働く男女三連休は東京駅の駅弁祭りに参加するため休みなしで働いていた。そして最終日、その日は勤労感謝の日。
働くことができる健康な体があること、働く会社があること、そのことに改めて感謝する。
東海林は8時に裏口から入り、会場の準備を進める。今日の弁当の搬入時間と個数を確認して、昨日の時間帯売り上げをチェックし混雑時と閑散時を予測する。
「丸の内OL弁当、昨日12時には売り切れていたのがあるから少し多めに作ってもらおう」
そう部下に指示して次はレイアウトをチェックする。
商品を目立つところに置くのはいいが温度管理が心配なので照明をなくし蛍光色のポップアップを貼る。
「ここはもう少し赤を使ったほうがいいんじゃないですか?」
他の社員からも提案が入り、試行錯誤しながら完成させていくと、9時には女性のハケン販売員がやってきた。
そしてその中に、特Sハケンの大前春子もいた。
商品が搬入され陳列し、10時5分前に開店前の朝礼を行う。発生練習と今日の持ち場確認に商品についての説明。
「わからないことがあれば大前さんに聞いてくれ、全部頭の中に入ってるから。あと11時がすぎたらレジにはサッカーが2人追加して、空いてる時に袋やお箸の補充も忘れずに。ではよろしくお願いします」
東海林が指揮をとりまとめていく、従業員たちは
「よろしくお願いします!」
と、声を揃えて一礼するとまもなく10時のベルが鳴った。
シャッターが開くとすでに行列ができていた。開店と同時に買って新幹線の中で食べる人がいるからだ。
待ち続けてくれていたお客様たちの顔をみると東海林は胸が高鳴る、今日の目標は120万円だ、昨日より12万高い目標だ。だが絶対に超えて見せると強い自信を持って大きく息を吸い
「いらっしゃいませ、S&Fの駅弁祭り開催ですー!!」
側から見れば毎日同じようなことの繰り返しかもしれない、会社にこき使われているだけ、会社のロボットと言われることもある。
それでも、誰かが自分たちの商品を購入して喜んでいる幸せ、この高揚感は働いているからこそ得るものだと思っている。
そして何より一緒に働きたいと思っていた女とまた一緒に働くことができている。
「東海林課長!思ったより売れ行きが早いです、急いで追加して下さい!」
春子の威勢のいい声に東海林は負けず劣らず
「わかってるよ、お前ら走って取りに行くぞ!」
部下を引き連れて裏口へと向かっていった。