雨宿りの関係 急に雨に降られ、近くに基地もないし、濡れるがままにして歩いていたら、上から木の実をぶつけらたことに気づいたのはすでに数メートル歩いた後だった。
「君は少しは立ち止まるということを覚えたほうがいいんじゃないのかな?」
そういうダイゴさんは僕になにやら暖めた飲み物を用意してくれたようで、手渡してくれたけど、まだ髪が濡れていたのでタオルをそのままひっかけていたらカップを渡した手は戻らずに、僕の頭を引っ掻き回した。
「強すぎます」
「ああ、ごめん。こういうこと、したことないから」
「そういう感じ、します」
「……そう? まあ、そうなんだけど」
中身を確認もせずに一口含むと、においに鼻がうずいた。
「カフェオレ?」
「嫌いだった?」
「いえ」
子ども相手だと、大体の場合がホットミルクが多い。
なんとなく、背伸びをしている自分にふさわしいコレを選択したダイゴさんを相手に恥ずかしくなった。
木の実を放っていたのはダイゴさんで、気づかず立ち止まりもしない僕にあわてて結局本人も濡れながら出てきた。強く腕をとられてびっくりしたらダイゴさんが居て、引っ張られるままに秘密基地へと連れられた。まさかこんなところにダイゴさんの基地があるなんて思ってもいなかったので、呆然としてたら、不審な目を向けられた。
「基地なんて、作ってたんですか」
「こういうの、大好きだよ」
「トクサネがあるのに」
「あそこは本拠地! 秘密じゃないじゃない!」
そして二人して濡れていたけれど、タオルをひっかけあった。
髪を乾かし終わると特にすることもなく、クッションに寄りかかってそこらへんにあった無料配布の冊子なんか読んでいる僕の横で、ダイゴさんはパソコンを使っていた。
「基地なのに仕事するんですか」
つい口を挟んでしまう。
「仕事じゃないけど、画面は見てる」
頬杖をついたまま、その画面から目線をこっちに寄こした。僕は視線を受けると見られていることを意識して、ふいに視線をそらすと、ダイゴさんの視線もすぐにそらされた。
雨の音を聞いて、目を閉じる。今度はちゃんと傘をさそう。また心配をされてしまう。
僕のすることで、誰かに影響を与えているなんて、あまり想像したくない。影響を与えないとか、影響を受けないで生きていくことは難しいし不可能なのは知ってるけど、でもできれば誰かとの関係を希薄なままで過ごしたい。
繋がる形を自分で選び取りたい。僕は僕の望むように、選ばれたい。
そのために、ここに来て、僕は一人として見られるように努力をしているというのに。
なのに、この居心地のよさは一体どうしたことなんだ。
「ソヨゴくん」
「なんですか、ダイゴさん」
「雨やんだら食事にでも行かない?」
「奢りなら」
「君に奢れとは言わないよ。君、僕のことなんだと思ってるの?」
「ええ? よくわかりませんけど」
そういうとやっぱりまたすごく心外だ、という顔をした。
「でも、一緒にいるのは楽しいと思ってますよ」
そういうと、今度は、やっぱり意外という顔をした。
それは、それで、とても失礼だと思うけど。