺める針鼠が一人。品定めをするかのように顎に手を当てては、じっとりとねめ上げながら視線を送っていた。
身体は闇のように黒く。瞳は新緑を思わせるような緑。背丈は1メートルほどの子供のような大きさながら、その眼光は鋭い光を持っていた。
その黒い針鼠は、ダークと呼ばれ、とある針鼠から分離した、人格の一体だった。
「さーて 誰からにするかな」
とことこと、軽い足音を立てながら、ぶら下がっている大人達の足を叩いてはおもちゃのように弄ぶ。しくしくと泣く者。もごもごと何かを話ししている者。中にはすでに意識を手放した者もいた。
「じゃあ、お前からかな。お前は…確か。近所の子供を攫って、いたずらした挙げ句に、殺して埋めたんだったか」
ダークは一人の男の足元に立つと、その顔を見上げた。若いその男は、口をふさがれたまま、ふるふると首を振る。
「この期に及んで嘘なんかつくのか?そういうことはやめたほうがいいぜ。罪の上塗りって言葉、知ってるか?」
ガクガクと震えるような男に、笑顔を見せながらダークは続ける。
「ああ、あれは恥の上塗りって言葉だったかな。ま、どっちでもいいか。いたずらされた子供の気持ちを思うと、やりきれないぜ。お前ももちろん、そう思うだろ?」
若い男は返事もできず、ウンウンと首を縦に振る。
ダークはまるで無邪気な子供のような笑顔を男に向ける。
「そうだよな。首しめられて、埋められて。両親のとこにも帰れずに。お前も同じ目に合わないと。フェアじゃないだろ?」
そう言うと、ダークは男の首から天井へのびた縄の終わりに手を伸ばし、思い切り引き下げた。
ものすごい勢いと力で引きずりあげられ、天井に激突した男は悲鳴を上げる暇もなく、首の骨を折られて絶命する。
「ああ、かわいそうに。首がしまる前に、折れちまった。子供の首は締まる前に折れるっていうから、同じ目といえばそうだな。あとで埋めておいてやるか」
けらけらとダークは笑う。そんな光景が何度か繰り返された。
詐欺をはたらき、女性を殺した者は、同じように腹を割かれて死んだ。
道端で誰でもいい、と人を刺して殺した者は、自分で使ったナイフで滅多刺しになって死んだ。
女性を強姦した挙げ句に、殺した者は、股間の急所を潰されて絶命した。
どれもこれも、断末魔のようなくぐもった声を発し、一人ひとり殺されていく。
「Good song. ♫ いい声だな。癒やしの音楽を聞いてるみたいだ」
足元に広がる死屍累々を踏みつけながら、ダークはダンスを踊り始める。
その時だ。
扉が破壊され、倉庫内へ飛び込む一人の男が現れた。黒い肢体に赤いラインが走る、一匹の針鼠。一直線にダークへと駆け寄ると、渾身の一撃を叩き込んだ。不意をつかれ、一瞬飛び退くのが遅くなったダークは、その一撃を払いきれずに倉庫の端まで弾け飛んだ。
「そこまでだ。貴様、何をしているのかわかっているのか」
ガラガラと、倉庫の端に積まれたガラクタの積荷のような山から、ダークソニックがゆっくりと立ち上がる。大したダメージにはならず、不意を突かれた自分の油断にじわじわと笑いがこみ上げ始めた。くくっと含むような笑いを見せる。
「ようシャドウ。こんなところで奇遇じゃないか。お前も一緒にやるか?この世のゴミムシを潰すのは気持ちがいいぜ?」
「断る」
「つれないね…。お前だったらきっとわかってくれるかと思っていたのに」
大口径の銃を構えながら、シャドウはダークとの距離をとる。肉弾戦に持ち込めば、お互い実力が拮抗しているのだ。消耗戦は避けられないだろう。
「理解するつもりも、同意するつもりもない。むしろ、ヤツが貴様のようなやつを野放しにしているほうが問題だ」
「ああ、オリジンのことか?アイツは優しいやつだからさ。こういうことはやらないだろ?やりたい気持ちはきっとあるのに、「理性」だの、「倫理」だのが邪魔をして、同じようには絶対できない。だから。オレがやってやるのさ」
真っ黒に変異した針鼠は、さも当然のようにのたまう。
「こいつらはこうあるべき罪の償いをさせているだけだ。悪い子はお仕置きしてやらなきゃなぁ?」
「人間を裁くのは人間の法だ。僕らが手を下していい理由にはならない」
「随分と砂糖菓子みたいなことを言うようになったじゃないかシャドウ。ニンゲン達に復讐しようとしていた頃のお前の方が、オレは 好きだったぜ?」
その言葉を皮切りに、シャドウの銃が火を吹く。お互いの信念をかけた戦いの火蓋が切って落とされた。