イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    ミライへの献身この国の連中は、宴会が好きだ。

    千空が長になったといって酒を飲み、司帝国との停戦が成立したといって酒を飲む。ペルセウス号の竣工を祝って酒を飲んで、宝島からの凱旋を祝って甲板で酒を飲んだ。

    そして今、司の復活を祝って酒を飲んでいる。酒の力で自他境界を曖昧にして一体感を得るのは、まあ羽目を外さない限りそう悪いことばかりではない。

    とはいえ、ちょーっと疲れたかな。と、一息つきたくなってどんちゃん騒ぎから抜け出したあさぎりゲンは、断崖に座って月に対面する大きな背中を見つけた。おそらく現時点、この地球上にいる人類の中で最も強い男、獅子王司。

    先ほど千空に示された「次の戦地」を見据えるように満月と相対する背中が光を遮り、岩だらけの地面に長い影を落としている。ただゲンには、気高き獅子の背中は泣いているようも見えた。

    俺がこれから近付きます、そして声を掛けますよ。そう伝えるために、ことさらにぺたぺたと、軽薄な足音を立てながら近付いてみる。気付いていないはずもないのに、こちらを向く様子もない。隣に立ち、顔だけ真横に寝かせてのぞき込むと、穏やかな瞳が見返してきた。

    ひとたび戦いの場に立てば、いるだけで敵を怯ませ味方を奮わせるような光を放つ目だ。ただ今は爛々とした輝きも息を潜め、慈しみと安堵の奥に深く沈んだ悲しみを、戦化粧が唇に向けて横切っている。それは牙を縫い付けるために、ライオンキングが自らに科した鎖のようだった。

    「司ちゃん、お疲~~~~~~~~~~」

    口角をつり上げて笑いかけると、司は目礼で応えた。数十メートル先で盛り上がる宴会の空気をものともしない、静謐な存在感。これがカリスマってやつだよね、と思いながら、ゲンは司の隣にストンと腰を下ろす。

    「ゲン、宴会は良いのかい?」
    「司ちゃんの快気祝いなのに主役がいないのもね? うちアットホームな職場だからさ、人のことほっといてくれないの」
    「戻れ、ということかい?」
    「いやあ、好きにすればいいと思うよ? ジーマーで」

    司ちゃんは、どうしたいの?
    少し含みを持たせてみたが、司はゲンの遠回しな質問には答えなかった。もともと司は口数の多いほうではない。言葉を駆使せず、自らの居住まいと武力で在り方を示すような男だった。……俺とは正反対だねえ。

    司に並んで月を仰ぐ。たとえあそこにいるのが人類をこんなふうにした諸悪の根源だったとしても、やっぱり白く輝く月は美しい。

    「ウサギでも探してた?」と聞くと、司はそれには答えず
    「ゲン、君はこの世界を、美しいと思うかい?」と聞いてきた。
    ゲンは一瞬身構える。返答次第では俺や、もしかしたら千空を害するつもりかもしれない。

    軽薄な気配は変えないよう注意しながら、そっと顔色を伺う。ゲンを見る司の瞳は、穏やかなままだった。かつてのような、反論を許さないものではない。本当にただ、ゲンの話を聞きたくて問うている。
    ゲンは目算を立てる。司は、自分が負けた理由を知りたいのかもしれない。自分に人が集まり、そして離れていった理由を。それとも「司ちゃんの目指した世界は間違ってたんだよ」とでも詰られたいのか。司の欲しい言葉は何だろう。

    切るべき手札はいくらでもあった。ただ何となく、メンタリストとしての仕事は放棄したくなっている。

    「……もうやめてよ、危険思想のハナシは」裏切り者に言えることなんかないし。

    言外の言葉は正確に伝わったらしく、司は静かに笑うと、

    「そういう話はしていないよ。君がいてくれて……うん、本当に良かったと思ってるんだ」

    と呟いた。笑顔との乖離もない穏やかな声に、司が心から落ち着いてこの場にいることが分かる。ただ声にも笑顔にも深い謝意とともに後悔が沈んでいて、ああ、やっぱりこの子は今、泣いているのだと思った。

    「司ちゃん、何で俺なんか復活させたの? スパイ候補なら他にもいたんじゃない?」
    「そうだね……うん、俺の目指した世界に、君なら共感してくれるんじゃないかって思ったんだ」
    「でも俺、既得権益者側にいた人間よ? 司ちゃんの嫌う、搾取する側。共演したときのこと覚えてるよね?」
    あの特番が仕込みとヤラセと嘘だらけの八百長企画だったことを、司が忘れているわけもない。
    「それなら俺も同じだろう? 俺たちは搾取する側、そして既得権益者のマリオネットだった」
    司は自嘲するように、喉の奥でククっと息を転がしながら笑った。そんな千空ちゃんみたいな笑い方もするんだなあ。

    「……司ちゃんさ、自分の考えが詰んでるのには気付いてたんだよね?」

    これは、前々から確信していたことだった。
    千空と道を違え、帝国の長として君臨している1年ほどの間、司は千空の考えをほぼ完璧にトレースしていた。火薬を作ること、文明を発展させること、スパイを増やすこと、……通信技術を完成させること。
    ごくつまらない一般常識に照らせば、千空のアイディアは突拍子もない夢物語だ。それを「まさか」と思わぬ聡い男が、自分の思想を省みないはずもない。

    司の考える世界は、はじめからあまりにも脆かった。科学を発展させないということは、自然の淘汰圧に身を晒すということを意味する。人間は、野生の種としてはあまりにも弱く脆い。司や氷月をはじめとする個体としてのチートな強さがない限り、この石の世界を生き抜くことはできない。司が中心的に「起こして」いった脳筋連中だって、遠からず自分たちが「淘汰に負ける側」だと気付いたはずだ。

    しかも、司の強さは永遠ではない。強いイケメンのカリスマが語る「ある種の正論」は、確かに強力な求心力を持っていた。でも、司が最強の王として君臨できるのは何年だったのか。司が弱った時に帝国はどうなる。「次」の覇者が同じ思想を持って、純粋な世界とやらをキープできるものか。それを司が考えないはずもない。
    むしろ氷月を身近に置くことで、司は自分の破滅を早めているようにすら見えていたのだ。

    「うん、……そうだね」

    司はあっさりと認めた。ゲンは「じゃあどうして」と問いそうになって辞め、代わりに

    「司ちゃんの言う、汚れなく美しい世界ってどんなんだったのよ」

    と問うてみた。司は答えず、小首を傾げて考え込んでから、

    「……ゲン、君は石化前の世界での、自分の仕事をどう思っていた?」

    と問い返す。

    司の事情は、未来の存在を知ってようやく理解できた。司が格闘技の世界に身を投じていたのは、妹を守るためだったのだ。
    格闘技はショービジネスだ。ゲンにとってのマジックと同じ、磨き抜かれた技能を舞台の上で披露する、高度に文化的な娯楽。それが成り立つためには、司が嫌う「既得権益にまみれた汚い老人」の権力が不可欠になる。司にとって、格闘技における活躍は不本意なものだったはずだ。
    ただし、司には格闘技の才能があった。ゲンにメンタリズムの才能があり、それが人形遣いにとって価値のあるものだったのと同様に。

    ……ただ、俺は司ちゃんとは違うよ。

    「キライじゃなかったな~。キレーな衣装着て派手なステージで、目の肥えた客相手にマジック披露するのはヒリヒリできて良かった。超絶くッッだらな~い八百長番組で女の子キャーキャー言わせるのも楽しかったし」

    それは本音でも、方便でもあった。目の前の人が驚き、喜んでくれる。それはパフォーマーを舞台に立たせ続けるモチベーションの源泉だ。技量が上がれば、相手は手強ければ手強いほど燃えるもの。この「現代」で、初めて見るマジックに喜んでくれる石の世界の皆を愛おしいとは思うけれど、隙あらば足元を掬おうと穿った目で見てくる採点者たちを磨き抜いた技術で屈服させる快感はまた別格だった。飾り立てた虚構の世界で人を楽しませる時、ゲンは確かに戦っていた。あらゆる技術を贅沢に無駄遣いして嘘をつく。一瞬でも隙を見せれば夢は壊れてしまう。そこは司のものとは異なる、ゲンの戦場だった。

    ゲンは羽織の袖を合わせて口元を隠し、司の様子を伺う。好きでもないことに適正があるのは幸でも不幸でもある。「本当はこんなことしたくない」と思いながら不本意に適性を磨くのには、ラクな面もある。それに、どんなに不本意でも、自分の技能を磨いて高みを目指す喜びは確かにあった。それはゲンと羽京、そして氷月が、それぞれ相容れない思想の中で唯一共鳴できる点でもあったはずだ。

    仮に現代医学がなければ、臨床的脳死と診断された未来の心臓を動かし続けることは不可能だった。科学がなければ未来は6歳で死に、司は格闘技の世界で名を馳せることもなかった。司が格闘技の王者にならないのは、それはそれで世界にとっての損失だっただろう。それは司自身も分かっているはずだ。

    ゲンはおおよそのアタリをつける。司ちゃんは、純粋な力だけで勝負を決めるロープに囲まれた格闘技のステージを「美しい」って感じていたんじゃないか。でもそこは、司ちゃんの嫌う既得権益者が作ったものだった。だから、司ちゃんにとっての汚れ無き世界っていうのは、つまりはパトロンのいない格闘技場だ。

    「司ちゃんは、どうだったのさ」

    意識して口角を上げると、乾ききった戦化粧がつれて歪んだ。少しは意地悪な気持ちになる。今でも君は武力を振るえてるじゃないか。俺と違って、と。
    司の顔は、月明かりに照らされて見えない。怒っている様子はないが、ゲンの皮肉に気付いているかも分からない。

    「俺は、……うん、どうでもよかった、かな」

    司の答えは、ゲンの予想をわずかに外れていた。あくまで口調は穏やかなまま、ぞっとするような低い声で言われて息を呑む。

    「どうでも、いい?」
    「そうだね、未来を守るために戦っていれば世界が勝手に着いてきた。取り巻きも増えたし金も手に入った。でも、どうでも良かったんだ」

    それでゲンは思い至る。司がそこまで金を稼ぐ必要はあったのだろうか。未来の命をつなぐためは金が必要だった。それは事実だ。それでもあの頃、日本の福祉制度は充実しており、どんなに高度な医療でも家族への金銭的負担は抑えられていたのだ。司が「霊長類最強」なんて言われるほど身を削らなくても良かったはずだ。じゃあ。

    「それって、やりがいあって楽しかったってことじゃないの?」
    「ううん、少し違うな。武力を磨く喜びはあったさ。でも、それを利用して私服を肥やす連中や、それを可能にしていたあの社会の構造はおぞましかった。だから、どうでもよかったんだ」

    司の「どうでもいい」は3700年を越え、ほんの1年前に自分が目指した新しい世界のことも指していた。

    「……司ちゃ~ん? もしかしなくても、遠からず人類を根絶やしにするつもりだったりしたってワケ?」
    「未来のいない世界なら、俺が戦って守る意味もないだろう?」
    「じゃ、じゃあさ、美しく穢れなき世界~って言ってたのは?」
    「そうだね、……うん、試してみたかったんだと思う」
    「試、す……?」
    「純粋な力だけで作る人間の社会が、どこまでやれるのかを」
    「え、ジーマーで? 司ちゃんってそんな虚無い子だったの?」

    ゲンは今更ながら、司の危険思想に背中が泡立つのを感じた。帝国の黎明期、司が語っていた「ある種の正論」すら方便だったというわけか。「試してみたい」そんなことのために、世界を作り変えようとしていたのか。

    ゲンは司帝国を「何年もつか分からない」と思っていた。でも、そんな尺の話じゃなかった。試合であれば数分で終わっていたはずの世界を、司は1年間継続させたのだ。そりゃゴイスー長いってことになる。

    「……こっわ」
    「望んでもいない才能を神から与えられて、それを活かさなければ不幸になるのだとしたら、人間が出来るのなんて神に背くことくらいだろう?」

    司の持つ純粋な力は、たしかに天から与えられたものだったのだろう。だからこんな世界においても、司は武力の象徴であれる。それは千空も同じだ。どんな世界においても千空は科学の申し子だ。……ゲンとは異なる。

    「……君と会ったのも、くだらない八百長番組だったね」
    「懐っついね~友達いない同士、仲良くなれるかなと思ったんだけどね。臣下にされるとは思ってなかったわあ」
    「君は何故、俺に従っていたんだ?」
    「怖かったからに決まってんでしょ」

    即答しながらやれやれと肩を竦めると、司は少し驚いたような気配を見せた。むしろ何故それに気付いていなかったのかが不思議でならない。

    「従わなきゃ殺されるじゃん、俺そんなんヤだし。司ちゃんだって、ギョーカイの怖~い人には逆らえなかったでしょう?」
    「そうか、俺は始めから……うん、詰んでいたんだね」
    「だから、そう言ってんのよ」

    少しちゃかすと、司も自重気味に笑った。

    「ゲン、もう一つ聞いてもいいかい?」
    「なぁに?」
    「千空と出会ったときのことさ」
    「ああ、ラーメン作ってたんだよね千空ちゃん」
    「ラー……?」

    あ、バグった。
    司は千空のふるまいが想定を超えると、処理が追いつかずにフリーズするクセがある。

    「そ、ラーメン。美味しいかって言ったらまあビミョーだったけど、凝った料理嬉しかったなあ」

    「君はラーメンで寝返ったのかい?」

    「違う違う……そのあとねえ、仕事押し付けられたの。製鉄炉のふいご吹き」

    「……?」

    「ドイヒーな肉体労働よ? いっくら働かざるもの食うべからずったって、メンタリストに肉体労働って、ねえ」

    「……」

    「この俺に、最初に差し出せって言ってきたのが、マジックでもメンタリズムでもなく腕力だったんだよね、千空ちゃん。おもしれー男、ってならない?」

    「……ちょっと、わからないな」

    司が戸惑っている。そんな様子をゲンは「可愛い」と思った。霊長類最強の青年は、2年歳下の少年でもある。千空がどれだけ傲慢で欲張りで、かつ逆らい難い指示を下してくるかをまだ知らないのだ。

    「俺の予想だけどね、司ちゃんこれから千空ちゃんのお勉強に付き合わされるよ」

    「勉強?」

    「そ、お勉強。千空ちゃんは司ちゃんの賢さを見抜いてる。俺やクロムちゃんとは違う、思考のバディになるんだと思う」

    ペラペラと今後の見通しを語ると、気分がよくなってきた。千空は多分、司の脳に自分の科学知識を注ぎ込むつもりだ。一番生き延びる確率の高い、強い個体に重要な財産を託す。それは千空の考える「合理性」に沿う。

    「君は、それで良いのかい?」
    「へ? なんで俺?」

    予想外の問いかけに戸惑うのは、ゲンの番だった。

    「その役目は君が担うべきじゃないのかって意味だ」
    「何でよ、俺は専門外よ」
    「それなら俺も専門外だ、何より、君がそう在りたいんじゃないのかい?」

    続く言葉に冷や汗が流れ始める。

    「……えー……?」

    この子の、こういう聡さが嫌だ。

    「想う相手の財産なら、自分が受け継……」
    「……ストップ司ちゃん、メンゴ、止めて」

    ゲンは気が付けば、顔を覆っていた。これ以上は言葉にしないでほしい。

    「……違ったかい?」
    「……違わない。だからストップ」

    顔を覆ったまま、ゲンは思考をブンブン回す。

    くそ、くそ。どこでバレた。わざわざ隠すつもりもないが、かといって好意を垂れ流しているつもりもなかったのに。

    「……意外だ、君ほどの男が」
    「俺そんなに合理的でも計算高くもないのよ……」

    歳若く可愛い、科学の申し子。溢れんばかりの才能を大人に認められ、仲間に支えられて、果てのない努力で伸ばしていった健やかなりし智の財産だ。俺なんかが触れていいものじゃない。
    唆りすぎると、過集中モードに入って徹夜してしまう。楽しすぎて力尽きるまで遊んでしまう。水銀や硫酸を使うような危険作業では必ず最前線に立っている。手なんか薬品で荒れ放題だ。それでいて、地球の人類70億人を本気で救うつもりでいる。そんな子に惹かれない者がいるだろうか。

    俺は俺が得するために千空ちゃんに協力してるだけってスタイルだったのに。これはビジネスだったのに。

    「……千空少年はさ、ちょっと特別すぎるよね……」

    科学に恋する輝く瞳、科学に尽くす献身の瞳、科学に挑む挑戦者の瞳、科学を手にした王者の瞳。

    ゲンは、初めて石神村を訪れたときにそれらを見た。そして千空の手によって生み出され、3700年ぶりに地球を照らした科学の光は、ゲンの心を奪うには十分に美しすぎた。

    ……ああ、この子が科学で人類を導く、救世の英雄なのだ。

    「千空はおそらく、崇拝されるのを好まないよ」
    「分かってるよ、だから俺の仕事は、千空ちゃんが人間でいられるようにする事。……頼むから司ちゃん、千空ちゃんのこと狙わないでよね」
    「……牽制かい?」
    「そうかもね」

    ふふっ、と笑うと司も笑い返してきた。司の真意は、ゲンには分からない。

    「……さん、兄さん~?」

    心細そうな少女の声が聞こえてきた。未来が、司の不在に不安になったらしい。ゲンと司が振り返ると、未来とスイカ、そして千空が近付いてくるところだった。

    「ゲンと司がいたんだよ!」
    「兄さん~どこ行ってたん~」
    「お゛~? 元司帝国ツートップが悪巧みかあ?」

    司が立ち上がって腕を広げると、未来が飛び込んだ。収まるべきところに収まった安心感に涙ぐみながら、未来は司の胸に額を擦り付ける。未来を抱きしめる司からは、先ほどまでの仄暗い虚無の気配が消えている。

    ゲンはなんだか、とても羨ましくなる。これは、自分の知らない絆だ。

    未来の存在が、司を世界に繋ぎ止めている。きっと司は今後、千空に害をなすことはないだろう。

    目を細めて兄妹を見つめる千空の正面に立つと、ゲンも腕を広げてみた。ワンチャンないかなと思ったが、千空はゲンの広げられた胸を一瞥して

    「……あ゛? 何してんだテメー」

    とだけ言った。

    「いや何か、甘えたいならワンチャンと思って」
    「気持ち悪ィな」
    「だよねオッケー、スイカちゃん来る?」

    広げた腕をそのままスイカに向けると、やりとりを捉えきれずに戸惑ったまま、スイカはゲンにぎゅっと抱きついてきた。まー無防備で可愛いこと。これはこれで悪くないかも。

    「……何してんだお前ら? まあいいや、司テメー明日から朝食前の1時間俺に付き合え、千空先生が楽しい科学の特別講義してやる」

    目を丸くする司に、ゲンはニヤリと笑いかける。ね~~、ゆったでしょ?

    「ああ、分かったよ千空。そのかわり、これから少し俺に付き合ってくれないか? 君に伝えたいことがある」
    「あ゛? 良いぞ、何だ?」
    「2人で話したい」

    今度はゲンが目を丸くする番だ。何を企んでんのさ。

    「ん? まあいいや、じゃあ行くか」

    袖口に隠した手を筋が浮くほど握りしめ、覆った口元を引きつらせたままゲンは2人を見送った。

    次の日から妙に距離を測るようになってきた千空と、メンタリストとしての機能が完全に停止してコハクにまで「ゲンがポンコツになった」と言われるようになったゲンの物語は、また別の機会に。


    酔(@Sui_Asgn) Link Message Mute
    2022/06/05 1:56:39

    ミライへの献身

    ゲ→千のゲと司が話す短編

    司帝国が最初から詰んでたことを指摘できたのは、ゲだけなんだろうなと思って書いたものです
    アニメ2期ですべてが回収されました もう思い残すことはありません(2021.3.11)

    #dcst #dcst腐向け #ゲ千

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品