イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    【hrak腐】ホー常ついろぐ③※217話ネタバレ注意※パターン1:高校生時点で出来上がってるホー常





    「ね、ホークスの写真ないの? プライベート!」
    「ム…今丁度…」

     持っているが、と言い掛けてから、流石にこれは情報漏洩にあたる行為ではないかとはたと気がつき、ぐっと飲み込んだ。ホークスはファンサービス精神の高いヒーローであるし、SNSを確認すればファンから写真撮影を乞われた際、余程急いていない限りは快諾している様子も見て取れる。故に、写真を見せたとしても問題はなかろう、とは思うものの、小森は「プライベート」と言った。つまりは、仕事中の師の姿やファンサービスの一環で作った表情などとも違う、素のホークスの姿を所望している、ということだろう。
     確かに、終業後にホークス事務所のサイドキックの方々と共に食事へと連れられたり、インターン中帰りの新幹線に間に合わず事務所へ泊まらせて戴いた際に「どうせだからお泊まり会しよっかー」などと言い出したホークスと共に事務所で寝泊まりしたりだとか、あらゆる思い出がこの手の中にある小さな機械にすべて詰まっている。
     期待の眼差しでこちらを見つめてくる同志は恐らくホークスのファンなのであろう。そして俺は、模擬戦とはいえ彼女との戦いに負けた身でもある。それを思えば、写真を見せるぐらいはと考えなくもない、のだが。……あのひとの素の顔を独占していたい、という気持ちが三割、残り七割は「幾らファンサービス精神の高いヒーローだとはいえ、プライベートの写真など見知らぬ他人に見られたくないのではないか」との懸念があった。ふぅ、と一度息を吐き出してから小森へと顔を向け、口を開く。

    「…小森。プライベートの、と言ったな? 持ってはいるのだが…一応、師に確認を取りたい。暫し待ってくれるか」
    「あー、そうだよね、ヒーローとしての写真ならともかく、プライベートのやつだったら勝手に見るのもなんだよねー。いーよ、待ってる待ってる!」
    「忝い」

     からからと笑いながら納得してくれる姿は、なんとも微笑ましいものがあった。薄く笑みを返しながらもメッセージアプリを開き、ホークス宛てに事情の説明とともに写真の是非について尋ねる言葉を打ち込み、送信する。丁度ホークスもスマートフォンを見ていたところだったのか、ソファの隣に腰掛ける小森へ「送ったぞ」と告げてもう一度スマートフォンの画面に目を向けたときには、すでに既読マークが光っていた。あまりの素早さに驚きつつ、返事が来るまではと一旦スマートフォンの画面を切ってポケットへ入れる。
     暫し学友たちとの歓談に耽り、それからたっぷり十数分程経った頃にポケットの中から着信音と振動が響いた。

    「あ、鳴ってる! ホークスから?」
    「……そのようだ。確認する、待っていてくれ」

     画面に映った名は確かに師のもので、しかし既読のつく早さに比べて返事が随分と遅かったことが気掛かりだった。やはりプライベートの写真を、などと尋ねてしまったのは不躾だったろうかと慄きながらもメッセージアプリを開く。

    『見せるのは構わないけど、どうせなら今から送ったげるからそっち見せたげて。下に貼り付けてくねー。そんで、君も絶対一緒に見ること』

     そんな一文と共にアプリの画面に流れたのは、八枚の写真。すべて、何時ものゴーグルを外した私服姿のホークスの自撮りらしきものだ。背後に小さく映っている時計を見る限り、俺がメッセージを送った後すぐに撮ったらしい。返信までに時間がかかっていたのはそういうことか、と納得しつつも安堵した。サービス精神の高さもここまで来ると見事だな、と感嘆の息を漏らしながら小森へとスマートフォンを手渡し、見て構わないそうだ、と声を掛ける。小森はありがとー! とぱっと顔を輝かせながら画面をスクロールさせて、師の写真を見ては「わぁ」「やっぱかっこいいねぇ」などと声を上げていたが、そのうち頭の上に疑問符を浮かべながら「ん? んん?」と奇妙な声を漏らし出した。

    「小森? どうした?」
    「ん、んんー…ねー常闇、この写真さぁ、なんか気にならない?」
    「…? 気になる、というと?」
    「全部で八枚あるけどさぁ、なんか全部口元指差してるし、よーっく見ると口の動きも全部違うもん」

     ほら、と此方へ傾けるように差し出された画面を共に覗き込みながらスクロールしていくと、確かにその通りだった。口を「あ」の形に大きめに開いているものもあれば、閉じているものも、僅かに窄めているものもある。そしていずれの写真も確かに己の口元を指差していて、それでいて何処か楽しそうに笑う師の顔が印象的な。どういう意味であろうか、と何度か画面をスクロールしていると、今度は背後から声が飛んでくる。

    「……『常闇』」
    「…うん? なんだ、黒色?」

     突如名を呼ばれ、振り向いた先に立っていたのは黒色支配だ。スマートフォンを小森と共に覗き込んだ体勢のまま振り向くと、黒色は「違う」と首を横に振り、画面を指差した。

    「…他のは、分からない、が。その写真、最初の、四枚。……それ、『常闇』って、言ってる、んじゃないのか」

     え、と小さく声を上げつつももう一度画面を見遣る。最初の四枚の写真に映る師の口の動き。じっと見返すと、成程確かに、「とこやみ」と言っているようだった。隣の小森も納得いったように「あー!」と声を上げている。

    「ほんとだー、きっとそれだね! さすが黒色! あったまいー!」
    「お…おう」

     すごいすごい、と燥ぐ小森を横目に、残り四枚の解読に移る。黒色の言うとおり最初の四枚が俺の名前だとすると、師の普段の呼び方からするに五枚目と六枚目で「くん」になるのではないだろうか。そう思い当たり五枚目と六枚目に改めて目を向ければ、果たしてそれは正解だった。「く」の形に窄められた唇と「ん」の形に引き締まった口が映っている。あの遊び心のある師らしい、と自然、笑みが浮かぶ。小森にもそう告げて、それでは残りの七枚目と八枚目は、と画面をスクロールさせた。
     改めてじっと写真の中の師の口元を見やると、七枚目は「う」、八枚目は「い」を象っているように思える。「う」行と「い」行、この二つで繋げられる言葉とはなんだろうか。暫し思考を巡らせて、不意に思い当たったひとつの単語に、ぼう、と全身に熱を上らせてしまった。

    「えっ、常闇? どしたの?」
    「? おい、常闇?」
    「ッ~~~~!!」

     心配そうに俺の名を呼ぶ小森と黒色の声すら、どこか遠い。自然と力の篭った握り拳をがつん、と額に当てる。熱いのは顔なのか、それとも手か、はたまた両方か。いずれにしてもあの狡賢い師の思い通りになっている気がして、どうしようもない悔しさが沸々とこみ上げてくる。嬉しさだとか幸福だとか、そういった気持ちも確かに心の内に在るけれど、何よりも先ず悔しさが先立った。未熟であることは実感しているけれど、それでもしてやられてばかりな己自身には腹が立つというもので。

    「………………」

     はぁ、と熱い息を吐き出し、小森と黒色には何でもないと返しつつも先に部屋へと戻らせてもらうこととした。一人になったら真っ先に、メッセージアプリなどではなく電話で、あの写真にて告げられた「それ」の返事を告げてやろう。それから、あの写真を小森に見せろ、と言ったということはそういうことなのだろうから、…………無益な嫉妬は辞めろとも。そう、心に決めながら。



    *****



    (……さって、常闇くんは気づいてますかね、っと)

     自宅のソファでぼんやりとテレビを眺めつつ、内容なんてまるで頭に入ってこなかった。意識はサイドテーブルに置かれたスマートフォンに向けられたまま、笑みを崩すことができない。ちょっとやりすぎたかなぁ、とは思わないでもないけれど、遠く離れていて殆ど会うこともできない年上の男よりも身近にいる同級生の女の子の方がいいと思われてしまう可能性がゼロではない以上、牽制は大事だろう。
     うんうん、と誰にでもなく頷いていると、まるで息せき切ったようにサイドテーブル上のスマートフォンが鳴り響いた。ばっと素早く手に取り、画面に浮かび上がったのは愛しい鴉の名前。それも、メッセージアプリなどではなく電話のアイコン。

     ――ああ、やっぱり気づいてくれたのか。

     笑い転げたくなるような幸せな気分に浸りながらも、俺は応答アイコンを軽やかにタップした。



    ※パターン2:ホー←常自覚話





    「ね、ホークスの写真ないの? プライベート!」
    「ム…今丁度…」

     届いたものだが、と手に持っていたスマートフォンを小森の方へと傾けてやる。メッセージアプリのトーク画面、其処には師とサイドキックの先輩方が仲睦まじく食事をしている写真が映っていた。『終業したからみんなで焼き鳥食べに来てまーす! 常闇くんも今頃は授業終わってるかな? そっちもお疲れー』『ここの焼き鳥絶品だよ。インターン再開したら常闇くんも一緒に来ようねー』とのメッセージが添えられており、それだけで心の奥がほんわりと暖かくなる。スマートフォンを覗き込んだ小森も同じ感想を抱いたのか、「わぁ」と短い声を上げてふわりと微笑んだ。

    「仲良いんだね! なんか思ってたよりずっと和気あいあいしててびっくりしちゃった」
    「…そうだな。俺自身、想定外だったが」

     職場体験の頃はまるで興味を持たれておらず、ひたすら伝書鳩兼事後処理部隊のひとつとしてしか扱われることのなかった己が、あれから半年も経たないうちにホークスとこのような関係を築いているなど、誰が想像したろうか。俺自身、こうしてメッセージアプリを定期的に見返さなければ信じられぬ程。インターン初日での夜間飛行以来、師事を受けるようになったことも含め、自分にとって都合の良い夢を見ているのではないかと暫く不安になったことすら、今となっては只々懐かしかった。
     何気ないアドバイスやインターン先の上司としての言葉ではない、他愛のない雑談をしてくれること。終業後のプライベート時ですら、遠く離れておりインターン再開の兆しすらない中でも俺を思い出してくれていること。当たり前のように、己のパーソナルスペースへと招く言葉を掛けてくれること。それが、どれほど嬉しいことなのか、きっとあのひとは知らぬままだろう。流石に気恥ずかしく思う故に、気づかれていないならば幸いだけれど。
     スマートフォンを眺めながらそんなことを連々と考えては笑みを浮かべる。そんな俺の姿に何を思ったのか、小森はほんの少し引きつったような表情でそっと俺に顔を寄せてきた。その頬はほんのりと赤らんでおり、疑問には思ったものの何かを言いたそうにしていることに気がつき、取り敢えずと彼女の言葉に耳を傾ける。隣に腰掛ける俺以外の誰にも聞かれぬようにと気を張ってか、彼女はぼそぼそと小さな声で呟いた。

    「……あのさぁ、常闇。ちょっとした助言なんだけどさ、他所でそういう顔しない方がいいと思う。ちょっとやばいよ」
    「…顔? どういう意味だ? 俺は可笑しな顔をしていただろうか」
    「いやあ、おかしいっていうか……言いにくいんだけどね」

     小森の顔が更に近づいてきて、内緒話をするように――俺の耳の位置が分からなかったのか、目から少し斜め下の辺りで――口元を両手で覆い、そっと囁く。

    「写真の中の人に、恋してますって顔、してる」
    「ッ!!??」

     ぶわり、と全身の毛が逆立った。思わず叫び出しそうになるのをぐっと堪えて、気持ちを落ち着かせるためにと嘴を押さえながらも一度、深く息を吐き出す。どっ、どっ、と高鳴っていく鼓動が嘴にまで伝わり、まるで全身が心臓になってしまったような気分だった。
     こい。彼女は、恋、と言ったのか。誰が? 俺が、写真の人物に、即ち、ホークスに? そんなまさか、俺は師にそんな感情を抱いたことなど無い。無い、筈だ。だが、何故だか彼女の言葉を否定することも出来なかった。そんな筈がない、と訴える己とは裏腹に、「恋」という言葉がまるで月の公転のようにぐるぐると頭の中で絡み合い縺れていく。そんな俺を見て、小森は申し訳なさそうに自分の頬を指先でぽりぽりと掻いた。

    「あー…なんかゴメンね、もしかして自覚してなかった?」

     そしてもう一度顔を近づけてきて、ぽそぽそと囁かれた言葉に、今度こそ気を失ってしまいそうになる。

    「常闇、すっごい優しい目で写真見てたよ。憧れとか尊敬してるヒーローを見る目ってよりは、やっぱり恋してる目だなって、思う」

     がくり、と頭を重力に任せて膝の上に落とした。近くで談笑していた皆が「えっ常闇!?」「どしたの、具合悪い?!」などと口々に声を掛けてくるものの、答えを返すどころか頭を上げることすら出来ない。隣の小森が何とか誤魔化してくれているのを良い事に、これまで全く想像もしていなかった想いと向き合う。 

     職場体験の頃は、思い出すたびに心に湧き上がるのは慚愧の念だけだった。トップランカーの一人から指名を賜ったのだと浮かれた気分を踏み躙られた悔しさと、そうとしか扱われぬ己の未熟さへの憤怒。それらを糧にして挑んだインターン、追いつくことは敵わぬまでも、職場体験の頃とは違い、師の疾さに食らいつきその姿を見失わず事後処理を遂げることは敵った。それからは少しずつアドバイスを賜るようになり、今やプライベートでも他愛のないやり取りをするまでにも。
     それを嬉しく思っていることは嘘偽りない事実で、だけどそれはあくまでホークスというヒーローにほんの少しでも認められたが故、である筈で、それ以外の意味など考えたこともなかった。
     ……それでも、小森の言葉を否定し切れない時点で、恐らくは「詰み」なのだろう。抑々、小森は「写真の中の人」と言っただけだ。手元のスマートフォンをぎゅっと握りしめながら、思い出す。彼女に見せた写真の中には、ホークスだけではない、サイドキックの先輩方とて確りと映っていた。だというのに、小森の言うところの「恋している」相手として、他の誰でもなくホークスを真っ先に思い浮かべてしまったこと、どころかホークス以外の誰のことも頭に浮かばなかったことからして、完全に認めざるを得ない。突き付けられて初めて自覚するなど、どれほど鈍感なのかと己に呆れさえ覚えるほどだけれど。

    (……ホークス。俺は)

     どうやら、貴方に恋をしているようだ。

     未だ喧騒止まぬ寮の共有スペースの中で、ひっそりと自覚した恋心を零しながら、熱い息を吐き出した。




    ※パターン3:完全無自覚両片想い





    「ね、ホークスの写真ないの? プライベート!」
    「ム…今丁度…」

     整理していたところだ、と常闇は薄く笑って、手に持っていたスマートフォンの画面をとんとん、と軽やかにタップした。何度か画面をスクロールさせてはタップを繰り返し、じっと画面を眺めてからフム、と頷いたと思うと私にスマートフォンを差し出す。

    「見て構わないぞ。但し、此方のフォルダにあるもののみだ」
    「わーいいの? ありがとー常闇! じゃあ遠慮なく見せてもらうね!」

     意外とあっさりと許可を貰えて、浮かれた気分で常闇のスマートフォンを受け取ってお礼を告げれば、小さな笑みと共に「構わない」と荘厳な声が返ってくる。戦闘の時とは裏腹な落ち着いた雰囲気だとか、こういうところはやっぱり黒色と通じるところがあるかも、とちょっとした親近感が湧いた。渋られるのも予想していたのに、すんなりと許可を貰えたことも合わせて、ほわほわとした気分のままに画面に映し出されているいくつかの写真のサムネイルを眺める。

     まず目に入ったのは、恐らくはホークスか、ホークス事務所のサイドキックの人たちに撮影してもらったのだろう、常闇が技を繰り出している様子の写真が十数枚。常闇がさっき見ていたのはきっとこれらの写真なんだろうなぁと、なんとなくそう思った。模擬戦のときから今に至るまで、短いやり取りの中でも彼の負けず嫌いな性格はよく見て取れたし、きっとどうすれば自分たちのチームが勝てていたのか、写真を見ながらシミュレートしていたのかもしれない。
     そんなことを考えながら画面をスクロールさせていくと、ついにホークスの写真が姿を表した。右腕で常闇の首をホールドするように抱き込んで、満面の笑みでカメラに向かって左手でピースサインをしている姿。恐らくはサイドキックの人たちであろう、見慣れぬヒーロースーツの男性何人か――もちろん常闇も一緒だ――と一緒に食事を囲んでいる姿。常闇とのツーショットで、サイドキックの人たちにでも不意打ちのように撮られたのであろう、ふたりして驚いたような顔をする姿だとか――こんな機会でもなければ中々お目にかかれないような、ホークスというヒーローの沢山の素顔が映っていて、自然と顔が笑みを象ってしまう。
     ふふ、と微笑ましく思いながら写真を次々に見ていたけれど、不意に覚えた違和感に、スマートフォンを弄る手がぴたりと止まった。

    (…………あれ? ん? ん、んんー……?)

     どうしたんだろう、と自分でも疑問に思う。常闇を中心にたくさんの人が一まとまりになっていたり、ホークスや常闇が単体で映っていたり、ツーショットだったり。いろいろなかたちで撮影された写真、その中でもホークスの写真を見ているときだけ、どこかに違和感を覚える。だけどそれが何なのか、よくわからない。
     何がそんなに違和感なんだろう、ともう一度画面を上にスクロールさせて、一からホークスが映っているものを中心に見返してみる。日付順にずらっと並んだサムネイルを眺めてみたり、特に気になったものを拡大してみたり。そうして一番古い写真にまで突き当たって、突然脳裏にひらめいた答え。

    (……ホークスの、目。なんか、新しい写真になるたびに……柔らかく? なってる、気がする)

     それは、言ってしまえば女の勘、でしかなく。最初の頃は、笑っているようでどこか冷めたような…身近にいる誰のことも見ておらず、ただただ大空を舞う鷹のごとくに遠い虚空しか見つめていないような、そんな目をしていたホークスが、新しい写真になるたびに柔和さを醸し出している、ような気がした。……特に、他でもない常闇とツーショットで映っているときや、常闇に視線を向けているときほど優しく揺れている。まるで、恋を知ったばかりの少年のようだとさえ思えて、自分自身の発想にどきりとしてしまった。
     七歳も年上のプロヒーロー相手に何を考えているのか、と思わないでもなかったけれど、一度表に出てしまったら止まらなかった。芽生え始めたばかりの、面映ゆくもささやかな思慕の情。そんな消え入りそうに仄かな光が、ホークスの目に宿っている気がしてならない。現に、一番新しい写真に目を向けると、常闇と視線を交わし合うホークスの表情はどこまでも穏やかで、暖かくて、優しい。愛おしいものを見つめるような、とはこんな目のことを言うのだろう。そう頭に過ぎらせて、思わず頬を赤らめてしまう。

     常闇があっさりとこんな写真が保存されたスマートフォンを差し出してきたあたり、きっとまだ何も始まってはいないのだろう。ふたりの間に「何か」があったのだとしたら、とてもじゃないけどこんな写真を他人に見せるなんて出来ないと思う。それほどに、面映さを感じさせる目だった。もしかしたら常闇は勿論のこと、ホークス自身ですら気づいていないのかもしれない。全部、私の勝手な想像にしかすぎないけれど……そんなところも、まるで少年の恋のようだと思う。周りの大人たちはみんな気がついているのに、本人たちだけが気づかない、そんな幼子同士の小さな恋にひどく似ていた。その小さな恋が芽生えはじめる瞬間を盗み見してしまったようで、なんとなく後ろめたくも落ち着かない気分になって、スマートフォンの側面にあるボタンを押し、画面を暗転させる。そして本来の持ち主へとすっと差し出した。

    「……ありがと、常闇。もう返すね」
    「ああ。……? どうした、小森。心做しか顔が赤いようだが」
    「へっ、え!? あー、ゴメンね、なんか憧れのヒーローの写真いっぱい見せてもらって、テンション上がっちゃったかな」

     ぎくりと体を強張らせつつも、決して嘘ではない言葉を吐く。咄嗟に出た言い訳としてはなかなかものだったんじゃないだろうか。熱の上がった頬を冷ますようにパタパタと手で扇ぎながら答えると、常闇は納得いったかのように「そうか」と小さく笑みを零す。師が慕われているのは嬉しいものだな、と呟くその柔らかに細められた目には、ホークスと同じ光が宿っているように見えて。あ、と小さく声を漏らしながら、私も思わず笑った。

    「……ねー常闇」
    「うん?」
    「ほんと、ありがとね。今まで知らなかったホークスのいろんな顔見られてさ、前よりもっと好きになっちゃった」
    「…そうか。なれば何よりだ、今後も師を応援してやって欲しい」
    「うん!」

     ヒーローとしてだけじゃなく、恋愛の方もね。心の中だけで、そう付け加えた。ヒーローだって、人間として当たり前の幸せを甘受したって許されるべきだもん。きっと常闇とホークスなら、そんなにも優しい目で相手を想える同士なら、きっと上手くいくよ。頑張ってね、とこっそりとエールを送った。
    青藍 Link Message Mute
    2022/09/25 12:09:11

    【hrak腐】ホー常ついろぐ③※217話ネタバレ注意

    WJ12号217話ネタです。がっつりネタバレしていますので単行本派の方はご注意ください。
    あのセリフにあまりにも滾りすぎてついったーで騒ぎ倒した結果のSSまとめです。
    3日連続で3パターン書いてしまいましたがめっっっっちゃ楽しかったです。
    正直まだ他のパターンもいっぱい書きたい。

    ※今後本誌であのセリフの実態が判明して、全然違う内容だったら笑ってやってください

    #hrak腐 #ホー常

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品