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    Summer Clap7月下旬、会社のメンバーで海へ行くことになった。
    最初は東海林が里中と浅野を誘い、ハケンの女子も誘っていると
    新入社員の2人も行きたいといい、ほかの社員たちも行きたいとどんどん
    参加者が増えてマイクロバスを借りるほどまで話が膨らんだ。
    その後、バスの手配をしたり海のしおりを作ったりと東海林は自らリーダーシップをとり張り切っていた。

    なぜなら、絶対に行かないといいそうな大前春子が行くと言ったからだ。
    春子の水着姿を想像しただけでも胸が高鳴る。
    無難にワンピースだろうか、それとも大胆なビキニだろうか
    いや、パレオからはみ出る脚線美もいい―。
    そんなよこしまなことを考えていたらいつの間にか鼻の下が伸びていた。


    「東海林課長、くるくるパーマに鼻まで伸ばしていいたらまるでチンパンジーですよ」
    デスクでぼーっとしていると、知らないうちに大前春子に顔をのぞかれていた。
    「うわっ、びっくりするだろ!!」
    「どうせ変なことを考えていたんでしょう?総務から書類が届いています」
    春子はそう言って一枚の紙を東海林に机に置いた。
    「おいまて、誰がチンパンジーだ!!お前だってサルみたいにちょこまか動くな!!」
    そんなことを言いながらも春子の背中を見て、また妄想が膨らみ始めてしまった。


    そして当日。
    バスで二時間ほどかけて茨城の海水浴場についた。
    新しく開けた海水浴場のようで、建てられたばかりの海の家や更衣室が並んでいて、ビーチにもたくさんの人とパラソルが
    溢れかえっていた。
    「じゃあここからは自由行動なんで、2時にまたここに集合な」
    東海林は引率の先生のようにみんなをまとめて指示した。
    メンバーはそれぞれのグループに分かれて、散っていく。
    東海林は里中と浅野のところへ行き、預けていた荷物を受け取る。
    天気がいいのはよかったが気温は35度近くあると天気予報で言っていた通り
    肌が痛いほどのきつい日差しが降り注いでいる。
    「じゃあ俺たちも着替えるか…あれ?ハケンの子たちは?」
    「もう更衣室へ行きましたよ、大前さんも一緒に」
    「え!?とっくりも???」
    東海林ははやる気持ちが隠せず声が上がってしまう。
    「東海林さん、大前さんの水着姿がみたいんでしょ?」
    浅野がニヤニヤしながら言う。
    「ばっ…ばっかじゃねーの?あんなおばさんの水着なんてキョーミねーよ!!」
    「東海林さん、ずっとうれしそうだったもんね。僕も見てみたいよ」
    「いや、賢ちゃんがそんなこと言うとかえってこっちが恥ずかしいわ」
    熱い砂の上を履きなれないサンダルで踏みしめながら3人は更衣室へ向かった。


    そして水着に着替えて、外に出るとハケンの女子たちと遭遇する。
    「おおっ、君たちも着替えたのか〜可愛いじゃないか」
    水玉のフリル付きのビキニやワンピースの花柄やボーダーなど、可愛い姿が目に飛び込んできた。
    東海林は目のやり場に困りつつも
    「とっくりは?まだ着替えてるのか?」
    そう問いかけると、千葉小夏が
    「大前さんなら後ろにいますよ」
    指を刺しながら言った。
    東海林は春子の水着姿をドキドキしながら振り返り目にする。

    そこにいたのは真っ黒のビキニ姿の春子だった。
    飾りも何もない、ただ大事なところを隠すだけのような大胆な姿に、目が飛び出るほど釘付けになった。

    「と……とっくり?」
    「じろじろ見ないでください、変態パーマ課長」
    「だれが変態だ!!なんだその辛気臭い黒は!!もっとこう…この子たちみたいにさ明るい色の水着着ろよ」
    照れ臭くてつい憎まれ口を叩いていると
    「大前さん、似合ってます」
    里中はフォローする様に春子の水着姿を褒める。
    「大前さん、手に持ってる網はなんですか?」
    浅野がふと気づいた網に東海林も目を移す。
    たしかにビーチで遊ぶようなものには見えない。
    「これは、ウニを取るための網です」
    「ウニ!?」
    東海林は予想外の言葉に困惑を隠さずにいた。

    「私がここにきたのは奥にあるウニ取りを楽しむためです、もちろん許可は取っています。でないと密猟になりますので。では皆さんはビーチバレーやバナナボートででも楽しんでいてください、それでは失礼します」

    そう一息で言うと、春子は素足のまま早足で奥の岩場に行ってしまった。


    「ウニ…ウニって……そんなもん店で食えーーー!!!」


    東海林のやるせない怒り声が海の沖まで響いていた。



    東海林は気を取り直して海で泳いだりビーチバレーをしたり砂山を作ったりと童心に戻ったように遊び倒した。
    そして海の家の12時のチャイムが響いた頃、里中が
    「大前さんお昼食べないのかな?東海林さんよかったら様子見てきてくれません?」
    東海林に気を使ったのかはわからないが、そう言われると東海林はそわそわしながら
    「賢ちゃんがそこまで言うなら仕方ないなぁ、ちょっと俺とっくり呼んでくるわ」
    「じゃあ、あっちの海の家で先に待ってますね」

    東海林は早足で春子のいる岩場に向かった。



    そこには誰もいなくて、春子がさっき持っていた網だけが佇んでいた。その中にはもうすでにウニが何個も入っている。

    「あいつはあまちゃんか!!」
    東海林は岩に腰掛けて周りをみわたす。
    春子はいない、水中に潜っているのだろうか。
    あの女なら海中で何十分も潜っていられそうな気がした。
    とりあえず上がってくるのを待とう…そう思っていた時だった。


    目の前の海面から大量の気泡が浮かんできた。
    最初は岩の間から空気でも入ってきたのか?そう思ったが、なんだか嫌な予感がする。
    まさか、まさかとっくりが溺れているんじゃー。

    そう脳裏に浮かんだ瞬間迷うことなく東海林は海に飛び込んだ。
    勢いよく落ちたせいでどんどん水深へ下がっていく、鼻に海水が入ってつんと痛い。
    東海林は目を開け首を左右に動かし春子の姿を探す。
    水質がいいおかげでどこに何があるかはっきり見えた。横には海藻が群がっている。
    その海藻の中で何か動いている、東海林は腕を動かしてそこへ向かう。


    そして、海藻に足が絡みもがいている春子を見つけたー。


    急いで近づき海藻を思い切り引っ張った。
    すると春子の足が海藻から外れて、自由になる。2人は同時に一気に酸素を求めて海上へと飛び上がった。

    はぁはぁと息を切らしながら2人は海に浮かび、東海林は春子を見つめる、意識はあるし顔色も悪くない。
    「おい、大丈夫か?」
    それでも心配で声をかけるが当の春子は
    「余計なお世話です、あれくらい自分でほどいて上がってくるつもりでした…」
    東海林に助けられたことを悔しがるように言った。

    しかし東海林から返ってきた言葉は想定外のものだった。

    「バカ野郎!!お前俺が来なかったら死んでたかもしれないんだぞ!?こんな時まで強がるな!!」

    真剣な目で、春子を叱咤した。まるで昔デパートで小笠原さんのことを老人扱いした時に向けられた表情のようで、春子は素の表情になってしまった。

    はっと、冷静を取り戻した東海林はしぼんだ風船のように
    「悪い…」
    小声で春子に謝った。
    春子は何も返事せずに黙ったままだ。
    そんな春子を東海林は見つめていた。
    髪が濡れて頬にまとわりついている、胸の谷間が水面から微かにのぞいている。
    まつ毛も滴でキラキラと輝いていて、化粧なんかしていなくても十分綺麗だと思った。

    東海林は波が月の引力に引っ張られるように、気がつくと春子の肩に触れてキスしていた。

    そして、春子は突然飛んできたハエを祓うことをせず、じっと目を閉じて受け入れている。

    長く潜っていたせいか春子の唇は冷たかった。それを温めるかのように東海林の唇は春子のそばをなかなか離れなかった。

    「いつまでしてるんですか」
    そう言って口付けを止めたのは春子からだった。
    東海林は照れながら目を逸らし
    「これは…人工呼吸だよ」
    苦し紛れの言い訳を投げつけた。
    「下手な言い訳はやめてください…でも、私を助けてくれたことでチャラにします」
    春子は先に岩場へ上がり、ウニの入った網を手にする。
    「早くみんなのところへ戻りますよ」
    俯瞰で東海林を見下ろす春子を、煽りで見上げる東海林。
    股の間がなんだかいやらしくて色っぽい。
    「お前が行ったら俺もいくよ」
    「何でですか?」
    「何でもいいだろ!!ちょっと海につかりたいんだよ…」
    「何か私に見られるとまずいものでもあるんですか?」
    「うるせーな!!とっくりは早く行けよ!!」
    顔を赤くしながら叫ぶ様を見て、春子は何となく海から上がれない理由を察して
    それ以上は追求せずに後ろを向いた。

    「落ち着いたら上がってきてください、1人にしたら溺れそうで困りますから」
    「お前と一緒にするなよ、ばか!」

    2人はしばらく背中合わせでその場に佇んでいる。さっきのキスの余韻を引きずりながら。

    太陽はさっきよりも真上に登り、2人の肌を熱くさせて体も心もさらに赤くなっていた。
    しゅ Link Message Mute
    2021/01/06 9:45:12

    Summer Clap

    夏の海ではしゃぎすぎた。 #ハケンの品格 #二次創作 #東春

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