11月24日【11月24日】
白髪の少女が駆けていく。
つられて追いかける。そうしなければならないと思った。後ろをついて走っているうちに、森の中にいた。
全速力で走っていたのに、少女との距離は遠く離れていく。少女は一本の木の前で立ち止まった。そして、そこにしゃがみこんだかと思うと、根元に吸い込まれていった。彼女と同じように木の前でしゃがみこんで、根元を見る。どうにか通れる程度の大きさの洞があった。
試しに、片足を入れてみる。底に着くことはない。奥の方は広くなっているようだ。光のない暗い森だったが、不思議と洞の中がよく見えた。
こうしていてもキリがない。ひと息に飛び込んだ。
壁には黒い点がまばらに散らばっている。虫かと思い、一瞬どきりとしたが、ただの模様であった。地に足が着く。
行き止まりである。
まだ下にも何かがあるような、呼ばれているような気がした。手で足下の土を掘り起こす。思ったよりも柔らかく、少し湿っている。爪に土が入り込んだ。顔をしかめる。
そのうち、何か紫色をした、襟のようなものが見えた。更に掘り進めると、白い服を着た、白髪で褐色の男性が出てきた。顔がぼやけて、ハッキリと見えない。
彼の目が開く。
「よくぞ封印を解いてくれた」
魔王と名乗る男は、低い声で笑いながらそう言った。そうして、私を抱きかかえて、地上へと連れ出すのだった。