12月5日【12月5日】
どこかの海に来ていた。堤防から海を眺めている。水は濁りきって、茶色のような、緑色のような、気味の悪い色をしている。砂浜から眺めていると、先程まで随分な深さだった水が、いつの間にか遠くの方まで引いていることに気が付いた。
水が引いたことにより、地面が見えている。やけに澄んでいて、光り輝いているようにも見える。鮮やかな砂の色が目に焼き付くようだった。
砂に見入っていると、再び水位が上がってきた。泳ぐには丁度いい深さだが、水面にはごみのようなものが四方八方に浮いている。間違っても泳ぎたくはない。そもそも泳ぐのは苦手である。町の方に戻るために振り返ろうとした瞬間、誰かに背中を押された。なすすべもなく、海へと落下した。
海底すれすれまで沈みこんだ。沈んだときに立った泡のぼこぼこという音が聞こえる。
なぜか、妙に心地がいい。息が苦しくなってくるのに、ここから上がりたくないとさえ思う。
「微生物がいるから、気をつけてね」
上から誰かの声が降ってきた。全身にぞわりと鳥肌が立つ。急いで海から上がった。そこには誰もいなかった。