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    家族になろうよ いつか大きくなる君へ 傷つけられた痛みがほしい 本当は隣がいい 飴玉 屈辱とは、死ぬことだ 不死 逃走 考える白髪 僕の中のヒロイン 予告はそのまま 君のすべてを奪うまで 空回りする思い 選択肢は既になかった 後ろにいたもの 不自然な流れ 未知の道 もう生活の一部なので 愛を叫ぶ ヒカリの先 いつか大きくなる君へ(神吹師弟/幼年期)


     銀一は息子を見て思う。
    (なんで、ぬいぐるみを一箇所に集めるんだろう……)
     テストの答案の採点も終わって、リビングで遊んでいる白金を、銀一は観察し続けている。
    (おもちゃ箱はもう入らないだろう、いっぱいなのだからバカ者。あーあーぎゅうぎゅう押し込んで。誰に似たんだあの子は)
    「白金」
    「はい」
     くるりと後ろを向く子どもの前髪は長い。切ろうとすると白金があまりに泣いて嫌がるのでなかなか切れないのだ。真っ白い髪の毛は銀一と同じで、実の親子でもないのにきちんと親子に見える。
    「ぬいぐるみは、もうそこには、入らない。ぎゅうぎゅうに入れたら、かわいそうじゃないか」
     子どもに合わせてかがんでやる。最近はそういうことも普通に出来るようになった。
    「でも」
    「でも?」
    「おいてきぼりの子たちも、かわいそうです」
     仲間ハズレ、か。
    「そうか。可愛そうか」
    「はい」
    「なんだ、どっちにしても、かわいそうじゃないか」
    「あ」
     やっと銀一の言いたかったことの意味を掴んだらしい白金は自分の行動に迷いを得る。うーうー、とおもちゃ箱と銀一の前をウロウロして、言い出しにくそうに、質問してきた。
    「お父さん」
    「ん、なんだ」
    「みんな、一緒に、しあわせになれないんですか」
     これだから、子どもは嫌いだった。
     大人は決して口に出来ないことを簡単に口にしてくれる。
    「なんでだろうな。それじゃあ、お前がそんな方法を考えてくれないか」
     強くなるしかないのだよ、白金。
     そういいたいのを堪える。今はまだ、何も知らないのだ。この子は。私の正体がなんなのか。私がなにを守ろうとして、何を失っているのか。伝えていかなければいけない。この力は、失ってはならない。
    「じゃあ、僕がみんなをしあわせにしてあげる! 僕が、みんなを、しあわせにします!」
    「は?」
    「だって、ヒーローは、世界を救うんです! 僕、大きくなったら、ヒーローになります!!」
    「ヒーロー?」
    「そうですよ! 変身するの。日曜日にやってるよ。そうすれば、みんなは、しあわせに暮らせるのに」
    「じゃあ、ヒーローは、大変だな」
    「でも、それで、ヒーローは、しあわせです」
     これだから、子どもが好きになった。
     我々ヒーローは、誰かの幸せを見て、幸せになるのだ。目の前の、愛しい弟子の成長のように。

    傷つけられた痛みがほしい(白金、澪/修行時代)


     力の未熟さをまさに見た目どおりかみ締めながら澪がこぼす涙を白金は見詰めている。澪が誰かの前で面と向かって泣くことなど珍しい。悔しくて悔しくて、涙が止まらないのだろう。涙を止めるのを諦めたようで、ただ流しっぱなしにして、鼻をすすって、白金に水を持って来い! といつものように怒鳴った。
     ピシャンと締められたフスマ越しに、澪が座り込んだ音が聞こえて、待っててねと念を押して、白金は水道へと走る。彼女の涙を全部拾ってあげたいけれど、そんなことは不可能で、俺に出来ることはないのだろうか、と一応考えてみたけれど、さきほどの澪にならって考えるのを諦めた。
     どうせ理由はまた、あの男だ。

     夜中の2時にやってきたあのカリスマ性を備えた空の術士は、「ちょっとすべった」といって腕が曲がっていたらしい。彼女のそれこそ「ぎゃああああ!!!」という悲鳴が聞こえて起きたので、時間は確認済。
     澪はそうそうに追い出されて一兆が治療にかかっている。多分彼女もやってみたんだろう、と思う。澪はとても疲れていたから。きっと彼女も彼を治そうとしたんだ。
     でも、あの子の能力では、まだ無理だ。

     白金は自分の梵痕を見ながらため息をついた。
     まだ、彼以外の弟子には現れていない。自分たちは素質はいい、と子どもの頃から言われているけれど、結局まだまだ実践に投入されることはなく、ただずっと同じ修行の繰り返し。
     いざというときには力は出せず、「足手まとい」。
    「屈辱じゃあ、ないか」
     口に出してみても、ただ惨め。染めた髪に隠れた瞳は、とても鋭くなってしまった。

    「澪ちゃーん、お水」
     呼んでも叩いても返事がない。
     後で怒られても嫌だけれど、勝手に入ってみると、体育座りをしているようだ。
    「水」
    「おいとけ」
    「はい」
     無理に持たせてみた。
     飲むのかと思ったその水は、彼女の白い頭にかけられる。
    「次はないんだ。次は」
     涙なのか、こぼれた水滴なのか、滴る水をぬぐった手の甲には、しっかりと赤い跡。
     ヒーロー志願者としては、ヒロイン役が傷つくのは好きではないのだが、彼女のその跡を見て、不覚にも、美しいと思ってしまったのだった。

    本当は隣がいい(火神楽師弟/過去捏造)


     マスターは、かっこいい。本当にかっこよかった。
     俺にとってのヒーローはいつだって師である火神楽忠勝その人で、厳しい修行のあとには一番風呂を与えてくれて、日本の事情に最初疎かった俺は白金に言われて初めてそれはあの火神楽師匠が行うこととは思えないと驚かれたことに驚いた。
    「マスター、一番風呂というのは、本当は“大黒柱”というものが先に入るというのは本当なんですか?」
    「なんだ、その近からず、遠からずの答えを教えたのは」
    「白金ですが」
    「やはり」
     そして小さなため息。硬い手は、俺の肩を強く掴んでいった。
    「うちでは一番頑張っているヤツが入ることになっているんだ」
     俺は、あなたの誇りでありたいと思った。そのくすぐったさは、あの日、戦場でなくしたものだ。
     もう一度、手に入るとは思っていなかった“家族”。
     前の家族のことはしっかりと覚えている。俺の親父とお袋は、誰がなんといおうとあの人たちしかいない。アニキも弟も、姉ちゃんも、みんな、俺の宝だ。家族がいたから、その思い出がなければ、俺はこうした人間になっていない。
     あの日、絶望した戦場の真ん中から逃げ出した俺は、難民キャンプで出会ったこの男につれてかれて、どこかに売り飛ばされるのだと思った。なにも失うものないし、目玉だって一つすでにないのだから、臓器の一つや二つなんて、なくなったって、命の一つ、もう守るものもないこの身一つの俺は、生きていくことなんてこれっぽっちも考えていなかった。
     その男の流暢だが、どこか違和感のある英語を聞いて不思議だったのは、そいつの第一声。
    『ヘイ、ボーイ。お前の目玉は、今何を見ている?』
     俺には山という人間が見える、と答えると、そいつは俺の白くなった髪をつまんで『怖かったか。』と聞く。
     その声が優しくて、俺を心配しているのがわかると、俺は、一つだけの目から二度とこぼれることのないと思った涙が出て、この男を恐ろしく思った。
     優しさが怖い。兵士の格好をしているのに、そんなことを思わせる相手は初めてだ。
    『弟が昨日死んだ。兄ちゃんはゲリラに入ってしまった。姉ちゃんはキャンプに一緒にいたのに、男たちにつれてかれたんだ! 父さんと母さんを返せ!!』
     すると男はいう。
    『返ってこない。それはわかっているだろう。
     なあ、でも、見えないか? 聞こえないか? お前のことを心配している。お前のことを、探している。お前の幸せを祈っている家族の声が』
    『な、なにを、言っている……?』
     だが、男の指さした先には、確かに父さんと母さんがいた。
     二人は俺に近づく。確かに触れたのに、なにも感じない。触れているのに、俺はまた泣いている。
     母さんがなにか言っている。聞きたくなかった。最後と思いたくなかった。
     親父が俺のことを抱きしめている。感じているのに、感じていない。
     わかっていた。いかないで、とはいえなかった。弟は、先にいったらしい。姉ちゃんと先に逝ったという。
     わかってた。兵士につれてかれた女がどうなるのかなど。
     親父と母さんは、このおかしな男と話す。
     男は腕にある痣みたいなのが光って、突然現れた銃を二人に向ける。俺はそれを止めようとすると、男はいった。
    『天国で、お前を待っているそうだ。おい、ボーイ。がむしゃらに生きねえと、seventh heavenには、いけないぜ』
     男が手の平を変えた銃を撃つと、二人は光に包まれて、俺の両頬に最後のキスをして最後の幸福の言葉を残して逝った。

    <いきて>

     そして、男は俺を連れて「にほん」という国に来た。
     まず、「めいしゃ」というところにつれてかれて顔をいじられ、眼帯というのを買ってもらった。子ども用の服は、メガネをかけた白い髪の男(でも年は若い)が買ってきていて空港で着替えていた。
     骨と皮だけのような体に白い清潔な服が似合わなくて俺はずっとむくれていたのを覚えている。
     言葉もわからない。その男は徐々に日本語に切り替えてくれたが、日系3世だか4世だかの俺は(それもあとでマスターが調べたことのようだ)まったく見た目は日本人と変わらないので言葉が通じないことが非常に困難だった。この国の連中は見た目で判断するから、日本人に勘違いされて迷惑極まりない。現在は籍は日本だが、俺は、純製じゃない。
     俺があのときキャンプで見たのは、たくさんの陽魂、そして陰魄になりかけていた霊たち。俺がそれは霊だと気がついたのは、大方日本語に不自由しなくなってからだ。
     「霊」という言葉を、ニュアンスを理解して、俺は、両親の愛をやっとキチンと受け取れたのだろう。
     きっと、呼び名を、「マスター」としたのは、俺が言いやすいように。
     一番風呂は、照れ隠し。
     俺の体に梵痕が現れてしばらくして、マスターは店を俺に任せてしばらくフラフラと戦場へと戻るようになった。最近では正月と大晦日くらいしか一緒じゃない。
     たまに帰ってくるけど、内乱の中、本物の銃と見えない銃を撃ちまくる。いくつもの魂が、戦場に輝くのだそうだ。殺した数以上の霊を、導きたいという。
     なぜ人は殺して、そして悲しみ、殺しを憎みながらに人を殺す。マスターは、今も償いを続けている。
     俺の役目は一番風呂をマスターが帰る頃にあわせてキチンと入れておくこと。
    「おかえりなさい! マスター!! 風呂が沸いてます!! 一番ですよ!!」
    「ただいま、正宗。なんだ、先に入っていればいいだろう。俺は砂だらけだ。まったく、これだから大陸は嫌いなんだ。あの忌々しい風め」
    「一番頑張っている人が、入るものなんでしょう? うちでは」
     するとマスターはいつも面白いものを見たという顔をする。ポンと、みやげだ、という声と共に渡されたのは、クソまずい外国産のタバコ。中身を開けて火をつけるころには、ちょうど風呂の音が聞こえる。

    飴玉(白金、正宗/修行時代)


    「正宗くんは、飴玉いる? 澪ちゃんには内緒だよ。」
     白金が手に持っているのは、飴。
     しかし、正宗は日本にきたばかりでイマイチ言葉がわからない。自分の名前だけはわかるので自分のことを指でさす。
    「そう、You.」
    「Ah,ああ、アイ、あ、俺、は、」
     正宗が言い終わらないうちに白金は飴を正宗の手に押し付けた。
    「ユア、マイン」
     それを聞いて正宗が笑ったので、白金はこの少年と仲良くなれるかもしれないと思い始めた。

    「で、今度はなんだ。いいから離れろ。今度心現失敗したら、三ヶ月先まで風呂掃除とトイレ掃除は俺の当番なんだよ」
     イライラした口調でいう正宗にまさに泣きついているのは白金である。黒く染めた髪を振り乱して「お~い、お~い」と泣いている。
    「澪ちゃんてばヒドイよ、ひどすぎるよ!! 僕がなにも言わないからって、ずーっと明神さんの話ばっかりするんだもん!! そりゃあかっこいいよ、能力は低いのにあれだけの力があるのはそれだけ努力してるってことなのにいっつも飄々としててさー!! 澪ちゃんの好みわかりやすすぎ!!」
    「わかった。わかったから。鼻水をつけるな。もうすぐ成人を迎える男が簡単に泣くんじゃない」
     顔をひっぺがそうとして二人の青年は力対決を始める。次第に疲れてきて正宗が簡単に力を抜くと、白金は勢いに任せて前方へとつっぷした。
    「いで」
    「ったく。そんなのもう何年も経験してることだろう? それでも追っかけるって言ったのはお前だろうが」
    「そうなんだけどさー」
    「だっから、やめとけって言ったのに」
    「でもさー」
    「ま、そんなに簡単に諦めるような人間なら、俺は相手にしないがな」
     よっこいしょ、と白金の手をひいて立ち上がらせた。
    「正宗くんって、ほんと、日本人離れしたキザセリフ言うよね」
    「ほっとけ」
    「俺、正宗くんと友達でよかったあ」
    「はあ、そうですか」
     正宗は自分の袴を少し直して、元いた場所へと戻っていく。正宗はアメリカンスクールだったが、逆に日本人に似すぎている自分の容姿は、日本人からは敬遠され、白人からはまた一線を引かれた。
     正宗は自分が異形だということを熟知している。片目であるために、遠巻きにされていることにも気がついている。戦争を経験したこともないくせに。そう相手を見下げることで正宗は耐えてきた。たった一人、クラスにいる自分だけが見える“人間”に怯えて。
     唯一の救いは日本人だらけの公立よりかは表面化が少ないことだった。日常生活を送る上では不便はない。師に無駄な心配はかけさせまいという必死の抵抗だったのだ。
     普通の人間になりきれる白金を、正宗は尊敬している。自分には決して出来ない。たった一人の親友だった。でなければ面白くもない想い人の自慢話や恋愛相談など乗ってやるものか。
    (まーだ、テレビの話でも適当にしてくれりゃ、楽なんだけどな……)
     そんな正宗の思考を知らずに、白金は普通の友達を作っている。いかにして普通の人間に溶け込むか。それが銀一の教えでもあるからだ。人の中にいられなければ、人は守れないということが根底にある。白金はそれによって、目立たぬようにすることと、そして人を守ろうとする意思についてはおそらく三人のうちで最も高かった。澪の守るという価値は、対象者が広くない。正宗にしても、いまだ“守る”ということに対して臆病なところがあることを師は知っている。全人を守りたいと無条件に願う白金のヒーロー志向を正宗は笑っていたが、本気であることには気がついている。「その時は俺が参謀になってやる」という約束も反故してない。
    「正宗くんもさー」
    「ああ」
     まったく聞いてなさそうな正宗の相槌を気にすることなく白金は続ける。
    「好きな人が出来たら俺に教えてよね。俺、俄然応援するから!!」
    「お前は女子中学生か!!!」
    「いったーー!! なにその突っ込み!? 澪ちゃん並じゃね!?」
    「お前がバカなこというからだろうが!!」
    「バカじゃないよー!! だって、正宗くんは俺の大切な親友だもん!!」
    (こいつ、はずかしー!!!)
     一瞬にして正宗から言葉を奪った。
    「あれ……? ま、正宗くん? あの……?」
    「あ、well..….、いやいやいや、あー、うー」
    「もしかして、親友って、嬉しかった?」
    「バーカ!」
     白金は黒い髪を大きく震わせて、大笑いを始める。
    「わ、笑うな!」
    「だって、だ、だって、ま、まさむねく、ん、うひゃひゃひゃひゃ。ちょっと、まってよー」
    「うるせえ!! わ、ら、う、な!!」
    「いててて。わかった。わかりましただからつねんないでいはいいひゃい」
     いたかった、と立ち上がると、ふくれっつらをしてしまった正宗に謝り始めた。
    「ごめんってばー。だってさー」
    「言い訳なんてきかねえ」
    「だってー、正宗くんがあまりにいまさらなところで照れるから」
    「は?」
    「え? だって、いまさらでしょ? 俺たち、親友でしょ?」
    「え、うん」
    「ね?」
    「うん」
     やはり、正宗は、白金には敵わないのだ。
     日本人は怖い。変なヤツが多すぎる。異形を排除し、人々は同色化していく。白金はいつも正宗をいろんな場面で頼る。判断とか、英語とか、食事のこととか、師匠たちのこととか、いろんなことを話す。白金は正宗がいるから頑張っている。白金は正宗を助けたいのだ。こんな自分に構う野郎は変人だ。
     正宗は自分だけが白金を大切に思っていた気がしていたが、そうではないことを知って、安堵する。白金にとって自分は「普通の人間」の中の誰かではなかった。大衆の中の「一人」ではなく、たった一人の「親友」として認められている。
     だが、ただ誰かに想われていることを素直に認められない。「言葉」にされて、やっとわかる。人は言葉を通さなければわかりあえない。正宗は、やっと、自分が守りたいものが何なのか、思い出してきた気がする。忘れていた。戦場に。大切なものって、あったかくて、懐かしくて、失いたくないものなんだ。
    「そうだ、お前は、俺のbest friendだ」
     あきらめたようにいうのを見て、白金は苦笑した。


    屈辱とは、死ぬことだ(神吹師弟/本編前/死にネタ)

     床に伏せた師匠が言った言葉は予想外の言葉の連続だった。
    「お前は前線から引け。決して今はまだ戦うな」
     なにをおっしゃっているのやら。戦うために、今まで修行をしてきたんではないのですか?
     おそらく自分は今不思議そうな顔をしているのだろう。師匠の苦笑いが見えた。俺はいろいろと戦わない理由を考える。俺の実力が劣るからか。確かに能力だって師匠よりも劣るけれども。自分はまだ若いし経験も少ない。周りの足手まといになるといいたいのだろうか。
     だが、今はそんなことを言っている場合ではない。そもそも、人手不足で髪の白い能力者の数自体が減っているなか、これだけの力を持つ自分が出て行かないのは確実にこちらを不利な状況に追い込むだろう。
     必要なのは、今、ではないのだろうか。
    「白金。いいか、よく聞け」
    「はい」
    「お前は逃げるのだ」
    「は?」
    「逃げろ、と言った」
    「どういう意味ですか」
    「そのままだ」
    「わかりません。この一刻を争う状況でそんなこと出来ません」
    「この戦い、今のままでは負けるだろう。戦って玉砕することを信念にするな。貴様はそれほどの莫迦か?」
     言葉を返せずにいると、師匠は上半身を起こそうとする。慌ててそれを手伝いからだを支えて感じるのは、この人の体がもう骨と皮でしかないことだ。やせ衰え、髪の白さは今までのものとは違う栄養の足りない細さをもっている。
     こうなるまで、自分はずっと奥で待っていた。待たされていた。この人を失えば、自分はついに『失う』ことを知るだろう、と思っている。最初からなにも持っていなかったこの手が手に入れた唯一の『父』という偶像をも手放すことになる。それを恐れてかいがいしくも世話を迷惑がられながらも焼いていたが、その父であり師でもあるこの人はただ「逃げろ」というのだ。俺たちはとにかくすれ違ってばかりいる。
    「火神楽のところの弟子と、湟神さんのところの少女、そしてお前。まだ足りない。お前しか梵痕が出ていないなか、何が出来る。死にに行くな。待つんだ。
     空を待て。壊神がいない今、最後の爆弾は空しかない。明神の攻撃なしには勝ち目はない。我々の力がどんなものか、お前はよくわかっているだろう。待て。
     今、勝たなくてはならないのではない。間違えるな。
     死んで勝つよりも、生きて負けてしまえ。わかっているだろう。生きていればチャンスはある。死んではあいつらの思うがままなのだ。最も厳しいことを、私は言っている。わかるな?
     這ってでも生きろ。どんな屈辱を受けても死ぬな。反吐を吐いても、裏切っても、逃げるんだ。歯噛みしろ、悔しがれ、これはそういう戦いだ。格好をつけるな。死ぬくらいなら命乞いをしろ。
     プライドなど、捨ててしまえばいい。
     生きて、そして帰ってくるんだ。お前は。待つんだ。空を。仲間を。そうすれば、お前のその頭と、能力を余すことなく使える日は絶対に来る。そして本当の意味で勝つ日が絶対に来る。
     だから、逃げろ。今は」
    「先生」
    「それが、師ではなく、父としての願いだ」
     わからない! と叫んでやりたい。あんた死んだら、すでに俺は待っていることなどきっと出来ないだろうに。だが、父の骨の手は、自分の手を掴んで弱い力を怖いくらいに出して握っている。
    「白金。逃げろ」
     ああ、だが、しかし。この人の教えは、いつもそうだ。戦うためのものよりも、逃げていた。戦うよりも、守っていた。
     “普通の人に、なりなさい”
     “人びとを、守りなさい”
     “機を、待ちなさい”
     この力は、もともとそういうものだったのか。俺を生かすための力。死なずに、勝つために、全てを捨てる戦い。待ち続ける勇気。
     どんな侮辱にも、耐える決意。この人はそこにずっと向かっていたんだ。
    「お父さん、わかりました」
    「そうか」
    「俺は耐えられません。俺は今すぐにでも、あいつらを殺してやりたい。そうでなければ、今にも気が狂いそうです。
     でも、あなたは、僕に、生きろというのですね。
     それが、願いなら、それが、唯一の、道なら、僕は」
    「白金」
    「僕は、待ちましょう。その日まで」
     そして細くなった手首を握り返した。
    「だから、まだ、生きてください。あなたも。まだ、僕を、ここに留めるために、それが、最後の楔です」
    「弱すぎる、楔だな」
    「いいえ、いいえ。それだけで、十分です」
     満足そうに銀一は笑った。息子の手をゆっくりと離す。
     ああ。そして、白金は気づいた。
     遅すぎた。全てが。

     戦いが尻すぼみで全面的に能力者を失い消えていったその日に、銀一は誰に案内されることもなく、自らよく見知った空へと出かけていった。


    不死(プラチナ/本編前)


     “俺は俺の死を死にたい”
     昔ひどく影響を受けたバンドの歌詞の一部を、いまだに手帳に挟み込んであるのを思い出して確認してみれば確かに発見した。手帳を変えても、年が明けても、うっかり落としてしまっても、新しい手帳にその言葉を書きこんで、もしくは古い手紙のようにそれを移す。物持ちのいい自分でも感じる、もういい色に落ちてしまった手帳の革カバー(ちなみに就職時に父がくれたものだ)からそれを取って、しみじみと眺めてみた。
    (俺は、俺の)
     そのとき、一体どんな気持ちで自分がその言葉を描いていたのか。今でも思い出せるけれど、同時にそれは今の自分ではない。真っ黒だった髪で、自分の力を隠し、普通の人間のように暮らしていたあの頃。俺は、いつかヒーローになる、といいたくてもいえないし、いう気もない。
     言えば笑われた。あの格好では笑われた。
     今は平気。俺が選んだのだから。すべてを。
     同時にあの時の格好だって、俺が選んだに等しいのだが。父の言うとおりに、普通の人間のようにして、普通の人間と一緒に暮らして、一旦は引いた「無縁断世」をめぐる戦いのために白金は控えている。それまで、絶対に生きろ、といわれた。そのために、残された弟子として、絶対になにがあっても生き延びてやる、という覚悟をしたのだ。
     同時に、彼女がきっと帰ってくるから、そのときには正体をさらそうと。
     帰ってきたときには戦いの合図。あの子はなぜか戦いを呼ぶ。そういう性質なのだろう。三人そろえばさ、きっとまだ何かやれる。
     それが楽しみで仕方がなかった。

     昔、正宗にはよく呆れられたものだ。
    「あんな暴力女、ほんっと理解できねえ」
    「まあまあ、可愛いもんだよ。それに、あの子はまだ来たばかりだ。女の子は少ないし、不安なんだよ、いろいろと」
    「だからって、お前がなんだって使いっぱみたいなことしてんだよ」
     正宗は低い身長から見上げるようにして白金を見る。小さいときから知っている正宗との距離は少しづつ狭まってきたけれど、それでもまだ見上げている。
    「ええ、でも、可愛い子には、なかなか逆らえないんだよねー」
    「信じらんねー。お前の好み」
    「だって、一生懸命じゃない。俺みたいに、ひがんでるわけでもないみたいだからさ」
     この力を。染めているからわかりにくいが、自分の髪はほぼ全てが真っ白だ。白金はその力を疎む。こんな目に見える証明なんていらない。それのせいで最初から全てを求められるし、間違いは犯してはならない。知るか、そんなこと。
     だが、やはり期待されれば応えたいし、応えてやりたい。あの子はあの力を喜びだと思っている。恨んでいるのは生きている人間に対してだろうか。その方向が違うだけで修行に対しての態度というのはずいぶん違うものだ。
     その態度は、ひどく白金の心の奥底をイライラさせつつ、甘い匂いがする。
    「まっすぐなのってさ、いつからか、いい加減に曲がっちゃうよね」
     その言い方に首をかしげる正宗を置いて、白金は山のふもとまで自転車を走らせた。

     自分の曲がり方があまりにもひどいのはわかっていた。頭の回転は悪くはない。それくらいはわかっていた。
     だが、割り切れるほどの賢さをもってもいない。いわゆる「ずる賢い」とでもいう、ソレのことだ。この力を恨むのは、この賢さを恨むのは、自分の力では一体どれだけの敵をどれだけの間食い止められるか、それだけのことしか出来ないことをハッキリと理解して大人しく受けいれてしまうから。
     風の梵術では決定的な攻撃力には至らない。結局何人かの仲間がいなければこの戦いは終わらせられないし、それには火や空の梵術は不可欠だ。サッカーの日本代表のように、決定的な何かが足りないまま、戦いはいつのまにか下火になってしまった。
     俺に出来ることは、なにか。
     そう思ったとき、「俺は俺の死を死にたい」と思った。

     俺は、死なない。

     それを“誓い”にした。
     死ぬものか。死んでやるものか。師に言われた言葉も同じである。考えがよく似ている師だが、あの人はまさに自分のことを願って「生きろ」といった。
     俺は、そうではなくて、“死なない”ことを前提とする。
     “生きる”ことと、“死なない”こと。似ているようで、異なるもの。
     だから、あの日の自分は、まず殺すことにした。

     さよなら、白金。俺は、生まれ変わろう。ヒーローに。

     お前という影を守り、「死」と共に消え行く俺。守りたいものがあるんだ。命と代えたいくらいに。だが、それらのために、自分は生きる道をとる。地べたを這っても、どんな屈辱

     でも、必ず生きて、そして、死なせない。
     もう無力な俺じゃない。
     俺の中には、守りたいという願いと希望だけ。
     さあ、死よ、来るがいい。死を、葬ってしんぜよう。


    逃走(白金、正宗/本編前)


     白金のドライブに強制的に付き合わされて、気がついたら都会を抜け出し江ノ島に来ていた。
     なぜ江ノ島なんだ、と思いながらも、ついでに小田原城に行こう、と正宗はしっかり計画を立てている。灰がこぼれそうになっているのに気づいて、やっと億劫そうにいっぱいになった灰皿にさらに押し込むことに集中する。
    「さっきのガソスタ、灰皿捨てなかったね」
     沈黙していた時間がタバコの長さと引き換えに動き出したようだ。ようやく口を開いた白金は、またどうでもいいことから会話を始める。いつもの癖だ。
    「研修中の札、ついてたぜ。いいよ。どっか捨てるとこあんだろ」
    「帰りは吸えないからね。こんないっぱいじゃ。まったく何箱もってるの? こんなに吸って。絶対正宗くん肺ガンで死ぬって」
    「霊にやられるよりは、本望だ」
    「職業的な殉死のほうがいいんだと思ってた、君は」
    「お前だろ、それ」
     ジロリと運転席を見やると、白金の前髪で見えない瞳と目が合った。
     白金は狂っている。正宗はそう思っている。
     正宗はイカレてる。白金はそう思っている。
     だから二人の会話は平行線のままで不思議とかみ合い続ける。一度も意見を確かめあったことはないけれど、なんとなく相手は自分をこう思っている、というのは感じていて、互いに常人ではなく変人としてみていることは確実だと会話の端々から伝わる言い方が物心ついたころから常だった。
     車中にいて波の音を聞くだけなのも飽きたようで、白金が外に出ようとあごで促す。体が固くなっていたのでそれに従う。仕出しや買出しで自分も車を使うが、いつもレンタカーを借りてくる白金はわざわざ毎回違う車を借りてくるので、器用で仕方がない。ひどいとたまに左ハンドルだ。さすがに大型はないが、軽トラまでは経験した。
    「で、なんで江ノ島なの」
    「え、理由は特にないけど。でもやっぱり疲れたときは海でしょ、海」
    「えー?」
    「みーおーちゃーん!! あいしてるーーー!!」
    「ああ、もう海に還ればいいのに」
     そして正宗は拾った石を白金に向かって投げた。
    「いや、ちょっと、なに。石投げないでよ、ちょっと」
    「ああ、わりい。手が勝手に」
    「嘘つけ」
     白金はスーツのままで、正宗を迎えにきた。正宗は部屋着のジャージのままである。今も少し寒い。次のジャージはもう少ししっかりしたのを買おうと思った。いつもアディダスとナイキで悩むのだ。
     白金は叫ぶことにも飽きたのか、はあ、と一息いれると(ただしため息ではない)体育座りをして、波に履き潰した革靴をさらしている。
    「傷むぞ、靴」
    「買い換えるから。どうせ」
    「俺、帰りも運転しねーからな」
    「だいじょぶ、だいじょぶ。君は安心して車に揺られていたまへ☆ 僕が華麗にエスコートしてあげよう」
    「で、なんで江ノ島なんだ」
     無視して、また同じ質問をした。
    「正宗くんって、やっぱりしつこいよね。変態」
    「貴様が考えてない振りをやめればいいんだ、ドM」
    「俺、自分ではSだと思うんだけどなー」
    「もう海に飲まれろ」
    「海の向こうが気になって仕方がないから行ってやろうとも思ったけど、やっぱりその気にならないから海にきただけ」
     海の向こう。
     彼女が生きているあちら側。だけど、きっとそれだけではないだろうに。
    「逃げ?」
    「逃げ? まさかあ」
    「逃げなんじゃねえの? ここからいなくなるって」
    「どこにいたって、俺らはなんも変わらないよ。大体神に忘れられた俺たちさ。移動しても、どこにいても、忘れられたままで、異物なんだから」
    「神が忘れたって、なんだよ、それ」
    「白いでしょ。髪の毛。色を塗り忘れたんだ」
     だからどこにいても、ばれてしまうんだよ。忘れたくせに、すぐに見つけられるようになってしまったんだから。
     そういう白金はもう笑っているけれど、正宗は背筋が冷えた。気持ち悪い。
     コイツは逃げる勇気を持たないんだ。逃げることは弱さじゃなくて、別の形の意思の現われ。もとよりそれを放棄している白金は強いのか、弱いのか。
     ただわかっているのは二人ともまっしぐらな戦い方をするから、それは死にたい気持ちの現われ。だから互いに蔑みあって、軽蔑しあって、互いを守ろうとする。生きててほしいから、そして自分がもう残される思いをしたくないから。本当は生きなくてはならないことも理屈でわかってる。心から納得してる。
     でも、ジレンマと時間がもたらすマンネリは、死という刺激を求めるのだ。絶対死ぬつもりはなくて死なないくせに、遊びにまで成り下がった。
     だから、また、自分たちは海の向こうに助けを求める。届かない声を波に乗せる。
     逃げないかわりに、奇跡をあきらめた男たちは、また、毎日無駄な逃走もどきをするのである。

     パッと表情を変えて白金が正宗を振り向いた。
    「あ、帰りに小田原方面通って小田原城行こうよ」
    「ジーザス」
     そんなとこは似なくていい。

    考える白髪(プラチナ、正宗)


    「あー、澪ちゃんに出会うために生まれてきたのならよかったのに」
    「病気だなオイ」
    「だってそうしたらずっと彼女のことを考えて生きていればいいんだよ? すばらしいことじゃないか!!」
     プラチナは両手をミュージカルのように大げさに振ってその思いの断片でも正宗に伝えようとしているが、酔っ払いの言うこととして正宗はろくに聴いていな い。客も引いて、カクテルを作るのも面倒で、さっきからソーダ割りとロックしか作っていない。どうせ酔っているプラチナは味なんてろくすっぽわかっちゃい ないだろうといい加減な作り方をして、自分は密かに取っておいた輸入物のワインを傾けた。
    「まったく、もー。正宗くんだって恋の一つや二つ、してるでしょー? 激しい恋の経験はないわけー? わっかんないかなーこの気持ち」
    「少なくともお前みたいにしつこくない」
    それをきいて気を悪くするどころかプラチナは大笑いをして、残っていたきゅうりの酢漬けを全て平らげた。
    「ほんっとに、可愛げがないんだからー。血も涙もないのかね」

    「あるさ」
     そこまで言われるとむう、と反論したくなり反射的に言い返してしまった。実際には子どものときからの付き合いなのだから血も涙もあることは物理的にも精神的にもよく知っているのに、とっさに言い返したことで、正宗は自分も酔っている、と実感した。
     それも、プラチナのペースに流されるように。
    「へえ」
     やはりプラチナは面白そうに薄く見える瞳を細ませた。
     プラチナは結局正宗よりも年上なのだ。こういうときには、正宗の口から話されることをさも楽しそうに見つめている。今は一緒にいない、それぞれの師匠の代わりのように、見守る大人のような目で、正宗を見るのだ。
     その目が、正宗はウザくて気持ちが悪くて、厄介だと思っている。
     だけど、それにはいつも、逆らえない。
    「俺だって、泣くこと、くらい」
     ああ、むかつく。これは弱音ではない。これは心情ではない。これは、激白ではない。
     ただ、当たり前のことだ。
    「ある」

    「知ってる」
     楽しそうに笑うプラチナは、もっていたグラスの最後の一口を飲むと、勝手知ったるバーから細いワイングラスを持ち出して、正宗のグラスに当てた。
     細い音がして、男は酒の催促をする。
    「そうやって、涙が出るほど、誰かを想うということなんだよ、正宗くん」
     指輪の手と細いグラスが似合っているのが、また正宗を苛立たせて、世界をとろけさせる一歩手前の酩酊感をさらに上げていく。気持ちわりい。
    「そんな涙、はみ出ただけじゃねえか」
    「俺たちの白さも、同じはみだしものじゃない」
     それを言われると困ってしまう。
     この白さも、激情の、こぼれモノだと、ヒーローは今日の名言を発表した。

    僕の中のヒロイン(プラチナ、正宗/プラ澪前提)


     サングラスをかけていると、周囲の映像は浮かんでいる。正確に存在しているものそのままに見えているのではなくて、切り取った世界を歩いているようだ。映画のスクリーンのように、両側が飛んでいる。
    「じゃあ、邪魔なら外せよ」
     正宗くんはつれない返事。
     彼の片目の世界だって、きっと劇的だろう。そう思ってもプラチナは正宗ではもちろんなくて、そして隻眼にならなくていいのなら、まだなる気はなかった。
    「でもさー、さっきの、あれ、女優が悪いな。しかもメインが」
    「そればっかいってるねえ。そんなに気に食わなかったの? あの女優さんが」
    「ああ」
    「即答……」
     映画を見て、モスバーガーに入るなんて、俺たちどこの高校生? みたいな気分でいたら、店の場所が若干繁華街から離れていたために、店に集うのはおっさんおばさん家族連れ。男二人(しかも白髪と逆毛の白髪)は目立って仕方がない。
     だが、そんなことを気にしててはヒーローにはなれないゾ☆と心を奮い立たせながら、プラチナはさっき見たばかりだというのに、もはや記憶から薄れていくヒロインを思い出そうとする。
    「俺、あの主人公ぶん殴るシーンしか覚えてないよ」
    「……親近感……?」
    「疑問系で返さないの。しかも、親近感って」
    「そうか、どこかで見たことあると思ったら、あれはデジャヴュじゃなくて、現実かあ」
    「納得しないでよ」
     中身のソースがこぼれるモスバーガーを器用にこぼさないで食べながら、プラチナはやっとさっきのヒロインの顔を思い出す。
     そう、彼のいうように、あの子は守られるような顔をしていなかったのだ。
     強いまなざし、つりあがった眉、引き締められた唇。
     なのに物語は彼女の苦痛から始まって、彼女の苦しみもがき、それでも守られる立ち居地から退こうとはしなかった。そう、ずっと彼らが抱えていたのは、あの顔につりあわない頑固なまでに描かれる身近にいそうな顔をした女性が、寄生して生きようとなにかにすがる姿に対しての違和感だったんだろう。
     なのに、主人公は最後には、彼女の手をとって立ち上がる。

    「やっぱり、あの人、澪ちゃんに似てたよね」

     そういうと、正宗は、小さく「あっ」と言った。
    「気付いてなかったの?」
    「言われてみれば……」
    「ホクロと白髪があれば相当近い顔のつくりだったと思うよ」
    「やせすぎだ」
    「そりゃ女優だしねえ。体重少ないと体力なくなるし、澪ちゃんくらいで俺は充分だと思うけどなあ」
    「お前も痩せてる」
    「それをいうなら正宗くんだって痩せてる」
     俺には筋肉がある、なんてひっそり自慢げにいっているのをプラチナは無視した。

     物語には物語のルールがある。だから別に文句はつけまい。
     さよなら、すでに忘れかけの女優よ。君よりもっと素敵な女性を知っているのさ。

     君よりずっと鋭いまなざし。
     君よりずっと意思を表す眉。
     君よりずっと自信にあふれた唇。
     君よりずっと、ボリュームのある胸。
     君よりも、ずっと、孤独なくらいに立ち上がり続ける両足。

     正宗が飲むミネラルウォーターを勝手に一口もらって、プラチナはコーヒーを含んだ。
     あーあ、あの子に会いたい。
    「勝手にしてくれ」
    「あれ、俺の心の声が」
    「ダダ漏れだぞ、お前」
     親友は呆れていたけれど、それはあの間抜けな主人公を見るような目ではなくて、もっと、身近なものを見る視線だった。


    予告はそのまま(プラチナ、正宗/プラ澪前提)


     それを糧にして、毎日の生活を越えている。
     そんなものがきっと誰にでもあるだろう、とは思っているし、それがなんだってもいいと正宗は思っている。仕事上酒を扱っているので、酒がなければ生きられないタイプの人びとは数多く見てきたし、現在進行形で見ている。酒を飲んで忘れてしまおう、というのは、彼の趣旨には合わないので実行はしないが、彼自身は糧とは少し違うが、酒にはこだわっている。
     だが、そのこだわりを押し付けるようなことは絶対しない、というこだわりもまた持ちあわせているのだが、相手のあまりのグダグダっぷりにまるでドラマのような三流のセリフを吐いてから切なくなった。
    「飲みすぎだぞ、プラチナ」
    「いや、まだまだ軽いっしょ」
    「ふざけんな、ヤローなんぞ道に捨てるぞ」
    「え、ここ正宗くんちなのに! 追い出すの!? 親友なのに!!」
    「自分から親友なんていうやつは信用できないな」
    「つーめーたーいー」
     しかたなしに冷蔵庫から作りおきの麦茶を入れてやると、それを一気に飲み干してプラチナは笑った。
    「どこのお母さんだよ、麦茶作って」
     ムカついて麦茶のカップに再度持ち込みのいいちこを入れてやろうとすると、少しは酔いが醒めたのか、ちょっと青くなった顔で慌てて正宗の腕を止めたのだった。
    「で、その澪ちゃんがなんだって。その“澪ちゃん”につける修飾語及び全ての余分な言葉を排除して主語と述語だけ言え」
    「な、なかなか難しい注文をするねえ……」
    「普通の人間なら出来るだろ」
    「あの可愛さと愛らしさと男前っぷりをあらわすには、一言じゃいえないって」
    「お前がいいたいのはそれじゃないだろうが。なにをしに来たんだ!!」
     人には飲みすぎだ、なんていっておきながら自分もワインを一本フルで空けてしまっていて、正宗はソファに寄りかかると、反射的にうっとりとしたまぶたを感じて、もうこのまま眠ってしまおうか、と思ったが、さらに慌てたプラチナが頭をピンポイントで揺らしてくるからたまらない。
    「えー! 寝ないでよー!! ごめんってばー!!!
     言うって! 言うから!!」
    「揺らすな!!」
     一応、体を起こしてプラチナを見ると、いい年してしかられたのにシュンとして正座をしている。いつもつけっぱなしのテレビからは深夜放送の古い映画が流れていて、サングラスの男が黙ると静かになる室内に映画の割れかけた一昔前の効果音が響いた。

    「澪ちゃんがいないと、生きていけなそうなんだけど、俺」

     重厚なクライマックスのシーンのBGMに実にそぐわないその相談を聞いて、正宗は二日酔いに明日はなるから布団が干せないだろうと突然考えた。
    「え、ちょ、なんか反応は? ね? 寝てないよね? 目、開いてますけど」
    「おきてる。でも、すげー逃げたい。今すぐ、お前から」
    「わあひどい!」
     男はふざけてしなってみせるけれど、もうお互い酔っ払っていてなにがなんだかわからない。黙ってればマシなのに、と思っているけれど、黙っているのはコイツの十八番で、別の意味でいえばもとより言うつもりがないのだ。いろんなことを。
     今の言葉だって、本人にいえばいい。
     彼女は相手にしない、なんてことは絶対にない。そう正宗は思っているけれど、きっとプラチナもそう思っているけれど、言わないのだ。いえないのだ。
     プラチナが抱える「毎日の糧」はきっと澪のことで、それでも彼は隠れてこっそり蝕むように周囲から彼女を包んでいて逃げられないようにしておきながら、自分の意思はいうことも出来ずに、深夜映画のクライマックスに合わせて人生の大告白を、身代わりに親友に言う程度の「勇気」しか持ち得ない。
    「あー、もう、無理。俺、寝るわ」
    「ええ、ほんと突然すぎない! 正宗くん!! これからさっきいえなかった澪ちゃんにつけるべき修飾語のオンパレードのつもりなんだけど」
    「本人に言え」
    「言えたらこんなところに来てないよ」
     そしてプラチナが男前に笑って、正宗はやっぱりこのはみ出しモノの俺たちに共有してあるのは、手に入れることへの恐怖が強くて頭がイカレているんだぜ、とこちらも自然に笑ってしまった。
    「友達がいのねーやつ」
     彼の春が、早く訪れるように、と明日は無理やりにでも布団を干したら先ほどの映画のリメイクを借りてくることにしよう。
     結末の変わってしまった、新装版のようなエンドロールがくることを祈って。

    君のすべてを奪うまで(プラ澪)


     不意に言われたそれを、「告白」以外だと理解するほどには私も鈍くなく、まっすぐな好意として受け取った。
    「だって、ずっと見てたんだもん、しかたないっしょ」
     この場合の「見られていた」のは自分だということに思い至り、耳が熱くなる。
    「は、な、おま、何言ってんの」
    「だからー、そのままだってばー」
     白金はなんの変化も見られない。畜生。サングラスってずりーぞ。こっちが口をパクパクさせていたら、手に持っていた空き缶を抜き取って捨てにいってしまった。帰ってくると、私の手をとって、すたすたと歩いていく。
    「ど、どこにいく」
    「どこもなにも。もう帰るんでしょ? いつもどおり送っていくけど」
    「いや、この手は、なに」
    「だから、俺のほんの少しの自己主張」
     その言い方がすねていたから、無碍に突き放してやることも出来ずに、私は下を向いてただ後をついていく。白金の手は、昔と変わらず私の手よりも少し大きくて薄い。その手が震えているのに気がついたのは、電車の切符を渡されたとき。そこで私はやっと笑うことが出来た。
    「まだ、繋ぐか?」
    「もういいや。からかってるでしょ、俺のこと」
    「うん」
     変な柄シャツ着やがって、と毒づいたら、この花柄は澪ちゃんが好きだって言ったんじゃないか、という減らず口。電車を降りてうちの前まで来たら、さりげなく顔を近づけてきたものだから、丁重に断らせていただく。
    「殺すぞ」
    「それ、丁重言わない」
    「はっきり言ったらまあ許してやるよ」
     挑発して、即座に失敗したと思った。

    「君がほしい。今すぐに。大好きです。愛してます。この命は君のものです。だから、とりあえず結婚して」

     一息もいれずにコレかよ。自分の顔が瞬時に真っ赤になったのがよくわかる。白金が笑った声で「真っ赤ですけど、澪ちゃ~ん」なんていうから白いスーツから見える黒い革靴を踏んづけて、扉を閉めてやった。
     しばらくして、玄関先から動けないで居たら、白金の声が聞こえた。
    『ま、まままっまままままっまさ、ま、マサムネくんっ!!! どど、どどどうしよよよよう!!!!
     つつ、ついに、澪ちゃんに言っちゃった!! どうしよう!!??』
     バカが。丸聞こえだ。
     とりあえず、アイツも普通でないことが確認できたので、まあ、満足してみた。
     しかし、当面は、アイツとの再会に何をいうべきなのか、について私はひたすらに頭を悩ませることになる。


    空回りする思い(プラチナ、マサムネ/プラ澪)


     プラチナからの電話があって、あまりにもうるさいから外でそんなことを大声で話して恥を捨てて歩くくらいならうちに来いといったら「正宗くんの手料理付きじゃなきゃ嫌だ」なんて抜かすから「ありあわせしかない」というと、「材料買ってく!」という返事。アイツはガキか。
     仕方ないので冷蔵庫の中身を確認して、わざと細かいものを多く買わせてきた。一つくらい間違えるだろうと踏んでいたのに、一つも間違えなかったから、面白くない。
    「残念でしたー。君のそんな思考はすでにお見通しなのさ☆」
    「そのしゃべり方うざいっつってんだろ。ったく。ちょっと座ってまってろ」
     その間、自分用の缶ビールを開けて、椅子の上で体育座りをしてまっている。一人になると途端に大人しいプラチナは俺の分のビールもご丁寧に置いて、グラスは使わずにまっていた。
     バカだなー。さっさと使えよ。せっかく冷やしてやったのに。
    「ほら。とりあえず、飯」
    「あ、チャーハン」
    「イタ飯といってくれ」
    「かっこつけかよー」
     ついでに昨日の残り物のアレンジと、さっきプラチナが買ってきた材料をつかって揚げ豆腐のおろしとはんぺん焼き(中に岩のり入り)と納豆おろし(味はゆずぽん)をセット。昨日のカレイの煮付けは味が深くなってちょうどいい。ああ、どうせコイツの金なら刺身でも買わせりゃよかった。
    「相変わらず、手早く、安く、かつうまい、を実行中だねマサムネくん」
    「安くて簡単なのが一番だ」
     お通しにネギの炒めたのに青みを降ってしょうゆで味付けしてさらにしょうがを乗っけたのを出してやる。俺が座ったのを見て、プラチナは俺のグラスにもビールを注いだ。こいつがいれるビールの泡の比率は完璧だ。これだけは敵わないと思う。
    「俺はもう食べたっつーのに」
    「ええ、酒くらい付き合ってくれんでしょー」
    「それより、早く本題に入れ」
    「う」
     それからしばらく、プラチナは言葉を捜しに一人想像の世界に旅立った。
    「澪ちゃんに告っちゃった」
     そのまんまだった。
    「それはさっき電話で聞いた」
    「どうすればいい?」
    「知るか」
    「冷たいマサムネくん!!」
    「で、なんて言ったんだ? アイツは?」
     あ、という口の形のまま、あいていたから、ネギをつまんで入れてやると、モグモグしながら、こういった。
    「聞いてない」
    「口にいれたまましゃべるな」
     だって、と言い訳するのを無視して、俺はしごく全うな意見をいうことにした。
    「とりあえず、返事きけば?」
     ポンとこいつはマンガのように手を打つものだから、あまりの間の抜け方に脱力して、酒が早く回る気がした。


    選択肢は既になかった(澪/プラ澪)


     やーらーれーたー。
     風呂に入って思い出すのは先ほどの白金の言葉。

    『君がほしい。今すぐに。大好きです。愛してます。この命は君のものです。だから、とりあえず結婚して』

     アイツ、本物のバカだ。こんなのすぐに出てくるか? フツー?
     というか、たった一度しか聞いてないのに、完璧に反芻できる自分がおかしい。えー? えー? どういうこと?
     たとえば、アイツはただの幼馴染だし、修行仲間で、ちょっと気が弱いからついついいろいろ言いつけやすくて、でも弱いわけじゃなくて、たまに何考えてるかわかんないけど、まあ、いいやつだ、と思う。
     よく気がきくのは、知ってる。自分のことを、よくみてるのも、知ってる。あいつがまあ私に好意を持ってるのも知ってる。でも、それは、そんな意味じゃなくて、いやいやいや、だって、ほら。
     そうだ、日本を出国する前に会ったときにもこういってた。
    『俺、澪ちゃんが帰ってきたときには、必ずかっこよくなってるから』
     かっこよく~? どこがだ。アレが? 勘弁してくれ。でも、いままでと違う白金自体はまあ好きだ。悪くない。アイツが、いつも、楽しそうなら、それでいいと思った。
     楽しそう? 本当に? なあにが、プラチナだ。バカ。バーカ。
     あの姿でアイツはこういった。
    『俺さぁ、これからは地の性格バンバン出して生きてくことにしたから』
     それじゃあ、やはり、さっきの言葉は、アイツの地。
     私はそれを、全て受け入れてやらなければならない。今まで、ずっと、アイツに支えられてきたのだから。修行で辛いときだって、決して自分は弱音を言わなかった。休憩だって、自分からは決して言わなかった。白金が、休憩を取らなければ、決して自分からはやらなかった。女であることを引け目に感じていたときに、それを武器にしろ、といったのは誰だ。それを有効利用しろといってくれたのは誰だ。私が自分の性に踏ん切りをつけられたのは、誰のおかげだ。海外に行く決心がつかなかったとき、最後の背中を押したのは、誰だ。
     明神のそばにいることが出来なくて、悔しくて涙を流したとき、なにも言わずに話をきいてくれたのは、誰だ。
     ずっと、私のそばにいたのは。

     湯船から出て、手早く体を洗い、風呂を上がる。ペットボトルの水を飲んで思うのは、アイツをやっぱり独りにさせておくのはさすがに気分が悪く、かといってこれまでの関係すべてを変化させることに対してはまだ私も若いつもりなので若干勘弁してほしい。
     それでも、思い出す。あの時の顔は、いつだって、私が一番好きなアイツの顔。
     神吹白金。真面目な男だ。


    後ろにいたもの(プラ澪)


     気づいていたけれど、振り向こうとはしなかった。というか、出来なかったに等しい。手に入れられないことを知りながら追いかけるのは楽なのに、今現在の関係の多くを崩すことのほうがデメリットを強く感じ、自分の生活に深く関わっているからこそ、振り返って、そいつの腕を取ることを拒んだ。
    「ねえ、もう、あれから一週間も経つんだけど」
    「うん、そうか」
    「そうか、じゃなくてさー」
     そういう白金はその気もないくせに、私の手をとって、爪を撫でた。
    「俺、澪ちゃんみたいな手、好きだよ」
     どこが、といおうとして白金と目線が合う。正確には、そのサングラスと。
    「どこがって、だって、澪ちゃんの手だから」
    「このタラシ」
    「ほかの誰にも言わないのに」
     そして私の手を丁寧にテーブルに戻す。やめてくれないかそんなに懇切丁寧に扱わないで、私はそんなに割れ物のようじゃない。
    「後ろには、いつも、お前がいたのに」
    「前には澪ちゃんがいるから、俺は頑張ってたのに」
    「後ろに真の敵がいたとは」
    「目の前にはいつも女神がいたんだよ」
     会話は常に食い違っている。
     今度は私から手を握り返した。途端に手が強張るのを知ってほほえましくなる。
    「その指輪、かっこいいよな」
    「別のを買ってあげるよ」
    「嫌だ。お前のがいい」
     そして男の人差し指から指輪を抜き取って、違う指にはめてやる。白金の息を飲む音だけが聞こえた。
    「なあ、これが答えだとして、私たちは、もう違う人間になってしまうのか?」
    「いいや、なにも。俺は、ずっと君だけを前にして歩く」
     ああ、ずるい。そんなときにサングラスを外すなんて。彼の目に映る私は、黒い影を追いかけていたころの私と同じ目だ。
    「やっぱり、新しいのがほしい。“プラチナ”の」
     そういったら、こいつ、ジャケットのポケットから光るリングを取り出しやがった。
    「百年間、一緒にいてね」
    「ただし、お友達からスタートしましょ? 現在の舎弟からのレベルアップだ」
     ガックリと肩を落す姿は見慣れている。笑うと、プラチナも無理に笑顔を作って
    「君の笑顔のためならば」
     最後までクサイ。


    不自然な流れ(プラ澪)


     まさか。
     なんてことだ。
     まったく言葉が出てこなくて、呆然としている。一週間くらいそうしていたら、携帯の履歴が白金で埋まっていた。一度も返事をしないのだから心配するに決まっている。
     もともと心配性な男なのだから。
    「普通に居るし」
     なにも考えることが出来ずにカーペットの上で丸くなっていたら、背中側の玄関が開く音がして、白金が入ってきていた。
    「澪ちゃん、なにか、あったの?」
     あった、けれど、いえない。
     いつだって、白金の手は優しく白い前髪をいじる。最後にまぶたを閉じさせて必ず安心させてくれる。私たちが繋がっている証である、この髪。だが、まぶたにその手はやってこなかった。
    「澪ちゃん……? ねえ、ちゃんと、食べてた? 痩せてるよ? とりあえず、起きて。そんなパジャマみたいな格好やめて一度着替えておいで。何か作ってあげるから」
     そして立たせられる。部屋着にしているトレーナーすら重たく、のろのろと歩いていたら、先回りした白金は私の部屋の扉を開けて顔だけは無理に微笑んで声は隠せずに心配したまま「スープとおかゆとどっちがいい?」と言った。
    「おかゆ」
     それだけは即答した。

     おかしい。
     明らかにおかしい。
     澪の様子がおかしい。
     そんな天変地異があっていいものか。
     プラチナはひたすらにおかゆをかき回しながらひどく混乱している。本当におかしいのはここ二週間程度。電話しても上の空だったし、人の話をまったく聞いていないといっていい。仕事であっても自分の仕事はきちんとこなすが、やはり行きと帰りのフラフラしたところが丸見えだった。
     正宗には「お前、なにしたんだ」と詰め寄られ(彼だってなんだかんだで澪に甘くて、そうして責めてくるのが自分のほうって、どういうこと! とプラチナは泣きたい)、明神冬悟には「痴話喧嘩は犬も食わねーっていうだろ」と、呆れた目線で睨まれる(元ヤンキーとは恐ろしいもので、案外イラついた目線は厳しい。そしてそれはちょっと澪に似ている)など、とにかくいいことがない。
     そうやって、周りの人間には自分が彼女と恋仲だからなにか不倫とか浮気とかそういた俗っぽいものを想像されているのかといえば絶対違うというのはわかるのだが、やはりそういう男女のもつれを予想されているようでいたたまれない。
     なんてったって、指輪をあげて求婚しても(プラチナは本気だった)「オトモダチ」からのスタートだったのだ。っていうか、なにをどう考えても俺のほうがかわいそうじゃん!!
     と言いたい(まあ正宗には散々泣きついた)が、まあ、なんだかんだで、お互いいい年ですし? (こういうと澪は怒る)まあ、なんとかそういう関係には持ち込んだのだが(そこに行くまでにどれだけ頭を使ったかというと、ハッキリいって完全犯罪をこなすくらい難しいと思う)、というか単に酒に任せた。ぶっちゃけ。
     だが、酒に強い彼女のことだ。むしろ、自分よりも、彼女のために酒が必要だったといってもいい、とプラチナは自負しているが、翌朝は一度も澪が目線を合わせない辺り、プラチナは嬉しいんだが複雑だった。
     乙女は、なんと繊細なのだ。
     それからは仕事でたまに会ったりしていたが、あんまり一緒に出かけてくれなかった。照れているにもほどがある。まあ、それでもキチンとランクアップしてくれているのは細かいことで実感はできた。それ以外ではまったくいつもどうりの態度。外では手は繋がない。相変わらず澪の自宅には中々入れてもらえない。それでも、少しずつ、澪が受け入れてくれているのはわかるから、プラチナは幸せだったのだ。
     それが、この二週間で簡単に崩れる。俺が、一体なにをしたっていうの! 教えて僕の女神!!

     白金はジャケットを脱いで、相変わらず派手なカッターシャツを着ている。変な鼻歌を歌いながら自分の家の台所に立っているのを見て不思議な気分になった。これが、日常になる可能性。多いにありだ。おお、恐ろしいこと…!
    「あ、澪ちゃん、どう? 気分は? お水いる?」
    「いる」
     着替えてきた、といっても、セーターとジーパン。あいかわらずダルダルの格好だ。すぐにコップに水をいれて渡してくれ、それをすこしずつ飲む。
    「あー」
    「もうちょっとだから」
    「うん」
     あ、すっぱいもんが食いたい。
    「梅、多め」
    「はいはい」
     “プラチナ”の指輪をはめたりはずしたりを繰り返して、やっぱりボーっとしていたら、プラチナの手が額をめくった。
    「熱は、ないんだよねえ」
    「ない。飯」
    「まったく、アズミちゃんみたいなしゃべり方するんじゃないの。はい、出来ましたよー☆」
     ゴトリと置かれた小さな土鍋のふたが開かれたとき、私の心も開かれた気がした。中身は私の大好きな半熟だ。
    「白金」
    「なあに?」
    「結婚してくれ」
     それから、5分間、プラチナはきっかり動かなかった。

     爆弾発言があった。
     今、ナチュラルに。ていうか、なんていうか、俺は、全ての段階においてリードを取られている気がするのだけれど。普通それをいうのは俺じゃねえの? あ、でもそうか、一度もうすでにいってるんだ。結婚してくれっていってる。あ、そうね、はいはい、これはやり直しなのね。
     いや、そこじゃない。そういう問題じゃないだろう。
    「おい、白金。生きてるか」
    「……はい、いきてます」
    「そうか」
    「自分でも殺しかねない発言だって、わかってるんじゃん」
     自棄になってドサリと向かいの席に座ると、澪はおわんにかゆをよそっているところだ。本当に、痩せた。痩せたというか、やつれた。なにが彼女をそこまでさせたのか。
    「白金」
    「はい」
     今度はどんな爆弾かと構えてみた。
    「つまりは責任を取れといっているんだ。やっぱり子どものことを考えると、籍を入れておかないと、いろいろ不都合だよな」
     核で地球が滅びるわけが、わかった。


    未知の道(プラチナ、明神/プラ澪)


     当然のことなのかもしれないが、それに最初に気がついたのはヒメノだった。みんな忘れかけているが、ヒメノは年頃の女の子なのだ。
    「澪さん、その指輪、どうしたんですか?」
     それを聞かれただけで澪の顔は真っ赤になって、いろいろと言い訳をはじめ、通りかかった雪乃に「あらあら羨ましいわねえ」などとクスクス笑われてしまった。
    「い、いや、ここここれは、その……!!」
    「そんなに照れなくてもいいじゃないの」
    「ええ、まさか、男の人からのプレゼント? さっすが、澪さん!!」
    「こ、こら、姫乃!!」
     慌てる澪の声をリビングの中で聞いていたプラチナはため息をついた。
    「ねえ、やっぱり、まだ俺は“オトモダチ”ということなの?」
    「いや、あの、プラチナ。俺に言われても」
    「もう指輪を贈っているのなら次は結婚だろ」
    「さっすが、ガクくん。わかってる~」
     明神はひざに乗せたアズミの耳を押さえながら、このアホな会話にどうやってついていこうかと思案した。

    「な~んてのが、遠い昔のようだ、なあプラチナ」
    「お願い、すみません、ほんとに、これは、あの、それ以上、いじらないで……!!!」
     珍しくも赤面しているプラチナは菓子折りを持って一人でうたかた荘に来ていた。碁盤をテーブルのようにしてキヨイと向かい合っている明神は、立てた膝の上に湯のみを乗せている。キヨイはガチャガチャと黒石をもて遊びながら相当本気で考え込んでいた。ガクに言わせると、二人の腕は互角。つまりは「下手の横好き」ということだ。
    「え、で! 一体いつが予定日なんですか!?」
    「ああ、あの、はい……えー、来年の春には……」
    「へー」
    「ああああああああもうやめてお願い逆算しないでええええ!!!」
     明神はプラチナからきた手紙をもう一度見直した。
    <結婚しました>
     なんで、また。あの女が簡単に。そんな想いがうたかた荘の住人全ての感想だ。
     だが、結婚に至る理由を聞いてある意味納得する。押しても押してものれんに腕押し、というあからさまな好意の一方通行だったのが、どう道を間違ったか、お友達から一気に夫婦にランクアップしてしまった。ガクが言ったこともあながちハズレではなかったようだ。
    「まあ、よかったな」
    「あ、はい」
    「おい、いつまで恐縮してんだよ。プラチナ」
     なんとなく、居心地が悪いのだろうプラチナに明神は同じようにぎこちなく笑うしかない。
    「おめでとう、プラチナ。幸せにしてもらえよ」
    「そっちなのかよ!!!」

     帰り際、駅に向かうプラチナと一緒に明神は歩いている。桶川親子に夕飯の買出しを頼まれ、自分は郵便局に用があり、エージにはスポーツ雑誌を頼まれ、アズミはお気に入りの食玩をなくして最近元気がなかった。また買ってあげよう。あと2種類だし。
    「なんかさー」
    「ん?」
    「そうやって、誰かが、誰かの親になるって、おかしな感じだ」
    「ああ。俺も」
    「しっかりしてくれよ、お父さんだろ」
    「まだ先の話さ。澪ちゃんはすっかりお母さんだけど。男は、まだ、全然わからない」
    「お前は、親父のこと、知ってるのか?」
     本当の、父親のこと。プラチナは首を振る。
    「知らない。俺の父さんは、神吹銀一だけだ。厳しかった。甘えた記憶なんてない。でもさ、わかるよ。あの人がどんな気持ちで、俺を見ていたのか。嫌いなら捨ててるさ。血が繋がってないんだから」
    「別に、血の話じゃねえだろ」
    「そんなもんだよ。俺は、血が繋がってないから、髪を黒くすることが出来たし、本当の俺は、こんなんじゃないって思いながら青春を過ごした。
     でもさ、俺も、あの人を捨てられなかった。俺のことを心配して、出なけりゃ血管浮かしてまで怒らないよな。ちゃんと術が使えなくちゃ生きていけないから、あの人は鬼のようだったんだ。俺に生きていてほしいと、願っていてくれたから、あの人は、俺の父親であろうとしたんだろうなって、今更、今頃わかった」
    「そうか」
    「俺は、親子というのがわからない。でも、きっと、澪ちゃんも同じだと思う。
     俺たちは、案内屋は、いつだって、孤独だ。死に近すぎて、死を忘れる。でも心から死を失うことも出来ない。背中にびっしり、死はまとわりついている。剥がしたい、だが剥がせない。
     孤独なんだ。血が繋がらないから。俺は不安だよ。本当の“血”がどんなものか、知らないし、わからないから。俺は、子どもを好きになれるかな。澪ちゃんを、捨てないかな」
    「あのさあ、お前、考えすぎじゃないの?」
    「そうかな」
    「俺は、他人が、そこまで出来るのなら、他人じゃなければ、同等に出来ると信じたい。信じるしか、出来ないこと、あると思う。男だし。
     お前は、アイツを支えてやるのが得意なんだろ? 年の功。責任とって、しっかり支えてやれ」
     自分の経験は、他人のことしか語れないのだ。
    「駄目なこともきっとあるさ。しかたがないよ。でもさ、俺、多分」
    「なに」
    「お前は、絶対子煩悩になると思う」
    「なにソレ? オチ?」
     プラチナは腹を抱えて笑ったが、泣き笑いの振りをして涙を拭く。
     愛妻家でいよう。子煩悩になろう。自分が得られなかったもの、本当の父親、母親、そして家庭。大切だった、師匠との生活。愛されてきたんだ。自信をもって、いいんだ。
     本当は子どもは怖い。この力も継がれてしまうかもしれない。本当に子どもを愛せないかもしれない。受け入れることが出来ないかもしれない。
     でも、これを忘れてはいけない。その子は、望まれて生まれてくる子ども。
     二人が愛し合ったために、その証拠なのだ。
     この日、明神の発言も一部大当たりすることになる。
     子どもが生まれてからやってきた澪の第一声は「白金が子どもに構いすぎてウザイ」だったという。


    もう生活の一部なので(澪、正宗/プラ澪)


    「で、なにがお前にアイツを選ばせたんだ」
    「相変わらず一気に本題に入るな」
     正宗はなぜ人ん家に来てまで自分が茶を入れねばならないのかと思うが、まあうまいものを飲みたいので仕方なく自分で二人分を入れる。白金の趣味全開の白い色で揃えられた道具一式は、かつて自分がアンティークショップ周りに付き合わされ最終的には二桁目の店に入ろうとしてそれが最後だと念を押してやっとこ買わせたものだ。それなりの値段は張ったが、なかなか物持ちがいい。
    「気になっているんだ。珍しいだろ? 俺が人様のことに干渉しているなんて」
    「自分でいうなよ。そういうところ、アイツに少し似てきたぞ、お前。まったく、親友というのも恐ろしいな」
    「じゃあ、これからはお前の方が長く一緒にいるんだ。そっくりになる」
     紅茶を差し出せば、不服そうに受け取った。
    「別に、なにが、というのでもないのかもな」
     さりげなく用意してあったブランデーをたらして、澪に差し出そうとすれば、いらないと手で拒否。その手はおなかをさすった。
    「ただ、やっと、あきらめたんだ。アイツを」
    「……プラチナは、代わりなのか」
    「お前はそれが一番知りたいんじゃないのか?」
     ニヤリと笑う笑みは女のものとしてはずいぶんと凄みがある。ふん、と鼻で笑い飛ばす。
    「代わりじゃ、ない。それはちゃんと言っておきたい」
    「ふうん」
    「ただ、やっと、思ったんだ。やっと思えた。明神は死んでいて、白金は生きている。私は自分の職も忘れてそのことを失念していた」
    「逆だろう。この職だから、生と死の境を忘れてしまう」
    「そうだな。白金は、生きていて、私を支え続けた。私は、それに応えるときが来たと思っただけだ」
    「なんだよ、それ。Give and Takeの話かよ」
    「いや、なんだろうな、それとは、また少し違うんだ。義務でもなくて、与えられたから返したいとかでもなくて、それでも、私も、白金を、あきらめきれなかったんだろう。
     それでも、私たちは生きなければならない。生き続けなければならない。だが、過去を忘れることは絶対出来ないし、私はずっと明神を忘れない。忘れたくない。忘れられない。
     そこまでを含めて、アイツは一緒にいたんだ。
     私はずっとアイツに守られて支えられていたし、変な話だな。未練なのかもしれん。アイツが離れていく可能性はいくらでもあったわけだろ? それでも、そばにいたし、そしてけっして離れないと思った。それに」
     言葉を捜す彼女は、やはり少し大人しくなった印象がある。女とは変わりやすいものだ。

    「だってアイツ、私がいないと、駄目だろう?」

     その一言に、少し紅茶を噴出した。
     澪が笑いながらティッシュを差し出す。すると、玄関からあからさまに幸せいっぱいの声で「た~だ~い~ま~☆」という頭の悪そうな声がしてきた。澪と正宗は幼馴染ならではのタイミングで「このバカが」とつぶやいた。
     しかし、その顔は互いに最高の幸せを示している。
     まったく、バカな子ほど、愛しいものだ。


    愛を叫ぶ(プラ澪)


     結婚するとは、くだらない、ただの紙切れじゃないか。そうは思いながらも、その紙を出すことで、何かが変わったようだった。
     俺と、君は、対になったよ。
     家に帰る道すがら、スーパーでミカンを買って帰った。

     初めて子どもを連れ帰った日、白金があまりに子どもを見つめていた。病院にいる間もとにかく食い入るように見ていたけれど、澪は不思議でならない。
    「あのさあ、なんでそんなにじっと見ているんだ? そんなに面白いか? まだ寝返もりうてないぞ?」
    「ああ、うん」
     そう応える。
     隣にいって、一緒に赤ん坊を見ると、よだれ。すぐ手の届くところに白金が急遽取り付けてくれた棚からティッシュを取ってふき取ってやる。
    「すごいよなあ」
    「なにが」
    「なにもかも。澪ちゃんがお母さんになったことも、俺がお父さんなことも、こんな小さいのが生きていることも、それに」
    「それで」
    「俺が、こうして、生きていることも。出会えたことも、辛いし、苦しいし、悲しいし、正直子ども触わるの怖いし、こんな柔らかくて壊れたらどうしよう」
    「意外と丈夫だってば」
    「好きになれなかったら、どうしよう」
    「まだ1日目だろ。これからだって」
    「この子が、霊が見えるようなことが起きたらどうしよう」
    「起きないようにしろよ」
    「はい」
    「他には?」
    「俺、生きてて、よかった。愛されて、よかった」
    「そうか」
    「俺、愛することが、できるかな。俺、家庭って、作れるかな」
    「私のこと、愛しているって言ったのはどこの大バカ者だ。家族増やしたのは誰だ、アホ」
     ベビーベッドにすがりつくように泣いている白金を、澪は下から覗き込むようにして見返す。
     本当にバカな男だ。
     自分でたくさんのものを生み出していることを知らずにいる。
     その手が救った命はいくつある?
     その力がどれだけの人間を助けてきた?
     その声がどれだけの行動を後押しした?
     その目が見た真実はいくつお前の中に焼き付いている?
     その心は決して曲がらずにきたじゃないか。
     親を知らずに育って、本当の自分を隠して、愛することを全力で否定してきた白金。
     愛することに、怯えて、恐れて。愛されることを知っていても、それを自分に出来ないと考え続けてきたのはなぜなのだろうか。澪は大きな子どもの白い髪を撫で、邪魔くさいサングラスを外す。
    「愛されたいなら、呼べ」
     主張しろ。
     生きていると、主張しろ。
     お前の命は私が握っている。
     お前を愛してやるから、無駄な涙を流すのではない。
    「愛したいなら、叫べ」
     その全てに、応えてやる。


    ヒカリの先(正宗、プラチナ、澪/プラ澪)


     アイツのしゃべり方はどうにかならないものだろうか。そんなことを真面目に考えた。
     プラチナ、と自分が呼ぶようになったのは、互いにいろいろ悩み事の多い時期。そりゃあ確かに俺たちの置かれていた環境というのは、特殊だったかもしれない。仲間と呼べる人間は非常に少ない。なぜなら単純に、この能力を持つ者が少ないからだ。別にそいつ以外にだって相談とかいろいろな話は出来ただろうけれど、やっぱり本音を言えるのは、そういう力のことまで知っていたほうが面倒くさくなくてよかった。
     だから、結局、ハッキリいってしまって、まったくもってなんの共通点もない俺たちが『親友』となりえたのは、そんな環境下だったから、といいきってしまうのが一番だと、俺は思っている。
     だからこそ、白金は、俺に向かっていったのだ。
    「俺さあ、本当は、こんな風に黒くしたくないし、もっと言えば、こんな性格も嫌いだよ」
    「じゃあ、どんなんがいいんだよ」
    「俺は、世界を救うヒーローになりたい」
     そして茶化していった。
    「ヒーローになったら、もう“白金”じゃないんだからね。変身したら、名前も違うんだから」
    「何になるんだよ、それじゃあ」
    「何が、いいかなー」
    「考えてねえし!」
    「とにかく、俺は、俺以外になりたい」
    「platina 」
    「え?」
    「プラチナでどうだ。それなら違和感もないだろ?」
    「そのまんまじゃんか」
    「十分違う」
     だが、アイツは笑って「正宗くんが乗ってくれると思わなかった」なんていうから「俺以外に誰が乗るんだ」と切りかえしてやった。あいつの話相手は俺くらいのものだろう。それくらい知っている。
     白金は、そうしてプラチナになったのだ。
     もともと願望は強かった。誰かになりたい。自分ではない誰かに。そういった変身願望が。それは白金の強さへの願望であり、男としてのプライドであり、そして将来の自分像だった。俺には全然そういうのがなくて正直よくわからなかったものだ。
     俺は、ただ、今を生きる生活をしていただけで将来なんて考えも出来ない。ひたすらにカクテルと銃器を見比べる日々。満たされていくのは俺の知識欲と戦いへの欲望。戦場を最も恐ろしい場所と知っているために二度と行きたくないという想いを持ちながらに、同時にそこへいって、すべてを破壊したかった。
     戦いを求めるものなど、民衆の中にはいない。そんな想いは逆転して、戦争という戦争を破壊して、その愚かさを見せつけ、二度と争いをなくしてしまいたかった。俺みたいな人間がもう生まれなければいいと願って、それはゆがんで、そんな人間を産む方法を目指した。
     白金が変化したのは、無縁断世が奪われて案内屋連合の敗退が決定してからだった。もちろんほぼ全ての案内屋勢力は壊滅。湟神の力を持つものたちの必死の努力もむなしく、幾人もの人々が亡くなる。
     その頃、将来のために温存されていた俺たち、弟子たちは、末端の戦いしか見ることが出来ず、そして参加を許されず、歯がゆい、いや、むしろ激しい憤りを感じていた。
     師匠を助けたかった。
     案内屋の仲間を救いたかった。
     人間の将来を、破滅を止めたかった。
     白金は絶叫して、絶望して、まさに壊れかけの人形だった。毎日死人を見る日々、毎日誰かを失っていく。自分が何の役にも立たないと歯噛みして、歯軋りして、手のひらを血が流れるほどに握った。噛み締めた唇は白い色に反して赤い血を流す。俺や澪が冷静でいられたのは、白金が三人分怒り狂ってくれたからだと思う。
     アイツが怒るのを、俺たちは情けないとかコントロールできてないとかいわなかった。
     事実、アイツは俺たち二人が感情を出すのを嫌う分、その倍以上命を削って怒っていたとしか思えない。アイツが狂うたびに、俺と澪は駆けつけて、あいつをなだめ、殴り、抱きしめて、思いとどまらせた。
     アイツは、一番年上だったし、それにその頃すでに梵痕が出ていたのは白金だけだった。
     なのに出征できない。後々になって、プラチナとなったときにもその時のことを言っていたことがある。
    「あれほど、自分が憎くて殺したくなったこともないね」
     だから、余計にヒーローへの欲望は増したのだろう。なにもかもを変える力を持つ、無敵のヒーロー。
    「俺はもう、夢を見ない。ただ、あるのは、確実な勝利への道さ。
     ねえ、正宗くん、俺のこと、信じてくれる? 俺は、絶対に、せめて、手の届くものは守ってみせる。戦いなんて、俺に任せておけばイチコロ☆なくらい、俺は強くなってやる。
     汚くたっていい。綺麗でなくていい。みすぼらしくて、いいよ。
     最後に勝つことが、重要なんだと思わない?」

     俺は、変わるよ。

     だから、これからは「プラチナ」となる。
     そうして、俺とプラチナの密約は完成した。アイツは、ヒーローとなる。俺は、アイツを手助けする「参謀」となる。子どもの約束のように、小指で指きりをして、最後の一言。
    「指きりげんまん、嘘ついたら、針千本飲~ます」
     あのときのプラチナは、怖かった。

     そして、今、アイツは長い戦いを終えて、やっと、本来の人の良さを取り戻したように見える。
    「おー、よしよし。おっ前は本当にかっわいいな~☆」
     子どもをあやす姿が似合うのが、ぶっちゃけ気持ち悪いとも言う。
    「って、ちょっと、なんで正宗くん後ずさるの。その目線やめてよ」
    「別に。お前がキモイと思って」
    「ひっどー!」
     そうだよ、そう思ってるけど(それは否定しない)、でも俺はお前の親友で、参謀だ。お前の仲間だ。ヒーローは赤ん坊に夢中で戦いのときの恐怖のかけらもない。それが、なんだ、ガキに夢中になりやがって。情けないったらありゃしない。
    「おい、正宗。嫉妬してる場合か。しかも、赤ん坊に。せめて私に妬いてくれ」
    「は? え、澪ちゃんどういうこと!?」
    「バッカ言ってんじゃねーぞ!! 澪!!!」
     俺はそんなこと思ってない。ただ、もう昔のように二人で飲むとか、二人で闘うとか、ないんだなーって思ってただけであって。
    「すねるな。いい大人なんだから。別にいつでも遊びにこいよ。白金を取ってしまってすまなかったな」
    「だから、んなわけねーだろ! 俺はコイツの昔の女か!!」
    「え~正宗くん何々最近構ってあげなくて淋しかった!? なんかストレス溜まってんの!? 話ならいくらでも聞いてあげるよ! お店いつでも行くよ!!」
    「き・さ・ま・も!! 調子に乗るな!! 俺はただ、お前のその言葉遣いが嫌なんだよ!! あえていうならその話し方がストレスだ」
    「え~。んなこといわれても~」
     澪はニコリと綺麗に(結婚したら俺でも「綺麗」だと思うくらい綺麗になった)笑って、言う。
    「お前のおかげで、私たちは幸せだよ、正宗。三人一緒に頑張ってきたから」
    「知ってる」
    「正宗くん。俺たち、親友だよ」
    「I know.」
     お前たちの幸せを、多分お前たちの師匠の次くらいには願っていたのはこの俺だ。お前たちが幸せになるのに、一体誰の許可がいるというのだ。障害があるのなら、俺が破壊してやるくらいのことはやってやる。
    「言っとくがな、お前らが幸せじゃなかったら俺が許さないからな」
    「「知ってる」」
     そして二人は楽しそうに笑うのだ。俺は、確かに一抹の寂しさを感じている。なんたって、約十年以上にもわたる恋愛相談おまけに体調管理の相談事から解放されるのだ。なくなればそれはそれでポッカリ穴が開いている。
     しかし、それ以上にコイツらがやっと、あんな戦いをしないというのなら、もう戦場を駆けなくていいのなら、それは俺の幸せに取って代わってしまった。ついでに、もうあんな夢は見ないだろう。
     狂うプラチナと、泣く澪と。そして、戦場をなくそうと戦神となる俺を。
    みどり(aomidori003) Link Message Mute
    2022/08/07 15:57:26

    家族になろうよ

    昔サイトに載せてたプラ澪+正宗くん関連小話まとめ。
    一応おそらく時系列順。

    妄想過多。過去捏造。
    子ども時代~修行時代~本編~プラ澪告白編から結婚まで。
    短い話の連なりです。なんとなく全編がゆったり繋がってます。

    なんとなく明姫のプラ澪もこの前提ですけど、子どもはいないので時系列は少し違います。

    pixivからの移行です。

    #みえるひと #神吹白金 #火神楽正宗 #湟神澪 #プラ澪

    more...
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    • ナルキッソスの終局初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。審神者視点の話です。

      山姥切国広、修行から帰る、の巻。
      審神者の過去あり。若干暗めです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 現パロ三池兄弟まとめ②ツイッターで上げてた三池兄弟の現パロ小話まとめ②
      (実は血が繋がってない)三池兄弟が、なんか手作りの店をやっている話。時々、幼馴染の友人として古備前がいます。
      日常ほのぼの小話多め。時々、ソハヤの鉛食ってるみたいな話があります。

      ①お揃い
      ②探し物はなんですか
      ③ひだまり
      ④独立宣言
      ⑤醤油と山椒は欠かせない
      ⑥黄色い果実
      ⑦優しさに包まれて
      ⑧君と今年

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #現パロ
      みどり(aomidori003)
    • その腕を伸ばせ霊力フェス2!用 無料配布です。
      ソハヤ中心のCPなし、男審神者ありのどたばたオールキャラ風味の事件物です。
      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎の本丸です。
      戦闘シーンはありませんが、若干痛い描写はあります。最終的にはハッピーエンドです。
      DL版と中身は変更ありません。

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #男審神者 #霊力フェス‼︎2 #霊力フェス2
      みどり(aomidori003)
    • 【サンプル】こりゅうと!2【長船DASH】2022年10月16日 閃華の刻38内プチオンリー「長船DASH」参加します。
      『あたらしい橋をわたる』みどり 西1ホール ク32b
      新刊『こりゅうと!2 ー沼地のある本丸ー』 58p/A5/600円

      新刊は以前出した『こりゅうと!』と同コンセプトの『こりゅうと!2』(まんま)です。
      前作読んでなくても問題ないです。前作『こりゅうと!』も再販します。
      よろしくお願いいたします!!

      ツイッターで書き下ろし以外はほぼ読めます。
      長船たちがわちゃわちゃ本丸での平和な暮らしをしている小話たちと(炭作ったり、衣替えしてたり、かき氷食べたりしています)、
      書き落としは謙信くんの修行に伴い自分の行く末に悩むとも悩んでないような感じだけど、やっぱり修行行く決心をする小竜さんの話。最後だけ初期刀がいますが、あとはほぼ景光兄弟中心の長船。いろんな刀の名前は名前だけ出てきます。
      表紙はいつものようにすあまさんがやってくれました。本当に忙しいところありがとうございます……。

      サンプルは各話冒頭。
      上記に書いたように書き下ろし以外はツイッターで大体読めます。(https://twitter.com/aomidori003/status/1576498463780372480?s=21&t=ersI-MzJs0nDH1LOXbLH_w)ツイッターであげたものに加筆修正をしています。
       愛の詰まったお弁当   ……長船全員。謙信のお弁当をみんなで作る話
       薄荷の香りを撒き散らし ……小豆、謙信と衣替えをする話。南泉と堀川派がいる。
       ブルーハワイの夢    ……小竜と大般若が謙信と小豆にかき氷を作ってもらう話。
       望んでもない      ……光忠兄弟+景光兄弟。髪の短い小竜さんの話。ちょっとだけ獅子王。
       砂糖まみれに固めて   ……長光兄弟+景光兄弟+五虎退、日向。みんなで花の砂糖漬けを作る話。
       全て洗ってお湯に流して ……景光兄弟+長義。炭を作って風呂に入る話。
       酔っ払いたちの純愛   ……長船全員+長義。タイトル通り飲み会の話。日本号いる。
       二人の景光       ……書き下ろし。小竜さんが修行に行くまで。

      #刀剣乱舞 #小竜景光 #謙信景光 #長船派 #景光兄弟 #長船DASH #サンプル
      みどり(aomidori003)
    • ただの少年ですゲームDP。男の子主人公がチャンピオンになった後、なかなか助手のヒカリちゃんと会えなくてずっと主人公を探していたヒカリちゃんの話。
      主人公の名前は「ニコ」くんです。
      恋愛未満なDP主人公ズが好きです。

      pixivからの移行です。

      #ポケモン #DP #ヒカリ #男主人公
      みどり(aomidori003)
    • 未来を見ないで(2021年5月29日追記)
      2021年5月30日の0530超エアブー 【凍結ぶどう】みどりの新刊です。
      A5/50P/600円/小説/全年齢
      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。男性審神者がいます。
      肥前忠広と出会った前田藤四郎と男審神者がとある事情から一緒に同行し、戦いを介して、
      肥前の本丸の陸奥守吉行、南海太郎朝尊との関係を探っていく物語。
      土佐組の関係性のあり方の一つとして、肥前を中心に描いています。
      こちらの話を加筆修正したものです。ラストは追加されています。

      全編シリアス。ブラック本丸、刀剣破壊表現、間接的ですが流血、暴行描写があります。
      なんでも平気な方向け。

      通販はこちら
      https://pictspace.net/items/detail/276503

      よろしくお願いいたします!

      ===========================

      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。個性の強くない男審神者います。
      単発で読めます。
      土佐組中心というか肥前くんメイン。審神者が事情ありそうな肥前くんと出会ってドタバタする話。

      ・流血、負傷、嘔吐シーンなどあります。
      ・ブラック本丸表現あり。刀が折れるシーンもあります。
      ・最後はハッピーエンドです。

      5月30日のインテックス大阪・超閃華の刻2021に加筆修正を加えて出す予定です。
      おそらく通販になる予定です。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #土佐組 #肥前忠広 #前田藤四郎 #男審神者 #陸奥守吉行 #南海太郎朝尊
      みどり(aomidori003)
    • 自覚のない可愛げ初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。初鍛刀・前田がめちゃくちゃにかわいいと思っている審神者と、自分の言動が短刀らしくなくかわいくないというのが自覚あって軽いコンプレックスな前田の話。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 誰が為のお茶初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者が出てきます。鶯丸が夜寝る前にお茶の準備をしている話。大包平が顕現したてで鶯丸が浮足立ってる。
      単品で読めますが、この話の続きみたいなものです。
      >「本心はぬくもりに隠して」(https://galleria.emotionflow.com/115535/635572.html

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • 理由はいらない単発。これだけで読めます。
      本丸内で寝無し草をしていた小竜さんと、小竜さんに世話を焼かれていたけど本当は一番小竜さんを受け止めていた謙信くんの話。
      それとなく長船派が大体出てきます。

      ついでに、この堀川くんは、この堀川くんと同一です。本丸もここ。
      『そして「兄弟」となる』(https://galleria.emotionflow.com/115535/626036.html

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #長船派 #景光兄弟 #小竜景光 #謙信景光
      みどり(aomidori003)
    • 闇こそ輝くと知っていた初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。山姥切国広視点の話です。
      山姥切国広、修行に行く、の巻。

      実際には私は即出しましたけど。
      でも、山姥切国広は「修行に行く」と言い出した時点で修行完結と思ってる派なのでそれだけで尊いです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎 #薬研藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 現パロ三池兄弟まとめ①2021年7月11日の『閃華の刻緊急SUMMER2021』に参加します。
      【凍結ぶどう】青海Bホール テ64ab
      『鈍色の日々』(にびいろのひび)
      70P/600円/小説/全年齢
      通販はこちらから。
      https://pictspace.net/items/detail/276506

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      ツイッターで上げてた現パロ三池兄弟の小話をまとめました。
      とりあえず10本です。

      こちらの内容に加筆修正して書下ろしを追加したものを7/11閃華に出す予定です。
      ツイッターにはもう少し載っています。

      気がつけばすごいたくさん書いていた……。
      色々感想いただけて三池界隈の優しさに甘えています……。ありがとうございます。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #現パロ #物吉貞宗 #包丁藤四郎 #大包平 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • どうか全力で構わないからイナイレ二期の真帝国戦後の鬼道さんと円堂さんの話。
      ほんと、あそこの春奈ちゃんのこと考えると鬼道さん殴りたいけど、鬼道さんも誰か抱きしめてあげて、みたいな気持ちになる。円堂さんも豪炎寺抜けて傷心中だし。
      二期鬼道さんの良妻ぷりが、好きだけど、鬼道さんももっとワガママ言ってほしかったな、という話です。書いたのは結構前です。

      pixivからの移行です。
      #イナズマイレブン #イナイレ #円堂守 #鬼道有人 #音無春奈
      みどり(aomidori003)
    • まがい物の恋初期刀加州本丸の、ソハさに。
      神様ムーブなソハヤと、ソハヤに片思いをしていたけど鈍感な審神者の話。ハッピーエンドです。
      ちょっと女性の生理描写あります。

      ソハヤ視点の補足のような何か→「作り物の気持ち(https://galleria.emotionflow.com/115535/635625.html)」

      ソハさにがめちゃくちゃキている。これはこれで終わりなんですけど、続きというか、補完があるので、また適当にあげにきます……。とにかく一週間くらいで4万字以上ソハヤ書いてて、書かないと日常生活に支障が出るレベルでソハヤいいです……。ソハヤぁ……。神様ムーブしてくれえ……。
      あと、毎回毎回糖度が低い。どうしてなんだろう……。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱夢 #ソハさに #女審神者 #ソハヤノツルキ #加州清光
      みどり(aomidori003)
    • 変わらない寂しさ明姫の続きものその⑥。番外編。
      明姫です。が、ほぼ明神とエージ。
      初期三人組が大好きすぎて書いた。明姫が付き合い始めて寂しくなるエージと、でもそれに派生してそれぞれ寂しさを抱えてる明神と姫乃、みたいな感じですけど、エージと明神には永遠に兄弟みたいでいて欲しいです。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #明姫 #桶川姫乃 #眞白エージ
      みどり(aomidori003)
    • ライオン強くなりたいエージと、明神の話。
      昔出したコピー本です。

      #みえるひと #明神冬悟 #眞白エージ
      みどり(aomidori003)
    • 本心はぬくもりに隠して初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。初太刀・鶯丸からみた主の話。近侍で明石が賑やかしにいます。

      話の中で大包平が十数万貯めても来なかった、という話は、実話です。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #明石国行 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • あまやどり昔出したみえるひとの同人誌です。
      明神冬悟と正宗くんの話と、ひめのんとプラチナの話。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #神吹白金 #火神楽正宗
      みどり(aomidori003)
    • 君に花束をn番煎じのタイトル。光忠が顕現してからの福島の兄ムーブと己を大事にしすぎる言動に頭を悩ませているけど、福ちゃんは福ちゃんで弟との距離感に諦観感じていた話。最後はハッピーエンドです。
      加筆修正して、光忠兄弟ワンドロで書いた話たちとまとめて春コミに出す予定です。

      光忠、なんでも器用に出来る男が全く頭回らない癖強兄に振り回されてほしい。

      #刀剣乱舞 #光忠兄弟 #燭台切光忠 #福島光忠 #不動行光 #サンプル
      みどり(aomidori003)
    • こんな苦味も口に含めば初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。甘いものが好きなんだけど、ずっと隠し続けていた審神者と、それに気付いて色々と察した安定が審神者と甘いものを食べに連れ出す話with骨喰。
      脇差たちには元気いっぱいもりもり食べててほしいです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #大和守安定 #骨喰藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • ここから単発。これだけで読めます。
      ソハヤの顕現から、大典太の顕現して、三池兄弟が「兄弟」となるまで。
      兄弟のすれ違い話好きすぎて、堀川派と貞宗派と三池で書いてる……。
      同じようなものですが、兄弟好きなので許してください。

      ソハヤのポジに見せかけたネガがめちゃくちゃ好きです。あと、大きな刀が小さい刀とわちゃわちゃしてるの好きです。徳川組かわいい~~~、好き~~~という気持ちで書きました。

      ついでにこの物吉くんは、多分この物吉くんです。
      「うちのかわいい太鼓鐘(https://galleria.emotionflow.com/115535/635603.html)」


      以下、余談。
      刀ミュ、三池兄弟、本当にありがとうございました……。
      ソハヤツルキ、最高でした……。本当に、東京ドームシティに帰ってきてくれてありがとう……。推しが自ジャンルに来る経験初めてなので、挙動不審ですが、応援していきます……。
      本編より、推しの観察に費やす経験初めてしました。ソハヤしか観てない。健やかでいてくれてありがとう……。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #三池兄弟 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #物吉貞宗 #包丁藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 夕陽の向こうの顔明姫。GW前。雨降って地固まる系の話。
      いつもどおりの展開で、愚鈍な明神と、情緒不安定なひめのん。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • 一瞬だけの信頼みえるひと小話。サイトにあげてたもの。2008年くらい。本編前の明神師弟の話。
      冬悟がひたすらにネガティヴボーイで、師匠もつられてネガティヴになってる。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #明神勇一郎 #黒白師弟 #明神師弟
      みどり(aomidori003)
    • 二人で見る月みえるひと、学パロ冬姫(明姫)です。
      以前書いていた『もっともっと』(https://galleria.emotionflow.com/115535/626025.html)の前日譚というか、くっつく時の話。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • 花火の夜明姫。7月、夏休みの話。
      R15くらいかなぁと自分比で思っていたんですが、特に大したことはなにもしてなかったです。おかしいな……。書いてる間は死ぬほど恥ずかしかったんですが。二人で花火を見に行く話、ですが、花火は見れませんでした。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • シンフォニアまとめ十数年前に書いたTOSの短い小話のまとめです。ほぼCP要素なし。時折ロイコレ風。
      ロイド、ゼロス、ジーニアス多めです。9本。
      本当に、名作で、ロイドくん、一生好きな主人公です。

      最近ひとさまのテイルズシリーズの実況を見てはちゃめちゃに好きだったことを思い出したので昔のを引っ張り出してきました。
      は~~~、ゲームやりたいな~~~~~~。

      pixivからの移行です。

      #テイルズオブシンフォニア #TOS #ロイド #ゼロス #コレット
      みどり(aomidori003)
    • 隣室の明石くんとソハヤくん(2022年3月17日追記)
      2022年3月21日の閃華春大祭 【凍結ぶどう】みどりの新刊です。
      【凍結ぶどう】東2ホール ケ43ab
      『隣室の明石くんとソハヤくん』
      100P/文庫/1,000円/小説/全年齢
      カバー、表紙はいつものようにすあまさん(https://www.pixiv.net/users/158568)が描いてくれました!!!推し二人描いてもらえてめちゃくちゃ嬉しい!!!!

      通販はこちらから。
      https://pictspace.net/items/detail/276508

      よろしくお願いいたします!

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      単発。隣室になっている来派の部屋の明石と、三池の部屋のソハヤが大して仲良くならずに隣人として過ごしている短編集です。日常ほのぼの~シリアスまで。

      全話に明石とソハヤ。時々、愛染国俊、蛍丸、大典太光世、虎徹がちょっと、名前だけは他の男士も居ます。
      明確なセリフはありませんが、審神者います。
      CP要素はありません。

      なお、最後の「⑦隣に立つもの」ですが、戦闘描写あり、流血、重傷表現があります。

      pixivからの移行です。
      みどり(aomidori003)
    • ドラクエ2~8まとめ十数年前に書いたドラクエ2~8の短い小話のまとめです。
      2は5本。CPなし。3人組がわちゃわちゃしてるだけ。
      3は3本。CPなし。パーティは勇者・盗賊♂(賢者)・武闘家♀(遊び人→賢者)・商人♀(賢者)の4人。
      4は6本。CPなし。勇者、クリフと、ライアン、マーニャ。
      5は5本。主ビア。主人公単独とCP物。
      6は3本。とても短い。ミレーユとテリーが好きです。主人公の名前は「ボッツ」。
      7は4本。CPなし。ほぼキーファの影を引きずってる話。主人公は「アルス」。
      8は5本。若干主姫。パーティ4人がわちゃわちゃしているのが好きです。

      11を書きたくて、昔の整理しました。
      ドラクエ、一生好きですね。

      pixivからの移行です。

      #ドラゴンクエスト #DQ2 #DQ3 #DQ4 #DQ5 #DQ6 #DQ7 #DQ8 #主ビア
      みどり(aomidori003)
    • 【ペーパー】コンクリの森【閃華春大祭2021】春コミおよび閃華春大祭 2021お疲れ様です。ありがとうございました。
      マジで前日に作ったペーパーです。少部数だったので、無配で終わりなんですがせっかくなのでこちらにも。
      明石と不動(極)が一緒に現代遠征に行く話です(単発)。
      表紙はすあまさん(https://www.pixiv.net/users/158568)が描いてくれました!

      前提は、初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      ほとんど姿のないセリフのみ男性審神者が出てきます。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #明石国行 #不動行光
      みどり(aomidori003)
    • そして「兄弟」となる初期刀・山姥切国広、初鍛刀・薬研藤四郎の本丸に権限した、十振目の堀川国広が、山姥切と山伏を心から「兄弟」と呼べるようになるまでの話。うちの本丸始動話でもあります。

      堀川派の「脳筋」と呼ばれているけれど、実際には三人とも内に籠るタイプなのがめちゃくちゃ好きです。他者に向かわず、自分自身ときちんと向き合うタイプの国広ズ、推せる。

      pixivからの移行です。
      #刀剣乱舞 #堀川派 #堀川国広 #山姥切国広 #山伏国広 #国広三兄弟
      みどり(aomidori003)
    • 三池兄弟まとめ①ツイッターで上げてた三池兄弟(本丸設定)をまとめました。
      ①絶対言わない。
       鬼丸とばかり飲んでる大典太に構ってほしいけど言えないソハヤの話。ちょっと獅子王と小烏丸。
      ②仲直りの夜食
       喧嘩してトンデモおにぎり作ったけど、後から悪かったなと反省してるソハヤの話。大典太目線。
      ③それならいい
       酒量を注意された大典太が、ごめんねと言えなくて詫び弁当を作る話。
      ④その声が呼ぶ限り
       兄弟を庇ってソハヤが幼児化する話。

      すこしだけ修正済。

      「沼地のある本丸」は初期刀と初鍛刀が同じなだけで審神者が出てこないものです。特に繋がりはそんなにないです。沼があります。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      #刀剣乱舞 #三池兄弟 #ソハヤノツルキ #大典太光世
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