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    すし吾輩は寿司である。名前はまだない。
    そんな吾輩は今、回転寿司店のカウンター席に座っているのだが…… 隣に座る中年男性が何かぶつくさ言っているのが気になって仕方がないのだ
    「え? 俺ってば何でこんなところに居るんだ?」
    とか
    「あれ、ここはどこなんだっけ? 確か俺は会社から帰ろうとして電車に乗っていて、それで――」
    などと意味不明なことを呟いているのである そして時折こちらを見ては
    「誰だお前!?」
    と言う始末 どうやら彼は自分が何故ここに居るのかを理解できていないようだ まあ無理もない 彼が最後に覚えているのは
    『終電間際で満員だったはずの車内』なのだ そんな彼がどうして突然見知らぬ場所で目を覚まし 更に自分以外に誰も居ない状況に放り込まれたなら混乱するのも当然だろう とはいえ、いつまでもここで騒がれていても困るし、そもそも彼の正体についても心当たりがあるので少しばかり話を聞いてみることにした
    「あのー、すみません」
    「ん? ああ、あんたは一体誰なんだい? というかここは何処なんだ? それにさっきのは何だったんだ? 俺は今まで何をしてたんだってんだ? 教えてくれよ!」
    「落ち着いてください」
    「これが落ち着けるかよ! なんだこれ!? なんで俺がこんなことしなくちゃならないんだ!」
    そう言って暴れる人物に対して、SCP-1134-JPは「そんなことを言わず、楽しんでくださいよう」と言ってその人物に寿司を手渡します(以下、被験者Bと呼称)
    【追記】
    被験者AはSCP-1134-JP-2に指定されました 実験記録1134-jp: 被験者Dは寿司屋の扉から店内に入った後、店の外へ出ることなく5分間立ち尽くしていました 被験者Bは寿司屋の扉の前に立つと、中に入ることなくその場で待機し続けています 被験者Cは寿司屋の中に入るとすぐに自身の左隣の席に座り、被験者Cから見て左側に位置するテーブルに座っていた被験者Eを睨み付け始めました 被験者Fは寿司屋に入ってすぐ、入り口の近くにあるカウンターに座ろうとしましたが、カウンターには既に他の客が座っていました 実験は、被験者全員を寿司屋に入れるまで続けられましたが、その後の実験において、被験者は全員が同じ行動を取っているにも関わらず、回転寿司のレーン上に並ぶ寿司の数や速度に変化が見られませんでした そのため、SCP-1134-JPは寿司屋の外にいる人間に対しては「回転寿司の店員」として働き、寿司屋の内部では「回転寿司の利用客」として働くのではないかと推測しました 実験記録1134-jpの結果を受けて、SCP-1134-JPを寿司屋の外に連れ出すことによる実験が行われました
    結果:
    被験者Dは寿司屋の前で立ち尽くすことを止めたものの、結局店内に入ることなく外に出てきてしまいました また、被験者Eも寿司屋に入店した後、店を出ることはなかった 実験記録1134-jpの後に行われた別の実験でも、同様の現象が確認されました これにより、SCP-1134-JPは寿司屋という空間内においてのみ「回転寿司の従業員」となり、外界に対して「回転寿司の利用客」となることが明らかになりました この事例より、SCP-1134-JPは「寿司屋」という概念によって定義される存在であると結論付けられました 補遺: 本報告書作成時点で、寿司屋内部からの連絡手段は確立されていないため、SCP-1134-JPへのインタビューは不可能とされています しかし、SCP-1134-JPが「寿司屋」の概念によって定義されている存在ならば、SCP-1134-JPが本来存在している場所は「回転寿司 勝」ではなく、「回転寿司 勝」の内部であり、我々はすでに寿司屋の内部に侵入していることになります これは重大な事態であるため、早急に対策を行うべきと思われます
    「そうか、もうそんな季節なんだね……」
    「はい?」
    「ああいや、こっちの話だよ」
    財団職員からの報告を聞いた後、私は思わず独り言を口にしてしまったようだ
    「それでは失礼します」
    「ああ、ご苦労様」
    扉の向こうへと消えていく職員を見送る そして私は再び手元の資料に目を落とす
    「回転寿司 勝」と書かれた建物内に閉じ込められている人型実体 その存在が確認された当初は様々な憶測が流れたものだが、今ではすっかりその噂も聞かない
    「さて、どうしたものかな」
    「何がですか?博士」
    「うわっ!」
    誰もいないはずの部屋の中で突然声をかけられたため、驚いて椅子ごと倒れてしまった
    「痛つつつ……誰だい、こんな悪戯をした奴は」
    「すみません、驚かせるつもりはなかったんですが」
    そこには、緑色の肌を持つ小柄な男が立っていた
    「君は確か、エウルさんだったよね」
    「ええ、覚えていてくれて嬉しいです」
    彼は「スシ・マスター」と呼ばれる、寿司職人としての腕を磨くために異世界へ転生させられた人物だ
    「それで、何か用かい?」
    「いえ、先程博士が呟いていた言葉の意味が気になりまして」
    「ああ、あれのことか」
    私は苦笑しながら頬を掻いた
    「まぁ、君ならいいだろう」
    「実はだな、最近妙な夢を見るんだ」
    「夢、ですか」
    「ああ、それもただの夢じゃない 私は回転寿司 勝の店員になって、お客が持ってきた寿司を回すことになる」
    「は、はぁ」
    「しかも、回した寿司はなぜか右回転になる」
    「は、はは」
    「それだけじゃなくてだな、お客の中には変なものを持ってくる奴もいるんだぜ」
    「たとえば?」
    「ああ……そうだなあ、最近だと『カッパ巻き』とか持ってきた奴がいたな」
    「カッパ? それってあのカッパですか」
    「そうさ、あのカッパだよ」
    「あれは寿司じゃないと思うんですけどね」
    「まあまあ、細かいことは気にすんなって」
    「そんなこと言ってもねえ」
    「いいから、ちょっと待ってろよ」
    「あっ、兄貴!」
    「おう、どうした」
    「こんなもん持ってきました」
    「なんだこれ」
    「カッパ巻きですよ」
    「馬鹿野郎! 誰が食うかそんなもの!!」
    「えっ、でも……」
    「これは俺のだ!! お前はもう帰れ!!!」
    「そ、そんなぁ……」
    「おい、まだか!?」
    「あと少しです!!」
    「よし、いけるぞ」
    「いきます」
    「3、2、1、へいらっしゃい」
    「へい、らっしゃい」
    「はい、お待ちどおさま」
    「ありがとうございます」
    「こちらがご注文のカッパ巻きになります」
    「わー、美味しそうなカッパですね~」
    「では皆さん、お待ちかねの実演タイムです! よーく見ていてくださいね!」
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    2022/01/11 19:41:18

    すし

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