許す 日のあたる丘にふたり、座っている。
空気は剣呑だ。フォルテは腕組みをし、口をへの字に結んで、目の前のタンポポをにらみつけていた。
「ごめんなさいフォルテさま」
すぐ横から、シャムロックの声。こちらは眉がハの字だ。ちょっと伸びすぎてしまった前髪を斜めにかしげて、友の顔をのぞきこんでいる。
「まだ、怒ってらっしゃいますか」
しるか。
「こっちを向いてください」
鼻をひくりと動かし、フォルテはふん、という顔をした。
「フォルテさま……」
情けない声に、フォルテはむっつりと目をつむった。
しつこい奴だな、ほっとけばいいだろ? 大体俺のこと「様」づけするなとあんなに言ってるのに、いつになったら分かるんだ。
空では眩しい雲が、ゆるやかな流れにのって渡っている。
太陽が隠されるたびに、日の匂いが少し和らいだ。
ふたりのむきだしの腕に涼しい風が吹くようになった頃、空の色が変わりはじめて、いつの間にか夕暮れのだいだい色が、二粒の小さな背中のうえに広がっていた。
「ざまあみろ」
ぽつりと呟くと、え、と振り向く気配がした。
「お前、一日無駄にしたな」
そんなことないですよ。と、穏やかな友の声。
見つめる空に、一番星がまたたきはじめた。どこからか、夜の調べが聞こえてくる。ぽっかり昇った月からだ。
「フォルテさま」
「なんだよ」
「昼間のこと、許してくださいますか?」
青い草むらに足を伸ばす。フォルテは腕組みを解くと、しばし目の前を見つめていたが、やがて友の顔を振りむいて笑った。
「しゃあねえな。何で怒ってたのか、忘れてやるよ」