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    【海隼】11/24ツキフレ無配 背中に強い衝撃を受けて目が開いた。
     あまりの衝撃に自分がどこにいるのかわからないほど。息を吐きだし、気持ちを落ち着ける。
     そして身体に感じる重みと体温に、海は顔を横へと向けた。
    「おかえり、海」
     横たわる海に身体を半分ほど預けた隼が、暗闇の中、微笑みながら海を見つめていた。
    「おかえり?」
     言い返してから、己の発した声の大きさに海は口を閉ざす。背中で受ける感触はふかふかの布団で、明かりもつかない部屋はプロセラに与えられた部屋のはずだ。海自身も夢の世界へ行くまでは普通に寝ていたのだから、そこから戻ってきたとなれば隼以外の四人はまだ寝ているに違いない。
    「大丈夫だよ、みんなまだふかーい眠りの中さ」
     海の心を読んだかのように隼が言う。さっきから楽しそうな顔をしているなと思いながら、海はもう一度聞き返した。
    「おまえ、知ってたのか?」
    「ああ、海がこの世界の始と僕に会ってきたってこと? いや、全然?」
    「……知ってんじゃないかよ」
     全然、と言いながらも、さらりと正解を言い当てるのだから油断できない。苦笑する海に隼はさも当然という顔をした。
    「隣で寝てた海が突然おかしくなったから、そりゃあ何かあったのかなとか、それくらいはわかるよ。推測さ」
     そんなことよりも、と隼は顔をさらに近づける。秀麗な隼の顔がこんな風にキラキラと輝くパターンがなんだったのかを思い出し、うわぁ、と海は内心で呻いた。
    「ねぇねぇ、この世界の始と会ったんでしょ? どうだった? やっぱり当然もちろん始のことだから美しくてかっこよくて最高だったんでしょ?」
     始まったぞ、と海は思う。この世界の始であっても隼にとっては称賛したい存在であるらしい。
     黒天狐、と言っていた彼がどんなだったか教えてやりたいが、それより先に隼が話しっぱなしなので海は口を挟む隙がない。とりあえず満足するまで話させてやるかと、こちらに預けたままの身体を撫でながら海は相槌を打っていく。
    「それで、海から見てどうだった?」
     ひとしきり始の素晴らしさについて語って満足したのか、ようやく海に質問が飛んできた。そうだな、と最初に受けた印象を海は口にした。
    「すっげぇモフモフしてたぞ」
    「モフモフ?」
    「こう、始が黒くて、お前が白くて、そんでもってすげぇ尻尾だったな」
     空いた片手で狐の耳を作ってみせ、それから抱えてもまだ余るほどだった尻尾のラインを手で作る。
    「………っ!」
     触り心地は良かったと海が言う前にパシィッと隼が口元を押さえる。そして指先を震わせながら片手をあげる。ぶつからないように避けながら隼の顔を覗き込むと、興奮で頬を赤らめ、瞳を潤ませていた。
    「…………っ! ……!」
     足元に伝わる振動は隼が足をばたつかせているせいだろう。
    「モフモフの始……! ああ、なんて尊いんだ…っ!」
     想像するだけでかなりのツボらしく、海の腕の中で隼は身悶える。実際に見たらどうなっていたんだろうなと思いつつ、海としてはいつもの隼で安心する。というより、この世界の始に触ってきたその手に触らせてなどと言わないだけまだ抑えているんだろう。それで気がついた。
    「なぁ、隼」
    「……うん? なぁに、海」
     うなじに手を這わせ、静かに力を込めると隼の動きがピタリと止まる。
    「おかえり、って言っただろ?」
    「言ったね」
    「見ててくれてたんだな、隼は」
     隣で寝ていた海が突然おかしくなったから、とも隼は言っていた。つまり隼は、海が夢の世界に行っている間、ずっと海の様子を見ていてくれたのだろう。いざ何か起きたときに対処できるように、注意深く、用心深く、海を見守っていたのだろう。
     そうだねぇ、と隼は隠さず頷いた。
    「大切な海を見守るのは僕の役目だからね」
     こんなとき、隼がプロセラのリーダーなのだと改めて実感する。好き放題、自由にやっているようで、大事なところは外さない。海ですら庇護の対象となる。手のうちにある存在すべてを愛おしく大切に扱う隼を、海はとても好きでいる。
    「ありがとな」
    「どういたしまして」
     微笑む隼に、あっと海は声を上げる。
    「海?」
    「忘れてたわ。……ただいま」
    「うん、おかえり、海」
     片手で隼のなめらかな頬を撫でながら、その額へ優しくキスをした。嬉しそうにそれを受け止めた隼は、けれど眉尻を下げてしまう。
    「かい」
     ふたりきりのときにしか聞けない声で隼が呼びかけてくる。足りなかったかと海がもう一度唇を隼の額へ押し当てると、違うよ、と苦笑混じりの言葉が返ってきた。
    「もしかして海は自覚がないのかな? さっきからずっと背中を撫でてくれるのは嬉しいんだけど、これ以上は僕がちょーっと大変なことになっちゃいそうだよ?」
    「…………へ?」
     ピタリと海は固まった。隼の言葉を少しだけ考えてようやく理解する。隼の背中に回していた手を海はゆっくりと見た。
     ああ、そうか、と海は苦笑する。
     無意識のうちに撫でていたのは、海にとっての隼をより感じたかったからだ。夢の世界で出会った白天狐の隼も隼には違いないのだけれど、やっぱり腕の中でにこにこしている隼が特別で一番で。モフモフはしていない、けれど海だけが好きに触れていい、なめらかな身体を確かめていた。
    「悪い」
    「構わないよ。海にしてもらえることはなんだって嬉しいからね」
     ただ、と隼は言う。
    「ここで何かあったら、何が起きるかわからないからねぇ」
    「……だな」
     曖昧な言い方をする隼に海は深く頷いた。闇天狗に急襲される不安よりも、最中にどうにかなった隼が無意識下で力をふるってしまうことの方が大変だ。この世界に、違う色の水は一滴だって入れるわけにはいかない。
    「じゃ、続きは帰ってからにすっか」
     自覚してしまうと海にも欲が芽生えてしまう。極力熱を抑えて隼と軽く唇を触れ合わせた。
     一度だけのキスでも隼は満足そうに微笑み、海の胸に頬を押し当てた。
     障子越しに流れ込む光はまだ弱い。
     夜明けまで時間があるとわかってしまうと途端に眠気がやってくる。海の変化を隼は理解しているのだろう、寝ようか、と柔らかく誘ってきた。
    「隼」
    「なに?」
     目を閉じたまま、腕の中の隼に呼びかける。
    「どこにいたってさ、お前が笑ってて、楽しそうだったら俺も楽しいよ」
     始のことで顔どころか全身をキラキラさせる隼だって、海は見ていて楽しいし、自然と口元に笑みは浮かんでくる。
     笑顔でいて欲しいと隼が願うなら、隼自身が笑うのが一番だ。そうしたら、海だって、世界だって笑うに決まっている。
    「海のそういうところが僕は好きだよ」
     嬉しそうな隼の声を聞きながら、俺も、と答えた海の声は果たして隼に届いていたのか。
     わからないけれど、眠りの世界へ行くなら今度は海の隣にいる隼と一緒が良い。隼もそう望んでくれていると海は信じている。
    藤村遼 Link Message Mute
    2018/12/02 23:23:17

    【海隼】11/24ツキフレ無配

    #腐向け #2次創作 #ツキ #海隼

    2018/11/24ツキフレにて無料配布した6幕ネタの小話です。
    編集で字数調整を入れたので、配布したものと多少違うかもしれませんが、大筋は同じです。

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