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    Log16-1【柑橘の宅飲み】


    「――頑張りすぎっつうか、いや本人としては無理してねえんだろうが、もう少し自分の事を気に掛けろっての」

    「ゆっくんねー」
    「やみまる除雪作戦といい、滑り止めの話の断り文句といい、体力消費して負担かかるところを考慮しろってんだ」

    「ん、滑り止めの話?」
    「靴底に星魔石を仕込んでそこに《月》を溜める、滑らない靴あるだろ」
    「冬になるとやけに高くなるやつ」
    「あれを、月明かりを待つんじゃなくてユクシルが溜めるようにすれば、生産効率が格段に上がって儲けられる。新しい事業として、どうだ?ってダウが。まあ冗談だったけどな」

    「なるほどねえ。それで、『それを為すならば時間を取られる。本業が疎かになってしまうから難しい』とか言ったんでしょー」
    ああ。そっくりそのまま」

    「実際体力あるからね。おまけにあんま寝てなくても健康だし」
    「 ……頑丈なのは嫌というほどわかってる、お節介なのも重々承知してんだが…」
    「どうしても心配になっちゃうんだろ? でこぽんだから仕方ないよ」

    「逆にその辺り、てめえはそこまで気にしねえよな」
    「だって現に無理してないじゃん、ゆっくん」
    「そりゃそうだが」
    「ジブンは、程々にしてくれればいいなぁってくらいかな。今では怪我も回避しようとしてくれるし」

    「なら、あいつを嫌う人間への態度はなんなんだ?」
    「んー、それは単にジブンが気に入らないだけだよ」
    「気に入らねえだけ」
    「そ。ゆっくんを守るため、ではないよね。というか、物理的なそれは別だけど、本人自身を守ろうなんて考えたこともない。守られるようなひとじゃないもん」
    「それには同意する」

    「でしょ。それでもって、ゆっくんは悪意なんて気にも留めてない。実は傷ついてます疑惑すらゼロ。……以上を踏まえて、ジブンがなんでゴミクズに攻撃的なのかっていうと、苛々する・気に入らないからなんだよっていう」

    「理屈はわかった」
    「けど?」
    「もう少し、人として抑えてもいいんじゃねえか」

    「え。だって自分の認識範囲に羽虫が飛んで入ってきたら、ウェズだっていらつくでしょ」
    「羽虫だったらな」
    「手で払い除けたくなるし、場合によっては潰したくなるだろー」
    「羽虫だったらな?」





    【めだまやきには】


    セ「わ、黄身と白身が分かれてるし殻も混ざってない」
    ウ「目玉焼きなんだから当たりまえだ」

    セ「これだから器用でこぽんは」
    ユ「俺も目玉焼きは作れるが」
    セ「うぐっ」

    ウ「急に目玉焼きが食いたいとか言い出して、自分で作れよと思ったが……」
    セ「うるさい。器用は不器用のために朝御飯作ってればいいんだよ」
    ウ「わざわざ朝飯食いにきてるのもおかしいんだよな」

    セ「食べたくなっちゃったんだから仕方ないじゃん。今週は食堂のメニューに無いし、そうなったらまあウェズに頼むよね」
    ウ「なんでだよ。料理はユクシルのほうがいけるだろ」
    セ「ウェズだってちゃんと計れば美味しく完璧に作れるでしょ、くたばれ器用」
    ウ「色々となんでだよ」

    ユ「食べないのか。作ってもらったのに、冷めてしまう」
    セ「そうだね。食べよっか! じゃあいただきます」
    ウ「……」

    セ「あ、ウェズ。ソースある?」
    ウ「あるけどよ、何に使うんだ」
    セ「目玉焼きにかけるに決まってるだろー」
    ウ「え?」
    セ「え?」

    「「……」」

    ウ「目玉焼きつったら塩胡椒だろ」
    セ「普通にソースでしょ」

    ウ「白身に馴染まねえのに?」
    セ「黄身の染みこまないのに?」
    ウ「味つけば十分だし、しつこくなくてぴったりだ」
    セ「かかってれば十分だし、元々味無いんだからベストだよ」
    ウ「多少あるだろ。そもそもメジャーなのは塩胡椒派だしな」
    セ「これだから無難に甘んじる多数派は。一度ソースで食べてみてから言ったら?」

    ウ「最も美味いからこその結果だっての。なあユクシル、てめえはどう思う」
    セ「固定概念にとらわれてるって同情するよ。ね、ユクシル的にはどっちがベスト?」

    ユ「固まり加減が丁度いい。美味い」

    ウ「……いやいや何ひとりで食ってんだよ」
    ユ「何もかけないのが好きだ」
    セ「話の!流れ!」





    【音①】


    人間のかたちを解く。ゆらめく漆黒の霧と成る。そしてまた、少年の姿をとる。
    『……右耳がありませんよ』
    少し遠い音で叱りつけられる。手をこめかみのあたりにやれば、確かにそこはつるりとしていた。
    『人の姿をしている時は、耳が無ければ声も拾えないのでしょう。さあもう一度』
    何度も聞いたせりふを再び言われ、こどもはふと思う。
    このままもう一方を無くしてしまえば、――、聞こえなくなるのだ。


    まどろみから意識を引き上げたのは、自分の名を呼ぶ友人の声。
    疲れているのであれば休んだらどうか、と友人が顔を覗き込んでくる。疲労は無いので大丈夫だと返し、そして束の間考えてから「耳はあって良かった」と付け足す。
    応えは怪訝な顔だったが、闇魔はひとり満足げに唇をゆるめた。





    【音②】


    とんとん包丁の音、ぐつぐつ煮える音、じゅうじゅう焼ける音。
    棚から出す際に音を鳴らす食器、会話が交わされる食卓。
    かつては、幸せだった、過ぎ去りし日にしか無かったもの。幸福のおとが聞ける喜び。
    目を閉じて聞き入る。まぶたの裏にあるのは、果たして光の遮られた無か、それとも。
    makiwaka90 Link Message Mute
    2019/01/13 19:39:12

    Log16-1

    ##_774

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