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    しおり
    僕のベルクフリート 空を見上げていた。

     ひどくにごった泥水のような色をしている。時間もわからないくらいに日が差し込まず、世界の状況を如実に表しているようだ。
    「まさか、な」
     最悪の状況を常に想定しているようにしているが、それでもすこし笑ってしまった。
     
     自分は泣くような人間ではない。
     泣いてはいけない。
     泣く必要はない。
     代わりのように、上から水が降ってきた。


    ***

     追っ手を撒いて、路地へともぐりこむ。
     相手を撒こうと路地へ路地へと入り込むことに慣れ、すっかり街の地図が頭に入っている脳みそは今、急激なPSYの使用で軽くうずいている。
     俺もヤキが回ったもんだと自らの不手際を悔やんだ。久しぶりに街に戻ってくるのにレプリカの情報を更新してこなかったのが今回の手落ち。一人で動くのが久しぶりで、一人だからこそなんとかなると踏んでいたが、むしろ逆だったようだ。連れが一緒にいたときには油断なんて一度もしたことがないと断言できる。
     次から次へと不祥事を起こしてくれる相棒を持つとどんなにこっちが尻拭いしたって拭ききれない。かといって放ってくわけにもいかずこんなとこまで来てしまった。
     本日何度目かというのもわからないほどにため息と自虐の言葉を吐いた。
     俺もとんだ大バカ者だ。
     ピ、という作動音が聞こえて、慌ててライズを発動させ上空へと高く飛ぶ。ビルの屋上から発砲されると、さすがに受け止めきれないので、急いでセンスからストレングスへと変更。喰らったものははじき返してやる。
     と、調子が上がってきたところで、脳に声が響いた。
    『大きな白看板の地下だ』
     ミッション成功。
     簡易なバーストで足場を崩してやると、警備隊は一斉にチリジリになったようだった。

    「悪いな。助けてもらっちって」
    「この街で暴れられても困る。どうして帰ってきたんだ」
    「で、ほかのヤツらは?」
    「人の話は相変わらず聞かないな。
     ヴァンは奥で寝ている。フレデリカとマリーは買い物だ」
    「カイルは?」
    「治療中」
    「またか」
    「アンタが言うか?」
     シャオはそういうと俺よりすこし高い背で昔と変わらない目線で見上げるように俺を見た。小さい頃から知ってるこいつらはいつも俺を見上げるように見てくる。シャオとカイルは、もう俺より大きいのに。

    「またケンカでもしたのかよ、アゲハ!」
     病み上がりだというのにカイルはすごい勢いでしゃべくりまくり、俺と逢えて嬉しいと体中で表現している。振り回す腕が心配だ。コイツの、ではなく、俺のが。
    「落ち着けカイル。ていうか、なんだよ、また、ってオイ、失礼だな」
    「また、だろう。これで何度目だ。アンタが帰ってくるたびにこの街の警備は厳しくなる」
    「え、そうなの!?」
    「ウソだよ」
     あっけらかんとしたヴァンの言葉にバターンとテーブルに突っ伏した。やってらんね。
    「で、どうしたんだ。探し物ならやらないこともない」
    「お前の相場、高いんだよ」
    「アゲハの依頼内容には相当分を要求していると思うが」
    「俺が手伝ってやろうか?」
    「遠慮するよ」
     ポスンとモサモサした髪に手を乗せると、いまだに子どもみたいな髪質で手のひらだけ昔にすっ飛んだようだった。するとそれまで大人しく紅茶を飲んでいたヴァンがポツリとトドメをさした。
    「早く、逢いに行けばいいのに」
     それに、シャオとカイルは声に出して笑ったが、俺だけは笑えなかった。
     一体どんな面していけばいいってんだ。ついでに、こいつらは今回の俺の目的を勘違いしているということに気が付いた。


    ***

    「タツオ。一度、休憩にしよう」
    「はい」
     そう切り出すと素直に返事が来る。というか、反発されたことは今のところ一度もないが。タツオが俺の仕事を手伝うようになってからすでに半年。事務仕事の合間に簡単な個人別案件は任せられるほどにはなっていた。
     俺は冗談のように山とつまれている書類の隙間から縮めていた身体を出した。
    「やってられん。こんなもの」
    「でも、この中にいるわけですよね? 例の吸血鬼が」
    「それは俗称だ」
     そしてタツオが入れてくれたコーヒーを口に含んだ。ついに念願の大型のコーヒーサーバーを仕入れることが出来たのだが、こういうときに飲むと本当に入れてよかったと感じる。だが、今は味わっている暇も余裕もなかった。事態は刻々と悪化しているといっていい。大体が、無理のある仕事だった。無理難題押し付けやがって。
     いまや街中を騒がしている吸血鬼のことだ。

     狙うのは、老若男女。手当たり次第。時間も適当ならば、犯行現場もどこでも。
     薄暗い路地。大きな通りの隅。橋の下に橋の上。ビルヂングの中に、前衛芸術家のアトリエから、TV局のトイレ。
     能力者としてもおかしい。
     必要なエネルギーなら限られてくるはずだし、なにより人間の生血を吸収するなんて話、少なくとも俺は聞いたことがない。そんなトランスも知らない。
     バーストにしても、アゲハの吸収型とも違う。直に噛み付くなんて野蛮な方法はいくらやることが破格なアイツでも断るところだろう。
     そしてもう一点。その事件現場には本来残されるべきPSYの残像が全く見られないのだ。かすかに残るPSY残量はすべて噛みつかれた被害者のもの。噛み付いた加害者のエネルギーと思わしきものは欠片も残っていない。
     そんなことは、ありえない。

     事件現場へ赴き、そこに残されたPSY残像を記憶し犯人の手がかりとして献上する。それが俺に今課せられた仕事である。場合によっては、かつてのように物理特化のバーストを使う機会もある。その悪目立ちするそれのおかげでついたあだ名は「テイル・ハンター」。“ドラゴン”の名称がない以上不本意といわざるを得ないが、尻尾しか使用しないため、そりゃそういう結果になるだろう、というもの。
     見る人間によって、その見えるものも違う。
     全体が見えている人間なんて、ほとんどいないものだ。

     それは、ホロから逃げたアイツと、ホロに残った俺の違いであり、PSY使用者の希少な現在の街を表すことに繋がる。
     システムに組み込まれる者、システムを飲み込む者。

     この吸血鬼は、なにを吸い込もうというのだろう。
     この街が今ざわめきたち、ますます閉塞された空間へと誘われているのと、どう繋がるのだろうか。
     まだわからないことだらけだ。

     そして、俺はいつの間にか、昨日カブトから聞いた「逃亡者」の情報と、騒ぎ出した警備隊の臨時出動と吸血鬼の時期出現ポイントをつなげようとしていた。


    ***

     アイツが帰ってきているだって!?
     なんてことだ! やばすぎる! アイツとアイツをあわせちゃいけない!! これは困った!! なんてテンパっていたところに、チャイムの音。なにごとですか、俺は忙しいんだけども、なんて一応は鏡で身だしなみを確認して(一体いつどんな美女が尋ねてくるかしれないからな)、チェーンをかけたドア越しに相手を見ると、目線が、下に下がった。
    「アゲハからの伝言よ! この失礼なチェーンをどけなさいどけないと焼くわよ」
    「ちょ、ちょ、ちょっとフーちゃんてばああ」
     見たことのある少女たちはなにに怖じけることもなく、平然とそう俺に向かっていったのだった。

    「まったく、お使いに出すのがこんなガキんちょ共かよ、たまにはこうもっとボンッキュボーンなお姉さまとかよー」
    「あら、失礼ね。それならすぐにでもなってあげたっていいのよ、イカれてもいいんなら」
    「俺にトランスは効かねーかんな。で、伝言って? なんで本人が来ないんだよ、珍しいな」
    「アゲハさんは今なにか探しものをしているみたいです。シャオと引きこもってすでに3日、出てきていません」
    「アイツはいいけど、シャオは大丈夫かよ。アゲハの体力は尋常じゃないぞ」
    「大丈夫よ。シャオだって普通の男の子よりもよっぽど強靭だもの、ねえ、マリー」
    「うん。でも、さすがに心配だけど、一体なにを探しているのかしら?」
    「やめとけ。アイツの考えてることなんて大体ろくでもないんだ。
     それより、こっちに回ってきた依頼は一体なんなんだ?
     アイツは一応上口だから出来る限りは応えてやりたいが、お前たちも知ってるとおりここ最近の街の動向は異常だ。俺みたいな情報特化タイプにはやりにくいったらありゃしない。ホロからも狙われるし、参ったよ」
    「そういうならホロに入ればいいのよ。適当に撒けるでしょうに」
     言われた直後にカブトは微笑みながら右手を軽くゆする。するとその頭上に図式が立体化したものが薄く見えた。
     マリーは瞬時にカブトが一瞬出したそのプログラムを読み込んだ。
    「カブトさん。それは……」
    「え?」
     フレデリカの腕を取り、下がろうとしたところで、カブトは構築中のプログラムを分解する。全てが一瞬に行われていたところで、フレデリカの視界には入っていない。
     さっきのプログラムを一瞬で見抜くとはさすがだな、と思ったのを声には出さないが、鼻で笑ったのを見てマリーはようやく腰を下ろした。
    「それが、前回のアゲハさんの依頼ですか?」
    「未遂だよ。それが成功していたならアイツは今ここにはいない。つまりはアイツは捕獲に失敗したんだ。相手も相手なら、アイツもアイツだ。やることなすこと滅茶苦茶なヤツラが組んでるんだ。俺らみたいなペーペーの出る枠じゃない」
    「ちょ、なんなのよー、なに、なに、なんなのー」
     バタバタするフレデリカの頭に手を乗せて、カブトはアゲハの伝言を読み取る。

     朧の次期出現ポイントを捻出しろ。

     長いため息をカブトとマリーは同時についた。

    「それが出来れば……」
    「こうも苦労はしてませんよ……」


     電波を通じて、日本の教祖となった朧はその力を使いPSY使いの公式然とした場所においての地位を確立した。
     我が前にひれ伏せよ、力あるものも無きものも、ともに生きる時代である、と。

     神の手を持つ朧の微笑みに倒れる女性たち、愛する女たちの吹き返す息に涙を流す男性たち。朧のカリスマは本物だった。

     だが、現在PSY使いたちはホロという枠の中で押し込められて生きている。一部の制御された能力者たちが日常生活を無事に送れているのは、そういう生活を強いられている能力者たちがいるからである。
     一層確立された格差によって、朧は全ての象徴となった。

     新たな差別の出現した中に現れた「神の権化」として。


    ***

     今日も身体が重い。
     フラフラになった体を引きずるようにして、ベッドへとたどり着いた。今日もうまく逃げ切った。そういう精神的な満足感はあるが、肉体は疲労の限界で、満足感など感じない。
     もはや肉体が感じる欲望などとは無縁の身体である。

     ポチリと記憶のボタンを押す。

     浮かび上がる数々のビジョン。その中に多数出てくる少年は、鋭さを持った体で短い蒼髪をたなびかせ、黒い星を発射する。それが自分に向くことがないのが朧の不満である。
     それを自分に向けてくれれば、彼と向かい合うことが出来たのに。

     彼は今、この街にいる。
     そうなるように仕向けたのだ。それまで本当に苦労をした。もう一度この舞台でなんとしても行う必要があった。彼がなんといおうと関係ない。やりたいのは自分なのだ。
     自分はやらなければならない。自分の人生のために。
     彼のためなど微塵もない。なにもかもは、己のため。
     ああ、そんな究極のエゴイズムがもうすぐ発動できるのかと思うとゾクゾクする、と思うと身体が冷えたのか、ゾクリと震えた。

     正確には彼に逢いたくて、身体が火照り、うずいている。あの身体を思えば、どれほどに熱くなれることだろう。
     あの力さえあれば、きっとなんでも出来るのに。どうして、いつも傍にないのか。
     この手はなんでも手に入れられると錯覚したように、今のこの思いも錯覚として笑ってしまえれば楽だと天井を見上げ思った。

     そして、同時に手放さなければとも。


    「やあ、朗報だよ」
    「アンタからの電話なんてすでに不報よ」
     電話の奥から聞こえてくる女の子の声はとても不機嫌だ。僕と話すときにはいつも不機嫌な気がする。だけど、すでに慣れているのでそんなの関係ない。
    「アゲハがこの街にいるよ」
    「らしいわね」
    「なんだ、つまらない。知っていたの?」
    「一週間くらい前にずいぶんあわただしくなったでしょ。
     そのときに噂が立ったもの。最近は情報の流れもスムーズになってきたわ」
    「君は不便だと感じないのかい?」
    「ホロの生活自体は不便じゃないわ。それに、私は古代種だから」

     古代種。
     一度目覚めた能力が、一定期間を置いて再度眠りについてしまう特定の精神構造のことである。その多くはホロ生息者にいるとされているが、一定の共通項があるのではないか、というのが最近流行りの学問らしい。つまり、使えなくなってしまった能力者の力をまだ利用価値のあるものとみなしている人間が多い。
     眠ったものは起こせばいい。利用できる可能性があるなら、利用するべきである、と。
     結局持っていれば持っていたで不便で、持っていなくてもかつてのことを掘り起こされてきっとまた不便になる。雨宮の言葉はどんな現状にも結局慣れていかざるを得ない古代種なりの嫌味なんだろう。
     雨宮は一切の能力を失い、かつての平穏を取り戻すように学生生活を普通になんのしがらみもなく送っている。

     うらやましいものだ、と思うが、そうならなくて、本当によかったと常々感じる。

    「身体が軽いもの。アンタも一度全部の能力を止めてみればわかるのに」
    「遠慮しておくよ。
     いつ使えなくなるかわからないんだ。稼げるうちにしっかり稼いでおかないとね」
    「よく言うわね。で、アゲハのことと、私がどう関係あるのかしら?」
     これまたゾクリとする殺気だった声。ああ、君自身についてはなにも思わないが、君のその声はいつ聞いても気持ちがいい。
    「きっともうすぐアゲハが君のところにたどり着くと思うよ」
    「なんでそうなるのよ。アイツはホロを蹴ったのよ。再入籍は大変なんだから」
    「それでも、彼は君のところを目指すんだ」

     ブツリと切った。
     ああ、楽しみだ。たどり着けなければいいのに。
     たどり着けないくらいに、なればいいのに。

     それは全部、僕の願いなんだけど。

     それでは、最後の仕上げをしなければ。そう思ってこの街の地図を見る。もうすぐ完成するソレを、彼に見せる日が楽しみだ。美しい僕のために、僕が作り出す美しいもの。その傍には君がいなくてはならない。
     そして、そこで僕はやっと念願の君を手に入れるだろう。
    「楽しみだなあ、アゲハくん」
     彼の嫌そうな顔が、目に浮かぶ。


     普段女っ気の少ない事務所の階段にカン高いヒールの音がして何事かと思えば遠慮もなしにドンドンというノックの後、返事を待たずにドアが開かれた。その対応にタツオはどう対応すればいいのかわからず呆然として、こちらを見たので、とにかく、「お茶」という合図をすると、猫のようにピュッと奥へ引っ込んでしまった。
     とりあえず、人が来たら挨拶をするようにもう一度いっておこう。
     ……まあ、この客が恐ろしいというのには同感だが。
    「雨宮。どうしたんだ。ここに来るのならアポくらい入れてもらえるとありがたいんだが」
    「昨日朧くんから連絡があったの。アゲハの情報は入っているかしら」
     間髪いれずに突っ込んでくる。
    「朧から連絡があっただと? どういう状況なんだそれは」
    「わからないから聞いているのよ。一体何事? アイツが帰ってきたのは知っているけれど、今度の目的はなんなの?」
    「落ち着け雨宮。とにかく、まだアゲハはなにも動いてはいないはずだ。この街でPSY絡みの騒ぎがあれば俺の耳には絶対に入ってくる。もしもそれがアゲハだとしたらお前のところに絶対に連絡をしているさ」
    「あの、こちら、どうぞ」
     聞き取れないような声でタツオが言うのを素直に雨宮は紅茶を受け取った。


     確かにすこし頭を冷やしたほうがいいかもしれない、と若干思い直し、タツオくんの入れてくれたお茶をいただくことにした。目の前のほうで「待て」のポーズで立たされている彼を見ていると、電話が鳴った。なんとなくそのまま電話をするヒリューくんを見ていると、ヒリューくんは私へ向かって手招きした。
    「ああ、知っている。その件についてはこちらにも別件で情報が入った。……それは知らないがな。今来客中なんだ。もうすぐ終わる。入り口で待っててくれていい。ああ、まあ、そうだな。それほどかからん」
     そういいながら紙には全然別のことを書いている。
     <ドアを開けてくれ>
     はて、まさか、と思うも、彼が電話を切るタイミングにあわせて扉を開けると、ちょうど向かい合うようにアゲハが立っていた。
    「先客って、雨宮かよ……」
    「ずいぶんなご挨拶ね、アゲハ」
     やはりここへ来て正解だったようだ。


     旧友への挨拶代わりと同時にカブトとは違う別件を依頼しにヒリューの事務所を訪ねると、よりにもよって雨宮と鉢合わせてしまった。仕方なしに雨宮、俺と向かい合うようにタツオ、ヒリューで四人顔を付き合わせる。俺のところだけコーヒーで、そういうところのもの覚えがいいタツオにすこし呆れた。
    「で、依頼か、アゲハ」
    「そのとおりで」
     手を組んで、すこし前かがみになって、声を出す。


    「吸血鬼を探してくれ。特に確実な証拠がほしい」


    「「「吸血鬼?」」」
     三人同時に声が出たが、明らかにヒリューとタツオは不審な印象を与える言い方だった。雨宮もここに住んでいる以上はことの経緯はどんな形であれ知っているだろう。
    「もしかして、同じ依頼があるのか?」
    「ああ、まあな」
     同時期に、まあ、この街のPSY絡みならと思いここに来たのだから依頼があってもおかしくはないのだが、どこか引っかかりを感じる。同時にそれはヒリューも同じらしく考え込んでしまった。
    「その、吸血鬼が、一体どうしたんですか?」
    「そいつを捕まえたい」
    「はあ? アンタが? どうして」
    「どうして、ってお前、そりゃあ、まあ、なんだ、俺にもいろいろあんだよ」
    「俺にも、ってなんなのよ。大体帰ってきたのに私になんの挨拶もなしってどういうことなの? 仮にも私はアンタのライセンス持ちなのよ? ここにいる間にアンタになにかがあったら」

    「みんな伏せろ!!!」

     ヒリューの声がした瞬間、俺は雨宮を抱え込み、ストレングスを発動した、タツオはどうしただろうか。一瞬音が途切れたかと思うと、ヒリューの尻尾の中にいた。
     ガラリと空が広く見える。ここは低いアパートの一角だ。そこへ突然の襲撃の模様。部屋中はめちゃくちゃだ。屋根というか、上階からまだ瓦礫がパラパラと落ちてくる。
     予想は、外れなかったらしい。
    「アゲハ、これは一体どういうことだ」
    「吸血鬼関係を探るとこうなる、ということなんだろうな。
     雨宮しっかり捕まってろ! とにかく安全なところまで逃げるぞ!」
    「って、ちょっと、アゲハ!?」
     雨宮を抱え上げ、窓枠へと足をかけると下から発砲されたが、すぐに直下にいた5人がこちらからの銃撃を受けて倒れ込む。振り返るとタツオの銃のほうが精度が高く当たりも速さも上のようである。だが、アパートの入り口からも人が押し寄せてくる音がする。とにかく追い詰められつつあるということは間違いなさそうだ。
    「ここは僕が。みなさんは早く下へ! 騒ぎが大きくなる前に急いで!」
    「すまんタツオ! あとで連絡する」
    「わかってます」
     俺とヒリューは窓から外へと飛び出した。


     先頭を街に慣れているヒリューにし狭い路地を抜けていく。だが実際はヒリューにも目的地がわからない。直に脳へとアナウンスが流れてきて自分たちを案内しているのはとても落ち着いた少年の声だからだ。確かアゲハが昔助けた子どものグループの一人のはずだ。そうヒリューは思い出した。
    (そこを出ると、一度広い通りです。ここまで来るととりあえずは大丈夫でしょう。二人とも力を使っているのですこし休んでください。
     最大120秒待機で動きます)
    「「ラジャー」」
     そして路地を抜けると、確かにすこしだけ広くなっている。アゲハは抱えていた雨宮を下ろして肩を回した。
    「すこし太った?」
    「さいってい!!」
     ビターンとひっぱたかれているのを傍目に見る。と、アゲハはまたどこかへ連絡をしているようだ。その近くへとよると、どうやら感じ覚えのあるトランス周波である。
    「で、お前のほうのサーチはどうなんだ。アイツの次の出現は?」
     会話の内容から、カブトか、とそう思ったヒリューだが、そこらへ同時にカブトのトランス周波が流れてきた。通信状態が悪いのでアゲハのほうが受け取り位置を拡大しているのだろう。三人してカブトの返事を待っている状態になった。とにかくナビが無ければ動けないのだ。大体あまりに情報が少なすぎる。
     狙っているのは誰なのか。吸血鬼関連で狙われている、というよりかは、やはり単純にアゲハ単体じゃないのか、とヒリューは思っていた。
     アゲハもヒリューも前線タイプで情報詮索については結局第三者を頼らざるを得ない。頼みのタツオは現在離れているし、雨宮はすでにトランス能力を失っている。
    『悪い。わかったけど、間にあわなそうだ』
    「は?」
    『お前の真上』

     ヒリューはなにかの飛来を察知し、アゲハから雨宮を奪うように掴んで数メートル離れると、本当に真上から何かがアゲハの真上に直下してきた。
     頑丈な身体だし、ライズの切り替えは得意としていたはずなので、死んではないだろう。アゲハの上に落ちてきたのは、神の御手を持つ男だった。
    「あれー。着地点、間違えたみたいだね。アゲハくん。生きてるんだろ、起き給えよ」
     その言葉が発せられる直前にアゲハはガバリと起き上がり、朧へと掴みかかった。
    「てんめええええええ!!!
     俺のことを殺す気か!!
     死ぬぞ! いくらなんでもこれは死ぬぞ!!??」
    「生きてるじゃないか。頑丈だねえまったく」
    「殺す気満々じゃねえか」
     そうヒリューが思わずつぶやいたとき、ようやく朧はこちらに気付いたようだった。
    「やあ、君らも一緒だったね、ちょうどいい」
     そうして彼がよくする両腕を軽く広げるポーズをとった。
     そのとき、アゲハが警戒したことにヒリューも雨宮ももっと早くに気付くべきだったと感じるのは、次の瞬間からだった。


    ***

    「どういうことだゴラァ」
     ドスを効かした声でアゲハが朧を強く睨んでいる。
     そこらじゅうから現れた警備隊がすでにアゲハたちを取り囲んでいた。遠回りに銃を突きつけているが、近寄れないのは、結局のところライズをかけた二人には普通の人間が50人いても敵わないということをわかっているからだろう。
     朧の周りにも数人出てきたが、朧はそれを気にしていないようだった。
    「君を探していたんだよ、アゲハ。ここまでくるのにずいぶん時間がかかったようだけど」
    「俺は暇じゃないんでね。お前のやることなすことにいちいち構ってられねーんだよ。
     まどろっこしいやり方しやがって。なんのつもりだ。いっとくけど、もうお前に遠慮なんてしねーからな」
    「遠慮? 君が僕に?
     最初っからしたことなんてないくせに」
     そういうと、アゲハの後ろでは雨宮とヒリューも頷いている。そちらも睨んでも二人ともまったく意に介さない。
    「だが、正直な話、説明をしてもらいたい。この馬鹿はともかくとして」
    「馬鹿とはなんだ馬鹿とは」
    「俺と雨宮は基本的にはお前らには無関係だ」
    「そうじゃないから君たちはここにいるんだよ」
     そうして、朧がこちらを振り向いた瞬間、

    「いまだフレデリカ!!」
     アゲハの声とともに火がいっせいに朧を目指して走ってきた。
     それに慌てたのは警備隊の連中で意気地の無い者たちは一斉に走っていってしまう。
     その間を縫うようにカイルが飛び込んできたが、アゲハとともに途中で立ち止まった。
    「くそ、相変わらず人の裏だけはかくんだな」
    「アゲハ! 上だ!」
     カイルが指した先の屋根の上に朧が立っている。全身に囲まれた炎が失速したが、その腕がいまだ燃えているのを、見た目の火の勢いとは反対に悠長に消そうと腕を振っているが丁度いい具合に空気を入れてしまっているのかなかなか消えない。
    「あたしの炎は簡単には消えないわよ」
     そういってフレデリカがマリーに連れられて降りてきたところを眺めながら、朧はまだ笑っている。フレデリカはそれが気に食わずにアゲハの後ろに立ちながら怒りを露わにした。
    「なにがおかしいのよ」
    「いや、アゲハにしては、ずいぶん雑な奇襲かと思ってね。君たちのおばあさまたちもこんなことになるとは想像もしてないだろう」
    「ババさまはカンケーねーだろ!!」
    「カイル。挑発に乗るな」
     アゲハに止められて、フレデリカとカイルは拳を握った。

    (アゲハさん。見当たりません。彼は、持っていないようです)
    (やはり、そうなのか)
     マリーの視線を受けて、アゲハは小さく頷いた。
     フレデリカの炎にマリーの透視プログラムを融合させていたが、朧の外面からは発見されなかった、ということか。外面からは。その点をアゲハはマリーに伝えると、それがシャオに伝えられた。
    「朧。単刀直入に言おう。俺から奪ったものを返せ」
    「おやおや、僕が君のなにを奪うというんだい、ハートかな?」
    「うざ!」
     子どもたちが後ろへ下がっている間、朧の炎は自らのキュアによって鎮静化しているようだ。だが、腕には生々しいヤケドの症状が明らかに見える。痛みもあるはずなのに朧の表情は現在のところずっと穏やかなまま変わっていない。雨宮にはそれがとても人間外のものに思える。
    「その子が僕を透視している間の当て馬、というわけかい。
     全く君の人使いも荒いものだ」
    「いいから、返せ。なんのためにここまで帰ってきたと思ってんだ」

    「僕が、雨宮さんの持っているはずのライセンスを持っているわけがないじゃないか」

     雨宮がアゲハを見た。
    「どういうことよ」
     アゲハは応えない。
    「どうして私が持ってるはずのライセンスを、朧が奪えるわけ? 私はここにずっといたけど、朧くんとの物理的な接触は一度も無いわ!」
    「決まってるだろう、雨宮さん。アゲハが君から盗んでおいたんだよ」

     アゲハの拳がギュッと握られたのを見て、ヒリューは朧がとりあえずはウソを言っていないことを確信した。と、なると、朧がおそらくアゲハのライセンスを持っているのも事実なのだろう。
     能力者が街の外に出るために必要な管理プレートが「ライセンス」。アゲハを管理しているのは名目上雨宮名義となっている。取得前にもゴタゴタがあったが、取得後にもすでにゴタゴタとしていたようだ。アゲハの野郎、まだ隠していることがあるのか、とヒリューはもはや呆れていた。
    「すまないとは思っている。だが、あれがあるとお前が巻き込まれる恐れがあるから」
    「なんなの、それ。アンタ私のことなんだと思ってるわけ? いちいちそんなこと気にしてたらアンタになんて関わってられないのよ」
    「雨宮落ち着け。朧の行為のほうが今は問題なんだ。アゲハのことなら後で一緒にとっちめよう。とりあえず」
     ヒリューは朧へ向けて疑問を返す。
    「朧。
     一体、どうやってこの街を掌握した。警備隊をほぼ全隊動かせるなんておかしい。それに街がこれほどの騒ぎの中静かすぎる。
     一体なにをしたんだ。お前のお得意のカリスマで、今度はなにを企んでいる」
    「そうだそうだ! 俺はお前の不祥事を暴こうとしてだな!」
    「「お前は黙ってろ」」
     雨宮とヒリューに一斉に怒られてアゲハはシュンとした。

     ふうむ、とアゴに手をやり、朧は考え込む仕草を見せる。だが、その仕草どおりに彼がなにかを考えていたことがないことをアゲハはよく知っている。
     どうしてここへのルートがばれていた?
     ヒリューの言うとおりなぜ街がこれほど静かなんだ?
     俺のライセンス現物を朧が持っていないというのはどうしてだ?
     いくつもの疑問がアゲハの中を巡る。
    「なかなかうまくいかないものだ」
     そう朧がつぶやくのを聞いて、アゲハは背筋が凍った。

     ただれた腕を直そうとキュアをかけるが、炎の鎮静に使用したためかその力がなかなかでないようだ。そのとき、朧はまだ残っていた警備隊の一人の腕をひっぱり、その首筋に噛み付いた。

    「っ!!」
     声が出そうになった、悲鳴のような息が離れているこちらにまで聞こえて、雨宮は気分が悪くなる。
    「まずいだろ、人間のは」
     アゲハの声がひどく不機嫌に聞こえるが、それも遠いところで言っているようだ。
    「ああ、まずいね。たいした回復にもなりゃしない。
     まったく、どれもこれもあと一歩なんだ。
     あとは君というピースさえ揃えば僕は完璧になれるというのに。
     なにもかもが君のせいだよ、アゲハ」
    「人のせいにしてんじゃねーよ。
     カブトからの情報でこっちで吸血鬼が流行ってるっていうから、来てみりゃ、やっぱり、てめえの仕業だったってわけか」
     プッと、最後の啜りカスを吐き捨てて、口元をぬぐうその仕草すらも華麗である。
    「アゲハ。最初からわかってたならなぜ言わなかった」
     ヒリューからすれば、そんな行為を好んで行っている朧も、知っていたアゲハもどちらも対して変わらない。
    「言ったって信じるわけねーだろ。
     コイツは今、この街の救世主。メシア様だ。
     街中の人間を管理する側に回り、街というシステムの中で頂点にたっているコイツを悪くいったとしたら反社会分子として処理されるだけだ。
     俺はただ」
    「結局、君は僕を止められなかったわけだけどね」
    「うるせーぞ朧。今いいこと言おうとしてたんだ邪魔すんな」
    「君は僕を止めることによって快感を得る。自らが正義という荷物をしょって君は自分の、自分自身を肯定するために僕を利用しようとしていたところじゃないか」
    「んだと?」
    「そうだろう?
     所詮君はいつだって自分の正義を振りかざしては、誰も救えずに来たじゃないか。
     今のライセンスだって、そうだ。
     君は自分の大切な人を、心も身体も守れないでいる。
     その子どもたちのババさまとやらはどうだい?
     君は守るといったんだろう。君が守ってやるべきだった老女はどうなった!?
     君がホロを出ることでここに残らざるをえなくなったのは誰だ!?
     誰のせいでこの街を去らなければならなくなった!?
     君が誰かを救おうとすることで誰かが犠牲になっているんじゃないのかい?
     その子どもたちの面倒を見ることで己の罪を軽くしようと罰を受けているつもりで生きがいにしているのは偽善じゃないのかい、夜科アゲハ!!」

     アゲハがさらに拳を握ったのをヒリューは見続けた。

    「アゲハは悪くねーよ!! なんにも知らねーくせに馬鹿にすんな!!」
    「カイル。黙っとけ」
    「でも、アゲハ!」
    「アイツの言うとおりだ。俺はなにも守れていない」
     キッと顔を上げ、再び朧を睨む。
    「だから、ここでお前を止めるっつってんだよ。これ以上、この街で異端を起こすな、望月朧」

    「やっぱり、うまくいかないね。まだまだ怒りが足りないようだ」
     そう朧がいうと、軽い音を出して、トンとアゲハたちと同じ地面に降り立った。ヒリューとアゲハが雨宮と子どもたちを守るようにして立つ。
     だが、朧の足は一瞬だった。誰よりも早いセンス。

    「古代種なら、すこしはおいしいエネルギーを持っていると思わないかい?」

     雨宮を抱えるようにして、抵抗する間もなく一瞬で、キスをする角度をすこしずらして、首元へと噛み付いた。



     アゲハのメルゼズ・ドアが発動するのと、ヒリューの尻尾が朧を貫くのは、同時だった。

     マリーだけが、メルゼズ・ドアの発動が、地面のなにかを起こしたことを感じて、朧がしようとしたことの一部を垣間見た。


    「雨宮に触れるな! 朧ぉぉおおおおお!!」
     アゲハのメルゼズ・ドアが発動し、周囲の地面をめくり上げ、空気を振動させて、いる。
     ヒリューが貫いたはずの朧は自らの傷を癒しながら、雨宮を抱えて先ほどの高い屋根の位置まで逃げていた。その目はアゲハの振動を追っている。
    「そうだ、もっと君の力を見せてくれ。
     僕には君が必要なんだ!!」
     だが、すでにアゲハの耳には朧の言葉など入っていない。

    「やめろアゲハ!!
     街を壊したいのか!!」
     すでにアゲハは肩で息をしながらも、周辺の黒い塊を大きく育てている。
     頭を抱えながら苦痛を感じていることがハッキリとわかるのに、アゲハはうめき声を上げるだけで、その身を捩った。いっそう大きく彼を取り巻く黒の結晶が広がろうと振動を続けている。中のアゲハへと直接コンタクトが出来なければ、止めて助けてやることも出来ない。
     耐え切れなくなってきたヒリューがアゲハへと手を伸ばそうとしたのを、細い手が止めた。
    「朝河さん。
     腕が、取れます」
     すこしばかり傷を負っているが、なんとか逃げ切ったと思われるタツオがヒリューの手を取った。だが、ヒリューのあせりが募るばかりだ。知っている。彼の力に触れれば、どうなるかなんて知っているのに、それでも。
    「アゲハ!!」
    「ヒ、リュー!
     ちが、う、とまらな、い!!」
     ぐぐ、と頭を地面に叩きつける。
    「朝河さん、おかしいです。彼の力が広がり続けているのに、こちらへ侵食してこない……?」
     タツオに言われて、初めてヒリューはそのことに気が付いた。その発動している範囲は確かに無尽蔵な広がりを見せない。一定のエネルギーが、まるで彼の周囲から吸い込まれているようだ。
     そこへシャオの声が聞こえた。
    (地面が、いや、街全体が、アゲハさんのPSYエネルギーを、吸い取っている……!!!)

    「皆さん!! 朧さんを見て!!」
     マリーの声が周辺を裂くように響くと、ちょうど、地面から巨大な要塞が盛り上がってくるところだった。
     家の形は壊れ、地面から漆喰に固められた壁が泥を落としながら浮かんでくる。横へ下へと形が明確になるにつれて、それがいやに古臭いデザインをして、製作者の顔を拝みたくなったが、どう考えても、考えたのはきっと頂点に立って高笑いをしているアイツしかいないだろう。
     旧式の城の形をしたそれは、さらに上空へと上がっていく。
     全容が見えたところで、ぴたりと止まり、とても高いところから見下ろす朧とヒリューの目があった。
    「いい眺めだね、ここは。
     この日のために、長い時間をかけて用意したんだ。ねえ、アゲハ。聞いているかい。
     君のそのエネルギーのおかげでようやく地面の下からひっぱりだすことが出来たよ。君ほどのエネルギーを持つ人間がなかなかいないので、苦労したけどね。ねえ、アゲハ、とても助かったよ。
     素敵な城だろう? 僕と君のために作ったんだ」
    「朧、いい加減にしろ。
     お前の目的は一体なんなんだ!!」
    「朝河くん、残念ながら君に興味はないんだ」
     そして腕を振ると、ヒリューへ衝撃が飛ぶが、それは尻尾によって防がれる。
    「それもなかなか魅力的だとは思うけどね、僕の好みじゃないんだなあ」
    「聞いてねえよ、そんなこと。お前だって、俺の好みじゃないんだよ」
     ヒリューのことなど、目に入っていないようで、その態度が余計にむかつくが、自分の特性と朧の特質が合わないことは実によく理解できる。
     朧と街を出て行ったアゲハのこともまったくもって理解できない。
     そして、朧は絶対に聞こえていないだろうアゲハにだけ話し続ける。
    「それでは、僕はこの中で待っているよ、アゲハ。
     この城がこの街の動力源だったから、早く来ないと街全体が活動を停止するから、そこのとこよく理解しておくように。こなけりゃこないで、城でも追突させてみれば面白いことになるかとは僕も考えておくよ。
     じゃあ、もう彼女は用無しだな」

     そして、ゴミのように雨宮を城から放り投げた。

     朧が城内へと消えるのと、
     ヒリューの尻尾が雨宮を捉えたのと、
     アゲハの暴走が止まったのが、同時だった。

     むしろ強制的に力を引っ張り出され、それを今度は強制的に止められたアゲハの身体が限界を迎えたのが正確なようだ。ガクリと冷たい地面へと倒れこんだ。





     この世界から出ていくことが出来ればきっとなにかがあると思っていた。
     ここにはなにもかもがあるようで、自分の求めるものはなかったから。

     だから、彼と一緒に出て行くことで、この街を乗り越えられると思ったのだ。

    「朧、どういうことだ。街をどうするつもりなんだ!」
    「アゲハ。僕なら街を完璧にしてみせる。
     誰もが、ともに生きることが可能な街だ。僕らのような狭間のものがどうしてこんな惨めな生活をしなくてはならないんだい。
     僕らは選ばれたんだ。こんな力を持っていることを誇りにしたっていいはずなのに」

     違う。誇りであり、だが、畏怖、そして、呪い。

    「街は、あのままで充分だ」
    「キミの街への思いは、本当に、あのままでいいの?」

     いまだに、その言葉は、俺の中でくすぶり、爆弾として残る。いつ、爆発するのかわからず、何度ももぐりこんではすり抜けては、街という中に取り込まれないようにしている。

     結局、朧は、俺との提携を打ち切り、街へと戻った。
     それに気づいていたのに、俺はなにもしなかった。出来ないと思ったのだ。彼に対して自分が言ったことは確かに裏切りかもしれない。

     そうだ。まただ。
     また、自分は、誰かを貶めて生きている。
     それが当たり前になっているなら、俺は絶対に救われない。





     ガバッと目が開いた直後に起き上がると、脇にいた子どもたちがワッと飛びついた。
    「アゲハ!!」
    「アゲハさん!!」
    「ちょっと、みんな起きたわよ!!」
     上着を脱がされ、Tシャツ姿で寝かされていたようだ。子どもたちを引っぺがしながら記憶を辿る。横のソファではヴァンが寝ている。おそらく彼が自分の疲れを癒してくれたのだろうと大分軽くなっている頭を振って思った。
     一瞬、記憶が凍ったようだった。慌てて、部屋の窓から外を見ると、街の中心からぽっかりと穴が開いたようになっており、その上にはシュールに城が浮いている。まるで絵画のように。
    「夢じゃないぜ、現実だ」
     カブトの声がして、振り返ると、ヒリューたちもいる。家の様子からするとカブトの隠れ家のようだ。体中がまだギシギシと言っているようで、頭痛も残っている。だが、目の前の人物のことに気を取られる。
    「雨宮……! おまえ、無事なのか!!」
    「大丈夫よ。あれはショック性で気を失っていただけみたいだし」
     そういう雨宮の首には白い包帯が巻かれている。それを見たアゲハの眉がひそめられた。
    「アゲハ。最後の朧の言葉、聞こえていたか?」

    「俺が行かなきゃ街ごと破壊するって?
     聞いてたよ」

     ポケットから仕舞いっぱなしだった時計をつけて、壁にかけられていた上着を羽織った。
    「おい、待てよ。もう行くつもりなのか。大体どうやって行くつもりだ!」
    「ライズで昇ってみる」
    「ちょっと、あんなに暴走した直後で、まだ体調だって完璧じゃないじゃない」
    「問題ない。慣れている」
     ほぼ全員がため息をつきヒリューが力づくで止めようとしたところで、シャオが大声を上げた。
    「朧さんから、トランスが!!」

     カブトの部屋のあちこちにつながれているモニターから白く曇ったような画像が送られてきている。強制的に意識を送り込まれているようだ。
     全員がメインモニターの前に立ち尽くしていると、その画像に朧がたまに途切れながらに映し出された。
    『目覚めたようだね、アゲハ』
     なんだか殺風景な背景だが、これがおそらく城の内部なのだろう。あんまりキラキラしてなくてよかった、と思ったが、話している朧自体がいつもなんだかキラキラしているので、とてもイライラする。
    『今、街の全システムはこちらに移管されているから、街はパニックなんじゃないかな。まあ、普通の人間たちは僕の意識統率下にあるからおかしくはないけど、ホロ居住区は多少地形も変わっているし、困っているかもね』
    「なに当たり前みてーな顔してアホなこといってんだテメーは。
     いいからさっさと元に戻せよバカ朧!」
    『アゲハ。君は忘れているようだけど、僕の目的はここよりさらに先にあるんだ。君が来なければ、始まらない。僕のために、君には来てもらうよ』
     そういうと、朧の瞳が細められる。遠くで地響きがして、カブトの壁一面に出ていた臨時ニュースに新たに「西部地域中央区にて爆発。地下のガス配線の断線部分から出火した模様」と加えられた。
     それを見ていた全員が言葉を失った。マリーの怯えた手を、フレデリカが握り締める。

    『アゲハ。君を、待っている。僕を救えるのは、君だけなんだ』
     そうして、笑った朧は、確かに誰よりも美しく見えた。





     勝手に断線されたソレをしばらくは誰もが見詰めていたが、ヒリューが椅子に座ると、各自適当に座り始めた。カイルとフレデリカがアゲハの上着を掴んでいる。
    「本当にいくのかよ」
    「いかないと街ぶっ壊すって今言われただろ?」
     そうしてその手を離そうと優しく触れた。
    「アゲハ。質問に答えてほしい。
     なにもわからないままに友人を行かせるほど、俺も薄情ではない」
    「お前が薄情なら俺は人間性の欠片もないだろ。……なんか気が削がれた。ライズだけじゃ無理っぽいし、お前たちにも手伝ってもらわないといけなそうだ。
     言えよ、ヒリュー」

    「なぜ朧が吸血鬼だと知っていた」

     ふう、とひとつ息を吐いて、アゲハは全員を見回した。全員の目線が集まっていることを確認し、自分の左腕を出して、なんでもないように言う。
    「朧にエネルギーを与えていたのは俺だからだ」
     そのめくられた腕には、明らかに歯形だと思われる傷跡が見えた。

    「朧はキュアを使うことで自分のPSYを他人に与えていた。自分のものが枯渇するのも時間の問題だった。アイツの命を縮めていたのはキュアだ。単純に自分の寿命を他人に与えていただけだ。
     死なずに済むにはどうしたらいいか。キュア、いやあいつの命であるPSYのエネルギーを与えてやればいい」
    「そんなバカな。エネルギーの形式なんて個人で違う。大体あんな生血を吸うようなやり方で吸収できるはずがない」
    「あれは相手が普通の人間だからだ。
     正確にはあれは血を吸っているんじゃない。トランスが苦手なアイツだから精神的に抜くよりも物理的なほうがやりやすかっただけの話だ。まあ、実際に何度か血吸われたけど」
    「げえええ」
    「たいしたことじゃなかったんだ。もともと俺はアイツからよくキュアを受けていたから、あいつのPSYを体中に取り込んでいた状態だった。俺たちは内部で循環していたんだ。だからこそ、アイツは俺の傷を治す、俺はアイツに自分のPSYを与える。
     俺のメルゼズ・ドアが吸収型だから、成り立っていた。
     俺のPSYを与えると、アイツは生きることが出来る。それだけだ」
    「では、どうして彼はこちらに帰ってきたのですか?」
     タツオの銃器と化した右腕を見ながら、アゲハは髪をかいた。
    「わからん」
    「ウソでしょ?」
     雨宮の視線が痛いが、実際にわからないのだ。とりあえず腹を括ることにする。
    「アイツが戻ってきた理由はわからない。
     とりあえず、俺はカブトから朧が戻ってきて街の中枢部を掌握したということを聞き、後に吸血事件の情報を得たんだ。
     普通に考えて俺を引き寄せるための囮、というか、ネタというか、まあ、そういうことだろ。俺は朧を止めるためにまんまと戻ってきた、というわけだ。
     それと、ライセンスの問題もあるしな」
     また問題をひっくり返そうとする雨宮を引きとめ、ヒリューが話の先を進めた。
    「カブトはどうして中枢部の情報までわかっていたんだ?」
    「俺に見えないものはないんだぜ?」
     ニヤリ、としたカブトがバンダナに触れると、部屋全体が暗くなり、先ほどのメインモニターにあの空へと浮かぶ異物の全体図が現れた。
    「これが当初のデザイン案だ。
     朧がトランスと持ち前の天性のカリスマを利用し権力へと順調にのし上がっていった頃、アイツが真っ先に始めたのがこの城作りだった。
     正確には、これは本物を作ろうということではなかったんだ。外壁として街を覆う防御壁の本当にただの外っ面、のはずだった」
    「実際にフタを開けてみれば想定外、ということか」
    「まさに、乗っ取ったんだよ。
     ヒリュー、雨宮ちゃん、気づかなかったか? この半年、政権交代劇の多重化とシナリオに。アイツがどちらについたかであの内紛が起きていた、と考えればいい」
    「馬鹿な……、アイツの匙加減一つで、トップを挿げ替えられてたまるか!」
    「でも、そうだわ……。あと情報のダウン方法が変わった。ホロでの情報収集に本当に苦労したもの。それに彼がなってから規制がゆるくなったところがある」
    「どこだ」
     アゲハの問いに、現住人であるヒリュー、雨宮、カブトが答えた。
    「「「PSY使用者の活動数」」」
     はっと、息を飲むアゲハの隣で、タツオが続けた。
    「そして、建築設計法の規制解除です」





     朧の選択は単純だった。
     PSY使用者の活動を過去のように封じ込めておくのでなく、ヒリューのように公式にその力を認め利用することと、カブトやカイルたちのような『隠れる者』を黙認することだ。ホロという囲いの外に出すことを始めたのだ。
     同時にPSY犯罪が多発したが、そのために朧は自ら「PSY使用者」を「PSY使用者」自らが「刈る」ことを目標と打ち出した。自分たちの犯罪には自分たちで蹴りをつけようと。そうして結成された「ピア」警備隊によって、かつてほどのPSY犯罪はなくなった。
     また結果として、一層朧の神格化が助長されることになった。

    「だから、俺が出て行った当初よりも戻りやすくなっていたのか」
    「そして、アゲハをおび寄せるためのエサは自分自身」
    「一定の戻りやすさはキープしつつ、吸血事件によって、街の警備が厳重になれば、街中にアイツの息がかかった人間を配置しても不審じゃない」
    「アゲハさんを怒らせて、莫大なエネルギーを利用し、あの城を地下から掘り起こし、街の機能を奪う」

    「そこまでが、アイツのシナリオなのね」

     全員が頷いた。

    「だが、肝心なところがわかってない」
    「そう、朧はこれから何をするのか」
    「これから、街は、どうなってしまうのですか?」
     マリーの頭を、すこし撫でて、アゲハはかつてのように笑った。
    「大丈夫さ。俺がなんとかしてやるよ」





     ぐっぐっと足を屈伸、伸脚をしているアゲハの横で、両腕を振り回しているカイルがいくつものパズルを浮かべてマリーと微調整をしていた。
    「お前ら無理すんなよ。最初の足場さえあれば自力でなんとかすっからさ」
    「大丈夫だよ。遠くなると俺の空間把握が出来ないからマリーに出力位置だけ安定してもらうだけだし」
    「外部プログラムの追加は得意ですので」
     そうか、といって、右手のリストバンドを掴んだ。
    「よし、行こう」

    「カブト、城の様子はどうだ?」
    「王子の到着を待って、お姫様は大人しくしてるみたいだぜ。PSY反応も浮いてる動力だけだ」
    「了解。シャオ、全員の準備は整っているか」
    (いける。誘導は任せろ)
    「頼む。じゃあ、いくぜみんな」
     カイル、マリー、ヒリュー、タツオが頷いた。
     後ろには雨宮と残りの子どもたちがすこし離れてその様子を見ている。アゲハとヒリューは振り向き、ヒラと手を振った。
    「行って来る」
    「心配するな」
     フンとそっぽを向いたフレデリカの肩を持ちながら、雨宮は親指を下に下げた。


    (カウント10)
     アゲハとカイルの集中が始まり、タツオの銃器が形を変える。
    (カウント5)
     マリーのサポートプログラムがカイルにかぶさっていく。ヒリューのライズの準備が整った。
    (カウントゼロ)

    「マテリアル・オープン!」
     城へ向けて螺旋状にパズルが組まれていくのとほぼ同時にアゲハとヒリューが登り始める。パズルは登った瞬間に消え去り、先頭部分へと連結を繋がれていくよう誘導されていく。徐々に狭く城へと迫るが、想像どおり単調には進まないようだった。
    (進行方向より放射反応。熱光線状が5本)
    「そのまま進んでください。落とします」
    「タツオ! 頼んだ!!」
     アゲハの声に応えるように、タツオの銃口からエネルギーが発射され、その間を縫って二人は足を止めることなく走り続ける。いよいよ朧が入り込んだ入り口兼最大の塔部分に近づいたとき、シャオの声が響いた。
    (タツオさんの銃が効いていない!!)
    「なんだと!!」
    「それじゃあ、突破口が作れない!!」
     動揺した足場の二人のPSYが不安定になる。
    「落ち着けカイル! マリー!! 足場に集中しろっ!!」
    「構わん。アゲハ、お前は跳べ」
    「ヒリュー!?」
    「タツオ!! マテリアル弾を撃て!!」
    「はい! 朝河さん!!」
     大型の銃というより、大砲に近いソレから発射された中身にはカイルのエネルギーを一時的に別離保存しておいたエネルギー弾が詰められている。急遽崩れかけた足場から大きく上に跳び、主塔を大きく上回る位置で浮いたタイミングからアゲハにシャオから指令が入った。
    (カブトさんからです。メルゼズ・ドアを用意してくれ)
     その間に下のヒリューから大きな力を感じた。タツオの発射したそれにうまく乗り、PSYの発動に成功したようだ。城の周囲に彼の発する煙幕が張られた。
     その幕を突き破るように、透明な姿をした竜が飛んできた。
    「アゲハ!! 撃てえええええええ!!!」
     足場が再び崩れ、堕ちていくヒリューから聞こえたそれにあわせ、竜はそのまま主塔へと突撃する。引き絞った右手の黒い星を寸前で放つ。

     竜の姿が一瞬にして粉々に砕けたのが見えた。自分ひとりが入るスペースに突っ込み、転がって着地した足元には、定番の赤絨毯。腕に付いたPSYの残骸を振り払い、指を鳴らして、朧の待つ、そのカーペットの先へと進むことにした。

    「待ってろ。今度こそ、俺はお前を救ってみせる」


     「街」とは何か。
     ずっと、それを考えながら俺たちは生きてきた。

     それに支配されるか、支配をするか。そのどちらかしかない選択肢の中で、立ち止まることを認められないがためにどちらかを選ばされてきた。

     俺は、そんなの、どちらも選べずに。

     だから、街、など、いらないのだ。



    ***

    「この日をどれほど夢に見たことだろうか。ねえアゲハ。君にわかるかい?」
    「わからないな」
    「そういう返事が僕は大好きだよ」
     黒のシャツに、長い髪をたらし、美しい顔がキラキラと輝いているようだ。胸元にクロスのペンダントが光っていた。アゲハはがしがしと髪をかいて、なにから話すべきなのか、いまだに悩んでいた。
    「いいたいことがあるなら言っていいんだよ。ここには僕と君しかいないのだから」
    「朧……」
    「僕は君をずっと待っていた。僕の目的はなんとしても達成したい。いや、しなければならない」
    「朧。
     俺は、お前を助けたい」

     それを聞いた瞬間、彼の口元は微笑みをさらに増す。

    「ならば、僕を殺しておくれよ。君のその手で」



    ***

     アゲハの全てを、僕はほしかった。
     出会いなんてもう覚えていないけれど、彼の魅力は語りつくせない。いつも短く幼くみえる蒼髪、黒く揺るがない瞳、べらべらと止まらない口は常に僕の気持ちをにわかに楽しくさせ、その手が掴むものはすべて輝いているようだった。
     そして、その能力。

     すべてを黒く包み込む、本人と真逆のような漆黒の星。

     だが、彼を知れば知るほど、彼の本性とも言うべきその闇に惹かれていった。
     彼の偽善のような優しさに僕はときめきをとめられなかった。
     彼が傷つくたびに僕の心が弾んだ。彼が他者に対して、心を開いていく様子を見て嫉妬した。彼が他者を守れないと嘆き涙を流すのに僕は喜びに打ち震えた。
     なんて清い魂!! なんていう単純かつ複雑に構成され彼はどうしようもなく脆くそして強靭に作られていた。
     僕は、彼のその闇に触れたくてたまらなかった。

     彼がエルモアさんを救えなかった時期、彼の中でなにかが変わった。
     「街」への反骨心が表れたのだ。街のシステムの破壊を望みながら、それを本人は抑圧している。他者を守れないと勝手に思い込み、救えないと絶望し、そもそも街に対しての絶望感へと変貌したのだろう。おそらく、それは正しい。
     そして彼は街を出た。絶望した場所にはいられない。もちろんそれ以外の事情は大きかったが、彼は街を見限った。
     彼は気づいていない。彼があそこに留まれば、必ず街を破壊しただろう。彼の破壊衝動を自らが規制をかけたのだ。

     彼は気づいていない。
     彼がいるから、誰も守れない。彼が存在していることで、救えない。

     だが、僕だけは違う。

     僕は彼のためにいる。
     僕は彼の闇の先に行きたい。そのためだけに僕は彼を見続けてきた。
     彼の街や自らへの怒りを僕はよく知っているのだ。彼の「愛」は子どもたちや雨宮さんや朝河くんたちに向けられていて、それは僕のものではない。僕は彼の全てがほしいのだ。
     そんな誰かと共有するようなものなど用はない。
     彼が僕にだけ向けるであろう、そういう風にしたのだが、彼の感情を僕に向けさせるように長い時間をかけて気づいてきた。

     彼の、憎しみと怒りは僕のものだ。

     その最終手段としてあの星を受け、僕は終わることを望んでいる。


    ***

     俺は朧が大嫌いだ。
     自分で勝手に決めて、自分で勝手にやって、自分で勝手に怒っている。面倒くせえったらない。
     俺が街を出て行くと決めたときに、勝手についてくるといってついてきた。いろいろ街の外にいる以上は今まで以上にアウトローにいかなくてはならないことはわかっていたし、自分の突っ走りやすい性格だって自覚くらいしている。
     だが、実際朧がいなければ俺は何度でも死んでいただろう。あいつのキュアによって命を救われ、求められ、よくわからない二人旅を続けた。
     アイツは世間知らずで、俺の手を常に煩わせた。俺より年上のくせに常識みたいなことを知らなくて、俺が教えるといつも子どもみたいに「ありがとう」と笑った。

     だが、アイツはいつも笑えないように笑っている。
     ウソではない笑顔でも、今、俺の目の前で「自分を殺せ」と狂ったようなことを言っているその顔のほうが俺は見たことがないような笑顔だった。

     俺が街の外に出るときに決めた自分の枷は一つだけ。

     もう、誰も殺さない。

     そんなの、普通の人間なら、決めなくたって、自分で縛り付けなくたって、守れるものなんだ。俺は、守ろうという努力をしない限り、俺の周囲で人は幸せにならないから、俺は誰かには幸せになってもらいたいと願い、俺の力で幸せにしない代わりに、殺さないことを誓った。

     なのに、一緒に旅をしてきた朧はいう。
     殺せ、と。



    ***

    「カブト!! まだなのか!!」
    「今やってんだ! 大人しく待ってろ!!」
     緑色のブラインドがカブトの目を覆っている。その中を細い黄色の文字が走るように抜けていくのを雨宮はじっと見ていた。だが、彼女がふとメインモニターを見やると、そこにはアゲハと朧の姿が見える。視点は先ほど朧が使用したカメラワークままで、おそらくカブトは先の朧の使ったラインを再構築したのだろう。
    「映った!!!」
     子どもたちの歓声を聞きながら、音声がないことに気づいた。
    「声はやっぱり入らないの?」
    「ダメだ……。やっぱり、突破するときにタツオの銃やヒリューの竜が効かなかったのはアレを取り巻いているのがアゲハのPSYなんだ。アレを浮上させているのがアゲハのメルゼーだから、毒を持って毒を制した。だが、あの穴がふさがれた今、完璧な映像や音声情報を取り入れることも難しいみたいだ」
     確かに映像もぼやけている。かろうじて口元が動いているので、話しているのはわかるが、なにを話しているのかはわからないが、二人の意思疎通がうまくいってないことは手に取るようにわかった。

     彼らが動向を見守っている間にも、街は崩壊が進んでいた。一部、朧の洗脳が解けた地区からは暴徒が出ているとの情報もある。街全体が今、急速に理性へと向かいつつあり、その魔法が解けたとき、人びとは怒り狂い破壊に走るか、一斉に嘆き涙の中に沈んでしまうか、どちらかと思われるほどである。
     カブトの家は南寄りのホロ居住区の先にあるため、崩壊からは遠そうだが、結局は時間の問題である。頭の上にこの城が浮いている限り、人びとは混乱を続けるはずであった。

     マリーが両手を組んで、一生懸命に祈っている。
     雨宮は、まだ、彼に聞きたいことがあるのを思い出し、ゆっくりと、手を胸元で重ねた。


    ***

    「お前の言ってることがサッパリ理解できない」
    「理解など必要ない。君はただ、僕を殺すだけだ。君は何をしにここに飛び込んできたんだい? この城には街のすべての機能を移している。今街は大混乱だといったはずだ。そろそろ僕の思考コントロールも切れるはずだしね。
     そうすると、どうなると思う?」
    「どういう、意味だ」
    「君が嫌いな、異能者隔離が、おそらくは、再び、始まるはずだ。
     僕は、能力を使いたいように使った。たった一人の力で、そこまで出来た。街一つを掌握させてもらった。僕は直に政権を取りたいタイプではないので、政治的にはそれほどの害はないはずだけどね。それでも本来的にはおかしなところがあっただろう。
     能力者たちは、集まればあんな人間ども、なんでもない。
     だが、皆、己の「人間」としての尊厳を持っているがゆえに、対人間に対して能力を使うことを潜在的に忌避する。だが、人間はさらにおかしなことに、反発されなければ、相手が抵抗しなければ、相手がなにもしてなかろうと人間は「恐怖」ゆえになんでもする。
     君には、記憶があるはずだ」

     どくん、と脈が早まるような感覚。
     朧のシンクロが入り込んできたと気づいたが、遅かった。

    「アゲハ。
     すべて君が望んだことなんだ。
     君が崩壊を望んだ。だから僕はそれに同意をするんだよ。僕の願いと君の願いは通じている。
     街の破壊。
     君が願い続けた、君の中の本性。全てをぶち壊す、その言ってはならない王への言葉」

    「違う」

    「君は街を破壊しようとしていた。君が出来ないなら、僕がやろう。街というシステムそのものを破壊しよう」

    「違う! やめろ!!
     今破壊しても、それに代わる代替システムが存在していない! 誰も救うことが出来ない!!」

    「君が、一体、誰を救えたというんだい?」

     ぐ、と言葉につまる。
     心臓をわし掴みにされているような圧迫感に膝をつく。朧が普通にすたすたと歩いて近づいてくるのに、脂汗が流れるがままだ。その長い足が飛んでくるように、腹へと入った。
    「アゲハ。君は美しい。なぜそれほど無駄なことが出来るのか。僕には君が理解できない。理解できないからこそ、僕らは惹かれあうんじゃないか。
     アゲハ。君は、僕が言っていることがわからないというけれど、僕は君に最大限に譲歩している。
     君は僕を殺す。
     すると、この城の機能は止まる。この城が墜落することはなくなる。あとはもともとの装置は転移させればいいんだ。腕のいい転送者のつながりくらいは持ってるんだろ?」
     転がった頭を踏みつけられ、声を出せないところへ、アゴをつかまれた。
    「ほら、返事は?」
    「……まだ、おまえは、なにをかくしてる……?」

     ムッとした顔は、そのアゲハの首筋に思い切り噛み付いた。


    ***

     飛びかけた意識の合間に異物が混入している。
     自分のPSYと朧のPSYがぶつかり合って、衝突をしている。見慣れない意識に吐き出しそうな記憶が横入りしては、自分の知っている顔が歪んでいく。

     キュアを使うことで、誰かのためになっていても、そこに意味を見出せない朧。
     破壊の力を持っているが、本当は破壊したくないアゲハ。

     朧は削られていく命に脅えていた。
     彼は自分のために生きたいのだ。自分のために、自分がやりたいように、自分の願いのままに。ところが、彼の力は求められるばかりであり、支えられることはない。

     だが、一人だけ、例外がいた。

     無鉄砲で無計画、特別なPSYを持つ青年は、朧にとって、唯一の救世主となった。

     彼が死から遠ざかる唯一の方法は、与えた分だけPSYのエネルギーを供給すること。通常の人間から摂取することが出来ないそれは、何度もキュアを行うことによって彼の中にあるPSYの比重が重なりあうことで供給に足るものと化していた。
     また、アゲハのPSY特化としての「メルゼズ・ドア」は吸収型の優等生だった。キュア及び外部のエネルギーをアゲハは取り込み自らの内で供給をすることが出来る。彼からPSYを取ることは、彼らの循環になった。
     アゲハの体力がなくなれば、朧のキュアによって回復をし、朧のPSYが不足すれば、アゲハの半永久的に持続するPSYを分け与える。
     朧が生きていくためには、アゲハが必要不可欠となっていた。

     だが、朧は、それで満足する人間ではなかった。

     朧は、誰かのために生きたいのではない。
     彼は、自分のために生きたいのであり、他人を必要としないのだ。誰かを縛ることは出来るが、誰かに縛られるなどご免だった。マリオネットのような人間ならばともかくとして、人間性の面では朧とアゲハは対極である。アゲハを手に入れるならば、全てを手に入れたい。

     だが、それは絶対に不可能なことなのだ。
     彼の心はすでに、ほかの誰かの一部として切り売りされてしまっている。
     朧が望む「すべて」には、ほど遠い形でした、アゲハはすでに存在していなかった。

     ならば、朧が選んだのは、二つの道連れ。
     アゲハが望んだ「街」の崩壊を呼び起こすことによって、最後のカタストロフィを目指し、自分が作ったものはすべて跡形もなくそうとした。
     そして、アゲハの心。
     アゲハが忌み嫌った「仲間殺し」。何度も繰り返されたそれを、もう繰り返さないと誓ったそれを破らせ、彼の中の憎しみと怒りをすべて自分に向けさせる。そうすれば、アゲハは絶対自分を忘れない。

    「わかったかい? アゲハ?」
     殴られていた頬が痛いと思って唇をなめたらやはり口の中が切れていたようだ。
    「お前が酔狂だってことはな」
     立ち上がると、めまいがした。まだ朧の共鳴効果が持続しているのかもしれない。アゲハは、自分の意志なのか、それとも朧に誘導されているのかわからないままに、右手に闇を集め始めた。

    「俺は、お前を、救いたい。
     それがどんな方法でもだ」

     彼が朧を見詰めたとき、朧は念願が叶ったと歓喜した。アゲハの目は、言葉とは裏腹に、獲物を射るハンターの目。その目に見られた瞬間、朧の歓喜は「畏怖」へと変貌した。

     そうか。これが、アゲハの恐怖だったのだ。


     彼の恐れていたのは、なによりも、自分自身。


    ***

    「アゲハ!!! ダメよ!!!」
    「だが、もう時間がない!! このまま放置すれば、この街はおしまいなんだぞ!!」
    「それでも、それじゃあ、今までの、アイツの努力は、なんだったのよ!!!」
     叩きつけられるような雨宮の言葉で場がシンとした瞬間にも、街の崩壊の音が聞こえている。
    「そろそろ、ここも危ない」
     シャオがそういうと、周辺から地響きのようなものが響いてきた。そしてモニターにもついに電源が供給されなくなる。
    「ちっ! 自家発電もおしまいか!!」
    「雨宮さん! ここは危険です!! とりあえず、避難を!!」

    「でも、アイツが」
    「雨宮!!」

     ヒリューが雨宮の肩に手をかける。有無を言わさぬその言い方に雨宮はうつむいた。

    「言っただろ。アイツが大丈夫って言ったら、根拠があろうがなかろうが、槍が降ろうが、雨だろうが、絶対に、大丈夫だ」



    ***

     この星は本当に小さく、だが、確実に相手を死に至らしめる。

     この星はどこから生まれ、どこに消えているのか、アゲハにはずっと不思議だった。それが自分の心から生まれているとは、恐ろしくて考えることが出来なかった。
     気が付いたのは、いつなのだろうか。
     守りたい、救いたい、愛したいと願うようになったのは、それに気づいたからだ。暗黒の星を体内に飼っている自分は、一体救われるべき人間なのか、それに答えるために、他者を求め、他者を救おうとすればするほど、誰も救えない。
     誰もが、彼を守ろうとし、彼を救おうとした。

     違う! 俺のことなんていいんだ!!
     どうか、俺に救わせてくれ!! 俺の存在価値を、破壊以外に認めさせてくれないか!!

     だが、この願いもきっとここで終わるのだ。
     朧へ狙いを定め、あの顔が苦痛に歪む顔を想像すると魂から力が湧く。ここでアイツを撃てば、騒ぎは一定以上大きくならずに済むはずだ。まだ、間に合う。

    「動いてもいいぜ。どうせオート追尾だし」
    「そんなことは知っているよ」
     いつもの腕を広げるポーズで朧はたっていた。
    「さあ、僕を撃つんだ。これで全てが終わる。
     僕は死を待ちたくない。僕は死に負けたくない。僕は死ぬときだって僕の意思で死にたい。僕は、死を選択する」

    「朧。俺は、お前を」



     放たれた流星は、一瞬だった。


     城の自壊が止まった。
    朧の助言どおりの場所にアゲハのライセンスがあった。
     中枢に組み込まれていたそれによって、いくつかの疑問が解決された。
    (俺のメルゼーでしかこの中に入れなかったのは、これが原因か。
     ついでにいうと、俺以外の人間が朧を殺してもこの城は自壊を始めなかっただろう。絶対に俺以外の人間には対応しないように作られていたのか……)
     ライセンスには、登録者のナンバリングだけのようなものではなく、各能力者の能力パターンが登録されている。
     朧はそれを用いて、城の全てのオート機能はアゲハのメルゼス・ドアを登録していた。


    「……これで、よかった」
     見下ろすアゲハをはいつくばって見上げる朧などきっと一生に一度しか見れないだろう。それが、今なのだが。
    「アゲハ」
    「なんだ」
    「君のライセンス、だけど」
    「なんだって!?」
    「主塔の上にメイン中枢がある。そこを壊すんだ。僕がここを離れると、この城は自壊を始める。
     急ぐんだ」
     壁際に寄りかかって、心臓部分を押さえている。メルゼーランスは心臓を貫いた。まだ生きているのは、朧の能力が急速に彼の身体を維持しようと活動をしているのだろう。よく見ると、内臓を中心として、最高級の医療型PSY構築が築かれているのが見える。
     死にたくても、死ねないのか。

     だが、もう、アゲハは行くことにした。

    「アゲハ」
    「……なんだよ。早く行けっつったのお前だろ」
    「うん。

     ねえ、アゲハ。

     救うことが出来ないことを恐れるから、誰かを本当に救おうとしないんだ。救うという行為そのものを拒むんだ。
     君は、たくさんの人間を救ってきた。
     君は、救おうと、した。
     結果じゃない。君のその行為だ。

     さあ、最後は君が救われる番だ。
     僕はいくよ。

     君のすべてを手に入れることが出来たから、君の後悔が続く限り、君は僕を忘れない。
     僕の魂は君の中に在り続ける。君は一生後悔して僕と共に生きていくんだ。

     だから、死んではいけない。

     死ぬのは、許さない。僕のような、制限もなしに、吸収し続ける魂を持つ君が死ぬなんて僕は絶対に許さない。
     君の苦悩を見ることが出来ないことだけが心残りだ。

     アゲハ。
     ありがとう。
     君のすべてに、僕は救われていた」


     そして、彼の背面が崩れ、彼もまた、空中へと投げ出された。

     声にならない声と、届かない手を思わす出してしまうが、やはり、無駄だった。
     何度も繰り返した。
     無駄でも、手を出さずにはいられない。
     そうだ、結局、それの繰り返しに、過ぎない。


    ***

     全力で走って中枢を見つけ、ライセンスを引き抜くと、自壊が止まり、急速に、上昇を始めた。懸念していたエネルギー切れによる全面衝突という事態は免れるようプログラムされていたようだ。
     だが、上昇していく途中にも、先ほどの自壊した破片が街目指して落ちていく。

     街など虚構のシステム、壊れてしまって構わない。

     それは、確かに、本心だった。

     だが、あそこの中には、仲間がいる。
     まだ、終わっていない。
     まだ、死ぬわけにはいかない。朧の存在を、その最後を、俺が持ち続けなければならない。

     行こう。






    ***

     崩壊した街は、現在元住人たちによって再復興が始められている。全て、一からやり直しである。死者多数、けが人を含めると、住人の3分の2が当たるといわれた。
     ほぼ全ての建築が崩壊し、街のメインシステムはダウンしている。純粋にこの街が好きな人間のみが残った、といっても過言ではないだろう。
     やはり、能力者と非能力者間の関係は問題が浮き彫りになったし、朧に対する罰則も取り上げられたが、その本人が行方不明のため、原因は結局おろそかになった。
     各地区ごとに、皆協力してやっていこう、という人間だけが残った。
     そこには、能力など関係ない。

     おそらく、アゲハや朧が目指したかったのは、本当は、こういうものだったのではないか。

     そう雨宮は思う。
     崩壊と創造は常に表裏なのだ。彼らはいつも破壊を中心に語るが、本当はいえないだけだったんだ。そう思いたい。

    「風邪引くぞ」
     霧雨のような長雨が続いて、最近は復興事業のほうはあまりはかどっていない。だが、飲み水には困らなくなったし、ぼちぼちと家庭菜園のようなものが出来てきていたので、各地域ではこの雨すらも喜んでいた。
     これからまだ長いのだ。ゆっくりやっていけばいいのだ。
    「平気よ。タツオくんはどうしたの?」
    「先帰ってる。今日は野菜が手に入ったって喜んでたぜ」
    「珍しいわね。でも、市場にも出回るようになってきたし、いよいよこれからが勝負って感じよね」
     ヒリューくんの高い身長と私が並ぶとまるで親子みたいに離れていて、今も彼は一生懸命私が濡れないようにしてくれているのだけど、どうにもできていないみたいだった。

    「木も枯れちゃったけど、ちゃんと来年も咲くかしら?」

     そうして、横の木を見詰めたところに、見えないものが見えた。


    「アゲハ」


     ボロボロの布を巻いて、傷だらけで、「大丈夫だ」といった彼とはとても思えない。今までは絶対にしなかった、うつむく仕草。その手は、泥だらけで、その手で、頭をかいた。
    「久しぶり」
    「久しぶり、で済む話じゃないでしょ!! こっちがどれだけ心配したと思ってるのよ!!」
    「一体いつから帰ってきてたんだ!!?? あの後、一体なにが起きていたんだ! 朧は……?」

     二人の問いかけには、アゲハは曖昧な笑みを返す。

    「情けねーな」
    「「え?」」

    「結局、帰って、きちまった。

     俺、朧、救えなかったよ。結局、俺はアイツを助けてやれなかったよ。俺が目指していたのは、あいつと俺が一緒に帰ってきて、ようって、昔みたいにさ。でも知ってんだ。
     そんなの虚構だ。ありえないってわかってた。
     アイツは最後に礼を言ってくれたけど、俺は満足できない。
     だって俺は傷ついてる。

     俺は、街が大嫌いだ。
     耐えられなかった。虚構に組み込まれることはご免だ。
     虚構の街に虚構の人生を描いて何になる」
    「そうすることでしか生きられない人もいる」
     即答するヒリューの声を聞いて、アゲハはまたため息をつく。
    「俺には無理だ」
    「知ってる」
    「だから、虚構の外に出たのに、外でどんなに他の世界を見ても、他のヤツラと出会っても、どんなPSYを使っても、必ずここに帰ってきてしまう。
     どうして、俺は、結局ここに帰ってきてしまうんだ。
     結局俺は、最後はここに帰ってきてしまう。お前たちのところに戻ってくる。
     誰も救えないのに! この街にいることに価値なんてないと切り捨てたのに!!
     俺は、俺の選択を信じて、俺は、捨ててきた。

     だけど、やっぱり、お前らのところにしか、戻るところが、無い」

     雨宮の両手が、伸ばされると、素直に、雨宮の肩にアゲハの頭は抱かれた。

    「私たち、ずっと待っていたの。
     知ってるんだから。アンタが絶対に帰ってくるってこと。
     アンタは間違ってる。ここがアンタの居場所。街じゃない。私たちがいるところに、アンタは必ず帰ってくる。
     アンタは守れてないなんていうけれど、私たちはアンタが生きていると思うと安心して生きていける。すごく嬉しくなる。
     私たちは知っているの。
     アンタがホロを蹴ったのは、古代種の感染率が高いはやり病にかかってなかったから。現発のPSY使いなら問題ないけれど古代種には致命傷となる率が高い。それで、二区画全滅したっていうのを、後から聞いたの」
    「一人で脱走したのだって同じだ。
     俺はお前が街で生きていけるとは思ってなかった。だから脱走の手助けはした。
     まさか、後続の補欠にタツオがいるとは思ってなかった。
     お前は、知っていたんだろ? 次に入ってくるのがタツオだったことを」

    「……買いかぶりだ」

    「朧はどうしたんだ」

    「メルゼーで撃った」

    「朧は、お前に殺されたかったんだな」
    「だが、本当は殺したくなかった」
    「だが、お前はアイツを撃つことによって救った。アイツだけじゃない、街もだ」
    「違う!!
     所詮それは詭弁だ。手を出した以上、俺はアイツを守れなかった、なにかあったはずだ」
    「でも、彼の望みと、アナタの思いを断ち切れたのでしょう?
     アナタはもう、『破壊』のみを望む流星使いじゃない」

    「アゲハ。
     アナタも幸せになっていいの」

     握り締めた手は、二人に取られる。
     冷たい雨が当たっているが、誰も気にしなかった。顔が濡れているのは、雨なのか、それとも別のなのか。
    「俺は、」
     アゲハが二人の背中に腕を回す。

    「俺は、お前たちと生きていく。この街で」

    「「当たり前」」
    「俺を守ってくれないか?」
    「いまさら」
    「俺に守らせてくれないか?」
    「容赦なく頼むわよ」

     ヒリューの手がアゲハの髪をこすった。雨宮がアゲハの頬をぬぐった。そのどちらも、無駄な行為にすぎない。それは、堕ちていく朧に伸ばした自分の行為と変わらない。

    「ただいま」
    「おかえり」

     帰ろう。
     待っている、人がいる。


    「目、覚めたか」
     紫煙が目の前を横切る。
     聞きなれた声が耳元に入った。
    「まだ動けるほどの容態ではありません。無理をしないで」
     茶髪の少女が先ほどの声を聞いて飛び込んできた。



     僕は、死ねなかったようだ。



    「全く、たいしたPSYだよ。朧、今てめーの身体がどうなったか、見せてやる」
     そういってカブトはバンダナに触れた。子どもたちが、彼と自分を中心に集まっている。カイルは面白くなさそうにしているが、ヴァンが朧の近くに寄ってきて、脈を取った。
     カブトの手が朧の視線をふさぐと、まぶたに映像が浮かんだ。
     自分の心臓のソレとわかるものは今、特殊なエネルギーの流れが占拠している。朧とてキュア使いなのだ。わかる。これは、PSY。それも、あの特別な、星から発せられるアレと同質の。
    「そう。お前の心臓部を取り巻いているのはお前のPSY。そして、その隣で再度取り囲むように循環している流れを作ったのがアゲハのPSY。
     今まで、アゲハという外部供給でお前はかろうじて生きられるほどのエネルギーしかなかった。すでに限界を迎えていた身体の中に、アゲハの星が今、生きている。
     あの循環システムを、お前は、今、抱えている」
    「それは、つまり」
    「PSYの限界、ではなく、通常の人間と同じように、身体の細胞の限界を迎えるまで、お前は、普通の人間となった。
     キュア能力はもう使えない。お前の心臓は常時キュアを使用している状態でとても外部にまで使えるものじゃない」
     そしてどかされた手の先には、カブトが微笑んでいた。

    「アゲハはお前を撃った。
     お前は希望どおり、アゲハに撃たれた。

     だけど、アゲハの希望どおり、お前は生きている。
     アイツは、お前を救った。これが、アイツの願いで、これが、お前の罰だ。
     やっぱり、どう転んでも、アイツの強運はなくならないみたいだな」

    「僕は、どうすれば、いいんだ」

    「死んでは、いけません」
     マリーのハッキリとした声がする。
    「生きている以上、死んではいけません」
    「だが、僕は罪を重ねすぎている」
    「ならば、余計だ。そのためには、生きるんだ」
    「もう街もなくなっちまったしな」
    「どこでだって生きていくことは出来るよ。
     だって、アゲハの力が入っているじゃない」
     ヴァンから暖かい力が流れ込んでくる。これが、本物のキュアなのか。
     ならば、今までの、自分のキュアはなんだったのか。

     僕が、流してきた命は、なんだったのだろうか。

    「なんて、残酷なんだろうね、アゲハくんは」
    「似たり寄ったりだろ、お前らは」
    「まだ、やり直せるのかな」
    「やり直させてくれたんだ」
    「僕は、生きないと、いけないんだね」

    「そうだ。
     って、きっとアゲハならいうぜ」

     頬を伝うものがある。こんなの、久しぶりだ。

    「生きなくては」
     流してしまった命を、取り戻さねば。
    「生きなくちゃ」
     間違ってしまった自分を、正すために。いや、間違いなんてわからないけれど。だって、やっぱりそれでもまだ、自分は正しかったと思う。何度でも思う。
     やはり、彼が欲しくて、彼に殺されて終わりたい。そして何度でも、彼と出会いたい。
     何度でも、彼のために、彼と共に。

     その思いを、持たせてくれたことで、きっと生きていけるだろう。
     きっと、もう二度と会わないけれど。


    「みんなは、どこに行くの?」
    「知らない。街が崩壊したから俺たちは出てきた。途中でお前を拾ったくらい」
    「どこにだっていけるんだ。ゆっくり考えようぜ。俺は美人のおねーちゃんがいりゃあ、あとはなんでも……」
     ゴスっとフレデリカの肘鉄が入った。

    「どこだって同じよ! 私たちが一緒ならね!!」

     それを聞いて、みな微笑みあうのだ。
    みどり(aomidori003) Link Message Mute
    2022/09/03 16:15:49

    僕のベルクフリート

    昔サイトに上げてたサイレンのSFパロです。
    元々は全然別のジャンルの話で考えてたんですが、サイレンにリメイクしなおしたものです。かなり気に入ってますが、なんちゃってSFなのでご注意ください。

    若干、朧→アゲハ風ですが、あまりそういう意図はないです。
    ほぼオールキャラで子どもたちもいっぱいかけて楽しかったです。

    pixivからの移行です。

    #PSYREN #夜科アゲハ #望月朧 #雨宮桜子 #ヒリュー #タツオ #エルモアウッド

    more...
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    • ナルキッソスの終局初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。審神者視点の話です。

      山姥切国広、修行から帰る、の巻。
      審神者の過去あり。若干暗めです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 現パロ三池兄弟まとめ②ツイッターで上げてた三池兄弟の現パロ小話まとめ②
      (実は血が繋がってない)三池兄弟が、なんか手作りの店をやっている話。時々、幼馴染の友人として古備前がいます。
      日常ほのぼの小話多め。時々、ソハヤの鉛食ってるみたいな話があります。

      ①お揃い
      ②探し物はなんですか
      ③ひだまり
      ④独立宣言
      ⑤醤油と山椒は欠かせない
      ⑥黄色い果実
      ⑦優しさに包まれて
      ⑧君と今年

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #現パロ
      みどり(aomidori003)
    • その腕を伸ばせ霊力フェス2!用 無料配布です。
      ソハヤ中心のCPなし、男審神者ありのどたばたオールキャラ風味の事件物です。
      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎の本丸です。
      戦闘シーンはありませんが、若干痛い描写はあります。最終的にはハッピーエンドです。
      DL版と中身は変更ありません。

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #男審神者 #霊力フェス‼︎2 #霊力フェス2
      みどり(aomidori003)
    • 【サンプル】こりゅうと!2【長船DASH】2022年10月16日 閃華の刻38内プチオンリー「長船DASH」参加します。
      『あたらしい橋をわたる』みどり 西1ホール ク32b
      新刊『こりゅうと!2 ー沼地のある本丸ー』 58p/A5/600円

      新刊は以前出した『こりゅうと!』と同コンセプトの『こりゅうと!2』(まんま)です。
      前作読んでなくても問題ないです。前作『こりゅうと!』も再販します。
      よろしくお願いいたします!!

      ツイッターで書き下ろし以外はほぼ読めます。
      長船たちがわちゃわちゃ本丸での平和な暮らしをしている小話たちと(炭作ったり、衣替えしてたり、かき氷食べたりしています)、
      書き落としは謙信くんの修行に伴い自分の行く末に悩むとも悩んでないような感じだけど、やっぱり修行行く決心をする小竜さんの話。最後だけ初期刀がいますが、あとはほぼ景光兄弟中心の長船。いろんな刀の名前は名前だけ出てきます。
      表紙はいつものようにすあまさんがやってくれました。本当に忙しいところありがとうございます……。

      サンプルは各話冒頭。
      上記に書いたように書き下ろし以外はツイッターで大体読めます。(https://twitter.com/aomidori003/status/1576498463780372480?s=21&t=ersI-MzJs0nDH1LOXbLH_w)ツイッターであげたものに加筆修正をしています。
       愛の詰まったお弁当   ……長船全員。謙信のお弁当をみんなで作る話
       薄荷の香りを撒き散らし ……小豆、謙信と衣替えをする話。南泉と堀川派がいる。
       ブルーハワイの夢    ……小竜と大般若が謙信と小豆にかき氷を作ってもらう話。
       望んでもない      ……光忠兄弟+景光兄弟。髪の短い小竜さんの話。ちょっとだけ獅子王。
       砂糖まみれに固めて   ……長光兄弟+景光兄弟+五虎退、日向。みんなで花の砂糖漬けを作る話。
       全て洗ってお湯に流して ……景光兄弟+長義。炭を作って風呂に入る話。
       酔っ払いたちの純愛   ……長船全員+長義。タイトル通り飲み会の話。日本号いる。
       二人の景光       ……書き下ろし。小竜さんが修行に行くまで。

      #刀剣乱舞 #小竜景光 #謙信景光 #長船派 #景光兄弟 #長船DASH #サンプル
      みどり(aomidori003)
    • ただの少年ですゲームDP。男の子主人公がチャンピオンになった後、なかなか助手のヒカリちゃんと会えなくてずっと主人公を探していたヒカリちゃんの話。
      主人公の名前は「ニコ」くんです。
      恋愛未満なDP主人公ズが好きです。

      pixivからの移行です。

      #ポケモン #DP #ヒカリ #男主人公
      みどり(aomidori003)
    • 未来を見ないで(2021年5月29日追記)
      2021年5月30日の0530超エアブー 【凍結ぶどう】みどりの新刊です。
      A5/50P/600円/小説/全年齢
      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。男性審神者がいます。
      肥前忠広と出会った前田藤四郎と男審神者がとある事情から一緒に同行し、戦いを介して、
      肥前の本丸の陸奥守吉行、南海太郎朝尊との関係を探っていく物語。
      土佐組の関係性のあり方の一つとして、肥前を中心に描いています。
      こちらの話を加筆修正したものです。ラストは追加されています。

      全編シリアス。ブラック本丸、刀剣破壊表現、間接的ですが流血、暴行描写があります。
      なんでも平気な方向け。

      通販はこちら
      https://pictspace.net/items/detail/276503

      よろしくお願いいたします!

      ===========================

      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。個性の強くない男審神者います。
      単発で読めます。
      土佐組中心というか肥前くんメイン。審神者が事情ありそうな肥前くんと出会ってドタバタする話。

      ・流血、負傷、嘔吐シーンなどあります。
      ・ブラック本丸表現あり。刀が折れるシーンもあります。
      ・最後はハッピーエンドです。

      5月30日のインテックス大阪・超閃華の刻2021に加筆修正を加えて出す予定です。
      おそらく通販になる予定です。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #土佐組 #肥前忠広 #前田藤四郎 #男審神者 #陸奥守吉行 #南海太郎朝尊
      みどり(aomidori003)
    • 自覚のない可愛げ初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。初鍛刀・前田がめちゃくちゃにかわいいと思っている審神者と、自分の言動が短刀らしくなくかわいくないというのが自覚あって軽いコンプレックスな前田の話。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 誰が為のお茶初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者が出てきます。鶯丸が夜寝る前にお茶の準備をしている話。大包平が顕現したてで鶯丸が浮足立ってる。
      単品で読めますが、この話の続きみたいなものです。
      >「本心はぬくもりに隠して」(https://galleria.emotionflow.com/115535/635572.html

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • 理由はいらない単発。これだけで読めます。
      本丸内で寝無し草をしていた小竜さんと、小竜さんに世話を焼かれていたけど本当は一番小竜さんを受け止めていた謙信くんの話。
      それとなく長船派が大体出てきます。

      ついでに、この堀川くんは、この堀川くんと同一です。本丸もここ。
      『そして「兄弟」となる』(https://galleria.emotionflow.com/115535/626036.html

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #長船派 #景光兄弟 #小竜景光 #謙信景光
      みどり(aomidori003)
    • 闇こそ輝くと知っていた初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。山姥切国広視点の話です。
      山姥切国広、修行に行く、の巻。

      実際には私は即出しましたけど。
      でも、山姥切国広は「修行に行く」と言い出した時点で修行完結と思ってる派なのでそれだけで尊いです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎 #薬研藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 現パロ三池兄弟まとめ①2021年7月11日の『閃華の刻緊急SUMMER2021』に参加します。
      【凍結ぶどう】青海Bホール テ64ab
      『鈍色の日々』(にびいろのひび)
      70P/600円/小説/全年齢
      通販はこちらから。
      https://pictspace.net/items/detail/276506

      ======================================
      ツイッターで上げてた現パロ三池兄弟の小話をまとめました。
      とりあえず10本です。

      こちらの内容に加筆修正して書下ろしを追加したものを7/11閃華に出す予定です。
      ツイッターにはもう少し載っています。

      気がつけばすごいたくさん書いていた……。
      色々感想いただけて三池界隈の優しさに甘えています……。ありがとうございます。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #現パロ #物吉貞宗 #包丁藤四郎 #大包平 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • 家族になろうよ昔サイトに載せてたプラ澪+正宗くん関連小話まとめ。
      一応おそらく時系列順。

      妄想過多。過去捏造。
      子ども時代~修行時代~本編~プラ澪告白編から結婚まで。
      短い話の連なりです。なんとなく全編がゆったり繋がってます。

      なんとなく明姫のプラ澪もこの前提ですけど、子どもはいないので時系列は少し違います。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #神吹白金 #火神楽正宗 #湟神澪 #プラ澪
      みどり(aomidori003)
    • どうか全力で構わないからイナイレ二期の真帝国戦後の鬼道さんと円堂さんの話。
      ほんと、あそこの春奈ちゃんのこと考えると鬼道さん殴りたいけど、鬼道さんも誰か抱きしめてあげて、みたいな気持ちになる。円堂さんも豪炎寺抜けて傷心中だし。
      二期鬼道さんの良妻ぷりが、好きだけど、鬼道さんももっとワガママ言ってほしかったな、という話です。書いたのは結構前です。

      pixivからの移行です。
      #イナズマイレブン #イナイレ #円堂守 #鬼道有人 #音無春奈
      みどり(aomidori003)
    • まがい物の恋初期刀加州本丸の、ソハさに。
      神様ムーブなソハヤと、ソハヤに片思いをしていたけど鈍感な審神者の話。ハッピーエンドです。
      ちょっと女性の生理描写あります。

      ソハヤ視点の補足のような何か→「作り物の気持ち(https://galleria.emotionflow.com/115535/635625.html)」

      ソハさにがめちゃくちゃキている。これはこれで終わりなんですけど、続きというか、補完があるので、また適当にあげにきます……。とにかく一週間くらいで4万字以上ソハヤ書いてて、書かないと日常生活に支障が出るレベルでソハヤいいです……。ソハヤぁ……。神様ムーブしてくれえ……。
      あと、毎回毎回糖度が低い。どうしてなんだろう……。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱夢 #ソハさに #女審神者 #ソハヤノツルキ #加州清光
      みどり(aomidori003)
    • 変わらない寂しさ明姫の続きものその⑥。番外編。
      明姫です。が、ほぼ明神とエージ。
      初期三人組が大好きすぎて書いた。明姫が付き合い始めて寂しくなるエージと、でもそれに派生してそれぞれ寂しさを抱えてる明神と姫乃、みたいな感じですけど、エージと明神には永遠に兄弟みたいでいて欲しいです。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #明姫 #桶川姫乃 #眞白エージ
      みどり(aomidori003)
    • ライオン強くなりたいエージと、明神の話。
      昔出したコピー本です。

      #みえるひと #明神冬悟 #眞白エージ
      みどり(aomidori003)
    • 本心はぬくもりに隠して初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。初太刀・鶯丸からみた主の話。近侍で明石が賑やかしにいます。

      話の中で大包平が十数万貯めても来なかった、という話は、実話です。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #明石国行 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • あまやどり昔出したみえるひとの同人誌です。
      明神冬悟と正宗くんの話と、ひめのんとプラチナの話。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #神吹白金 #火神楽正宗
      みどり(aomidori003)
    • 君に花束をn番煎じのタイトル。光忠が顕現してからの福島の兄ムーブと己を大事にしすぎる言動に頭を悩ませているけど、福ちゃんは福ちゃんで弟との距離感に諦観感じていた話。最後はハッピーエンドです。
      加筆修正して、光忠兄弟ワンドロで書いた話たちとまとめて春コミに出す予定です。

      光忠、なんでも器用に出来る男が全く頭回らない癖強兄に振り回されてほしい。

      #刀剣乱舞 #光忠兄弟 #燭台切光忠 #福島光忠 #不動行光 #サンプル
      みどり(aomidori003)
    • こんな苦味も口に含めば初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。甘いものが好きなんだけど、ずっと隠し続けていた審神者と、それに気付いて色々と察した安定が審神者と甘いものを食べに連れ出す話with骨喰。
      脇差たちには元気いっぱいもりもり食べててほしいです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #大和守安定 #骨喰藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • ここから単発。これだけで読めます。
      ソハヤの顕現から、大典太の顕現して、三池兄弟が「兄弟」となるまで。
      兄弟のすれ違い話好きすぎて、堀川派と貞宗派と三池で書いてる……。
      同じようなものですが、兄弟好きなので許してください。

      ソハヤのポジに見せかけたネガがめちゃくちゃ好きです。あと、大きな刀が小さい刀とわちゃわちゃしてるの好きです。徳川組かわいい~~~、好き~~~という気持ちで書きました。

      ついでにこの物吉くんは、多分この物吉くんです。
      「うちのかわいい太鼓鐘(https://galleria.emotionflow.com/115535/635603.html)」


      以下、余談。
      刀ミュ、三池兄弟、本当にありがとうございました……。
      ソハヤツルキ、最高でした……。本当に、東京ドームシティに帰ってきてくれてありがとう……。推しが自ジャンルに来る経験初めてなので、挙動不審ですが、応援していきます……。
      本編より、推しの観察に費やす経験初めてしました。ソハヤしか観てない。健やかでいてくれてありがとう……。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #三池兄弟 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #物吉貞宗 #包丁藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 夕陽の向こうの顔明姫。GW前。雨降って地固まる系の話。
      いつもどおりの展開で、愚鈍な明神と、情緒不安定なひめのん。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • 一瞬だけの信頼みえるひと小話。サイトにあげてたもの。2008年くらい。本編前の明神師弟の話。
      冬悟がひたすらにネガティヴボーイで、師匠もつられてネガティヴになってる。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #明神勇一郎 #黒白師弟 #明神師弟
      みどり(aomidori003)
    • 二人で見る月みえるひと、学パロ冬姫(明姫)です。
      以前書いていた『もっともっと』(https://galleria.emotionflow.com/115535/626025.html)の前日譚というか、くっつく時の話。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • 花火の夜明姫。7月、夏休みの話。
      R15くらいかなぁと自分比で思っていたんですが、特に大したことはなにもしてなかったです。おかしいな……。書いてる間は死ぬほど恥ずかしかったんですが。二人で花火を見に行く話、ですが、花火は見れませんでした。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • シンフォニアまとめ十数年前に書いたTOSの短い小話のまとめです。ほぼCP要素なし。時折ロイコレ風。
      ロイド、ゼロス、ジーニアス多めです。9本。
      本当に、名作で、ロイドくん、一生好きな主人公です。

      最近ひとさまのテイルズシリーズの実況を見てはちゃめちゃに好きだったことを思い出したので昔のを引っ張り出してきました。
      は~~~、ゲームやりたいな~~~~~~。

      pixivからの移行です。

      #テイルズオブシンフォニア #TOS #ロイド #ゼロス #コレット
      みどり(aomidori003)
    • 隣室の明石くんとソハヤくん(2022年3月17日追記)
      2022年3月21日の閃華春大祭 【凍結ぶどう】みどりの新刊です。
      【凍結ぶどう】東2ホール ケ43ab
      『隣室の明石くんとソハヤくん』
      100P/文庫/1,000円/小説/全年齢
      カバー、表紙はいつものようにすあまさん(https://www.pixiv.net/users/158568)が描いてくれました!!!推し二人描いてもらえてめちゃくちゃ嬉しい!!!!

      通販はこちらから。
      https://pictspace.net/items/detail/276508

      よろしくお願いいたします!

      ===========================

      単発。隣室になっている来派の部屋の明石と、三池の部屋のソハヤが大して仲良くならずに隣人として過ごしている短編集です。日常ほのぼの~シリアスまで。

      全話に明石とソハヤ。時々、愛染国俊、蛍丸、大典太光世、虎徹がちょっと、名前だけは他の男士も居ます。
      明確なセリフはありませんが、審神者います。
      CP要素はありません。

      なお、最後の「⑦隣に立つもの」ですが、戦闘描写あり、流血、重傷表現があります。

      pixivからの移行です。
      みどり(aomidori003)
    • ドラクエ2~8まとめ十数年前に書いたドラクエ2~8の短い小話のまとめです。
      2は5本。CPなし。3人組がわちゃわちゃしてるだけ。
      3は3本。CPなし。パーティは勇者・盗賊♂(賢者)・武闘家♀(遊び人→賢者)・商人♀(賢者)の4人。
      4は6本。CPなし。勇者、クリフと、ライアン、マーニャ。
      5は5本。主ビア。主人公単独とCP物。
      6は3本。とても短い。ミレーユとテリーが好きです。主人公の名前は「ボッツ」。
      7は4本。CPなし。ほぼキーファの影を引きずってる話。主人公は「アルス」。
      8は5本。若干主姫。パーティ4人がわちゃわちゃしているのが好きです。

      11を書きたくて、昔の整理しました。
      ドラクエ、一生好きですね。

      pixivからの移行です。

      #ドラゴンクエスト #DQ2 #DQ3 #DQ4 #DQ5 #DQ6 #DQ7 #DQ8 #主ビア
      みどり(aomidori003)
    • 【ペーパー】コンクリの森【閃華春大祭2021】春コミおよび閃華春大祭 2021お疲れ様です。ありがとうございました。
      マジで前日に作ったペーパーです。少部数だったので、無配で終わりなんですがせっかくなのでこちらにも。
      明石と不動(極)が一緒に現代遠征に行く話です(単発)。
      表紙はすあまさん(https://www.pixiv.net/users/158568)が描いてくれました!

      前提は、初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      ほとんど姿のないセリフのみ男性審神者が出てきます。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #明石国行 #不動行光
      みどり(aomidori003)
    • そして「兄弟」となる初期刀・山姥切国広、初鍛刀・薬研藤四郎の本丸に権限した、十振目の堀川国広が、山姥切と山伏を心から「兄弟」と呼べるようになるまでの話。うちの本丸始動話でもあります。

      堀川派の「脳筋」と呼ばれているけれど、実際には三人とも内に籠るタイプなのがめちゃくちゃ好きです。他者に向かわず、自分自身ときちんと向き合うタイプの国広ズ、推せる。

      pixivからの移行です。
      #刀剣乱舞 #堀川派 #堀川国広 #山姥切国広 #山伏国広 #国広三兄弟
      みどり(aomidori003)
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