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    しおり
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    しおり
    紫落一洗

     ある日、突然近侍に任命された。

     それ自体はおかしいことではない。基本的には初期刀の陸奥守か手伝いを強く希望し続ける長谷部がつくことが多いが、日によって他の男士たちも当然近侍になるし、顕現後は一週間程度は主の近くで人間の生活の基本を学ぶということもあり、全くやったことがない、というわけでもない。
     しかし、ここの本丸の主は少し特殊だ。
     男性の姿が不得手であり、特にガタイのいい男士たちは陸奥守によって直接触れ合うことは禁じられていた。
     なので、成人男性の姿をしており、決して小さいとは言えない自分が、なぜ任命されたのか、当然の疑問だった。

     顕現してすぐのこと、古参であった愛染国俊と自分よりは幾分早く顕現してメキメキと練度を上げていた蛍丸に両手を引かれて本丸の中を案内された後、知らない刀に引き合わされた。
    「よっ、お前が明石国行か。俺は鶴丸国永。同じ太刀同士での引き継ぎだ。あとは俺に任せてくれ」
    「はあ」
    「じゃあ、鶴丸さん、あとはよろしくな! 俺たち主さんに報告してくる!」
    「おう、行ってこい行ってこい。その後配膳当番だったろう?」
    「そう! 国行! この後は夕餉だぞ!」
    「またあとでね!」
     そういうとドタドタと足音を響かせて行ってしまった。
    「お前さんがあの二振りの保護者なんだって? あんなにはしゃいでるのを見るのは久しぶりだな。大事にしてやってくれ」
     そういう鶴丸の表情はすでに人の身を得て長いのだろう、明石から見てもただ見つめているだけではない、「何か」の感情が乗っているのだとわかった。まだそれがなんなのかは理解出来ていなかったが。
    「で、なんですの、引き継ぎて。あの子らに聞いてもわからんことなんです?」
    「ふうん、確かに聞いていた通り大体同じ身長だな。なら俺の感覚で話してやろう」
    「はあ……」
    「俺たちの主は、一定以上の身長の男に触れることが出来ない」
    「は? 男士しかおらんのに?」
    「その通り」
     そう話しながらもキョロキョロとしながらどこかに向かって歩いていく鶴丸の後ろを訳がわからないままついて行く。先程来派の二人が走った速度よりよっぽどゆっくりだ。これくらいなら歩きながらでも話が出来る。
    「愛染も蛍丸も短刀サイズだ。短刀の中でもそこそこ大きい奴らだとまた扱いが異なるが、あれくらいだと問題なく、主も子どもが嫌いではないようでそれなりにくっついたり撫でたり手を繋いだりしている」
    「まあ、分からんでもあらへんけど」
    「が、主よりも大きな刀、まあ少し小さい刀も含めて見えているところから近づこうとすると避け始める。さらに無理に近づくと手や足が飛んできて、とにかく距離を保とうとする。まるで怒りくるった猫みたいなもんさ」
    「はあ……」
     顕現した時に姿は見たはずだが、とてもそんな実力行使を行うようには見えなかった。人間というのは見た目と中身が大層違うものだ。
    「それでは、主が気がつかないように触れようとするとどうなると思う?」
    「大声でも出しなはる?」
    「それくらいなら可愛らしいもんだな。
     まあ時折絶叫は本丸内に響きわたるが、それが女の声なのか猫の喧嘩なのか殺人鬼の昂った声なのかわからない時があるな。
     更にひどいと泡吹いて倒れる。いわゆるショックによる失神というらしい」
    「嘘やろ」
    「いやぁ、それが本当なんだって。
     お、いたいた」
     鶴丸も主を探していたらしい。なにかの制服のようなものを来た短刀と思われる男士と一緒に書類を確認しているようで紙に目を通しながら中庭に面した廊下を歩いてこちらに向かってくる。
    「おーい、主」
    「鶴丸さん、それに、明石さんも。ついさっき愛染くんと蛍丸が来ましたよ。来て早々お疲れ様でした」
    「ああ、あとは君への実践だけだ」
     そういう鶴丸は審神者とかなり距離が空いているが間隔を詰めようとはしない。すると恐らく明石にしか聞こえない声で「主の後ろを見ておけ。声や仕草で絶対教えるなよ? 面白いものが見れるから」と言われた。言われてみると、審神者の後方から一人の男士が近づいている。
    「主。そんなとこ突っ立ってると通れねえぜ」
     と、言うやいなや彼女の肩に触れた瞬間、絶叫が響いた。鶴丸はすでに両耳を塞いでいたが、明石は当然わかっていなかったので、耳の奥に残る恐怖の声にいきなりあてられさすがに呆然としてしまった。審神者に触れた男士は即座に彼女にひじ打ちを噛まされ一瞬気を許した隙に、短刀から中庭に襟首を掴んで引きずり降ろされ首筋にその刃を突きつけられていた。
    「ちょ、平野、冗談だろ……。本丸内抜刀は御法度じゃねえか」
    「和泉守さんが何回注意されても同じことを為さるからでしょう」
     先ほどまで審神者と穏やかな表情をしていた平野という短刀はまさに戦場の目で和泉守を見ていた。
    「まあまあ、平野。殺気も悪意もないから君だって近づいてきているのを逃したんだろう。それくらいにしてやれ。
     それより、主を介抱してやれ」
    「は、主! 大丈夫ですか?」
    「え、あ、だ、だいじょうぶです……。ごめんなさい、和泉守さん……おなか、痛くないですか……」
    「痛いわけねーだろ。あんなヘナチョコ、いや、すみません」
     すぐに平野に睨まれて弁明する。
    「兼さーん。あれ? どうしました? あ、もしかしてまたご迷惑おかけしました?」
    「まあ、そんなところだ。堀川、和泉守のお説教と服の汚れをなんとかしてくれ」
    「はいはーい。全く、懲りないねえ、兼さんも」
    「いて、おい、国広、おいっ! 引っ張るなって!」
    「あの、お二人もお待たせしちゃって……」
    「大丈夫か?」
    「ええ……」
     そういう審神者の顔は、一瞬で白くなったまま、明らかに表情が固くなった。鶴丸が一歩前に出ると、少しだけ身を引いた。平野が心配そうに彼女を見ていた。
    「ま、そういうわけで、納得はしてくれたと思うが、主より大きい俺たちは直接触れることが出来ない。
     なので、大体これくらいだ」
     そういって、腕を伸ばした鶴丸の手は、指先までピッタリと伸ばしても、あと少し審神者に触れることが出来ない。
    「この片腕分と少し。それが、俺たちの距離間だ。お前もひじ打ちを喰らいたくなければよく覚えておくことだ」
    「す、すみません……」
    「はあ」
     そして、鶴丸の隣に並んで、同じように腕を伸ばした。
     気持ち、あと本当に少し、彼女まで届かない。
    「きっと愛染と蛍丸と一緒にいることが多いだろうが、あの二振りは触れられるから距離感が近い。
     勘違いをするなよ」
     手を伸ばした先の審神者は、済まなそうな顔をしていた。それが、明石が覚えている限り、一番審神者と接触した記憶だった。

    「主はん」
    「明石さん、来ましたね。ちゃんと時間は守るじゃないですか」
    「長谷部はんにえらい剣幕で睨まれとったんでさっさと捌けてきただけですわ」
    「近侍、顕現当時以来では初めてですよね?」
    「でしょうな」
     執務室にしている角部屋は中庭に面している一角だ。密室で、男性と二人きりにならないためである。
     中庭に面する障子は真冬でも開け放たれ、今も少し距離のある向かいに座る。手入れの時は必ず陸奥守か初鍛刀である五虎退が同席することでなんとか成り立っているが、近侍となると初期刀も初鍛刀も出陣や遠征任務があり仕事が滞ってしまうため、これ以上の譲歩は出来なかったのだろう。
     風通しがよく本日は気候もいいので、まあよかった、と思うことにした。
    「特にお願いすることはないので、なにもしなくていいです」
    「は?」
    「え? だって、働きたくないんでしょう?」
    「そりゃそうですけど。ほんまに、そう言われるとは思わへんでしょ」
    「ええ……。じゃあ、長谷部さんみたいに仕事お願いしたほうがいいですか?」
    「結構です」
    「ほらあ」
     そういってクスクス笑う審神者は、確かに触れられないというだけで、物理的な距離はあるが男士たちとの精神的なつながりは適度に大事にしてくれる。
     明石が毎日のように「働きたくない」と言ってるのを真に受けたのは彼女が初めてだが、言ったことを覚えてるものなのだな、と新鮮に思ったものだ。
     彼女が触れられる条件の一つは初期刀と初鍛刀。この二振りに触れられないとさすがに生死に関わると、死ぬ気で慣れたというのはいつだかのひどく酔っぱらった陸奥守が涙ながらに話していた。
     もう一つの条件は彼女の身長よりも低いこと。比較的女性としては背が高いほうだとは聞いているが、それでも彼女より大きな刀のほうが多いのは言うまでもない。
     短刀たちはこの条件をほぼクリアしているので日常的に問題はない。陸奥守と長谷部以外に近侍を行うのは、そのためずっと短刀たちが主体だった。ただ、薬研や太鼓鐘など大きめの短刀相手では彼女のほうが身長は高くとも接触は控えられていた。
     脇差になると、一部のものが彼女の身長を越えてしまうせいもあるのか、肉体的にどうしても男性的な要素が増すからか、近寄ることは出来るが触れることは出来ない。逆に、当然のように大太刀であっても短刀なみの蛍丸や、小柄な小烏丸とは結構仲が良く、並んでお茶をしているところもよく見受けられた。
     「父」という呼称の男士であっても大丈夫ならなんでも平気なのでは? とは喉まで来たが声にすることは無かったが、いつだか和泉守がぼやいていたので同じように思っている男士はいるのだろう。和泉守はそれでもちょいちょい審神者にちょっかいをかけては短刀たちに怒られ、相棒に説教をされているが、あの諦めない姿勢自体はなんとなく大きな男士たちの声にならない声の代弁者のようでもあった。
     それにしても、実際いくつだかは知らないが、別段ひどく歳をとっているようにも見えない彼女が、こうして本丸という「箱」に閉じ込められ苦手だと公言までしている異性との生活をしなければならないのは、大切にしまわれていた自分たち刀の在り方とどう違いがあるのだろうとも思う。
     普通なら、友人と会ったり、恋をしたり、おしゃれを楽しんでもおかしくないのだろうが、彼女はいつも質素な装いで男士たちの多くと同じように普段はジャージかジーンズ姿に襟元の広いシャツという定番の出で立ちと伸ばした髪は無造作に纏められている。顔の作りは平凡だがまつ毛の毛量だけは自慢だと笑っていた。しかしそこを強調するような化粧をするでもなく、華やかという要素は少ない。それを嘆く刀もいるが、その素朴さを明石は気に入っていた。
    「一応、警護を兼ねているので、傍にいてくれればなにしててもいいですよ。
     すぐに対応できるのならいつもみたいに転がってても」
    「いつでもどこでも転がってるわけやないです。ちゃあんと、自分の部屋で、しかるべき時間にです」
    「そう? 愛染くんか蛍丸が帰ってくる時間にきちんと部屋にいて起こされるところまでがワンセットですもんね。まあ、お咎めはしませんよ」
     自分がいつゴロゴロしてるのかを把握されているのを不本意に知ってしまい、頭を抱えたくなった。本当に、この審神者は、よく見ている。



     近侍に任命されてから、一週間が終わった。
     驚くべきことに、まだ近侍の命が解かれることはなかった。
     近侍になってから、そわそわとしていた愛染と蛍丸は二日目には明石の様子を探りに、という体でおやつ係を名乗り出て休憩を一緒に取っている。その時だけは、審神者も小さな二振りの様子に笑みを浮かべて世間話に付き合ってくれる。大体話しているのは愛染であっても。愛染はかなり初期に来たせいもあるのか、審神者も可愛がってくれているのを愛染自身から蛍丸と自分が顕現する前の話としてよく聞いていた。実際に目の当たりにすると、こちらまで微笑ましくなるような姉と弟のような様子だ。
     本当に、明石は寝っ転がって毎日庭と審神者を観察しているだけだ。
     明石が転がっていても本当に審神者は黙々と自分の仕事をしていた。試しに手を振ってみたりしたが、気付くのは三回に一回程度で、本当に眼中にないのだというのがわかる。時折不安そうな陸奥守と長谷部が明石を呼び出してきて様子を探られるが本当になにもしていないのでその通り伝えると長谷部は天を仰いだ後頭を抱えてしまった。陸奥守はその背をさすってやりながら「もうちっくと様子をみようかの」と苦笑していた。明石を任命したのは、やはり審神者の一存らしい。
     陸奥守にそれを聞いても「わしらにもわからん。主には主の考えがあるがやろう」と言うだけだった。

     二週間がそろそろ終わろうという頃、近侍のリズムも出来てきた。
     本当に、なにも、求められていない、というのは、逆に腹立たしさを感じることもあったが、それならば、「なにもなかった」程度のことが出来ていればいいのだと気付いた。たとえば、夜中に小さな同室の二振りに何度も掛布団をかけなおしてやるように。
     彼女はおそらく、自分が「なにもしない」から近侍にしたのだと薄々感づいてから、それはそれで面白くなかった。「働きたくない」とは言っているが、「働かない」とは言っていない、つもりだった。「主」に言われれば腐っても刀剣男士という身で顕現している以上、その命に背くことはよほどの謀反でなければ無い。
     自分が飲むついで、という風に彼女の茶を淹れたり、淹れ替えたり、よくよく観察してみればあまり整理が得意でない様子の彼女が厠などで席を外した際にばれない程度に書類の置き場を並びかえてみたり、押印が必要なところに付箋を貼ったりしていた。
     どこまでやったら気付くのだろうか、という風にギリギリを攻めるのが楽しくなってきていたのも事実だった。
     今日は愛染と蛍丸がいないので、休憩時間のためおやつを運んでいたら、執務室から声が聞こえてきた。
     おそらく遠征から帰ってきてそのまま報告に来た加州清光だ。
    「……というわけで、資材は今倉庫に仕舞ってる。後で確認お願いね」
    「お疲れさま。報告ありがとう。いったんみんな休んでください。また後で次の編成と遠征先を明石さんに伝えてもらいます」
    「了解。ねえ、主ぃ。明石の近侍長くない? いつも一週間とかだったじゃん。俺も近侍、久しぶりにやりたいよ」
    「そうね。結構、相性良くて……」
    「え? 身体の?」
    「そんなわけないでしょ!」
     加州は陸奥守の次に顕現した打刀だ。身長がそれほど高くないためか、安定と一緒に打刀の中ではかなり審神者と近い距離感にいる男士である。
     彼は彼なりに審神者のことを心配していたのだろう。それは構わない。あんな砕けた話し方をするのだな、とふとそんなことに気付いたくらいである。
     しかし、「相性」とは?
    「こう、適度に放っておいてくれるところが」
     結局それやんか! これ以上聞くのも憚られたので強引に割りいることにした。
    「はいは~い。本日のおやつですよって。加州はんも食べてきはりますか」
    「あ! 明石さんっ!」
     当然明石がいることに気付いていなかっただろう審神者が盛大に挙動不審になるが、完全に無視をして加州を睨んだ。目が合った加州は、明石に向けてだけわかるようにウインクをした。
     余計なお世話や。



    「もうよう耐えられへん」
    「ようがんばったほうやないか。さすが働きたくないというだけあるのう」
     がっはっはっは! と豪快に笑う陸奥守にイラッとしてその湯呑に強引に酒を継ぎ足してやった。それすら口角を上げて飲み干される。
    「放っちょけんじゃろ、あの主は」
    「全くだ」
     こちらは手酌でペースの速い長谷部はつまみもほとんど食べないので、いつもこの刀が悪酔いする理由がわかった気がした。どうせ酔ってるからわからないだろうと思って時々口の中にあたりめや枝豆を放り込んでいるのだが、文句を言われていないので、やっぱり気付いていないのかもしれない。
     主の無防備さが目に余る。
     なんにもさせたくないのだから、なにもしないでおこうと思っていたし、やりたくなかった。
     しかし、こちらが色々手を回していてもなお彼女の手の進みは速くない。
     気付いてしまったのだ。そのことに。
     彼女の仕事ぶりはおそらく丁寧なのだ。出陣や遠征の報告を受けるのだって近侍にやらせておけばいいのに、必ず彼女は自身で行うというし、さすがにそこで寝っ転がってるわけにはいかないので身体を起こすものの、三条などは触れることの出来ない主との謁見の場のように捉えているのか必ず長居をする。彼女もまた触れられないがゆえに大きな刀たちとのコミュニケーションが不足していると思っている節もあり断れない。そういえば以前よく長谷部の「とっとと出ていけ!」という大声が本丸中に響き渡っていたが、それがこれだったとは初めて知った。
     ただでさえ今まで陸奥守と長谷部が手伝って終わらせていた仕事を、明石はなにもやっていない。
     こそこそと手回しはするが彼らのように直接書類を片付けることはしていない。審神者が命令しないからだ。
     日中終わらなかったものはどうやら夜にでもやっている様子だ。寝不足の様子が見え隠れするようになって、さすがに思わず「昼寝でもしたらどうです」と言ってしまったら、ひどく驚いた顔をされた。次の日、彼女の化粧が少し濃くなっていた。やってしまった、と思った。

    「やらへんでもええことにめちゃくちゃ時間かけてやってるのがえらいかなん」
    「ほにほに」
    「言うたらええやないか。手伝うてって」
    「それが出来たらこんなことにはなっていない」
    「は~~~、働きたくない~~~」
    「あいたから楽しみじゃのう。期待しちゅーぞ、明石ぃ!」
    「やかましいわ!」
    「げに、ここまでやってくれるとは思うちょらざった。ありがとう、明石」
    「同感だな」
    「……ほんまに、やかましいわ」

     結局、二振りに、今までやっていた近侍の仕事を聞いてしまったのだ。負けたと思った。
     主の体調に関わることなので、さすがにそろそろ二振りのほうも介入を検討していたようで、結局お互いの意思は一致してしまったのだ。
     主の意思は尊重しつつ、なるべく働かないで、主の仕事を時間内に終わらせる。
     逆により面倒くさいことになってしまった、と長谷部に食べさせるのに夢中で自分もほとんど食べていなかったと、布団にもぐりこんでから気付いた。



     朝一から言うのは警戒されるだろうと思い、奇襲は鉄板通り夜に行うことにした。
     夕食の時間を持ってその日の近侍の勤務時間も終わりとされる。普段、明石はそのまま来派の部屋に戻り、部屋にいたら二振りと一緒に風呂に行ってから夕食を取って、寝るまでは自室で過ごす。つまり、夜間はほぼ暇なのである。夜戦に出向く愛染を送り出すくらいしか夜の用事がない。
     夕飯を終わらせて、再び審神者の元へと出向く。一応、時間外に出向くことは陸奥守に伝えたら五虎退に張らせると言われたので、なにか審神者が危機を感じることがあれば自分の命はここまでだ。思わず部屋を出る前に二振りを抱きしめてしまい、気味悪がられた。別に寝込みを襲いにいくわけではないのだが。
    「主はん」
    「へっ! あ、明石さん!? どうかしましたか?」
    「入ってええですか」
    「え?」
    「ほな、開けますよ」
    「うわー!」
     普段通り、角の襖をスパン! と両方開け放つと、案の定審神者がそれはそれはひどい有様で書類を部屋中に広げているところだった。明らかに整理整頓の出来ない人間の広げ方である。
    「え、ど、どう、え、あか、明石さんっ!?」
    「ほら、仕事、なんからやるんですか。はようよこしとくれやす」
    「え?」
    「そないなえげつない顔して、自分が仕事してへんのが筒抜けです。誰かに刺されても困るさかい、早う終わらせまひょ」
     自分が座る場所をとりあえず作って、いつも枕にしている座布団を本来の用途に使う。先日の飲み会で長谷部からちゃんと近侍の仕事をやるのなら、ということで餞別代わりにもらった万事屋のボールペンを取り出した。陸奥守たちから引き継いだ処理を思い出しながら初めてちゃんと近侍として審神者の手伝いを行っているが、文字を読むのも億劫だ。本当に、こんなもの好きな奴にやらせておけばいいのに、と思っていた。
    「どうして、手伝ってくれるんですか……?」
     恐る恐るという風に聞いてくる主の顔を、ようやく直視した。
     最初は部屋に入った時、すでに彼女は自分と同じく食事も風呂も終えており「すっぴんだから見ないで!」と騒いでいたが、あまり違いがわからなかったので気にしてなかったが、こうして直視すると、出会った頃の幼いイメージなんてとっくに消え失せており、一人の女性としての物腰の柔らかさが具現化していた。昼間見る、シュッとした姿というのは、彼女が意識して作り出している像なのだろう。
     声をかけられたことでまともに見返した主の表情は、最初の頃に記憶のある「朴訥」とした印象とは違っていた。
     自分が顕現して何年経っただろうか。人間は年を取る。それをまともに受け止めてしまったのだと気付いた。

    「言うたやないですか。主はんに無理させたら、自分が刺されるさかい」
    「誰が刺すのよ……」
     そういって苦笑する審神者の背後に五虎退の気配がずっと張り付いているのだが、黙っておくことにした。

     日付が終わる前には終わらせるように、と陸奥守には釘を刺されていたが、とりあえずの目処は立った。
     あとは明日以降の日中ちゃんとやればとりあえず今後ここまで溜め込むこともないだろう。
     とにかく、審神者に判断させると長いので、期日を見極め、押印や署名が必要なところに付箋を貼り、終わったものを順次ファイルをしただけでもそれなりにまともな部屋に戻っていた。彼女がやらなくていいものは今度こっそり陸奥守たちに相談しようと思う。
    「嘘みたい……」
    「はー、しんど」
     まともに身体を起こして机に向かったのなんて顕現してから初めてではないだろうか。
    「はい、お疲れさん。じゃ、自分はこれで」
    「あ、明石さん!」
    「はい?」
     いよいよ、近侍も解任かなぁと、ぼんやり思う。
     「なにもしなくていい」という任は破ってしまった。彼女の望みは果たされなかったのだろう。それならそれで、元通り、時々は蛍丸と出陣して、夕方には愛染を見送り蛍丸と一緒に愛染の帰りを待つ生活に戻るだけだ。
     こうやって、心揺さぶられる経験は、面倒だ。四苦八苦した一か月だったなぁ、なんてらしくもなくしみじみした。

    「あの、手伝ってくれて……ありがとう、ございました……」
     そういって、深々と、彼女は、頭を下げた。
    「は? あ、いや、主はん! やめとぉてください! 顔あげて!」
    「いえ、本当に、働きたくない明石さんまで巻き込んで……」
    「いや、そやけど、自分も一応主はんの臣下でっせ……」
    「え……」
    「え?」
    「怒ってるんじゃないの?」
    「ん?」
     二人で、思わず、互いに顔を見つめ合う。
    「自分は、近侍解任されるんやと思ったんですが」
    「え? なんで!?」
    「なんにもせんでええって言うたやないですか。約束を先に破ったのは自分のほうですさかい」
    「いや、別に、あれは、そんな主命なんてものでは……。逆に働きたくない人まで働かせて、明石さんには本当に申し訳ない……」
    「いや、せやから、仕事なんでしょ。さすがに手伝いくらいしますわ。陸奥守はんたちも心配しはってましたよ」
    「ごめんなさい……」
     目の前で小さく丸まっている彼女の掌がいかにも頼りなく、小さく見えた。触れられるのなら、握りしめてしまおうと思うくらいに。
    「ま、寝不足はなんぼなんでも控えてもろたらもうええですわ。仕事してるわけですし、ままならんこともあるでっしゃろ」
     小さくなってしまっている彼女を慰める言葉がない明石には、これ以上なにもかける言葉見つからない。
     人の機微などわからないのだ。

     彼女はずっと俯いていた顔を上げ明石を見つめて、今度はハッキリとその意思を持って言葉を紡ぎ出した。
     事務仕事をしている時は弱々しいその目は、戦の指示は明確に力を放つ。それと同じような光のある視線だった。
    「ずっと、明石さんが色々やってくれてたのわかっていたのに、なんにも言えなくて、甘えっぱなしで、ごめんなさい」
    「は?」
    「むつやごこや長谷部さんに甘えっぱなしだから、自分でなんとかしなくちゃと思って、明石さんに近侍をお願いしたの。
     仕事したくないっていうのは本当だと思ったし、私は私で自分のペースで進められると思って……。
     仕事が遅いから、いっつも結局むつや長谷部さんに手伝ってもらってて、もう何年もやってるのに、本当に、いつまでたっても学習しないの、嫌になっちゃうね」
     照れたように、少し伏目にした瞳に影がかかったのを見て、「あ、本当に自まつげだったのか」と気付いた。

    「ね、明石さん。
     嫌でなければ、まだ私の近侍をやってくれますか?
     私にここまでやらせてくれたの、本当にあなたが初めてなの。
     みんな結構すぐに手出しちゃって。そんなに、頼りないのかな」

     どうしようもないね、と言って、彼女が笑った。
     今までの「審神者」の表情ではなく、おそらくきっと、彼女本来の、自然な零れるような笑い声だった。

     彼女は、朴訥とした、突出したところのない、絵に描いたような「平凡」な顔の娘だった。
     歴史を守るという大義の元、その歴史に消されてしまいそうな、印象に残らなそうな面立ち。やわらかな物腰だけはこの本丸内での唯一の「異性」を感じさせるが、それもまた演練などで他の人の子を見るとその異性の中でもやはり「平凡」だと思っていた。

     今、思っていた、という過去になってしまった。

     どうして、こんなに懸命になって、彼女を手伝ってしまったのか。働きたくないのが信条だったはずなのに。自分の中での整理はついていなかった。
     毎日、毎日、なにもしなくていいと言われて、その通りにして、それはそれで「期待されない」のもまた自分の価値が低く見積もられて、無いと思っていた自分のプライドが面白くなかったのだと思っていたのだが、もしかして、そうではないのかもしれない。
     触れることはないが、ずっと近くにいた一か月。
     彼女が自分たち刀の見えないところで様々な采配を下し、苦手な整理をしながら事務仕事に取り掛かり、眉根を寄せながらも毎日文句も言わずに本丸を回している。それを、間近で一か月間ずっと見ていたのだ。彼女の苦労は、努力は、しっかりと刻まれてしまった。
     目の前にある顔は、記憶にあるような「平凡」ではなかった。
     さっき見た時に感じた「時の流れ」による気付きではない。
     違う。これは、明らかに、違う。
     見つめたことでか、自然な頬の赤味が少しだけ増して、眠たげな瞼の重さすら苦労の跡だと知っていると可愛らしく見え、少し伏せられたまつげがより長くくっきり見えた。
     こんなにハッキリと、彼女を見つめたのは初めてで、男士たち同士でも美しいと思う顔も確かに存在しているが、そんなものではない。物質の整っている、という美しさとは別格だ。

     この本丸にいる誰よりも、天下五剣にも劣らない美しさだと、直観した。
     反応がない明石の態度にキョトンとしたその表情を見て、自分が取返しのつかない感情を手に入れてしまったのだと、ようやく気付いた。

    「主はんが望むんなら、やらへんこともないですよ、近侍」
    「じゃあ、まだまだ、ぜひよろしくお願いします!」

     そして、これは、折れるまで、隠し通さねばとも。



     近侍になってから、二ヵ月が経った。

     あれからも何度も試行錯誤した結果、現在は週の初めに長谷部が、終わりに陸奥守が、真ん中の曜日を明石が近侍を務めるようになっていた。
     全体の把握や予定を立てるのは長谷部が一番うまい。審神者の作業スピードも把握している。そして実務は審神者がメインで行い、明石はあくまで補佐という立ち位置を維持できるようにした。最後の日は陸奥守が審神者のメンタルケアと残した仕事がないかをチェックする。
     この提案をしたときは、長谷部も陸奥守も苦笑いをしていた。
    「おいしいとこどりなのは、お前だけじゃないか」
     だが、そういった長谷部がどことなく嬉しそうだったのは、明石の狙い通りだ。結局、みんななんだかんだとこの審神者の世話をしたいし、負担でもなんでもない。なんでも抱えてしまう審神者のことだ、抱え込まれるほうが心配なので、こうして多くの人数で補佐する、という明石の方針は難なく受け入れられたのだった。
     それ以外にも、苦心して今まで審神者が抱えていた仕事を切り離した。
     戦はともかく、遠征なんて大したことは書かないのだ。報告書は隊長に書かせることにした。共通の書式を準備して、内容が統一されるように下準備をした。いくらかの刀からは反発もあったが、審神者がいかに膨大な業務をやっているか、陸奥守と長谷部に語らせ、審神者の業務の負担軽減の一環であることを伝えると、ほぼ全ての刀剣たちが納得の上、仕事をかなりの量ごっそりと減らすことに成功したのだ。
     翌日の遠征や部隊編成、掃除当番や一か月間のスケジュールや予算組みなども刀剣たちで持ち回り制にして長谷部や博多のチェックを入れたものを審神者に提出して最終決裁に回す。元々色々と細かいところに目が行きがちな脇差たちが、チェック表などの作成はやってくれ、円滑に進めることが出来たのも大きい。
     全て一から全部審神者がやっていたことを、男士たちが一枚噛むことで当たり前の話だが、審神者に時間と心の余裕が出来た。多くの刀たちと関わりを持てるようになったことで、本丸全体的に穏やかな雰囲気が広がっている。どうしても、審神者が切羽詰まっていると、どことなく落ち着かなかったものなのだ。明石にとっても、愛染や蛍丸がニコニコと寝る前になにを話した、今日はなにをしたと報告してくれる中身に審神者の話が増えているのは彼らの保護者としても微笑ましいし、嬉しかった。同じような状況なのか、なんだかよくわからないが一期一振からお礼の菓子折りが届いたりもした。
     明石自身の仕事は特段増えていない。
     あくまでも、自分自身が楽をするために、いかに効率的に作業量を減らすか、そのことばかりに思考を極端に寄せているだけなのだが、陸奥守と長谷部には大層喜ばれたし、審神者自身も心身ともに穏やかな表情が見えるようになってきた。
     みんなに報告書の書き方などを教えたのはほぼほぼ長谷部だし、長義や松井が多くの刀たちを補佐してくれていると聞いている。予定表や部隊編成などのコツは陸奥守が教育したし、予算は元々博多が名乗り出ていたので継続している。明石はこの「やり方」を考えただけなのだ。
     それしかしていないと思う。
     自分は普段通り、近侍の担当の日には審神者の近くに侍っているだけ。堂々と書類の片付けやファイリングや書類のチェックなどが出来るようになったのは気を使わなくなって良かったとは思うが、大したことはしていない。本当にすることがないと寝っ転がっているのも変わらない。その方が審神者が集中できると言ったのでお墨付きだと思うと、昼寝も気分よく出来る。
     週の予定を立ててるのは長谷部で、結局最後に尻拭いをするのは陸奥守で、明石は真ん中の間、審神者の体調を気遣っているだけだ。
     それでも、この話を審神者に持ち掛けた時は珍しく緊張していたし、審神者を説得させるのは一番の難題だと思っていた。どうせ自分たち男士は審神者が「主命」と言えば従うものだから。

    「と、いうわけで、主はんの仕事の負担を減らそうと思います。どうです?」
     どういう反応が返ってくるかわからなくて、資料を見る振りをしてずっと手元ばかりを見ていた。両脇の陸奥守と長谷部が固唾を呑んだ。
    「あ、はい……、話はよく理解しました……」
     想像以上に、沈んだ声に思わず、腰を浮かしてしまったのは三振り同時だった。
    「あんな、別に、主はんがどうこうとかっていう話やのうて……」
    「ほにほに! 主一人で抱える必要はないがよ」
    「そうです、主。どうか、我々にも、主の心の安寧のためにも本格的な業務の分担を……」
     一斉に話し始めた三振りの声を聞いてか、それぞれの声音の違いが面白かったのか、彼女は、口元だけ歪に笑ったと思うと、その普段強気な光りを宿しているはずの瞳から、ボロボロと涙をこぼした。絶句したのは明石と長谷部である。
    「あ、主はん……!?」
    「主……!」
    「ち、ちが……、ごめん……。
     ごめんね……、私、本当に、要領悪くて……結局、みんなに面倒ばかり、かけてて……。はあー、ほんとに、情けないなぁって思っただけ……」
    「違うがよ」
     陸奥守が泣き顔を隠す彼女の手を取った。零れた涙が彼女の膝に落ちて雫跡が頬に残る。陸奥守に触れられても、臆すことのない審神者は、彼が涙を拭うのを見て、驚いたことでさすがに涙が止まったようだった。
     明石は、隣の長谷部がグッと拳を握ったのを見た。おそらく、自分の奥歯が噛み合ったのと同じタイミングで。
    「出来るとか、出来ないとかやのうて、わしらが主を手伝いたいんや。気に病むことなど、なんにもない。わしらが、主の力になりたいんじゃ」
    「こんなに仕事が出来なくても?」
    「戦準備はいつも万端ではないですか。不得手なのは、書類仕事だけでしょう。それでも、貴方がそれを投げ出さないことを俺たちは知っています」
    「そりゃあ、これが私の仕事だもの」
    「ええんとちゃいますか? 自分らだって、太刀なんぞ夜戦じゃ足手まといやし。得意不得意あるもんですわ。苦手なんがわかっとるんなら、十分たくさん駒があるんやから使ってもうて」
    「明石さん」

    「この本丸には、『駒』という刀はおりません」

     いやにハッキリと、挑むような視線で、諫められた。
     その眼だ。その瞳がゾクゾクする。苦手なことでも、屈するものかと歯を食いしばって耐えているのが、たまらない。
     だが、こうして、直接、彼女の強い意志を感じる視線を受けることが、もしかして嫌いではないのだろう、と最近明石はようやく気付き始めていた。
    「すんまへんな。言葉の綾でっせ」
    「わかっています。こちらこそ、ごめんなさい」
     意図的に煽ったのだろうということがばれている陸奥守には胡乱げな視線を投げられたが、こちらは完全に無視した。
    「それで、この方針は、」
    「はい。みなさんが考えてくれたのなら、そちらでお願いします。
     私にどこまで出来るかわかりませんが……」
    「今までちゃんとやってこれたやないですか。
     陸奥守はんと、長谷部はんがおって。その人数が増えるだけです。
     今まで出来たんですわ、これからも出来ますよ」
     思わず、そう言い返してしまうと、虚を突かれたらしい彼女は、一瞬キョトンとした後に、あの零れるような笑顔を浮かべた。
    「明石さんにそういわれると、気が楽になりますね」
    「主、そりゃあ、どういう意味なんやか?」
     あっはっはっは! と陸奥守の笑い声が響いて、この体制が始まったのだった。



    「こないなもんでええんですか?」
    「あ、は、はい……」
     普段は顕現時から来派揃いのジャケットを戦装束として着ているが、本日は現世使用の「スーツ」を仕立てられたものを着用している。
     黒の揃えに、長船の連中が着ているようなベストまで。普段はブーツなので、靴までおろしたてだ。靴下とインナーしかいつもと同じじゃない。
     この本丸では審神者と一緒に政府主催の会議に赴く際、男士たちも審神者と同じく現世仕様のスーツを着用していた。審神者以外の人間と会う可能性があるため、現世の服を着用したほうがいいだろう、との考えかららしい。実際に、これらの服は政府側が用意しているものでもある。なにかあれば私服として使用することも可能なため、普段の戦装束ではなく、こちらを審神者が選択したようだ。ただ、以前陸奥守が同行した際には軽い暴動があったらしく戦闘未満だが、抜刀をした際激しい動きに付いていけずに一日でスーツを駄目にしたそうだ。戦装束と違い、手入れでは直らないので慎重に行動しろ、とその陸奥守自身から固く言いつけられていた。
     慣れない堅苦しい恰好にはため息しか出ない。一刻も早く脱ぎ捨ててジャージに着替えたい。自分が近侍の担当の日でなければ陸奥守か長谷部だったのに、と思わなくもないが、一方で審神者と二人で外出を堂々と出来る、というそれ自体にはらしくもなく浮かれているのを自覚していた。
     見様見真似で付けたネクタイが上手く出来ている気がしなくて、ずっと鏡とにらめっこをしているところに様子を見に来た審神者が特になにをするでもなく珍しくも不躾な視線を向けているのに気付いていた。
     見られるのには慣れているつもりだが、こうして普段と違う恰好で、じっと見られているというのも、なんとなく居心地が悪い。つまり、気恥ずかしいのだ。いくら、表面上の顔面の筋肉が強い意志でほとんど動いていなくても。
    「穴開くんで、そないに見ーひんでくれます?」
    「アッハイ!」
    「明石、準備できたか」
    「長谷部はん、これ、合ってるんでっか?」
    「主。こちらにいらしたんですね。明石の準備ならあとは自分にお任せを。
     主のお荷物は陸奥守が用意をしております。お部屋のほうにどうぞ」
    「承知しました。では、長谷部さん、明石さんをよろしくお願いしますね」
    「ほな、またあとで」
    「はい」
     そっと、審神者が最後までチラチラと視線を向けていたが、襖が閉じられると、長谷部の手が無遠慮にネクタイを引っ張った。
    「ぐえ」
    「お前、意外と下手くそだな」
    「やったことないんやから、そんなもんやろ! 引っ張る前になんか言うたってや!」
    「黙っとけ。首締まるぞ」
    「こっわ!」
     仕方なしに互いに黙り込んで、長谷部の手元を見ようとするが、自分の首元なんて見えないので、逆にすこし俯いている長谷部の額を見つめることにした。
    「主はん、なんや変な様子やなかったか?」
    「ああ、あれか」
    「ん?」
     きゅっと、首元にタイが締められた。今度は、締まりすぎておらず、綺麗に出来たのだろう。
    「主は、この『スーツ』という衣類が好きだそうでな」
    「は?」
    「会議に同行したことがあるのは、俺と陸奥守、前田に平野だが、あと五虎退もこの服を持っている。毎回ものすごい量写真を撮られるぞ」
    「はあ?」
    「長船の連中が着てるのにな、なんだかよくわからないが、そういうものなんだそうだ」
    「なんなんそれ……」
     準備が終わったんだから早く主のところに行け、と追い出され審神者の部屋へと向かう。
     どうやら愛染と蛍丸がいるようで、耳慣れた声が聞こえて思わず「なにしとんの?」と来派の部屋にいるときと同じ声を出してしまった。
    「あ、来た来た。国行~、待ってたよ」
    「おー、えらい、えらい。ちゃんと服着れるんじゃねーか! 主さんの伴をするのにだらしない恰好だったらどうしようって話してたんだよ」
    「おまえら~、ちゃんとTPO弁えとるわ! 普段のはああいう政府顕現なんやから正装です!」
    「え、あれって正装だったの?」
    「主、そりゃ冗談やき」
     蛍丸と愛染が明石の周りをグルグルとチェックをしている間、審神者がどことなく落ち着かない様子で政府から支給されている端末を持っている。
    「写真、撮るんですか?」
    「え!? なんでわかったの!?」
    「長谷部はんが言うてましたで」
    「え、嫌ですか? やっぱり、嫌です? 写真撮られるの」
    「いいじゃん、減るもんでもねえんだし」
    「俺と国俊も一緒に映っていい~?」
    「もちろんいいよ~」
     いつものように二振りに合わせて屈もうとすると、真顔で審神者に「あ、明石さんは全身取りたいので、そのままで」とダメ出しをされてしまった。
    「これ、撮ってどないするんですか」
     被写体となって暇している明石は、来の子どもたちと三振りでいろんな角度から撮っている審神者を見守っている完全に外野として興味のなさそうな陸奥守に声をかけた。
    「さあのう。知らん」
    「あっそ……」
    「じゃが、ああして喜んでるのに水差すんは、気が引けてのう」
     そういう彼の視線は初期刀というより、もっと人間の温かみを感じる。
    「でも、そろそろ時間平気なん?」
    「うおっ! 主っ! 時間! 忘れもんはないか?」
    「え、いけない……! 明石さんごめんなさい! 行かなくちゃ! もうっ! 散々一緒に確認したでしょ! 過保護なんだから!」
    「はいはい。では、行きますかっと」
    「じゃあ、国行、主さんを頼んだぞ」
    「なにかあったら怒るからね。しっかり警護よろしくね」
    「わーっとるわ。まったく、これじゃどっちが保護者かようわからんな」
    「なにを今更」
    「やかましいわ」
     笑い飛ばした陸奥守の頭を引っ叩いて、駆け出していった審神者の跡を速足で追いかけた。



    「なんとか、間に合いましたね」
     審神者はいまだに軽くぜえぜえ言っているが、当然刀剣男士である明石は息切れ一つ起こしていない。はあ、なんて適当な返事をしながら、割り当てられた座席を探す。
     その間も、審神者が男性に触れないよう、自分の位置を替えながら対応する。明石自身も審神者に触れられないため、自分が位置を変わるしかないのだ。さすがにいつもの距離間よりは近いが、さすがに近侍に慣れてきたからか、そこまでビクリと肩が震えることもなかったようで安心する。
     政府の担当者は審神者の特性を知っているので、なにかあれば直接彼女に連絡するように、と言われていた。男性と触れて倒れてしまった時も同様に「女性を呼んでほしい」と伝えるように、とのことだった。どうにか、この午後いっぱいの会議が無事終わるように、と心から思っている。
     それにしても、だ。
     急いでいたので、玄関を出る時から気になっていたことを、席についてようやく思わず口にしてしまった。
    「えらい、ごっつい靴履くんやな……」
    「え? あ、このヒールのことですか?」
    「その、加州はんとか、巴はんたちが履いてるそれ」
    「それが、ヒールの靴ですね」
     現在は席についてしまったので、審神者の視線は下がっているが、先ほどまで、普段に比べていやに顔が近いと思ったのだ。
     理由は靴だった。元々、女性としては比較的身長があり、普段から脇差とならほぼ同じくらいだろう。おそらくこのヒールを履いていると加州よりも高いと思われた。
    「……やっぱり、身長、気になります?」
    「明石さんは、すぐにそうやって気付いちゃうんですね」
     仕事の話をしている時はハッキリとしている目は、仕事以外の時は驚くほど光りが弱い。たとえるなら、布を目深に被った山姥切国広の瞳に近い。なにか憂うものがあるのだろう、とすぐにわかるような。そういう時、なにもかける言葉を持たない自分が少し嫌になる。自分の存在も、在り方も、この顕現して主張する事柄も何一つとして厭うことがない明石にとって、初めての「自分」に対する「嫌悪」の形だった。
    「自分が近侍なんもおんなし理由なんやろ? 寝っ転がっててええっていうのは、視線、低うなるからですよね」
     明石に向けてぐるっと顔を向けた審神者の顔色が、みるみるうちに赤くなっていく。今日は表情豊かだなぁとしみじみと噛み締めた。
     近侍になってから様々な表情を見た気がする。
     それまではあまり顔を突き合わせることもなく、遠くから見るだけで、そこに不満もなかったし、愛染や蛍丸をかわいがってくれていたので、ただ面倒だと思っていただけだ。人間の都合に合わせて「戦」に駆りだされることの相手の身勝手さに、ただ諦めていただけだ。
     それでも、愛染と蛍丸の笑顔が増えて行く度に、ここに顕現したこと自体については肯定的にとらえるようになった。審神者がどんな人間であっても、今ここにいる二人に害は及んでいないし、短刀たちが日々笑いながら過ごして戦争中だというのに束の間の楽園のようにはしゃいでいる姿は、「兄」と敬称される刀たちとも共通して「幸福」なことだという見解が一致していたから。そこに「審神者」の姿はほとんどなく、今ならわかるが、その姿の見えない「審神者」という存在に興味も関心も薄かったのは自覚している。
     自分は変わってしまったとハッキリとわかる。
     本当に、厄介なものを持って顕現させられてしまったと後悔にも近い痛みが時折明石を襲うのだ。
     きっと彼女が自分を選んだのは、それだけの理由で、今現在も近侍であるのは「なにもしない」を貫いているからだ。いや、なにもしてないわけではないのだが。
     それでも、彼女の傍にいられるというのなら、結局面倒だと言いながらこんな慣れない恰好をして、伴をしてしまう。
     主命だから、というだけでなく、気持ちの上擦った部分を必死に押し隠しながら、この感情を見破られないように、彼女を無意味に牽制しながら。
    「その、それは、そうなんだけど……」
     こちらから目を逸らした彼女の頬はいまだに赤い。熱いのか、自分でも気付いているのか、ほっぺたをペチペチと叩きながらもごもごと言っている。
    「身長については、まあ、その通りです。貴方なら長谷部さんと同じくらいだし、座った時の感じもわかると思ったので……。
     猫背だし、よく横になってるし、目線があまり、合わないかなっていうのは、そうです……」
    「いや、ほんまのことなんで別にええですけど。それがあかんって説教されたらしんどいけども。今かて椅子しんどい」
    「椅子にはちゃんと座ってください」
    「はあ……別に、苦手なんはわかってはるし、短刀連中が平気っちゅーんなら、まあ、大きさの話なんかなと思っただけですわ」
    「不思議でしょ。自分より大きな女性は、まあ大丈夫なんですけど。
     でも、わざわざ女ってだけで、色々な弊害があることもあるの。
     なのに、こうやってかさましのヒールを履いているだけで避けてくれるものがあるのよ。
     人間って、本当に、どうしようもないですね」

    「そら、それが人間ですからな」

     その言葉に、ハッとしたように、審神者が視線を向けて、すぐに逸らした。
    「やっぱり、明石さんは、人間が嫌い?」
    「どして?」
    「なんとなく……」
     ごめんなさい、忘れて、と言った審神者の声が耳に入ったが、これは絶対に忘れてはいけない言葉だ、と直感した。
    「大事なもんを失くされたことについては、嫌いです」
    「え」
    「でも、こうして顕現されて今ここにいる以上、嫌やいうてもしゃあない思ってますわ。
     蛍丸も、国俊もおるしな」
    「そう、ですか」
    「そうなんですわ。あと、もひとつ、聞いてええですか」
    「は、はい」
    「なんで自分やったんですか? 近侍、ていうか、今日」
    「え?」
    「理由、放っといてくれそうて、前にも言うてましたけど、ちゃんと言えば、いくらでも手貸さんでくれたと思いますよ、陸奥守はんも、長谷部はんも。今日もしっかりサポートいるんやったら、やっぱり他のしっかりした短刀とかのが良かったんとちゃんかなぁと」
    「あ、えと……」
     少し、言葉を詰まらせたが、ちゃんとこちらを見て審神者が続きを話そうとした。
    「笑わないで聞いてくれますか?」
    「はあ」

    「だって、あの二人じゃ、甘えちゃうから」

    「は? あっちの二人のがしっかりしとるでしょ」
    「明石さんもしっかりしてるよ」
     力なく笑う姿は、やっぱり、書き損じの書類を量産した時や、失くしてはいけない書類を失くした時と同じ顔だった。自分を、情けないと思っている時の顔。
    「あなたなら、出来ると思ったの。
     お願いだから、突き放してね。私が、甘えないように。思ったこと、そのまま言ってくれていいので。
     情けない主で申し訳ないけど、なんでもないって顔して、横にいてくれれば、それだけでいいから」
     その時、会議の始まりを告げるブザーが響いた。それになんと応えればよかったのか。ずっと考えていたら、会議はあっという間に終わってしまった。



    「あー、無事に終わってよかったー」
    「ほんまですわ」
     会議の最中のことは正直本当になにも覚えていないが、「終わりましたよ」と審神者に声をかけられ、帰り道の最中だ。
     男性との接触を行わない、というのは、案外出来るものなんだな、と安堵している。
    「ねえ、私の報告、どうでした?」
     恐る恐るという風に審神者が明石の顔を見ていた。二部での分科会での意見発表のことなのだろう。
     内容はほとんど覚えていないが、なんとなくぼんやりとわかる。資料作成は主に陸奥守がやっていたのを横目で見ていたからだ。
    「良かったんとちゃいますか? 特におかしなところもありまへんでしたし。
     ただ、せっかくシュッとした恰好してはるんですから、もっと胸張って話したらよろしいですわ。
     あないなん反論ありきが当たり前なんでしょ? なんぞ言われたら、ガツンと言うたったらええんですわ。うちの本丸ではそうなんです、て。
     似非でええんや。堂々としときなはれ」
     明石の言った内容が予想外だったのか、審神者がコロコロと笑いだす。
    「ちょ、感想聞いたんは、そっちでしょ」
    「だって、中身の話、全然してない……! もしかして、明石さん、聞いてなかったですね?」
    「聞いてます」
     一瞬ビクリとしそうになったが、なんとか押しとどまった。これこそ、得意なのだ。適当なことでも、それっぽく振る舞うのは。
    「やっぱり、明石さん連れてきてよかった」
    「はい?」
    「……前に、ある人にも、同じように言われました。胸を張れって。あなたにまで言われるとは思ってなかったけれど。
     実はね、今回の会議、本当はむつの近侍の日も予定日にあったんです」
    「え?」
    「本当に、むつも長谷部さんも、清光くんも、みんな私に甘いから。
     よく出来たって必ず褒めてくれるの。確かに、資料を作るのは壊滅的だけど、いざ話し出したらそこそこ適当に話せちゃうんだよね。変なところで肝が据わってるって清光くんには笑われたけど」
    「はあ、そりゃあ、ええことやないですか」
    「でも、私は、本当に、こんなに仕事が出来ないのに」
    「それよう言わはりますけど、ほんまにダメなんやったら、こんなところに出てくる算段も組めまへんで」
    「あはは、そうかもね」
     こちらの慰めが本気でないからか、審神者も、いやに軽い笑い声を上げた。

    「明石さんなら、駄目なところは駄目だって、言ってくれると思ったから。
     参加希望日に、むつが近侍の日もあったけど、それならいつも通りだって思った。大丈夫よ、むつにはちゃんと話してある。
     それと、そうだ、いつか、言おうと思っていたんだけど、今はほとんど戦に出ることは減ったけど、レベリングしている時の貴方は、ケガもしなくて優秀だったし、しても自分は後回しで他の男士を優先していたでしょう?
     同じようにケガを隠した愛染くんはいつもすぐに捕まえて手入れ部屋に連れてきてくれるのに」
    「は……、なんの……? そんなん、いつの話……」
    「最初の頃の話。あれは私が悪かったですね。同じ時期に顕現したのが短刀と脇差とばかりで、一緒にレベリングさせてたから。そうやって太刀の貴方がみんなをよく見てくれていたんだなって思って。来たばかりなのに、そんなことにまで気が回せる刀が来たんだって、衝撃だったの」
    「そんなん、みんな同じやろ……。チビがおったら、先にちっこいの優先しはりますわ……」
    「そうかもしれないけど、でも出来ない人は一生出来ないことなんですよ。
     成長しなくてはいけないのは、私たち人間のほうなのよ。いつまでも未熟で、諍いの絶えない愚かな人間のほう。

     むつも長谷部さんも、もちろん信頼してるけど、ただ甘えるだけの、やってもらうだけの、お飾りみたいな主には、私はなりたくない。
     不器用で、物分かりも悪くて、同じ失敗を何度もするような私だけど、あなたたちには、誇ってもらえるような主でいたい。
     誰も失わないようにするために、私も頑張る、頑張ろうって思ったの、明石さんを見て。

     知ってたのよ。貴方が、優しいことくらい。愛染くんと蛍丸が、たくさん話してくれて、うちに来てからも、私が見て、知ってたの」

    「それが、明石さんを選んだ理由の続き、でもいいかな」

     「刀」として、選ばれてこなかった自分が、全然別の、こういった形で「選ばれた」ということが、こんなにも、胸に響くとは想像したこともなかった。
     ただ、そこにあるから選ばれたのだと思っていた。
     「理由」がある、ということが、どれだけ、力になるというのだろうか。知らなかった。こんな気持ちは。
    「ふふ」
     さすがに、もう取り繕うことが出来なかった。
    「明石さん、顔、真っ赤」
    「放っときなはれ」
    「私にはやかましいって言わないんですね」
     ついには散り始めた桜を見て、彼女が桜と同じように頬を染めて笑っていた。
     ああ、この笑顔を、最後の時まで、きっと覚えているだろう、と、いや、覚えていたい、と抑えられなくなった感情を持て余しながらも決意していた。




     近侍であっても、出陣するし、遠征にも行くものだ。

     近侍ではない週の初めと終わりは、出陣か遠征に行くのが常だった。もちろん非番の日もあるが、思っていた以上にちゃんと定期的に戦装束に身を包むことがある。
     特に遠征である。連隊戦でもなければすでに錬度上限となっている太刀たちは最近は出陣することがめっきり減ったが、錬度調整のためにカンスト刀は遠征の引率のような扱いで行くことが多かった。特に、刀同士で部隊編成を組むようになってからよりその傾向が顕著となっていた。
     以前よりもおそらく出陣や遠征回数が増えている。正確にいうと、満遍なく全振りが出られるように、皆が調整しているのだろう。
     基本的に刀は戦う意志が強い。当然だ。わかる。いや、明石には、よくわからないが、まあ、そういうものだろうという認識はわかる。
     だが、明石個人は、正直、出陣には興味はなかったし、遠征だって行かなくていいのだったら行きたくなかった。
     普段は近侍としてだらりとしているようで、実際には短刀たちがちゃんと審神者の身辺警護は警護で、張っているのだ。陸奥守の信頼はまだそこまで勝ち取れていないということなのだろう。それは別に気にしていない。今となっては最初の頃はともかく、すでに下心がないとは言えない身であるので、余計に陸奥守の心労には同情してしまう。気が付かれているのならいっそ自分から折れてしまいたい。まあ愛染と蛍丸がいる限り、そんなことは絶対にしないけれど。
     なぜ戦わなくてはならないのか。
     決して口にしたことはないが、敵の正体もよく分かっていないのに、「遡行軍」という姿形をした者たちと機械的に戦わさせれている自分たちも、また、ただ「刀剣男士」という名のもとに自我なく戦っているのとなにが違うのだろう。実践経験がほとんどないが故に、戦いへの執着が弱く、そしてまた姿形を保ったがために国宝となった「来派の祖」として、傷つくわけにはいかないのだ。すでにそれが過去のことだからといって、では、蛍丸を救うための改変を行うという発想もまたない。現在の目の前にいる蛍丸が、「蛍丸」である限り、彼を傷つける行為は明石の中には存在しえない。
     それでも、自分が「姿形を保った」ということが愛染と蛍丸をこの本丸に呼び起こしえた歴史の道筋である以上、自らは、決して無様な戦い方をするわけにいかないと、常々明石国行は考えていたのだ。
     多分、この時まで。



    「最近、主となんかあったのやか?」
    「はあ」
     陸奥守と遠征が被ったのは、初めてだった。
     遠征時間は半日程度で、朝出て夕方戻るだけ。戦闘が必ず発生するわけでもないし、気楽なものだった。今回は陸奥守と明石が引率となっているが、普段は錬度上限者は一振りだけしかいないことが多い。おそらく、これは、陸奥守が誰かに調整を依頼してこうして二振りという状況を作りたかったのだろうと察せられた。
    「相変わらずえろう根回しの手際がええんやな」
    「なにを言いゆう。部隊編成したんはわしやないのに」
     がははは、と笑っているその声も胡散臭い。少し先には、まだ錬度上げ途中の刀たちがいる。なにかあればすぐに追いつける距離を維持したまま、とりあえず答えなければ解放してくれなさそうなので問いに答えることにする。
    「なんも、無いで」
    「ほう」
     なにもない。
     それは正しい。主と、自分の間には。自分だけが燻っているだけだ。

     近侍になった当初は、あまり傍を離れなかったからこそ、気が付かなかったことがある。
     傍にいないからこそ、彼女のことを考えてしまう時間が増えているのだ。
     今までは、遠征帰りに「蛍と国俊のお土産、なににしよ~」「今日の夕飯なんやろか、二人の好物やとええな~」という気楽なものでしかなかった。あとはひたすら「本丸帰って寝たい」である。それだけだった。仕事のことなんて考えるリソースはなかった。ほぼ全てを蛍丸と愛染のことだけを考えていればよかったのだ。それは、とても幸福なことで、明日の食う場所、寝る場所に困ってもいなくて、自分が顕現した頃はすでに資材もほぼ安泰だったから、まさに苦労知らずだった。
     近侍になんてならなければ。
     週の頭には、長谷部と陸奥守と審神者と、四者間で仕事の簡単な流れを確認し、週終わりには陸奥守から総評が下される。いわゆる反省会である。
     あくまでも明石自身は審神者の仕事を直接的には行わないが、ちょくちょく彼女の文面の見直しをしたり、締め切りが近いものを優先させたりと長谷部の考えたスケジュールに沿って補佐しており、その頻度は明らかに増していた。最近昼寝だってしていない。
     近侍を離れていても、結局こうして予定と実態を突きつけられ、仕事の話が否応なしに耳に入ってくる。
     それはつまり、ひっきりなしに彼女のことを考えるのと、もはや同義なのだ。
     長谷部と陸奥守に任せているから安心だと思って完全に思考を手放しにしていることはなかった。
     出陣すれば、共に出陣した刀たちの負傷を見て彼女が同じように傷つくことに想いを馳せ、遠征に出れば、美しい花や景色を見て彼女の目に映したいと望んでしまう。まるで歌仙兼定のような思考に、自分も人間らしくなったと誇らしくなんてなれず、どうしてこんなことになってしまったのだと頭を抱えるばかりであった。
     だから、意識的に、距離を取るようにしたのだ。
     大体、もとより身体的接触が御法度なのだ。少しくらい物理的な距離が開くことに肯定的であれ、否定されることはないだろうと思った。
     明石は、一度だって、彼女に触れたことはないのだから。それは、望んでも。
     あの、出陣に赴く男士たちを見送る時の少し不安げながらも自分の刀を信じている真摯な瞳も、書類仕事をしている時の自信なさげな暗い目元も、見なければ、なんてことはないのではないかと浅慮ながらに考えた結果だ。

     陸奥守と、五虎退だけが、小さな刀が彼女に触れることが出来る。
     それを認識すればするほど、胸の奥の炎が燃えるような執着が沸いてくることが許せなかった。
     「審神者」という個人を「物」のように捉える思考も、来の刀二振り以上に思考を取られることも。
     彼女には、彼女の道がある。あくまでも物は自分たちのほうで、この審神者の道の上に顕現させられたにすぎないはずだった。
    「目線が合わんといって、落ち込んじゅー。どいてそがなんをしちゅーんだ?」
    「気のせいとちゃいますか?」
    「明石」
     ぞっとするような気配だった。前方の刀たちが、一斉にこちらを振り向いたくらいに。
     すぐに陸奥守がそちらに笑顔を向ける。一瞬で封じられたその気配は、瞳だけに残って、明石を見つめた。
    「主を不安にするんは、やめてもらえんか。これ以上、負担になることはしたくないんや」
    「初期刀はんはえろう過保護やな~」

    「明石。逃げんでくれ」

     思わず立ち止まってしまった。その懇願のような言葉に。
     先ほどの殺気のような気配ではない。まるで、年下のものを慮るような慈愛のこもった眼差しだった。
     これは知っている。いつも、陸奥守が、審神者を見ている時と、同じ、ただの主に向けるにはいやに重たいと感じるような視線だ。
    「おまんが主をどう思うちゅーのかはわしには本当のところはようわからん。
     だが、ただ、主をこれ以上守りたい思うてくれるのなら、どうか、その気持ちを大事にしてくれ。
     ずっと、そがな刀が現れてくれるのを、待っちょったのやき。
     わしゃ、ただ、主の幸せな姿が見たいだけなんや」
    「陸奥守はん?」
    「ま、主を泣かせるのならわしが斬って捨てるき、覚悟しちょけ」
    「おっそろし!」
     会話はこれで終いだというように、陸奥守が、先行する仲間たちのほうに駆けて行った時だった。

    「陸奥守っ!」
     思わず伸ばした腕が、かろうじて、陸奥守の首根っこを引っ張り、全力であったがゆえにそのまま後ろに倒れてしまった。
    「明石!」
     陸奥守が走ろうとした箇所には、大太刀が振り下ろした刀によって地割れのようなヒビが入ったところだった。
    「まっこと、急じゃのう」
     刀を抜こうとする陸奥守を見て、初めてその違和感に気付いた。
    「あんさん。銃はどないしてん?」
    「わしの拳銃か? 持ってきちょらんぞ」
    「はあ?」
    「最初っから、わしゃ銃を使うたことがないがよ」
     言いながら、飛んできた矢を刃を抜いて払い落とす。仲間たちとの間には大太刀が立ち塞いでいた。
     向こうの隊員たちは錬度が低い。大太刀の攻撃をまともに喰らっては部隊の壊滅は免れないだろう。ここは普段はそんな錬度の敵は出なかったはずだった。一体、なにが、起きているのか。
    「明石」
    「なんや」
    「まだ、おる」
     気配を辿ると、確かにいる。
     これは、遠方から、感じるのは、検非違使の気配。

    「陸奥守」
    「おう」
    「大太刀はこっちで留めとくさかい、あっちに合流せえ。ここは、自分に任せてもらえんやろか」
    「嫌じゃ」
     即答だった。
     その間も、遡行軍は挟み撃ちでこちらを狙っていたらしい。
     錬度の違いは読まれていたらしく、あちら側に多く集まっている。行かせるのなら、このタイミングしかない。
    「あんなあ! まだ後ろにおるんやぞ。
     早う行け! 検非違使は錬度上限に合わさって出てくるんや! ちゃっちゃとあっち片付けてこんかい! 考えとる時間が無駄やろ!」
    「無理や! たった一振でなんぼなんでも抑えることはできん!」
    「阿呆か! 出来ひんことなんぞやらんわ! だがな、あんさんを失うわけにはいかんのや!
     誰が、最後の時に、あん人を守れると思うとる! 初期刀を、ここで折らせるわけには、いかん!
     ここは任せて、他の刀の援護に行け。持ちこたえるとこまではこっちの仕事や。
     腐っても、太刀なんですわ」
     言いながら、大太刀の振り下ろした太刀を受け止めた。
    「早よ行け!」
    「すまんっ!」
     受け止めたその隙に、陸奥守が分断された部隊のほうへと駆けていく。

    「待っちょれ! ざんじ戻る!」

     受け止めていた大太刀を横に流して、改めて本体を握りなおした。
     大太刀の背後では、残りの遡行軍相手に陸奥守が投石兵を展開したところだった。他の刀たちも隊長の陸奥守が戻ったことで統率が取れ始めた様子だった。
     とにかく大太刀さえ倒してしまえば、あとは消耗戦だ。今まで戦闘はなかった。刀装は全て無事だ。
     勝算がないわけではない。
     勝たなくていいのだ。
     折れさえ、しなければ。

     大太刀の攻撃は力任せかと思っていたが、思った以上に硬い。こちらの攻撃は通っているはずなのに、刀装を削りきれない。
     こちらの刀装はまだあるものの、遠隔攻撃が出来ないため、打ち合いが続く。大太刀ゆえに大振りな動きなだけ避けること自体は容易いと思う。
    「残念やったなあ! ちょこまか動くんも、ちっこい大太刀も、よう慣れとるんやわ!」
     隙が出来た、と思ったところに太刀を滑りこませ内側から抉るように引き抜くと、大太刀の咆哮が響いた。
     それがいけなかった。
     獣のようなそれに気を取られ、押し出されていたことに気付いていなかった。
    「あ」
     林の中に入り込むのだと思っていた後ろの足元が、すでに無かった。
    「明石っ!」
     陸奥守の声がかろうじて聞こえたが、同時に遠雷が響いた。
     気配だけだった検非違使が実態を現したのだ。
     その一軍と一緒に、坂道を転がり落ちた。



     本当に、ついていない。
     転がり落ちた先で、なんとか姿勢はすぐに立て直し、大太刀は首根っこに刃を刺して止めをさしたものの、改めて現れた検非違使に囲まれ、向かうは自分ただ一振り。
     残っている刀装は二つともあるが、それぞれあと一撃ずつ喰らえば壊れてしまうだろう。
     数はお決まりの六振り。こちらも本来はあと五振りいる。陸奥守たちが間に合ってくれることを祈るしかない。
     どれほど耐えられるだろうか。あまり無茶な進軍をよしとしない審神者のため、こういった状況に陥ったことは明石はない。
     実戦経験が少ないので、作戦がどうこうとはあまり向いていない自覚もある。それでも、錬度上限までいった矜持はある。
     今まで避けていた「刀」である、ということを強烈に自覚したのは、もしかして顕現してから初めてかもしれないと思った。
    「ほんまに、武者震いなんてあるんやなぁ」
     自らの本体を、構え直して、間合いを適切になるように足をずりと滑らせると、それを合図に短刀が飛びかかってきた。
     短刀を軽くいなして振り払うようにして距離を開け、その隙に懐に入り込もうとした脇差を柄で反動で殴りつけ同様に間合いを空ける。短刀に間合いに入られたらこちらが大ダメージだ。極めて帰ってきた愛染で身をもってよく沁みついているその動きに、やっぱり鍛錬は必要なものなんだなぁ、と場違いな感想を抱いた。
     足で短刀を踏みつけ息の根を止め、まず一体。
     その間、後ろに回った太刀が二振り、振りかぶってきたのを、刃で受け止めた。脇差が顔を狙ってくるのを見て、どこにいっても脇差というのはえげつない戦い方をするのだと痛感する。かろうじて頬と耳の端だけに被害を留めたものの、太刀に押され気味で後ろに重心が傾いたところに、思いがけなく薙刀がさらに力でゴリ押してきて、膝をつく。刀装が、一気に全て破壊された。
    「くっそ! 舐めくさりおって……!」
     刃を横に受け流し、その場は離れようとするが、飛びのいた先にいた脇差が今度は腹を狙ってくる。
    「邪魔やっ!」
     回し蹴り食らわせ短刀同様に足で踏みつけたところに地面ごと貫いてやると、その姿が消えた。これで、二体。

     息をつく間もなく、気配を感じて、受け止めようと刀を構えたのと、腹を槍が貫いたのは同時だった。

    「っは……!」
     引き抜かれようとしたのを、左手で掴む。抜かれれば、出血がありすぎる。これでは、中傷は必至か。頭は冷静にそんなことを考えるが、もはや本能で槍を抜かせまいと掴んだものの、痛みは当たり前に存在しているので、刀を持つ手は震えていた。
    「はあ~、しんど……」
     本体を掴まれて動けなくなった槍に向かって、首元を狙って太刀を突きとおした。
     思った通り、槍ごと灰のように姿が消えたが、これも想像通り、槍が塞いでいた箇所から、一気に出血した。
     薙刀がそのタイミングを狙っていたのだろう、薙ぎ払われた刃はふらつきながらも避けたものの、太刀二体が待ち構えていて、刃を交わし合う間も、傷口に添えた左手はどんどん血に塗れていく。生暖かい腹が、この肉体がまだ生きていることを突きつけてくる。

     審神者の泣き顔が、浮かぶ。
     自分が、折れたら、泣いてくれるのだろうか。
     悲しんで、くれるだろうか。
     蛍丸と、愛染は、どうするだろう。
     きっと怒られるだろう。それで、二人とも、たくさん泣かせてしまうのだろう。

    「あかん」
     そんなの、耐えられない。
     自分がいないところで、泣かせるのは、嫌だ。
     でも、本当は、わからない。自分がいなくなるのと、あの子らがいなくなるの、どっちが辛いと言ったら、圧倒的に後者だ。当たり前だ。持っているものを失うのは、もう嫌なのだ。だから、手に入れてしまうのが嫌だ。新しい感情を知るのが怖い。まるで、人間みたいに憎悪も愛憎も執着みたいな感情なんて知りたくなかった。
     醜い感情で、戦争を起こし、失われたものの大きさを知っているからこそ、争いなんて、戦いなんて関わりたくもなかった。
     自分が、そんな人間のようになっていくのも怖かった。
     こうして血を垂れ流してもなお、刀を振るって、相手の急所ばかりが目について刃が肉を抉る感覚は確かにある種の快感で、自分は「人間」ではないと知っているのに、知らない感情に振り回されてる現状からはただひたすらに逃げたかった。
     二体同時に相手をしていたが、片方が体勢を崩したところを頂点から真っ二つになるよう刀を力任せに振り下ろした。その隙を狙って、薙刀ともう一体の太刀が刃を振るってくる。そりゃ、そうだ。今自分の刃は太刀を切ってる最中だ。自分だってそうするだろう。
     こら、さすがに避けようがないわ、と思った時、ついに足が止まった。
     生きるのと、死ぬのと、姿がなくなるのと、現存しているのと、使われるのと、使われないのと、名刀と言われるのと、一度もなにも斬らなかったのに大切にされてしまったのと、なにが、正解で、なにが間違いで、どうされたかったのだろうか、という問いが、明石の心中を占めた。
     左腕は、まだ無事だった。右腕を刀から離し、左腕で重心をずらして避けながら薙刀を払って太刀を攻撃することは出来る。

     だが、「もういい」と思った刹那、左腕は動かなくなった。

    「明石っ!」
     陸奥守の声が響いた時、明石の記憶はそこで途絶えた。




     目が覚めた時には、手入れ部屋だった。
     見知った天井だが、一瞬どこだかわからずに何度か瞬きをして記憶を一致させる。ひんやりとした床の気配が伝わってきたことで、本丸内の場所を把握した。生活感の唯一存在しない空間。あまり通いたいとは思わない場所なだけあるが、本丸内では一番静かな場所であることは事実だ。ここにしか置かれていない上等な布団の寝心地が格別にいいことだけは全ての男士が同意するだろう。
    「お、気が付いたか」
    「おかえり」
     傍に控えていたのは、愛染と蛍丸だった。

    「……部隊は?」
    「国行以外全員無事。若干、刀装が破壊されたくらい。一人で検非違使四体倒したんだって? 陸奥守がお礼言いたがってたよ。助かったって」
    「はあ、そんなんええわ」
     こっちに近づいて蛍丸が眼鏡を渡してくれたので、反射でそれを寝たままかける。
    「それでお前が重傷になってりゃ、なんにもよくないぜ」
    「こっちは病み上がりやで? 今はまだ寝かせたってや……」
    「病み上がりでもないよ。手入れ札使ってないから」
    「げ」
     そして、それを確認しろとばかりに愛染が明石の布団をめくり上げる。損傷が一番激しかっただろう腹部には厳重に包帯が巻かれていた。止血はすでにされて何度か交換された後だろう、綺麗な包帯の上から、愛染がその手を乗せグッと力を込めた。小さな手の平だが、それでも腹部の大部分の傷跡を覆うことは容易い。危機感を感じて、一瞬で身体を強張らせるが、それでも与えられる痛みに思わず声が漏れた。
    「っぐ! や、っめい!」
    「お前の力なら俺の手なんてすぐ捻れるだろ。それも出来ないくらい回復してねーじゃん。これじゃあ、やっぱり今夜一晩は確実にかかるな」
     息を吐いて、吸う。ぜえはあ、と肺が呼吸で動くたびに腹の傷に響く。先ほど押された痛みでびっしり頭部に脂汗が浮くくらいには傷は深かったのだろう。なにせ、槍が腹を突き抜けていたのだからまあ、当然かもしれない。
    「く、国俊……悪かったって……。そんな怒らんといて……」
    「は? 怒ってねーよ。ケガとは別に、少しは痛い目見ろとは思ったけど」
    「それ、怒ってるっちゅーんや」
     他の刀たちには比較的愛想がいいのに、まるで夜戦に行く時のような鋭さの瞳に、今が何時なのかを聞き忘れていることを思い出した。
    「ほんと国行もバカだよねぇ。いつも俺たちには簡単に謝るなって言ってるくせに。理由がわからないのに謝ると逆効果だって、国行がいつも言ってることじゃん」
    「それそれ。国行。俺と蛍がなにに呆れてるか、わかってるか?」
    「……」

     わからない。
     どういう状況で戻ってきたかがわからないのだから、どういう風に説明されて、どういう流れでこの二人がここで自分を見ていてくれたのか、二人の中でどういう結論が出ているのか、さっぱりわからない。先ほどとは違う汗が背筋を濡らした。
    「ほら、やっぱりわかってない」
    「変なところでニブチンだよなぁ」
     二人の顔は、どこか遠くを見ている。
     結局、なんの答えも言うことが出来ない明石を、仕方ないと捉えたようで、愛染が近くにあった桶でタオルを水に濡らし、蛍丸がゆっくりと明石を起こした。腹部以外に出来ていた傷は皮膚もかさぶたから回復して引き攣っているくらいで無理に動かさなければこのまま傷は綺麗に塞がりそうだ。それなりの時間手入れ部屋に入っていたことが伺えた。自分の身体を見ているだけだったのだが「そんなに検分しても、これ以上はなにもしねーよ」と愛染が拗ねたように言う。普段のがさつな態度とは裏腹に両腕に巻かれていた包帯をゆっくりと取って、身体を丁寧に拭いていく。右腕、左腕、と拭かれ、すぐに蛍丸がまた綺麗な包帯を巻いていた。
     そこでようやく気付く。いつも、自分と蛍丸が手入れ部屋に入った愛染にしていることだ。こんなに優しい手つきでやっていた記憶はないのだが、愛染は教わったことは意外と忠実に続けるタイプだ。自分の手つきを見透かされていたようで、やたらと気恥ずかしい。

    「左腕、なんで使わなかったんだ」

     さすが短刀、切れ味が良い。
     咄嗟に言い返せなくて、その間に二人は目線を合わせてため息を同時に吐かれた。
     ああ、言いたかったのは、そのことなのか。
     言えるわけがない。これ以上の「感情」の負担に耐えられなかった、なんて。
     この二人と、そして、この二人よりも優先して審神者の姿を思い浮かべ三人の泣き顔を見ないで済むのなら、と一瞬でも思ってしまったことを。そんな、まるで「人間」のような思考が、自分の肉体を凌駕する恐怖についてなど。
    「持ち替える暇が無かっただけや」
    「国行がそんなことも出来ないような刀だとは俺も国俊も思ってないよ。
     諦めたでしょ。陸奥守にすんげー謝られたんだよね」
    「……なんて」
    「最後、腕を止めたって。だから腕にもケガがある。で、反射で動きが止まったから珍しく足にも負傷してる。
     逃げ足早いんだから、その足やられちゃダメじゃん」
    「お前がいつも言ってるんだろ。
     逃げて、折れてさえなければ、俺たちの勝ちだって」
     上半身は、腹部はまだ傷がひどいので取ることはせず、足元の布団をめくられ目線を送ると、蛍丸の言うように左足に大きな裂傷があった。この傷だと薙刀だろうか。自分の身体のことなのに、言われて初めてそうだったのかと気付いた。
    「本気出せよ。頼むから」
     言葉はいつも通りの表現なのに、普段とは比べものにならない別人みたいに固い愛染の声が傷口に染みわたる。そんな顔を、声を、させたかったわけではなかった。
    「ちゃうんや、その」
    「違くないでしょ。どうせもういいって思ったんでしょ、国行は」
    「なんにも良くないからな」
    「はい……」
    「わかってないよ、国行。なんにも、わかってない」
    「蛍?」
     ぎゅっと、蛍丸の手が明石の手を掴んで、明石の半分くらいの小さい手にハッとする。同じように愛染の手がその上からさらに包む。自分が、守らなければいけないと思っていたものに、本当は守られていると感じるのは、こういう時だ。小さいのに、自分と同じように剣ダコがあって、子どもの手なのに、固いところがあって、それが自分たちを人間ではなくて刀剣男士であって、戦いの場に身を投じる戦士であると突き付けられる。
     守りたいと思っているのだ。本当だ。本当に。なにもかもから、守りたい。二人が感じる、痛みや苦しみや悲しみ、降り注ぐ全ての悪意から。
     そんなの無理だって、わかっているのに。
     言い返せないあたりで、もう自分が今は保護者でなくて、この本丸に後から来た先輩と後輩として、来派のよしみとして諭されている。
    「俺も、国俊も同じだよ。
     二人がいなくなったら困る」
     言葉のほうが、ちっぽけな気がして、両手を使ってもう一度二人の手を力いっぱい握ると、それに負けない力で握り返された。
     痛いくらいでちょうどいい。すぐにどうせ自分は忘れてしまう。今日あったことも、きっと。
     感情に振り回されて苦しむ姿を誰にも見せたくなくて、らしくもなく戦場で散ることが出来るのならと気の迷いのような行動に出ることがもしかして、今後もあるのかもしれない。
     同じことがあったら、また同じことをする。きっと、そうするだろう。
     自分だけが逃げることは、この子どもたちに見せる姿ではないと反射的に身体が動く。
     でも、彼らが泣いたり、困ったりすることからは守ってやりたい。なんと、なんて、矛盾した想いなのだろうか。
     肉体が果てしなく邪魔だと、こういう時に傷の痛みなんかよりも、ずっと思う。
    「自分も、おんなじ気持ちやで」
    「俺だってそうだよ」
    「全員で、それぞれを優先してたら世話ないじゃん」
     握られていた手を放して、痛いのを気にしない振りして、無理矢理に、二人を思いっきり抱きしめた。いつもは逃げてしまう愛染も、今ばかりはさすがに大人しく抱き留められてくれるようだった。本丸の石鹸の匂いがして、子どもの日向の香りが、嘘みたいな甘い現実が実在していることを教えてくれていた。仮初の肉体なのに、どうしてこんなに苦しいのだろう。
     この子らについてだけ考えていればよかったのに。時間を戻せるのなら、この感情を覚えてしまう前に、戻りたい。
     いや、それは出来ない。心が出来てから、ここでしか得られなかったものが、尊過ぎて、失うことなど、もう考えられないのだ。
     ここでなければ、こうして三振りで抱きしめ合うことなど、未来永劫、なかったかもしれないのだから。
    「それでも、腕は二本必要なんや。
     だって、こうやって、同時にぎゅって出来へんやんか……」
    「馬鹿だなぁ、国行」
    「ほんと」
    「俺たちにだって、腕があるんだぜ?」
     この腕が二本ないと、二人を守れないと思って、自分のために振るう腕などないと思っていたことなんて。
     泣きたいような気持ちだったけど、それはさすがに、堪えておいた。

    「明石さん、起きられたんですか?」
     審神者の声が扉の向こうから控えめにかけられた。
     すぐに蛍丸が扉を開けて、審神者に飛びつく。
    「わっ、蛍丸……。危ないでしょ」
    「国俊がお仕置きはしておいたよ。俺じゃないだけ、優しいと思うけどね」
    「修行済の二人がお仕置きなんて、一生手入れ部屋から出さないつもり?」
    「それじゃあサボる口実与えて、国行の思うツボじゃん」
     愛染も桶を持って立ち上がり二人は出ていくらしい。ちゃんと布団をかけてくれていったのは良かったが、出ていかないでくれ、と声に出そうになり思わず「ちょっと」と言おうとして、審神者が目の前に立ったので、その声も出なくなった。
    「後は、私のほうにも、お話があるので、愛染くんと蛍丸はもう寝てください」
    「はーい!」
    「じゃあな!」
     なんて、無慈悲な。



    「私、怒っているんですよ」
    「はあ」
     審神者は立ったままだ。明石は横になったほうが体勢が楽だと言ったら「なら寝ていてください」と言われ、自力でなんとか布団をかけなおして潜り込む。明石が横になったところで、ようやく座ってくれた。
     今は何時なのだろうか。
     彼女の表情をこっそりと盗み見る。

     泣いてくれただろうか、なんて甘い考えはすぐに吹っ飛んだ。
     夜には強くないので、眠そうな瞼を懸命に押し上げていることはもうわかったけれど、彼女はいつもと同じ表情だ。
     審神者と刀剣男士、という距離感の。
    「陸奥守から聞きました。最後、おそらく動くことが出来ただろうと。
     どうして、最後、動くのをやめたのですか」
    「動くのをやめたのやありまへん。動けなかったんです。腹貫かれた痛みで」
    「嘘」
     ギロリと自分を睨む瞳は、怒りに燃えているようで、ああ、そんな顔は見たことがないと気が付いた時、やっぱり明石の心の奥に明らかな喜びが芽生えてしまった。泣いてくれなんて甘えたことを望んだことは後悔したが、自分に対して本気で怒りを募らせているというのもまた、その感情のぶつけどころとして選んでくれたのかと思うと、ありもしない魂が、作られた時のように打たれて身体に熱を蓄えさせられているような至上の喜びを覚えてしまったのだ。
     もう後戻りなど出来ないような、甘美な味であった。
     怒りに震える表情は美しい。感情が最大限に表に出ているその顔が。
     明石の反応が全くないのを見て、審神者はこれ見よがしに大きなため息をついた。
    「すこし、昔の話をしましょう」
    「はあ……」



     審神者の父親もまた審神者であった。
     血筋からその傾向があるだろうと、彼女は定期的に検査を受けさせられ、中学生の時に能力の開花を認められた。
     中学卒業後、父親の元で、見習いのようなことをして、自分の初期刀と初鍛刀を持った。
    「私の最初の刀は、歌仙兼定。
     子どもで教養がなかった私に歌仙はいつも厳しかったわ。
     でも、同時にとても優しかった。父親よりも、よっぽど私のことを気にかけて、厳しく言い過ぎたのではないかとすぐにオロオロしてなんやかんやと理由を付けて部屋に来ては、でも謝れないの。私も意固地だからいつも歌仙を困らせていた。
     初鍛刀は、愛染国俊。
     国俊がいてくれたから、私と歌仙は、なんとか間を取り持つことが出来た。あの子の明るさに引きずられて、気難しかった歌仙とそもそも情緒の育っていない私が一緒にいられた。国俊は、健気に私を気遣ってさみしくないようにって、声をたくさんかけてくれて、歌仙が本当は人見知りなのも気がついたのは国俊だった。私も歌仙も、国俊のおかげで毎日笑顔でいられたの。おかげで、こんなに事務仕事が苦手な審神者になっちゃったけど。歌仙も国俊も、座ってるだけっていうのが、とても苦手だったから」
     平和な日々だった。
     まだ戦に本格的に出ることはなく、彼女が十八になるまでは、と父が進言したらしい。
     若い審神者の死傷者が多かったことから、三年間を見習い期間とし、本丸の運営や刀の特徴、戦術について学ぶこととなっていた。

    「ある時、本丸が襲撃されました」
    「は?」
     審神者の手が震えていた。
     思わず、それに手を伸ばそうとして、審神者が気が付いて、自らの手を固く握りしめ、胸元に抱えた。
     中途半端に浮かんだ左手をただ力なく床におろした。
    「ごめんなさい……。気にしないで」
    「いえ、自分がうっかりしとったんです。で、どうないしはりました、続き」
    「多くの男士たちが意識混濁状態となり、半狂乱で本丸に火を放ちました。父の霊力の暴走だったそうよ。
     夜中に襲撃があり、父の刀剣たちに襲われたところを、歌仙と国俊がなんとか道を開いてくれた。全ての男士が霊力の暴走に巻き込まれたわけじゃなかったから、血で血を洗う地獄絵図だったけど、最終的には双方痛み分け。本丸は倒壊、最後に、ゲートを開いて送り届けてくれた歌仙と国俊は最後まで本丸に残った。ゲートを再び開かれて私の後を追われないために」

    「後日、なんとか政府に保護されて実況検分に出向いたけれど、自分が住んでいた場所とはとても思えなかった。
     カタチなんて、なんにも残ってない。呪われているからとそこらじゅうに散らばる刀は触らせてもらえなかった。
     離れの屋根の上に国俊が、父の部屋の前で歌仙が見つかった。当時私が許可されていたのはその二振りだけだった。
     私は全ての刀を失ったわ。そして、父も、時間遡行軍への兆しがあったとして、その本丸は完全に閉鎖された。
     二十歳になるまでは私も観察対象となり、それからこの本丸を持った」
     そこまで話すと、もうしっかりとしたいつもの口調に戻った彼女は、ハッキリと明石を見つめながら言った。

    「明石国行、戦うことが怖いですか?」

    「怖かないです」
    「では、あなたは、失うことが怖いんですか?」
     なにを、言わされようとしているのだろうか。口を噤んでいると、「答えなさい、明石国行」と命が飛んだ。
    「……怖くない言うたら、嘘でしょうな」
    「私もです。
     私は、戦うことが怖いです。あなたたちを失うかもしれないから。
     私の命令で、あなたちを戦場に送り出す。戦えと命じているのは私です。私があなたたちを死地に送っている」
    「それが仕事やろ」
    「ですが、あなたは、どうしましたか? 今回、一体、なにをしました? いえ、なにをしなかった?」
    「……自分は」
    「諦めろと、私は命じていない。
     なにが、あなたをそんな風に動かしたの? どうして、なにが、一体どうして、あなたの腕を、足を止めさせたの?
     明石国行、教えて。
     あなたは、私の刀。私は、あなたを失いたくない。
     あなたはむつを、他の部隊員を優先して一人で戦い、持ちこたえてくれた。それ自体は大変ありがたく評価します。他にほぼ死傷者はいませんでした。
     でも、あなた自身は? あなたの敗因は、あなた自身を守らなかったことです。
     どちらも、『私の刀』なの。折れてしまっては、もう、二度と返ってきてくれないのよ。
     あなたが折れたら蛍丸と愛染くんはどうするの? あなたを失った後悔を、あの二人は抱えながら生きていくのよ?
     いつか、折れてしまうかもしれない、それはそうよ。戦いに行かせているのは私なの。勝手なことを言っているのは私よ。わかってる。
     でも、折れてもいいなんて覚悟を持てなんて私は一度も言ってない!
     折れてもいい刀なんて、うちにはいない。
     私は確かに触れられない。みんなに不便を強いて、完全には程遠い審神者だってわかってる。
     でも、ここに本丸があって、私がいる。そこに貴方は、ちゃんといるのよ!
     それは、『貴方』しかいないの。
     自分の命を、軽々しく扱わないで。
     私は、もう、誰も折れて欲しくない。
     どれほど、後悔したことか……」

     泣いているのかと思った。否、彼女は、泣いてなどいなかった。
     自分のために、ここまで言ってくれているのだとわかる。けれど、同時に、彼女は、この本丸ではないところを、いつも見ているのだとわかった。正直、面白いとは思えなかった。
     自分の『主』は彼女しかいなくて、彼女だけを見ているというのに、その不釣り合いさに、思わず笑ってしまいそうになった。
    「自分が、なにを考えたか、やって?」

     強い眼差し。それは覚悟の現れ。
     もう二度と自分の刀を失わないようにしようという、彼女の「過去」から来る、未来への眼差し。
     本当にそうか? おそらく彼女が男性に触れられないのは、その襲撃があったからなのだろう。詳細を彼女は語らなかったが、多くの男士たちに取り囲まれ刀を振りかぶられたら、恐怖が身体に染みつくものだろう。

     だが、この本丸は、その「本丸」ではない。

     知らしめてやりたい。彼女に。
     その本丸と、ここは違うということを。
     自分たちは、「あなた」に顕現され、この感情という坩堝の、真っ只中にいるのだと言うことを。その感情を与えたのは彼女だということを。

     この感情もまた、自分が手に入れたモノ。
     そうだ、だったら手放してはいけない。この身、この心、その全てを、この主がくれたのだ。誰にも渡さない。自分だけのモノだ。この怒りも、憎しみも、悲しみも、愛も。

    「あんさんを、泣かせたらどないしよう思てました」

    「は?」
    「国俊や、蛍丸よりも先に。あんさんの顔が浮かんでましたわ。折れるつもりは微塵もありまへんでしたけど、まあまあ、そこそこ重傷やろうとは思ってました」
    「明石?」
    「そうですよ。そうやって気軽に呼んでくださいよ。
     自分らには触れられんと、ああやって大太刀でも蛍丸はよう可愛がってくっついてはりますやんか。
     陸奥守はんにだって、そうや。大きさなんてあれくらいの触れられるんやったら自分らだってって思うでしょ。なあ、主はん。
     でも、あん刀がおらんと、なんぞあったら、主はんを救えんくなる。
     一緒やないんですよ。自分らの重さは。すべて、陸奥守はんと、五虎退はんが背負ってくれてる。ちゃいますか?」
     上半身を起こすと、審神者がサッと顔色を変えて、後ろに下がった。
     そうだ、それでいい。
     身体を起こすと腹の傷が痛む。いや、こんなもんじゃない。本当に痛いのはどこだ。
     胸か? 頭か? 瞳か? 心か? いや、魂全体が、苦しいと叫んでいる。
     座りなおして、正座をして彼女に向き直る。愛染たちが身体を拭くために脱がしていった浴衣を適当に羽織って、姿勢を正した。

    「自分のことが、わからんのですわ」

    「は……?」

    「主はんを見て、守りたい思うて、泣いてほしいと思います。
     もう嫌なんですよ、こんな感情に振り回されるんが。
     自分が大事なんは、来派の二振り。来派の祖として、守るべきものはあの二人や。
     なのに、今真っ先に浮かんでくるんは、主はんなんですわ。
     ハサミ使わせてもまっすぐ切れんところも、寝癖直せんくて乱はんに泣きついてるんも、時系列に書類まとめることもろくにできずに最近は自分の目につくところに書類をこっそりまとめて置いてるのも、放っといたらいつまで経っても茶葉変えずにお茶ッパ使いまわすところも、全部、み~んな、かいらしいと思うとります」
     そして、今この瞬間、なにもかもを受け止められずに、何度も瞬きをして、口元を抑えて、声を出さないようにしているその姿も。
     いつか見た、頬を赤く染めるなんてもんじゃない。今まで見た中で、一番首と耳まで赤く染めたことに、満足した。

    「せやから、近侍を降ります。
     こんな不敬な考えもったんが、そんな近くになんていられへん。五虎退はんに刺される前に辞めさせてもらいます。
     この気持ちが原因なんや。腕が止まるんも、足が止まるんも、自分がどうにかなったら、どう思われるかなんて、そんな阿呆なこと考えたことなんてなかった。でも、知ってしもうた。気付いてしまったんや。
     こんなことなら、刀のままで、よかったんに、どないして、こんな人間の「こころ」なんて、一緒にもって顕現して、やっぱり、人間の考えることは、よう、わからんですなぁ。
     やっぱり、人間は、どうしようもない」
    「あ、明石……」
    「近侍なんて、誰でも出来るわ。自分は大したことしてへんしな。
     また粟田口のお子らにでも頼んでください。書類整理されてる分だけ、あの子らのほうが優秀でしょ。
     自分はもう、罰でもなんでも与えて、謹慎にしてください。自分一人が独断で背負って戦ったちゅー選択の罰は、どうせ陸奥守はんと一緒に裏山の草むしりでしょうけど」
    「ちょ、ちょっと、ま、まって……」

    「あかんですよ、主はん」
     立ち上がり、目の前に立つ。上から見下ろしたことは一度もなかった。
     審神者が当然「男性」を苦手としているからだ。
     さっきまで顔の赤かった審神者の顔面が一気に蒼白になる。恐怖に捉われ、なにも見ていないその瞳の中に自分がいる光景を見たのは、初めてだった。
     改めて思い知る。ああ、自分では、ダメなのだ、と。陸奥守でないと、触れることが出来ない。彼女を助ける刀になることが出来ない。もう触れないでいたい。近づかないでいたい。触れたいと思うような近さと環境がよくないのだ。
     自分では、ダメなのだ。
    「止めたら、あきまへん。自分の言葉に頷いたら、あきまへん。引き留めても、あきまへん。
     あんさんは、みんなの『主』なんやから」

     今、はちゃめちゃに痛いのは、どこなんだろうか。
     痛みで虚ろになりながら、手入れ部屋を出て、来派の部屋に戻る。布団を引くのも面倒で、すでに寝入っていた二人の布団の真ん中に寝転がった。



     翌朝、もう一度目覚めるとやっぱり手入れ部屋に戻っていたが、傷はすっかり完治していた。
     蛍丸が言うには、明け方陸奥守が来て連れて行って札を使ってくれたらしい。負傷もあり、養生もかねて近侍もしばらくは降ろされるという伝達が行われていた。近侍はやっぱり粟田口の短刀たちがしばらく持ち回りになるらしい。和やかな空気が垣間見えて、正直、よかったと思った。ただ、審神者は、手入れのため寝不足とのことで朝餉にはいなかったが。
     それから三日程度、毎日草むしりだけしていて気楽でいいけれど、なにもかもが空っぽになった心に結局振り回されている。
     大人げないことをした、とは思う。
     でも、自分ではない、ここではない本丸に捉われている審神者を責めることも出来ないが、擁護することも出来ず、ただ、悶々と過ごす。今刀なんて握ったら、それこそどちらの腕であっても、落っことしてしまいそうである。
    「おーい、国行ー。今暇だろ?」
    「暇やないわ。寝っころがるんに忙しゅーてな」
    「それを暇っていうんだよ。万事屋行こうよ。国行の意見も聞きたいんだけど」
     はあ~? と最大のため息をついたのに、二人がまったく相手にしてくれない。さっさとジャージを脱いで着替え始めたので、自分も仕方ないと身体を久しぶりに縦に起こした。

    「その色でよかったん?」
    「残ってたのがこれだから。いいんだ」
    「一緒になってよかったじゃん! お揃いだな!」
     三人で短刀の間で流行っているガチャガチャを回して、いくつかの店を冷やかす。あっちこっちと二人に引っ張られるようにして。

     外出なんて、面白くもなくて、ただ、二人が楽しそうだからいいかと思っていたのは最初の頃の話だ。
     今なんて最悪だ。どこを見ても、審神者に付き添った時のことをハッキリと覚えている。急な雨に降られて傘を二本も買ったのに、すぐに平野が傘を持ってきてくれたこと。書類を出しに行ったついでに甘味処で休憩を取ったこと。靴を見たいというので、一緒にしゃがんでいたら彼女の胸元が見えそうで慌てて距離を開けたこと。風で彼女の帽子が飛ばされてえらい遠くまで走って追いかけて行ったこと。まるで昨日のことのように。
    「あ」
    「ん? どした?」
     愛染に、一生のお願い! と頼み込まれて買わされたアイスキャンディーからきゅぽんと音がするように口元を離して、小さな指先はいつだか自分も入ったことのある甘味屋を指した。蛍丸はアイスクリームを懸命に舐めており、視線だけで返事をしていた。
    「主さんだ」
     正確には、主と陸奥守だった。

     広い店の出入り口の二人掛けのテーブルについている二人は、傍目から見ると大層仲が良く見える。実際の関係がどうこうではなく、距離が近いように感じるのは、自分が触れることが出来ないからこその羨む目線だからだろうか。
     いつものように、審神者がボソボソと話して、陸奥守が笑い飛ばす。そう、いつもそうだ。自分の時もそうだった。「そんなん適当なんでええんちゃいます?」「後回しでもええやん」なんて適当なことを言ってると、怒る振りはするけれど、審神者はいつも仕方がないと、微笑んでいた。
     自分の時は、そうだった。陸奥守の時も、そうだったはずだ。

     審神者は、陸奥守が笑い飛ばした後に、顔を赤くして、うつむいた。
     声まではハッキリとは聞こえない。大体審神者の声はそれほど大きくないので、陸奥守の「なんちゃあない!」という声だけがかろうじて聞こえてくる。うつむいた審神者の両手を、陸奥守がそっと握った。

     二人の目元をそっと覆った。
    「こんなん出歯亀とおんなじや。本丸に帰るで」
    「うわっ! アイス落ちる!」
     愛染が落としかけたアイスを掌で受け止めて、止める間もなく愛染に食べられてしまった。べっちょべちょになった手にがっくりと肩を落とした。

     別に、どうにかなりたいなんて思っていたわけではない。
     ただ、この感情の行き場を、それを、ずっと探しているだけなのだ。




     近侍を降りて二週間が経った。
     明石が近侍をやっていたときと、本丸の運営に特に変化はない。元々明石だけがやっていた近侍の仕事はほぼ無いので予想通り誰が後任になってもうまく回った。そして、それは、明石が元々望んでいたことだ。自分「だけ」が出来ることなど無くてよかった。明石にとって大事なのは来派の二人。他に譲れないものが出来てしまって、揺らぎが出来ることは望んでいない。他者が為り替わることが出来ない役割は「来派の祖」という役目だけでよかった。
     愛染と蛍丸と、毎日起きて、順番が来れば内番をし、時折二人に誘われて近くに買い物に行ったり散歩に行って、夕方には風呂に入って背中を流して流され髪を乾かしてやる。一緒に食事を摂って、布団を引いて、部屋を暗くしてからの二人の丸聞こえのヒソヒソ声を聞きながらいつの間にか眠りに落ちる。
     愛染が夜戦に行く時には見送って、時々胸騒ぎがしては帰ってくるのを待って、手入れ部屋に行けば出てくるのを待って一緒に部屋に戻る。胸騒ぎが杞憂であることを確認しなければ明石は眠らない。蛍丸も、愛染もそんな明石を好きなようにさせたし、二人は二人で好きなように振る舞う。
     兄弟か親子みたいな関係で、それでもどことなく距離があって、同時にそれよりも近い時がある。
     そうだ、この関係さえあればもうなにもいらなかったのだ。
     自分が戦う理由も、「歴史を守る」なんて大義名分も関係ない。自分にとっての今ここにいる「蛍丸」と「愛染国俊」をこの「明石国行」が守ること。それが実際に出来るのなら、もう、なにも他に求めることなど不要なのだ。
     そのはずだった。

     近侍を降りてからめっきり審神者とは会わなくなった。元より近侍になる前に会うこともなかったので当然のことだ。愛染や蛍丸は今まで通り審神者のところへは時折通っているようだった。短刀がまた近侍を務めるようになってからより行きやすくなったのだろう。
     遠くから彼女を見る。他の大きな刀たちと同じように。もうあの近さで、こちらが本気を出せば彼女に触れることなど容易い距離で、彼女を見ることはない。
     おやつを配る粟田口の短刀たちと一緒に本丸内を回って、畑当番だった謙信の口に手ずから果物を入れてやるその指先。
     脇差たちが備品を整理しているところに出くわして一瞬怯えるものの、浦島からタオルの在庫を渡されてホッとしているその表情。
     小夜左文字と一緒に江雪の花壇に水やりをしている夕方、帰ってきた宗三に横に立たれ、驚いた彼女が小夜の後ろに隠れて小夜が今度は飛び上がったのを笑っていた江雪の反応を見て小夜の頭を無意識に撫でていた手の平。
     また天気予報をろくに見ないで外出をして、平野の出迎えに二人で一つの傘で帰って来た時の平野の複雑そうな表情に気付いて濡れている自分の肩を隠そうとするその仕草。
     朝ついていた寝癖の頭が、昼餉の時には乱藤四郎とお揃いの髪型になって色々な飾りが付けられて恥ずかしそうに微笑んでいる様子。
     遠くから見て、初めてわかることがたくさんあった。
     自分が見たことがない表情もたくさんあった。自分はなにを見ていたのだろうと思うこともたくさんあった。なにも見ていなかったのかもしれない。「審神者」という「主」を刷り込みで「愛しい」と、思ってしまった雛となにが変わるというのだろう。
     けれど、見ればみるほど、自分の手が届かないことに胸の焦燥はますます加速していく。とても「刀」が抱く思想とは思えない。「人間」のような、醜い感情。目の前にいなければ、いつか忘れられると思うことだけが救いだった。実際は忘れるどころか、余計にくっきりとしていく記憶を見ないようにして。
     なかなか寝付けない時は蛍丸や愛染を抱えて眠る。その暖かさは、触れたことのない彼女もまたきっと同じ熱を持っているのだろうと夢想して、自分自身に反吐を吐く想いを抱える。
     この二人は、彼女の代わりなんかじゃない。
     それを自覚すればするほど、やっぱり彼女一人に向けた爛れた感情の行き場がやっぱりなくて、吐き気がして胸のムカつきが増した。
     誰に知られることもなく、折れるまで、自分の中に閉じ込めておかないといけない化け物のような、その気持ちを持て余して。
     なのに、口にしてしまったことを一方では清々としていたのも事実なのだ。



    「はあ? 演練?」
    「そう、明日午前中から行くから準備しておいてね。
     謹慎中だったからしばらく戦にも遠征にも行ってないでしょ? リハビリだってさ」
    「リハビリねえ……。そんなんなくとも、戦場行けばそれなりにやりますってのに」
    「まあまあ、部隊には来派の二人もいるし、あとは修行から帰ってきたばかりの御手杵さんと、加州さん。明日は陸奥守さんが近侍で一緒だから肥前さんも一緒ね」
    「ああ、あの愛想の悪い脇差」
    「意外と他の刀のこと言えないからね、明石さんも」
     そうじとりと睨まれると思わず「ははは」と乾いた笑いを浮かべた。そりゃあ、別に仲良しごっこをするつもりがないのだから愛想を良くしようと思ったことはない。
    「ま、伝達おおきに。二人にも伝えとくさかい」
    「うん。よろしくね。じゃあ、失礼しまーす」
     言いたいことだけ言って満足したのか、今日の日替わり近侍だった乱が手を振って来派の部屋から出ていった。茶くらい出してやってもよかったなぁ、とぼんやり思うが、そんなに会話が弾むわけでもない。近侍をしていた頃にはよくちょっかいもかけられたが、最近はこうしてハッキリと会話をしていなかったのだと気付いた。
    「ただいまー。ん? 誰か来てたのか?」
    「ただいま。国行、頼まれてたの無かった。勝手に適当なの選んだけど」
    「おおきに。今乱はんが来てな。明日朝一で演練やそうや。うちら来派と、御手杵、加州、肥前やて」
    「ふうん。わかった。ちゃんと起きろよ、国行~」
    「冷蔵庫しまっとくね」
    「先に手洗いうがいしてきなはれ」
    「はーい」
     部屋に置いてある小さな冷凍庫をパタンと勢いよく閉めて、ドタドタと共同の水場に向かった二人を見送る。
     そうだ。あれから一度も戦には出ていない。
     刀も握っていないことを、ようやく思い出した。



     今日の主は「ヒール」という靴を履いていなかった。部隊の最後尾で御手杵と一緒にたらたらと歩く。一番前を陸奥守と主が、繋がるようにして加州、蛍丸、愛染と来て肥前が無言で自分たちの前を歩く。まるで連行されているみたいだ。主に肥前が。
    「修行、どないやったん?」
    「ああ、なんか、こう、上手いこといえないけど、まあ、やっぱりなぁ、というか、そうかあ、みたいな感じ」
    「ははは、嘘やん、全然わからへん」
     受付に行き、手続きを終えた一行は待ち時間を審神者が待つための大きなロビーで過ごすことにした。
     気が付くと、えらい奥のほうにある自販機を見てくる、と蛍丸と愛染が行ったのを、肥前も連れて加州が追いかける。おい、お前らどこに行くつもりだ、と声をかけようとして、陸奥守が素っ頓狂な声を上げた。
    「あ~! いかんちや! わしゃあ用事があるんやった~! すまん、明石! 主を頼む!」
     というが早いか、奥のほうに駆けて行った。おいおい、棒読みすぎだろ、と思うものの、少し距離のある審神者のほうを見ると、やはりこれは仕組まれていたことで、主が困ったような顔をしていたが、実際には多分この状況になったことでなにを話そうかとでも考えているのだろう。
    「近づかへんほうがええんとちゃいますか。無理矢理どうこうすることだって出来るんやから」
    「あなたはそんなことしないでしょ。それにここには人もたくさんいるし」
     奥に行った連中は建物の外に出たらしい。どこまで行く気だ、阿呆共め。
    「明石。あなたと、もう一度、ちゃんと話がしたかったの」
    「自分のほうには話すこと、あらへんわ」
    「明石!」
     主の顔を見ることが出来ず、また距離を開けようとベンチから立ったところで、異質な気配が演練会場全体を覆った。まるで、空間が、なにか大きなものに押し潰されているような衝撃が一斉に走る。

     咄嗟に、審神者を覆うように立ち、衝撃から守ろうとしたが、揺れは一瞬で終わった様子だった。
    「なん、地震……か……?」

     ドゴオオォンッ!!

     言い終わらないうちに、入口のほうから爆破音が聞こえてそちらを見やると、入口が爆破され屋根に火が付けられていた。崩れ落ちたところからさらに火矢が飛んできているのが見える。
     そして、初めて聞いたが、明らかに異常事態を知らせるサイレンの音が、会場全体に響き渡った。耳をつんざくような不快な音に、さすがに心臓が縮まったのがわかった。
    「主はん!」
    「……は、はい……!」
     放心状態になった彼女を大声で呼び戻す。
     自分の腰ひもを彼女に無理矢理近づけた。
    「とりあえず、これ持っとき! まずは陸奥守はんたちと合流や!」
     しっかりと頷いたが、紐を掴む手どころか身体全体まで震えており、顔面はいつぞやの時のように蒼白となっている。明らかに自身の本丸の最後と同じ状況に怯えていた。腰につないでいた部分を離し、犬の散歩みたいに少し距離を持って動けるようにベルト通しに繋ぎ直した。同じように、周囲にいた審神者や部隊たちが一斉に奥側の出口に向かう。人混みで人にぶつかるのを避けるため端に寄るが、それはそれでこちらの壁が破壊されないかとヒヤヒヤしたのも一瞬、外に出ると、見えない壁に多くの男士たちが斬りかかっているところだった。

    「な、なんやコレ!」
    「いたっ! 国行!!」
    「主さん!!」
     自分たちの部隊と再会できたものの、壁に向かって身体をぶつけるように両手をバアン! と叩きつける。なんにも響かず、空気の壁がただそこにあるだけだ。
    「なんやコレ!」
    「演練を行う会場とこの待合用の建物を分断する結界らしい。さっきこっち側にいた政府関係者たちが特殊部隊を呼ぶってアナウンスがあった。とにかく、今はそっちに俺たち行けなそうなんだよね……。
     敵はこちら側の北門とそっちの南門からゲートをこじ開けて侵入してきたみたい」
    「国俊! 銃兵は?」
     肥前が愛染よりも早く答える。
    「駄目だ。弓も投石もとっくに試した。それに周りの連中も同じことやってるだろうが。
     どこかに切れ目があれば強引に広げることは出来るとは思うんだが……」
    「御手杵はん! 突いてもあかんのか!」
    「やったよ! とにかく、刃は弾くんだ!」
    「ックソ!」
    「明石。おんしだけが頼りじゃ。頼む。主を守り切ってくれ」
    「触れも出来んのにか」
     思わず反射的に言い返すと、その声にビクリとした主が、同じように反射で声を発した。それは、とても震えていた。
    「だ、大丈夫です……!」
    「主さん、無茶はダメだって」
    「で、でも、こんな時のために、私は、私は……」
    「とにかく、これから俺たちもどこか隙間がないか、移動してそっちに合流するから。それまでの間、それだけでいい。明石、頼む。お前しかそっちにいないんだから」
    「すまんかった、わしが席を外したばっかりに。こがなんになってしもうて……」

     はあ~、と大きく深呼吸をした。
     すでに戦いが始まっている。血の匂いが流れてきていた。
     硝煙が立ち上っている。あっちにも、こちらにも。

    「やかましいわ、陸奥守。あんたは、あんたのやらなあかんことだけを考えんかい。
     主はんは、絶対に守る。
     だから、早う、来とくれ」
    「国行!」
     愛染の声が壁の向こうですぐ目の前にいるのにくぐもって聞こえる。空間を捻じ曲げているのだろう結界を破る方法はわからないが、審神者とつないでいる紐をぐっとひっぱり、自分と壁の間に転がすと、刀を引き抜いた。一刀で、敵短刀が塵となって消えた。周辺で同じように部隊とはぐれた審神者たちや壁を壊そうとしていた男士たちも続々と移動を始めている。
     遡行軍が、いよいよ出没し始めていた。

    「国行! すぐ、すぐ行くからね!」
    「俺たちが前に言ったこと! 忘れんなよ!」
     べったりと、限界まで壁に近づいてこちらに声を張り上げる来派の二人に、思わず、ふっと笑みがこぼれた。
     同じように、二人の手のところに、自分の両手をそれぞれ重ねた。あのいつも高くて気持ちのいい温度の感じられない、壁の上に。
    「わかっとる。待ってるで」
     そして部隊は二手に分かれた。



     あちらの部隊は西回りでこの壁伝いに隙間がないか、どこかこちらへと入れるところがないかを探す。
     一方、こちらは審神者と太刀だけ。あまり動いて合流できなくなっても困る。かといって同じところに留まるわけにも行かない。
    「明石、一体、どこに……」
    「なんで、主はん、今日はあのひーるやないんです?」
     自分の足の速度に時折ついてこれない彼女がまさに犬のリードのように明石を時折引っ張る。グッと引かれた感覚に即座に立ち止まるが、止まるとやはりどこからか着いてきている短刀や脇差がすぐに審神者を狙ってくるので、気が気でない。もうすでに何体斬ったのか、すでに考えることをやめていた。
    「は? 靴の、話? 演練会場は土の地面があるから、ヒールだと歩きにくいのでスニーカーなんだけど……」
    「へえ。いや、あの靴やったら、さすがに今回逃げ切れんかったかもなぁって思っただけです」
     最後の「す」と言っている途中で彼女を紐で引っ張り、無理矢理起き上がらせてぶつからないように避けながらそのさっきまで座っていた地面に刀を突き刺す。じゅわあ! という鳴き声のようなものが断末魔を上げて、苦無の塵が残ったが、すぐに風に溶けた。
    「ひっ!」
    「一応、南門向かっとる。さっきの待合所は本来はど真ん中なんが、今は封鎖されてドン詰まりや。奥に追い詰められて多勢に無勢、総攻撃喰らったら一巻の終わり。とにかく、双方のゲート付近は広い場所になってる。狭すぎてもあかんけど、広すぎても敵から丸見えやったら狙われてまう。蛍丸や国俊がいてよかったわ。おそらく自分の行動はあいつらには読める。
     広いところには出ずに、なんとか、追い詰めらへん位置を維持したい。
     とりあえず、そんなとこやな」
     そういっている間にもすでに速足で動き出した。止まっている暇はない。常に動き続ける必要があるのだ。
     そこらじゅうに刀剣男士たちがいるが、すでに折れたものや、倒れた審神者を呼んでいるものをいくつも見かけた。こちらも行きがかり上助けたり、助けられたり、そしてすぐに別れる。
     大体は同じ考えだろう。誰が敵かわからないので、深入りは出来ない。
     敵がどこに潜んでいるのか。姿を現せば刀が届く位置ならこちらに分があるが、会場内は、すでに混迷を極めていた。戦いとは、こうも虚しいものだと久しぶりに思い知る。最初のうちは遺体を踏むたびに口元を抑えていた審神者が、いつの間にか、なんにも声を発さなくなっていた。
     
    「あ、あそこ……!」
     すでに煙が常に燻る中、通路を挟んだ向かいの木の根元に子どもが一人倒れている。
     赤い頭髪に黒い上下の服、黄色と橙色のグラデーションのシャツ、明らかに「愛染国俊」だった。まだ、特の。
    「うちのやあらへん! 近づいたらあかん!」
    「っでも! もしかして、まだ……」
     明石もまた、判断力が鈍っていた。紐を引けばよかったのだ。散々審神者に引っ張られたように、自分も、彼女をこちらに引き寄せるために、引っ張ればよかったのだ。なにも素直に、一緒に引っ張られてしまった瞬間に、遠方からの気配を察する。
     思いっきり、彼女の腕を引っ張って、遠心力で彼女のいた位置に自分が跳び出すと、右足に弓が当たったのは同時だった。
    「っぐ!」
    「明石!」
     回転して、元いた木陰に入り込む。小さな傷はいくつか出来ていたが、明らかな損傷はこれが初めてだった。勢いよく矢を抜いて、ジャケットの袖を引きちぎって止血する。
    「問題あらへん。行くで」
    「手入れ、出来なくは、ないので……」
    「そんなに疲れとるんに、手入れなんぞしたら主はん倒れてまうやろ。自分は、運べんのやで」
     そのまま、立ち上がろうとして、気付く。
     すでに、囲まれている。彼女に木の根元に隠れるように伝える。敵の気配がわかる位置にまで来たのか、彼女も口を噤んで明石の言うことに従った。
    「待って、そんな怪我で」
    「待たへん」
     上から短刀。続けて打刀が正面から来る。短刀を避け、打刀を振り払って、左足で思い切り蹴り飛ばす。軸にした右足のふくらはぎに痛みが走るが、奥歯を噛んで踏みとどまった。再度飛びかかってきた短刀を右足のかかと落としで地面にふんじばって、横から来た太刀の首を一刀両断にする。そのまま、足元にも刀を刺し、とりあえずは、落ち着いた様子だった。
    「あっちの建物、行きましょ」
     審神者が立ち上がった瞬間、短刀が跳び出す。完全に気付いていなかった。咄嗟に刀で紐を斬って、彼女の腕を掴んで投げ飛ばした。二メートル近く後ろに飛んだ彼女の安否を確認する間も無く、明石の右肩にその短刀が突き刺さる。
    「邪魔やっ!」
     左手でむしり取って、太刀で真っ二つにする。引きちぎられた肩から血がこぼれた。
    「明石っ!」
     返事もしないで、彼女のほうに駆け寄ると、彼女の腕に繋がっていた紐を掴んでまた建物を目指して走り出す。
    「主はん、ケガは?」
    「私より! あなたがっ! 出血して……!」
    「ええから!」
     囲われていると思ったのは、正しかった。
     そして、間違っていたのは、このルートだったかもしれない。
     周辺には多くの男士と審神者の亡骸が転がっている。審神者を壁に追いやり、その前に立つ。
     彼女はすでに泣いていた。何度も引っ張ったりしたので、彼女の腕に巻き付いた赤い紐の部分がひどく擦れて血が付いていた。ああ、傷つけてしまったのだなぁと後悔する。
    「もう、いいからっ! もう……!」
    「なにがええねん。なんもなっとらんわ」
    「あなた一人なら! ここから逃げるのは容易いでしょっ!!」
    「誰がそんな薄情な真似するんやっ!」
     飛んできた弓を払うが、次に来た銃は避けきれなかった。審神者に届かないように、右腕を掲げた。手首の骨は砕けた気配がしたが、彼女に当たらずに済んだことに胸を撫で下ろす。その胸にも撃ち込まれた鉛が、身体をさらに重たくした。
    「明石っ!」
     落とした刀をすんでのところで左手で掴む。

    「参りましたなあ……ここまでされては、本気を出すより他ないやんか」

     思考は冷静になっている。
     追い込まれている状況だからこそ、右腕に撃ち込まれた銃創からじわじわと痛みが全身に広がる。足はまだ動ける。右腕はもう使い物にならない。だが、まあ戦える。
    (国行! すぐ、すぐ行くからね!)
    (俺たちが前に言ったこと! 忘れんなよ!)
     ああ、わかっとるって。
     忘れてない。



    「国行は、主さんが好きなのか?」
    「は?」
     布団に入って、ウトウトとしていたところで、横向きの背中側から愛染の言葉が銃のように飛んできて一気に現実に引き戻された。
    「いっつも主さんのこと見てるし、近侍も真面目にやってたもんね」
    「いやいや、やれ言われてあんな状況で真面目にやらんのもかわいそうやろ」
    「近侍を降りてからもずっと主さんを見てるのに?」
     すでに修行に行った二人に見透かされているようで居た堪れない。最早ステータスなど太刀では打ち出来ないのだ。
    「俺たちを見る時と全然目が違う」
    「はあ」
    「照れるなよ」
    「無理言うなや。なにこのひどい仕打ち」
    「俺、嬉しいよ」
    「俺も」
    「……なして」
     布団を並べる位置は毎日適当で、愛染が真ん中だったり、蛍丸が真ん中だったりするが、今日は明石が真ん中だった。前から蛍丸が、後ろから愛染がピッタリとくっついてきて、布団がかかっているのが、熱いくらいだ。
    「俺たち以外に、国行が自分を、自分だって思えるものが出来たことが」
    「は?」
    「『来派の祖』だけじゃない、この本丸にしかいない「明石国行」だけの気持ちだろ?」
    「……そんなもんか? 邪魔なだけやろ、感情なんて」
    「ったく、素直じゃねえなぁ」
     クツクツと笑うと、背中が一緒に揺れる。まるであやされているように。
    「こないだ重傷になった時にも言っただろ?
     俺たちにだって、腕はあるんだぜ?」
    「修行も行ったし」
    「せやな」
    「俺と蛍は、なにかあったら、自分たちでお前を探しに行くよ。
     だから、お前は本当に守りたいものを、守りに行け。
     全力で、主さんを守ってくれよ。
     せっかく、人の身を得たんだ。刀じゃ知らなかったことに、たまには本気出してみろよ」
     な、くにゆき、と呼ぶ声がもう眠りに入り込んでいて、涙が出そうになったのをあくびの振りをして凌いだ。

     自分より大事なものがたくさんある。
     だけど、彼らを守るためには自分を大事にしなくてはいけない。それもわかってる。
     でも、やっぱり、全てを投げ出しても守りたいものがある。
     本気を出す価値は、そこにあるのだ。

     守る人がいてくれたら、どこまでだって立っていられるような気がした。
     たとえ、その想いが返ってこなくても。

     それが、今なのだと、明石国行には、わかった。



     飛んでくる矢や銃を自らの身体を盾にして、彼女を全ての攻撃から守る。
     時折飛んでくる刃も、左手で掴んだ刀で切り捨てる。
     顔面に当たった石で血が流れ、視界の邪魔をする。
     短刀が肩口の傷跡を仲間の噛み跡とわかるのか、まるでピラニアみたいに同じようなところばかり狙ってくる。カラスにでも啄まれているように、肩の肉片が時々ボトリと落ちていく。
     もう、あとは消耗戦だ。
     自分が倒れるか、敵が諦めるか、陸奥守たちが間に合うか。

     踏ん張った太ももに矢が刺さって、ついに膝をついた。
     だが、まだだ。まだ、戦える。
    「明石っ!」
     触ろうとして、最後まで触れない審神者が、もうきっとなにも見えていないほど、涙を流しながら切り離されてしまった明石の紐を目一杯握りしめている。まるで、それが、明石にまだ繋がっているとでも思っているかのように。
    「やめて、もう戦わないで……」
    「出来まへん」
    「どうして」
    「言ったやろ。あんさんを、守りたいて」

    「同時に泣かせたい思うてるなんて、そんなこと言うやつの、気の狂った刀の言うこと信じられへんてのはかまへん。
     でも、信じたってほしい。自分やのうて、あんたの刀を。
     国俊が、蛍丸が、来るって言うたから。
     絶対に、間に合う。あいつらが言うたんや。あいつらは信じたってや。
     自分の先に、あいつらがおるんやから」

     審神者の表情が変わった。すう、と涙が引いて、強い意志を奥に灯した。
    「必ず……来る……」
     グッと、口元をまっすぐに結んで、頷いた。

    「せやけどな、自分は納得してへん。
     あんたが見てる本丸は、どこの本丸や」
    「え……」
    「逃げろやて? 出来へん。必ず来るから。
     蛍丸と国俊が来るって言うたから、絶対来る。
     陸奥守はあんたのために、絶対来る。加州とて同じや。あんたのために、どの刀も、絶対に、最後まで諦めへん。誰が一番信じてへんて、あんたやないか。
     ふざけとるんやないで」
    「ごめん、なさい。
     私が、信じるべきのは、私の刀。その通り。
     でも、目の前で、自分の刀が折れようとするのを、見ているだけなんて、絶対に嫌!
     私だって、もう、誰も、失いたくないのよ!」
     審神者の声を聞いて、「まだ終われない」と改めて思った。
     足に力をかけ、刀を杖のようにして立ち上がった。
     また、新しい遡行軍たちが、明石の血の匂いに惹かれて集まっている。
     そうだ、ここにいる。審神者ではない。自分を見ろ、と思って、血まみれの刀を構えた。動かない右腕が邪魔すぎて、切り落としたい衝動に駆られるのをなんとか抑え込む。

    「なら、見せたるわ!
     自分らの先に未来があるんや!
     あんたは昔のことばっかり見てるけど! 今度はちゃう!!
     自分は、絶対に倒れへん!!
     ここには、あんたが大切にし続けてきた他の刀たちがあるんやぞ!!
     あんたの今の初期刀を! 今のあんたの刀を!!
     必ず来る! 必ず立って、生きて帰る! そら、絶対にや!
     昔と今はちゃうんや!!
     この身は朽ちようと、その先には、蛍丸や愛染国俊たちにつながる未来があるんや!
     自分が今更足掻いても過去は変わらへん、決まったことなんや!
     やさかい、今のこの本丸で、あんたが作った、あんたがやってきたことを! あんたが、あんたの刀を信じんかい!

     自分は! 絶対に! 折れへん!!

     あんたが、自分を、信じる限り!!!」

     目が霞む。
     頭が痛い。
     耳鳴りがして自分の言葉が反響する。
     口の中が鉄くさい。
     最悪だ。カッコ悪いことこの上ない。
     修行にでも行っていれば、もう少し彼女を、ちゃんと守ってやれたのだろうか。
     ついに敵側に大太刀が到着したらしい。受け止めきれるか、彼女だけでも逃げてほしい。一人で? どこまでいけるだろうか。ダメだ。自分が、ここで、止めてみせる。
     彼女の前で、折れるわけには、いかないのだ。

    「頼む、主はん。
     言うてくれ。戦え、と」

    「それが、最後の力になるんや」

     審神者が、また涙をのんだ音がした。鼻をすする、鉄砲や弓や火炎の煙に痛めた喉で、少し咳き込んで、彼女が枯れた声で叫んだ。


    「立って! 明石国行! 戦って、勝って!」


    「狙うは一発大逆転。……いかんなぁ、そういうの向いてへんのに」
     敵の太刀を受け止められるか、最後の力を振り絞る。
     迫ってきた大太刀を見て、ようやく、覚悟が決まる。

     すまない、蛍丸、さすがに……しんどいかもしれない。

    「よく言った! 国行!」
    「じゃーん! 真打登場ってね!」
     振り下ろされた大太刀の刃と、明石の刃のその隙間を縫うように蛍丸が受け止めた。
     そのガラ空きの脇の下を愛染が切り裂いて駆け抜ける。続けざまに銃兵を展開し、さらに後ろにいた遡行軍をなぎ倒した。咆哮をあげた大太刀の姿が消えて、蛍丸と、愛染が明石の前に立った。
    「蛍……、国俊……」
    「ごめん、待たせたね」
    「俺たちを、信じてくれて、ありがとな」
     ぼんやりとした瞳で、二人を見つめる。そこでようやく気付く。
    「陸奥守は? 早く、主はんを、安全なところに……!」

    「そら、戦のはじまりじゃあ!」

     後ろで、陸奥守の声が響いて、矢と投石が愛染の後続として飛んでいった。
    「主!」
    「主! 明石! 無事か!」
     結局、全部回り込んで南門からやってきたらしい六振りはそれぞれ軽傷程度の傷は負っている様子だが、重傷者はいないようだった。蛍丸に支えられていた身体から、一気に全身の力が抜けた。陸奥守が明石を受け止める。
    「早く、主はんを……」
    「わかっちゅー。安心せえ。政府の部隊が今道を開きゆー。早う、本丸に、帰ろう」
    「せ、やな……」
    「御手杵、明石を頼む」
    「おう」
    「主、ケガはしちょらんか」
    「わ、わたしは、全然……」
    「なんじゃあ、ケガしちゅーやないか。可愛そうに。早う手当をせんといけんな」
    「は? 主大丈夫!? あいつら、殲滅してやる!」
    「私なんて、全然、それより、明石を、早く、手当しないと……!」
    「そうじゃな」
     そういってひょい!っと陸奥守が審神者を抱き上げた。
    「え? ちょっと! むつ!」
    「肥前、おんしはわしらの護衛じゃ。いけるな?」
    「いいけどよ、あいつら、放っといていいのかよ。殺気すげーけど」
     肥前が自身で指した先には、加州、蛍丸、愛染が再びこの場を取り囲んだ遡行軍に向けた殺気があった。
    「好きにやらせちょけ。そんほうが早い」
    「陸奥守! 国行を、頼んだぜ!」
    「おんしらも、明石の仇は頼んだぜよー!」
    「っしゃオラァ!」
    「本気の俺は、すげえんだからね」
     そして、第二回戦が始まった。



     背中に背負った明石がピクリとも動かない。
    「うわー、明石死んだか? めちゃくちゃ軽いんだけど、血抜け過ぎじゃなくて? ていうか、右腕邪魔だから落としてもいいかなぁ」
    「やめて! 御手杵!」
    「冗談だよ……」
    「張っ倒すぞ、こん槍……」
    「うわ、生きてた」
    「明石!」
     審神者が身を乗り出そうとするのを、陸奥守が止める。
    「主。明石はそっとしちょいたほうがええ。安静にさせちょかんと」
    「あ、ごめんなさい」
    「すぐ謝んなよ。主はアンタなんだからよ……」
     すでに救護隊が到着しているらしい。明石の判断は正しかった。
     南門は真っ先にゲートを奪取されていたのだ。門の前で死闘が繰り広げられたことはその跡地に転がる刀剣の数からして想像に難くないが、そこにいたら逆に審神者は真っ先に死に直面していただろう。
     そこの前で踏みとどまる、という明石の選択肢は、間違っていなかった。
     もうほとんど朦朧としている意識の中でも、そのことを理解して、いよいよ全ての力を抜こうとした。
    「しっかし、明石も大したもんだな。どんだけ倒したんだよ」
    「そりゃあ、惚れた女の前なんやき。
     多少カッコええところを見せたいき、張り切ったんやろ!」

    「「は?」」

     御手杵と肥前の声が重なって、審神者が声にならない悲鳴を上げた後、陸奥守の口を覆った。
    「ば、バカ! むつっ!」
    「え、明石って、え? そうなのか!?」
    「……」
     もう動かない左足を最後の力を振り絞って、かかとで思いっきり御手杵の股間を狙ったが、うまく当たらなかった。
    「あっぶな!」
    「……陸奥守、治ったら、絶対、殺す」
    「本丸内は抜刀禁止です!」

     さあ、本丸に、早く帰ろう。



     口の渇きを感じてあまりに重たい瞼を開けると、乾きよりも全身のだるさのほうがいざとなると重大な問題として明石の身体にのしかかっていた。
     白っぽい見知らぬ天井に、なにかの薬品の匂い、なにかの静かな電動音、それだけが、今わかったことだ。いまいち頭が働かない。

    「明石っ!」

     審神者の悲鳴のような声にようやく首が動かないことに気付いた。
    「主、はん……」
    「よかった! 目が、醒めて……」
     苦労して、審神者の顔を見る。首を捻るだけで激痛が走った。どこのケガがこんな風に痛みを呼んでいるのか。だから人体は脆いと思う。
     苦し気ながら横目に見た彼女は、泣きはらした顔をしていた。
     あんなに、「見たい」と思っていた泣き顔だったのに、改めて見た瞬間に、「見たくなかった」と素直に思った。
     彼女の頬や腕にもいくつも絆創膏が貼られていて、赤い紐はすでに外されていたが、そこには包帯が巻かれていた。普段ならまたドジをやったなと笑えるが、次第に経緯を思い出してくると、「守れなかった」という感想だけ浮かんで、胸のムカつきが沸いてきた。
    「あの、痛いところは? あ、いや、きっと痛いと思うんですけど……!」
    「敬語」
    「は?」
    「さっきまでそんな話し方やなかったやん」
    「は、え、その、それは、えと……」
    「無理なら、ええけど」
    「あ、あなたが、それでいいのなら……」
    「ええよ」
     バカだなぁ、と思う。この娘は、本当にバカだなぁ。先ほど感じたムカつきはその反応だけで静かになった。守れなかったことに変わりはないのに。
    「あの、ごめんなさい、ここでは本丸とは違うので、すぐには直せなくて……。あそこの内側にいて生き残った審神者と男士にはこの後事情聴取があるということで、各自部屋を与えられたんですけど、まさかここで治療を行うとは思ってなくて……。痛い思いをさせて、ごめん……ね……」
     そう言ってる間にも、彼女は自分の両手をきつく握っていて、白くなっていた。
     自分が触れられるなら、その両手を開いて、その身に与える痛みなど苦しみなど与えられないようにするのに。
    「これが、刀の本分なんやさかい、主はんが、どうこう思う必要はあらへんのや」
    「そういう話じゃない。そうじゃないの、明石、国行」

    「違う、違うのよ。
     そうじゃないの。私は、私……」
     両手で顔を覆う。ああ、また、泣いている。鼻を思いっきりすすって、もう一度明石を見た。
     あのいつもの、強い瞳で。

    「あなたに、どうしても、話したいことが、あります」



    「私を、最後まで守ってくれたこと、本当に、感謝しています」
    「そりゃ、主なんやし……」
    「ええ、そうね。でも、それだけじゃなくて、あなたに、言われたこと。
     本当に、目が覚める想いでした」
    「はあ……」
     なにを言ったんだ。記憶が曖昧で、どこからが、現実で、なにが夢で、自分がなにをして、なにをしなかったのか。
     ほんの少しだけ、身体を起こして、背中に枕を置いて体勢を固定した。
     身体を起こして気付いたが、どうやら外はまだ暗い。ほんのりとカーテンに映える光りがだんだんと明るくなってきていることから、明け方のようだった。
     そういえば、前回審神者と話したときも、夜中だったと思い出した。こうして、二人きりで。

    「あなたに、『昔ばかりを見ている』『昔と今は違う』と、言われたこと。
     自分では、そんなこと、思ってなかった。
     私が昔別に本丸で初期刀と初鍛刀を持っていたこと、それを失ったこと自体は別に秘密でもなくて、知らない刀も多いけど、知ってる刀もそれなりにいる。だから、みんな、私が男性に触れられないことを受け入れてくれてるんだ、って私は、勝手に思ってた。
     でも、違うんだって、あなたに言われて気付いた。
     それと、これとは、完全に別の話。そうなのよね、バカみたい。バカだよね。
     今の、あなたたちに、なんにも、なんにも関係ないのよね、私の過去なんて」
     すう、と息を吸う。
    「あなたに、好意を伝えられて、ものすごく嬉しかった。でも全く予想してなくて、こんな状態なのに、私のなにがいいんだって、すぐに思った。
     あなたに、私は釣り合わないって。怖くなった。なにかを手に入れたら、次はなくすことを考えるような人間なのよ、私は。
     神様で、綺麗なあなたと、ただのなんの取柄もない人間の私が恋をするなんて、考えられなかった。
     そんな覚悟が、私にはなかったの」
     審神者が笑った。初めて見た表情だった。愛染も明石も内番なり出陣なり、用があって誰にも構ってもらえないとわかった瞬間の蛍丸のような表情だと思った時、「ああ、これは寂しい時の笑顔なのか」とわかった。
    「こないだ、昔の話をしたでしょう?」
    「せやな」
    「あれで全部じゃないんだけど」
    「でしょうな」
    「父の霊力の暴走、と言ったけれど、実際は違った」

     彼女が審神者として父親の元に居ついた頃、父親との関係は濃密になるどころか、疎遠になり始めた。
     父の体調が芳しくなかったのだ。大部分を父の霊力に頼っていた本丸は荒れ始めた。
    「父の体調不良の原因はずっと知らなかった。知らされなかった、というのが真実よ。
     刀たちが隠していた。父が、もはや狂っているなんて、実の娘に知らせようという配慮のない刀たちではなかったというのは幸福だったけれど」
    「狂った? 一体、どないして?」
    「私、母親似だったの。姉妹みたいに似ているとよく言われたわ。性格は父に似て、臆病だけれど。
     父は審神者だったから、審神者になって本丸に行くまで母と二人暮らしだったけど、母は仕事だと言ってよく夜に外出していた。私もバカ。本当に、なんにも気付いていなかった。
     私を引き取った時、父は気付いたのよ。母親が、自分の妻が、他の男と不貞を働いていたことに」
     臆病だった父は後悔していたのだろう。娘を引き取ったことも、妻を野放しにしたことも、もう分かり合えないかと何度も連絡を取ろうとしたが、二人は分かり合うことは出来なかったようだった。娘には知らされることはなく、これらは全て後々に審神者が聞かされた伝聞でしかない。
     愛していた妻に裏切られた夫は、日に日に妻に似ていく娘を見てなにを考えたのか。
     霊力は不安定になり、刀たちは主を心配するも声を聞き入れてもらえない。不幸がひたすらに丁寧に積み重ねられていった。
     娘はただなにが起こっているのかわからず歌仙と国俊と一緒に住まいとして与えられた離れに閉じ込められた。
    「本丸が襲撃されたと言ったけれど、私を襲ったのは、父だった」
    「は?」
    「父の霊力の暴走というのは事実。けれど、父自身もまた、すでに狂って普通の状態ではなかった。
     夜中に、娘の首を絞めて殺そうとするくらいには」
     そういって、彼女が自分の首元を人差し指でスッとなぞった。いつも、常に、ここにはなにもない。マフラーやストールも巻かない。ネックレスも見たことがないし、ハイネックも着ているところは見たことがない。ようやく、合点がいった。いつも、まっすぐに伸びた首がひどく晒されているというような気がしていたけれど、どちらかといえば、それは見えない「傷跡」だったのだろう。
    「あの日、速やかに私が保護されたのは、きっと父の男士たちから内部告発があったのだと思う。男士たちが気配に気が付いていたから」
    「まさか」
    「そう、父は過去を変えたいと願った。
     今はもう叶わない妻と娘と暮らす架空の夢を掴もうとした。もしかしたら、血が繋がっていない娘ではなく、本当に、確実に自分の血を引いている家族が欲しかったのでしょう。
     こんなに臆病な私は、見た目以外、父にそっくりなのにね」
     騒ぎに気付いた時には離れに火が付けられた後だった。歌仙と国俊は一緒に離れにいるはずだったが、彼らの姿が見えない。
     首を絞めている男が誰なのか、寝ていた彼女には最初判断が付かなかった。だが、刀を用いていないことと、ここに入ってこれる者が限られていた。父親と、彼女の刀だけなのだ。父だと気付いた瞬間に、血は沸き、身体中の水分が蒸発したようになった。喉が押し潰されて、声が出ない。思い切り見開いた瞳からは涙すら出てこない。その表情も姿もハッキリと見えないのに、これが父親なのだ、と知ってしまった。なぜ、こんなことになったのかもわからずに。
     その時、歌仙と国俊と、他の刀も押し入ってきた。誰かが、父を思い切り掴んで投げ飛ばす。その隙に歌仙がすぐに父親と彼女の間に入って、彼女を抱えて遠ざけた。
     布団に沈むくらいに押し潰されていた首が解放されて、酸素を吸い込んだ時に、全部の水分が戻ってきた。
    「げ、げっほ、っは、ぁ……っ!」
    「ここで息を吸ってはダメだ! 煙を吸ってしまう! 主! 今、外に!!」
    「こっちだ! 歌仙!」
     歌仙に抱えられ、即座に部屋を飛び出す。その前を国俊が走って、道を切り開く。
     外は、綺麗な満月で、父の呪詛のような叫び声が、自分の名を呼ぶのがずっと耳に残っていた。

    「後は、以前に話した通り」
     表情のない彼女は昔を懐かしむでも、後悔するでもない、全ての感情が抜け落ちている。
     今、話にあった「水分」のように。
    「母に捨てられたと気付いたのは、結局そのあと。父に押し付けられたんだなって、初めて知った。
     優しい人だったのよ? 誕生日には好きなものを作ってくれて、名前の入ったケーキを買ってくれた。暴力を振るわれるでも、言葉が厳しいでもなく、ただ、興味が無かったんだって、思い知らされた。
     父だって同じよ。仕事柄、一緒に暮らすことはなかったけれど、あの人は離れていた分だけ、私のことを知らないままだった。知ろうとしてくれた歌仙や国俊のほうが、よっぽど家族のように私を大切にしてくれたわ。
     私が、二人の子供ではないかもしれないことを嘆いた父が、私ごと殺して心中しようとした。その時に、母と出会うところから、全部やり直そうとした、ということを聞いて、ガッカリした。

     今生きている私は、誰にも、必要とされてなかったんだって」

    「私を苦しめていたのは、確かに過去のこと。
     でも、忘れられないのよ。ずっと、ずっと、まとわりついてくる。逃げようと思っても、忘れようと思っても、もしかしたらって思ってしまう。
     みんなのせいじゃないの。わかってる。
     変わることが出来ずに、ずっと昔のことを後生大事に抱えて生きている私がいけないの」
    「主はん、それは、」
    「でも」
     瞳が変わった。いや、戻った。「今の」主の瞳に。

    「あなたが、私を、かわいらしいと言ってくれた。好ましいと思ってくれていると伝えてくれた。
     今の、触れることすらできない私を。ろくな仕事が出来ない私を。こんな私でも、このままでも、胸を張っていていいって、言ってくれたみたいで……すごく嬉しかった。

     あなたが、過去ではなく、今の自分たちを見ろと、言ってくれた。
     私自身もまた、「生きている私」を、「目の前にいる私の刀」を見ていなかったのだと気付いた。

     ありがとう。明石国行。
     あなたを近侍にして、本当に良かった。

     私、私も、変わりたい。
     みんなと普通に触れ合って、大切にして、大切にされたい。もう触れられないことで後悔をしたくない。ボロボロになっていくあなたの背中だけを見るしか出来ないのは、もう嫌。私も、一緒に走って、逃げて、死ぬなら、一人じゃなくて、自分の刀と、あなたと一緒がいい」

    「ちゃうでしょ、主はん」
    「はい……」
    「言ったやないですか。
     あんさんが、望むなら、絶対に、折れへんのやって。
     そうそう簡単に死なせる気ぃ、ありまへんのやで」
     そういうと、彼女は自分の言葉を思い返して「ごめん」と言った。柔らかく笑って話題を変える。
    「ねえ、明石。いつから私のこと好きだったの?」
    「……すっぴん見た時」
    「嘘でしょ? ちょっと、それ、いつ……? え、ねえ、それひどくない?」
     そういって笑った彼女のほうが、やっぱり、天下五剣よりも綺麗だと思うことに変わらなかった。着飾る必要もない、身長を盛る必要もない。自分が寝っ転がって低くなっていればいいのだ。そのままの彼女に惹かれたのだから。
    「どうこうなりたいわけちゃう。ただ、そばに置いてもらえればそれでええ。あんたに無理強いさせたいわけちゃうねん」
    「ふふ、嘘ばっか」
     にっこりと笑って、即座に否定される。そこにあるのは圧ではなかった。
    「……えげつな」
    「嘘つくとき、左側を見るのよね」
    「そら、触れたないことないですわ。
     陸奥守はんばっかりずっこいやないですか。主はんの涙を拭くのんは、自分がええです」
     そういうと、彼女の瞳からまた涙がこぼれる。そう、それを、拭う権利が、欲しい。
     今は、全然動かない腕を、指を、自分の膝に乗せたまま、訴える。

    「ずっと、好いてはります。これからも、ずっと」

     透明な、綺麗な、涙をずっと、流しながら、震える声で彼女が話し出す。
    「明石はすごいなって、ずっと思ってた。
     私と違って、要領が良くて、なんでもない顔で、なんでも出来て、でも嫌味でもない。別にみんな私が主だから優しくしてくれて、そんな風に思ったことなかったけど。
     綺麗で、見えないところで色々やってて誰にも気が付かれない、なのに、ちゃんと自分があって、それに臆することがない。
     私はダメ。誰かに見てもらわないと、こんなに、なんにも出来ないんだって」
    「ええやろ。
     自分がずっと見てますで。なんでもあらへん顔してなんてあらへんどすえ。
     そんなん欲望だらけです。一人で出来ひんことばっか。その相手は、あんたがええ」
    「私も、触れるなら、あなたが最初がいい。
     初めて、あれから、自分の意志で、触れたいと思ったの。
     私、がんばるから。なんとかして、絶対に、触れられるように、なりたい」
    「そういうとこでしょ」
    「え?」
    「一人でやるんやないんですよ。みんなでやるんです。
     頼ってくださいよ、自分を、自分らを。
     なんもかんも、みんなで一歩進めばええんとちゃいますか?
     甘えたなんかやなくて、みんなあんさんに頼られたくて、認められたくて、必死なんですわ。
     あんさんと、全部おんなじ」

     自分の胸に左手を当てる。
     心臓が動いている。初めて得た、肉体という器の不思議を思う。
    「肉体て不思議やな。刀の時にはわからんかった。
     この血が巡る臓器の動き一つで、自分の気持ちが高ぶってんのがわかりますやろ。

     あんたがくれた、身体やからでしょ」

    「私、ちゃんと誰かを愛せる自信がないよ?」
    「やったことないんやからそうでしょうよ」
    「母みたいに、いつか、あなたを捨てちゃうかもしれないよ?」
    「それでも着いていきますよ。あんさんの刀なんで」
    「父みたいに、ひどいことをするかもしれないよ?」
    「力で男士に敵うわけないですやん。返り討ちにしたりますわ。せえへんけど」
    「本当に、私でいいの? ずっと、みんなを信じきれていなかった私を」
    「これから、信じればよろしい。自分のことは、信じてくれたんやろ? 「戦え」は刀にとっての本分や。それを心から命じたんやったら、一歩進んだってことやろ。
     主はんの初めては、全部、これからと思えばええやんか」

    「ついでにな、自分の初めても、主はんなんやで」

    「バカね……」
     それを聞いて、審神者がいつだかの時のように、ほろりと零れるような笑みを浮かべた。
     朝日がいよいよ眩しくなってきて、彼女の表情にも輝く光が当たって、涙の跡がハッキリと見えるくらいに。
     この笑みを絶やさせることなく、守っていくこと。
     それが、これから、明石が一番に手を伸ばしたいものになる。



    「ところで、誰も刀おらへんけど、みんなはどないしたん?
     主はん一人で危ないやろ。護衛は? 部屋の外か? 自分、さすがに今は動ける自信ありまへんけど」
    「あ、それは大丈夫です。部隊は本丸に帰ってますけど、愛染が、ここに」
    「おっとーーーーーー! 聞いてへんな!」
     審神者が、傍らに置いていた椅子の上に置いてある手荷物の中に愛染国俊の本体があるのが見えた。
     つまり、今までの会話は、全て、筒抜けだったということなのでは、と思った時には、頭を抱えてしまった。
    「え、明石?」
    「うわーーーーー! 折れたい!」
    「え!? さっき、折れないって言ったばっかりなのに!?」
    「そういう意味やあらへんわ! 国俊もおるんならなんか主張せえや! なに黙っとんねん!」
    「あ、愛染くん、顕現させましょうか……?」
    「せんでええです! 今保護者の顔なんか出来るか!」
    「あ、はい……え、なんか……すみません……」
    「謝らんでええです!」
     結局、調査が終わり本丸に戻るまで愛染が顕現されることはなかった。



    「で、ようやく、無事にくっついたのはいいけど、結局どこまで進んだの?」
     自室で寝転がっていたところに乱入してきたのは乱と加州だった。「お茶にしよーぜ!」と言って、お茶菓子持参で来たのはいいものの、正直、気持ちとしては「茶菓子だけ置いて帰れ」だったので、最初は無視を決め込んでいたのだが、明石が反応しないのを見ると即座に「じゃあ、主さんに聞いてこよ~っと」と言い出すから、太刀としては最速で乱の細い腕を掴んで審神者への突撃をやめさせた。
     二振りとも、主過激派なので、明石と審神者が良い仲になったと公表された時の視線は殺意に溢れていたが、しばらく経った現在以前よりも主が日々ニコニコと過ごしているのを見て受け入れてくれたようだったが、時折こうして明石の元へと突撃してくるのだ。
     ちなみに、長谷部が一週間ほど寝込んでしまったので、その間の近侍は仕方なしに明石が行ったし、スケジュールもちゃんと引いた。浮かれていたので、いくつか締め切りを漏らしたので、長谷部にめちゃくちゃ怒られたが、それでチャラになるならと大人しく聞いてやったのもまた感慨深い思い出である。
    「それ、ほんまに聞きたい思てへんやろ? 言う必要あるんか?」
    「脇差までは克服したけど、結局打刀とか太刀はやっぱりまだ距離あるじゃん。なら、明石とはどこまで触れるのかな~と思って」
     加州はだんだん明石に同情を寄せてくれ始めて、次第に両者を気遣う言動が増えてきた。それとは別に、色恋に興味関心があるのは事実らしいが。
    「あんたらとおんなじや。手の平、指先っちょが触れるだけ」
    「はあ? マジで? 俺よりひどいじゃん! こないだ爪紅ついに塗ってくれたよ?」
    「加州さん、それ追い打ち」
    「あ、ごめん」
    「やかましいわ」
     結局、ずいぶん長いこと患っていたわけなので、そうそう簡単に克服することはできていない。
     それでも、以前は片腕一本分ほどの距離が、今は肘くらいまでにはなっている。明石は気が長いほうだと自負している。これくらいは想定内だ。

     夕食後に、仕事が終わってなければ少しの間一緒に過ごす。
     毎日、手の平をギリギリまで近づけて、お互いの熱を感じられるところまで、触れないようにして、触れたいという気持ちを、誤魔化している。
     この手を、掴んでしまうのは、簡単だ。けれど、それでは、意味がない。
     待つと約束したのだ。結局、身体が気持ちに振り回されることに解決策はなかったけれど。
    「きょ、今日こそはイケる気がする……」
    「無理やと思う。顔、真っ赤やん」
    「それは、その、国行が、近づいてくるから……」
     逃げられることは無いが、目線を逸らされることが増えたのは、少し、複雑だ。あと人の顔を覗き見ながら「顔がいい……」と言って倒れないでほしい。ずっとそう思われてたのかと思うと、まあ、顔は気に入られてるのか、と思ってあえて顔を近くに寄せるようにしたのは軽い反撃である。

    「まあ、でもこないだ」
    「お! なんか進展あったの?」
    「ついにうちも不純異性交遊本丸!?」
    「間に蛍丸挟んで買い物行きましたわ」
    「それ嬉しいのは蛍丸くんだけじゃん!」
    「しっかりしろよ!」
    「帰りはちゃんと国俊が間に入ってな」
     はあ~、と期待外れと言わんばかりのため息をつかれる。
    「こうなってくると、確かに明石さんのほうがかわいそうだよねぇ」
    「そらどーも。でもあかんで。自分、主はんのもんなんで」
    「うっわ、嫌味。残念でしたー、僕だって、主さんの刀だもん!」
     ふと、中庭を見る。短刀たちの声が聞こえると思ったら、審神者と一緒にシャボン玉を始めていた。
    「あ、僕もあっち行ってこよ~」
    「ちょっと、乱~。食べかけ」
    「いいよ、食べて!」
     そうすると、乱が一口残したあんこ玉を加州がパクリと食べてしまった。モグモグと咀嚼しながら、遠くぼんやりと審神者を見ている明石に声をかける。
    「ま、俺としてはさ」
    「うん」
    「せっかく丸く納まったんだから、幸せになってほしいわけよ」
    「せやな」
    「あのね、主だけじゃなくて」
    「うん?」
    「明石もだよ。一緒じゃないと、主が喜ばないだろ?」
     明石が、来派以外の前で、初めて心から零れるように笑った。思わず、といったように、いつもの鼻で笑うようなものじゃなく、言われた言葉の意味に、身体が喜んで反応したように。
    「あんた、お人好しすぎひん?」

     加州は知っていた。その笑い方が、主と同じだということに。きっと主も明石も今幸せだというだろうけど、きっとこれから、もっともっと、幸せになるんだろうなぁとぼんやりと思った。
    みどり(aomidori003) Link Message Mute
    2022/09/03 20:39:12

    紫落一洗

    2020/9/22追記
    2020年10月11日のスパーク『閃華の刻 火華2020』
    【凍結ぶどう】南4ホール ノ23a
    にてこちらの本頒布します。

    通販はこちらから。
    https://pictspace.net/items/detail/276502
    *******************
    明石国行が好きすぎて、ついに明さにを書きました。
    男性が事情により苦手で短刀と初期刀のむっちゃん以外触れない審神者と、効率厨な明石が、明石目線で好意を持ってお互いの気持ちが通じ合うまでの話です。明石国行が鋼の理性を持っています。

    ・女審神者のキャラはそこまで強くないですが、設定はメガ盛りです。
    ・戦闘シーン、重傷表現、流血描写そこそこあります。
    ・この本丸以外での刀剣破壊の表現があります(破壊のシーンは直接はありません)
    ・最後はハッピーエンドです。

    これに加筆修正と、オマケ小話追加して、8月のスパコミ「超閃華の刻」に持っていきたいです……。今のところ……開催されれば……。されてもされなくても、通販したいです。

    この明さに、今後もちまちま書いていきたいです……というか、明さに書きたいがために設定考えてたらここまで膨らんだので、本当はもっと緩やかな明さにが書きたいです……。
    でも、次の長編は多分ここの初期刀むっちゃんと五虎退の話だと思います。まだまだ続く。
    どうでもいいですが、基本的にBGMがサン●マスターさんだったので、そういうテンションです。


    pixivからの移行です。

    #刀剣乱夢 #女審神者 #明石国行 #明さに #来派 #陸奥守吉行

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    • ナルキッソスの終局初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。審神者視点の話です。

      山姥切国広、修行から帰る、の巻。
      審神者の過去あり。若干暗めです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 現パロ三池兄弟まとめ②ツイッターで上げてた三池兄弟の現パロ小話まとめ②
      (実は血が繋がってない)三池兄弟が、なんか手作りの店をやっている話。時々、幼馴染の友人として古備前がいます。
      日常ほのぼの小話多め。時々、ソハヤの鉛食ってるみたいな話があります。

      ①お揃い
      ②探し物はなんですか
      ③ひだまり
      ④独立宣言
      ⑤醤油と山椒は欠かせない
      ⑥黄色い果実
      ⑦優しさに包まれて
      ⑧君と今年

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #現パロ
      みどり(aomidori003)
    • その腕を伸ばせ霊力フェス2!用 無料配布です。
      ソハヤ中心のCPなし、男審神者ありのどたばたオールキャラ風味の事件物です。
      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎の本丸です。
      戦闘シーンはありませんが、若干痛い描写はあります。最終的にはハッピーエンドです。
      DL版と中身は変更ありません。

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #男審神者 #霊力フェス‼︎2 #霊力フェス2
      みどり(aomidori003)
    • 【サンプル】こりゅうと!2【長船DASH】2022年10月16日 閃華の刻38内プチオンリー「長船DASH」参加します。
      『あたらしい橋をわたる』みどり 西1ホール ク32b
      新刊『こりゅうと!2 ー沼地のある本丸ー』 58p/A5/600円

      新刊は以前出した『こりゅうと!』と同コンセプトの『こりゅうと!2』(まんま)です。
      前作読んでなくても問題ないです。前作『こりゅうと!』も再販します。
      よろしくお願いいたします!!

      ツイッターで書き下ろし以外はほぼ読めます。
      長船たちがわちゃわちゃ本丸での平和な暮らしをしている小話たちと(炭作ったり、衣替えしてたり、かき氷食べたりしています)、
      書き落としは謙信くんの修行に伴い自分の行く末に悩むとも悩んでないような感じだけど、やっぱり修行行く決心をする小竜さんの話。最後だけ初期刀がいますが、あとはほぼ景光兄弟中心の長船。いろんな刀の名前は名前だけ出てきます。
      表紙はいつものようにすあまさんがやってくれました。本当に忙しいところありがとうございます……。

      サンプルは各話冒頭。
      上記に書いたように書き下ろし以外はツイッターで大体読めます。(https://twitter.com/aomidori003/status/1576498463780372480?s=21&t=ersI-MzJs0nDH1LOXbLH_w)ツイッターであげたものに加筆修正をしています。
       愛の詰まったお弁当   ……長船全員。謙信のお弁当をみんなで作る話
       薄荷の香りを撒き散らし ……小豆、謙信と衣替えをする話。南泉と堀川派がいる。
       ブルーハワイの夢    ……小竜と大般若が謙信と小豆にかき氷を作ってもらう話。
       望んでもない      ……光忠兄弟+景光兄弟。髪の短い小竜さんの話。ちょっとだけ獅子王。
       砂糖まみれに固めて   ……長光兄弟+景光兄弟+五虎退、日向。みんなで花の砂糖漬けを作る話。
       全て洗ってお湯に流して ……景光兄弟+長義。炭を作って風呂に入る話。
       酔っ払いたちの純愛   ……長船全員+長義。タイトル通り飲み会の話。日本号いる。
       二人の景光       ……書き下ろし。小竜さんが修行に行くまで。

      #刀剣乱舞 #小竜景光 #謙信景光 #長船派 #景光兄弟 #長船DASH #サンプル
      みどり(aomidori003)
    • ただの少年ですゲームDP。男の子主人公がチャンピオンになった後、なかなか助手のヒカリちゃんと会えなくてずっと主人公を探していたヒカリちゃんの話。
      主人公の名前は「ニコ」くんです。
      恋愛未満なDP主人公ズが好きです。

      pixivからの移行です。

      #ポケモン #DP #ヒカリ #男主人公
      みどり(aomidori003)
    • 未来を見ないで(2021年5月29日追記)
      2021年5月30日の0530超エアブー 【凍結ぶどう】みどりの新刊です。
      A5/50P/600円/小説/全年齢
      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。男性審神者がいます。
      肥前忠広と出会った前田藤四郎と男審神者がとある事情から一緒に同行し、戦いを介して、
      肥前の本丸の陸奥守吉行、南海太郎朝尊との関係を探っていく物語。
      土佐組の関係性のあり方の一つとして、肥前を中心に描いています。
      こちらの話を加筆修正したものです。ラストは追加されています。

      全編シリアス。ブラック本丸、刀剣破壊表現、間接的ですが流血、暴行描写があります。
      なんでも平気な方向け。

      通販はこちら
      https://pictspace.net/items/detail/276503

      よろしくお願いいたします!

      ===========================

      初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。個性の強くない男審神者います。
      単発で読めます。
      土佐組中心というか肥前くんメイン。審神者が事情ありそうな肥前くんと出会ってドタバタする話。

      ・流血、負傷、嘔吐シーンなどあります。
      ・ブラック本丸表現あり。刀が折れるシーンもあります。
      ・最後はハッピーエンドです。

      5月30日のインテックス大阪・超閃華の刻2021に加筆修正を加えて出す予定です。
      おそらく通販になる予定です。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #土佐組 #肥前忠広 #前田藤四郎 #男審神者 #陸奥守吉行 #南海太郎朝尊
      みどり(aomidori003)
    • 自覚のない可愛げ初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。初鍛刀・前田がめちゃくちゃにかわいいと思っている審神者と、自分の言動が短刀らしくなくかわいくないというのが自覚あって軽いコンプレックスな前田の話。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 誰が為のお茶初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者が出てきます。鶯丸が夜寝る前にお茶の準備をしている話。大包平が顕現したてで鶯丸が浮足立ってる。
      単品で読めますが、この話の続きみたいなものです。
      >「本心はぬくもりに隠して」(https://galleria.emotionflow.com/115535/635572.html

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • 理由はいらない単発。これだけで読めます。
      本丸内で寝無し草をしていた小竜さんと、小竜さんに世話を焼かれていたけど本当は一番小竜さんを受け止めていた謙信くんの話。
      それとなく長船派が大体出てきます。

      ついでに、この堀川くんは、この堀川くんと同一です。本丸もここ。
      『そして「兄弟」となる』(https://galleria.emotionflow.com/115535/626036.html

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #長船派 #景光兄弟 #小竜景光 #謙信景光
      みどり(aomidori003)
    • 闇こそ輝くと知っていた初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。山姥切国広視点の話です。
      山姥切国広、修行に行く、の巻。

      実際には私は即出しましたけど。
      でも、山姥切国広は「修行に行く」と言い出した時点で修行完結と思ってる派なのでそれだけで尊いです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #山姥切国広 #前田藤四郎 #薬研藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 現パロ三池兄弟まとめ①2021年7月11日の『閃華の刻緊急SUMMER2021』に参加します。
      【凍結ぶどう】青海Bホール テ64ab
      『鈍色の日々』(にびいろのひび)
      70P/600円/小説/全年齢
      通販はこちらから。
      https://pictspace.net/items/detail/276506

      ======================================
      ツイッターで上げてた現パロ三池兄弟の小話をまとめました。
      とりあえず10本です。

      こちらの内容に加筆修正して書下ろしを追加したものを7/11閃華に出す予定です。
      ツイッターにはもう少し載っています。

      気がつけばすごいたくさん書いていた……。
      色々感想いただけて三池界隈の優しさに甘えています……。ありがとうございます。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #三池兄弟 #現パロ #物吉貞宗 #包丁藤四郎 #大包平 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • 家族になろうよ昔サイトに載せてたプラ澪+正宗くん関連小話まとめ。
      一応おそらく時系列順。

      妄想過多。過去捏造。
      子ども時代~修行時代~本編~プラ澪告白編から結婚まで。
      短い話の連なりです。なんとなく全編がゆったり繋がってます。

      なんとなく明姫のプラ澪もこの前提ですけど、子どもはいないので時系列は少し違います。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #神吹白金 #火神楽正宗 #湟神澪 #プラ澪
      みどり(aomidori003)
    • どうか全力で構わないからイナイレ二期の真帝国戦後の鬼道さんと円堂さんの話。
      ほんと、あそこの春奈ちゃんのこと考えると鬼道さん殴りたいけど、鬼道さんも誰か抱きしめてあげて、みたいな気持ちになる。円堂さんも豪炎寺抜けて傷心中だし。
      二期鬼道さんの良妻ぷりが、好きだけど、鬼道さんももっとワガママ言ってほしかったな、という話です。書いたのは結構前です。

      pixivからの移行です。
      #イナズマイレブン #イナイレ #円堂守 #鬼道有人 #音無春奈
      みどり(aomidori003)
    • まがい物の恋初期刀加州本丸の、ソハさに。
      神様ムーブなソハヤと、ソハヤに片思いをしていたけど鈍感な審神者の話。ハッピーエンドです。
      ちょっと女性の生理描写あります。

      ソハヤ視点の補足のような何か→「作り物の気持ち(https://galleria.emotionflow.com/115535/635625.html)」

      ソハさにがめちゃくちゃキている。これはこれで終わりなんですけど、続きというか、補完があるので、また適当にあげにきます……。とにかく一週間くらいで4万字以上ソハヤ書いてて、書かないと日常生活に支障が出るレベルでソハヤいいです……。ソハヤぁ……。神様ムーブしてくれえ……。
      あと、毎回毎回糖度が低い。どうしてなんだろう……。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱夢 #ソハさに #女審神者 #ソハヤノツルキ #加州清光
      みどり(aomidori003)
    • 変わらない寂しさ明姫の続きものその⑥。番外編。
      明姫です。が、ほぼ明神とエージ。
      初期三人組が大好きすぎて書いた。明姫が付き合い始めて寂しくなるエージと、でもそれに派生してそれぞれ寂しさを抱えてる明神と姫乃、みたいな感じですけど、エージと明神には永遠に兄弟みたいでいて欲しいです。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #明姫 #桶川姫乃 #眞白エージ
      みどり(aomidori003)
    • ライオン強くなりたいエージと、明神の話。
      昔出したコピー本です。

      #みえるひと #明神冬悟 #眞白エージ
      みどり(aomidori003)
    • 本心はぬくもりに隠して初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。初太刀・鶯丸からみた主の話。近侍で明石が賑やかしにいます。

      話の中で大包平が十数万貯めても来なかった、という話は、実話です。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #明石国行 #鶯丸
      みどり(aomidori003)
    • あまやどり昔出したみえるひとの同人誌です。
      明神冬悟と正宗くんの話と、ひめのんとプラチナの話。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #神吹白金 #火神楽正宗
      みどり(aomidori003)
    • 君に花束をn番煎じのタイトル。光忠が顕現してからの福島の兄ムーブと己を大事にしすぎる言動に頭を悩ませているけど、福ちゃんは福ちゃんで弟との距離感に諦観感じていた話。最後はハッピーエンドです。
      加筆修正して、光忠兄弟ワンドロで書いた話たちとまとめて春コミに出す予定です。

      光忠、なんでも器用に出来る男が全く頭回らない癖強兄に振り回されてほしい。

      #刀剣乱舞 #光忠兄弟 #燭台切光忠 #福島光忠 #不動行光 #サンプル
      みどり(aomidori003)
    • こんな苦味も口に含めば初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      男性審神者がメインです。甘いものが好きなんだけど、ずっと隠し続けていた審神者と、それに気付いて色々と察した安定が審神者と甘いものを食べに連れ出す話with骨喰。
      脇差たちには元気いっぱいもりもり食べててほしいです。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #男審神者 #大和守安定 #骨喰藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • ここから単発。これだけで読めます。
      ソハヤの顕現から、大典太の顕現して、三池兄弟が「兄弟」となるまで。
      兄弟のすれ違い話好きすぎて、堀川派と貞宗派と三池で書いてる……。
      同じようなものですが、兄弟好きなので許してください。

      ソハヤのポジに見せかけたネガがめちゃくちゃ好きです。あと、大きな刀が小さい刀とわちゃわちゃしてるの好きです。徳川組かわいい~~~、好き~~~という気持ちで書きました。

      ついでにこの物吉くんは、多分この物吉くんです。
      「うちのかわいい太鼓鐘(https://galleria.emotionflow.com/115535/635603.html)」


      以下、余談。
      刀ミュ、三池兄弟、本当にありがとうございました……。
      ソハヤツルキ、最高でした……。本当に、東京ドームシティに帰ってきてくれてありがとう……。推しが自ジャンルに来る経験初めてなので、挙動不審ですが、応援していきます……。
      本編より、推しの観察に費やす経験初めてしました。ソハヤしか観てない。健やかでいてくれてありがとう……。

      別途、イベント情報などはツイッターのほうが多少お知らせしているかと思います。よければどうぞ。>https://twitter.com/aomidori003

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #三池兄弟 #ソハヤノツルキ #大典太光世 #物吉貞宗 #包丁藤四郎
      みどり(aomidori003)
    • 夕陽の向こうの顔明姫。GW前。雨降って地固まる系の話。
      いつもどおりの展開で、愚鈍な明神と、情緒不安定なひめのん。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • 一瞬だけの信頼みえるひと小話。サイトにあげてたもの。2008年くらい。本編前の明神師弟の話。
      冬悟がひたすらにネガティヴボーイで、師匠もつられてネガティヴになってる。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #明神勇一郎 #黒白師弟 #明神師弟
      みどり(aomidori003)
    • 二人で見る月みえるひと、学パロ冬姫(明姫)です。
      以前書いていた『もっともっと』(https://galleria.emotionflow.com/115535/626025.html)の前日譚というか、くっつく時の話。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
      みどり(aomidori003)
    • 花火の夜明姫。7月、夏休みの話。
      R15くらいかなぁと自分比で思っていたんですが、特に大したことはなにもしてなかったです。おかしいな……。書いてる間は死ぬほど恥ずかしかったんですが。二人で花火を見に行く話、ですが、花火は見れませんでした。

      pixivからの移行です。

      #みえるひと #明神冬悟 #桶川姫乃 #明姫
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    • シンフォニアまとめ十数年前に書いたTOSの短い小話のまとめです。ほぼCP要素なし。時折ロイコレ風。
      ロイド、ゼロス、ジーニアス多めです。9本。
      本当に、名作で、ロイドくん、一生好きな主人公です。

      最近ひとさまのテイルズシリーズの実況を見てはちゃめちゃに好きだったことを思い出したので昔のを引っ張り出してきました。
      は~~~、ゲームやりたいな~~~~~~。

      pixivからの移行です。

      #テイルズオブシンフォニア #TOS #ロイド #ゼロス #コレット
      みどり(aomidori003)
    • 隣室の明石くんとソハヤくん(2022年3月17日追記)
      2022年3月21日の閃華春大祭 【凍結ぶどう】みどりの新刊です。
      【凍結ぶどう】東2ホール ケ43ab
      『隣室の明石くんとソハヤくん』
      100P/文庫/1,000円/小説/全年齢
      カバー、表紙はいつものようにすあまさん(https://www.pixiv.net/users/158568)が描いてくれました!!!推し二人描いてもらえてめちゃくちゃ嬉しい!!!!

      通販はこちらから。
      https://pictspace.net/items/detail/276508

      よろしくお願いいたします!

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      単発。隣室になっている来派の部屋の明石と、三池の部屋のソハヤが大して仲良くならずに隣人として過ごしている短編集です。日常ほのぼの~シリアスまで。

      全話に明石とソハヤ。時々、愛染国俊、蛍丸、大典太光世、虎徹がちょっと、名前だけは他の男士も居ます。
      明確なセリフはありませんが、審神者います。
      CP要素はありません。

      なお、最後の「⑦隣に立つもの」ですが、戦闘描写あり、流血、重傷表現があります。

      pixivからの移行です。
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    • ドラクエ2~8まとめ十数年前に書いたドラクエ2~8の短い小話のまとめです。
      2は5本。CPなし。3人組がわちゃわちゃしてるだけ。
      3は3本。CPなし。パーティは勇者・盗賊♂(賢者)・武闘家♀(遊び人→賢者)・商人♀(賢者)の4人。
      4は6本。CPなし。勇者、クリフと、ライアン、マーニャ。
      5は5本。主ビア。主人公単独とCP物。
      6は3本。とても短い。ミレーユとテリーが好きです。主人公の名前は「ボッツ」。
      7は4本。CPなし。ほぼキーファの影を引きずってる話。主人公は「アルス」。
      8は5本。若干主姫。パーティ4人がわちゃわちゃしているのが好きです。

      11を書きたくて、昔の整理しました。
      ドラクエ、一生好きですね。

      pixivからの移行です。

      #ドラゴンクエスト #DQ2 #DQ3 #DQ4 #DQ5 #DQ6 #DQ7 #DQ8 #主ビア
      みどり(aomidori003)
    • 【ペーパー】コンクリの森【閃華春大祭2021】春コミおよび閃華春大祭 2021お疲れ様です。ありがとうございました。
      マジで前日に作ったペーパーです。少部数だったので、無配で終わりなんですがせっかくなのでこちらにも。
      明石と不動(極)が一緒に現代遠征に行く話です(単発)。
      表紙はすあまさん(https://www.pixiv.net/users/158568)が描いてくれました!

      前提は、初期刀・山姥切国広、初鍛刀・前田藤四郎のとある本丸の話。
      ほとんど姿のないセリフのみ男性審神者が出てきます。

      pixivからの移行です。

      #刀剣乱舞 #明石国行 #不動行光
      みどり(aomidori003)
    • そして「兄弟」となる初期刀・山姥切国広、初鍛刀・薬研藤四郎の本丸に権限した、十振目の堀川国広が、山姥切と山伏を心から「兄弟」と呼べるようになるまでの話。うちの本丸始動話でもあります。

      堀川派の「脳筋」と呼ばれているけれど、実際には三人とも内に籠るタイプなのがめちゃくちゃ好きです。他者に向かわず、自分自身ときちんと向き合うタイプの国広ズ、推せる。

      pixivからの移行です。
      #刀剣乱舞 #堀川派 #堀川国広 #山姥切国広 #山伏国広 #国広三兄弟
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