なんでもない日々のお話3
彼女は時に頼もしい姉の様で
時に安堵感で包み込んでくれる母の様で
そして時に儚く守ってあげたい妹の様で。
くるくる変わるその表情や愛らしい仕草は見ているだけで癒し効果をもたらす。
中でも『笑顔』の効果は絶大だ。
アイドルと言う立場上『笑顔』を振り撒くのは比較的慣れているのだろうが
アイドルとして観客に見せるそれと
ここでこうして見せる素のそれは
全くの別物だ。
彼女は普段から本当によく笑う。
心や身体が辛い時すらも
無理をして笑顔を貼り付けて。
否、そんな時だからこそ努めて笑うのだろう。
周囲にそれを隠し、悟らせない為に。
…この小さくて華奢な身体に
余るほどの責務と痛み、傷を伴いながら
独りで辛苦に耐え、生きて…
否、生きてこなければならなかったから。
それを考える度その壮絶さに
心が抉られる様な思いがする。
今でこそこちらが強く押せば
その胸の内や弱音をぽろぽろと
吐き出してくれるようにもなってきたが…
まだまだ『他人に甘える』事に
強い抵抗がある様だ。
とは言え
当初は押しても頑なに言わなかったのだから
大した進歩と言えるだろうか。
しかし
もう少し…と言うか…
本当にしんどい時くらい
自分から甘えられる様になって欲しい。
…そんな本音もある。
そしてこの本音は
自分だけに留まった事では無い。
スマイルなど如何に彼女を甘やかすかと
躍起になっている程だ。
それも、ミミやニャミと張り合いながら。
そして彼女の困った時の
反応や表情が愛らしいものだから
あの三人は次から次へとちょっかいをかけるのだ。
全く困りものです。
……けどまぁ…
その気持ちは分からなくも…
いやいや…
よく!分かるっスけどね…。
物思いに耽っていると
彼女の声がしてはっとする。
その声には心配の色が含まれていて
しまった…!と焦りつつ
何でもない旨を伝えると
彼女は心底安堵した様に表情を緩ませた。
自分自身の事には無頓着で
平気で蔑ろにするのに…
少しはその他人への気遣いを
自分の為にも使いましょうよ…。
そんな風に思いつつ
それでも愛らしいその笑顔には
今日も癒される。