TEAM☆7(勝手におめでとうございます七班バンド!)
TEAM7とは、はたけカカシプロデュースによる十代でデビューした今最も若者に人気のある急成長ロックバンドである。
ヴォーカル兼ギターのうずまきナルト。クールなイケメンベーシストのうちはサスケ。近ごろ加入した多彩なキーボードのサイに、紅一点、ヴォーカルのナルト・ベースのサスケと幼なじみであり、なんともパワフルかつ華麗なスティック捌きを見せてくれるまだ十代のドラムニスタ、春野サクラ。
更に今日は、あの有名ヴィジュアルバンドで名を馳せた名ギタリストであり、彼らのプロデューサーであるはたけカカシも参戦してのテレビ初登場である。
緊張気味のナルトの様子が微笑ましい。
「ナルトくんは来月誕生日なんだよね」
「うん、あっハイ!」
「ガチガチに緊張してるね~テレビ初めてだっけ?」
「ハイ。そーなんだ…、です。あ~もういいや。そうなんだってばよ! だから今、オレとサクラちゃんだけ19歳で、未成年! サスケがやたら大人ぶってすかした顔してっけど、年上面もあと一ヶ月の命だってばよ!」
「じゃあサクラちゃんが一番年下なの?」
「(もう、すぐ口癖出たわねナルト)そーです。でも学年は一緒だし、ナルトは寝坊してばっかだし、」
「オレ緊張し過ぎて昨日寝つけなくて、今朝なんか逆に寝坊しちゃってサクラちゃんの超コワいモーニングコールでなんとか起きれたんだってばよ」
「マネージャーさんから何度かけても反応ないってLINEもらって、どうせそんなことだと思ってました」
「えっ、それでどうしたの?」
「ナルトん家押しかけましたよ~家近いですもん」
「へぇ~幼なじみなんだっけ?」
「ハイ。わたしとナルトとサスケくん。7つの頃から一緒なんです。サイは一個年上だもんね」
「サクラちゃんはこの二人と遊んでたの?じゃあけっこうお転婆だった?」
「ん~それは普通ですよ。ちゃんとピアノとか習ってましたから」
「そう! オレとサクラちゃんがまず仲良くて、そんでオレらの町の音楽教室でピアノ習ってるサクラちゃんと、ヴァイオリン習ってたサスケが知り合ったんだよな」
「そう!ヴァイオリン弾いてるサスケくんかっこよかったな~」
「ヴァイオリンからベースに転向? それは確かに格好良いね~」
「………」
話を向けられたが無反応のうちはサスケ。
「ん?彼は話しかけちゃいけないひとなの?」
「そんなことないけど、」
「今のは単に、否定してないから肯定ってこと。で、いいんだよなぁサスケェ」
慣れてるバンドメンバーは一瞬の間を置いて話を戻した。
「でもよ~、サスケのやつ、後んなって、何も言ってねえからあれは反対だっつうときあんだよな~。ズルいってばよ」
「あれはサスケくんが何も言わないうちにアンタが一人で決めてっちゃうからでしょ~」
「でもサクラちゃんだって賛成したし、サイも面白いって言ったじゃん。最後まで嫌がったのはサスケだけだってばよ」
「ちょっと、盛り上がってるとこわるいんだけど、その今名前が出たサイくん、なんで彼はバッテンついたマスクしてるの?」
白いマスクについた大きな赤い×。サイはニコニコした目元の下半分を大きなマスクで覆っている。カカシも謎の口当てで鼻から下を隠しているが、カカシの場合はいわゆるお約束である。
サイはサスケと並んで涼しい顔と態度で一言も発していない。
「サイは口がわるいんですよう!」
「つーか下品な! あいつサクラちゃんの前でも下ネタ連発だから、テレビで変なこと言わないようにマスクしてんだってばよ」
「下ネタ? それはまたぜひ話を聞きたいね」
「サイの下ネタはなんにも面白くねーよ。だってすぐチン」
「おまえが言うな!」
サクラの裏拳が炸裂した。
しばし微妙な沈黙がスタジオに流れた。
「サイとはカカシ先生からの紹介で会ったんですけど、最初は口はわるいし何考えてるかわかんないしサイアクでした」
「サクラちゃんブスって言われてたもんな~」
「ああ゛っ!?」
「オ、オレが言ったんじゃないってばよ!」
「なんだか、さっきからサクラちゃんの意外な面が見えちゃってるけど、」
「サクラちゃんは子どものころから、空手とアイキドーとテコンドーとボクシングだっけ?」
「キックボクシングね」
「それ習ってたからめっちゃ強いんだってばよ!」
「ええっ、そんなに? それじゃあもの凄い武道家少女じゃない? あれ? ピアノをやってたんじゃなかったっけ?」
「ピアノもちゃんとやってました。全部それなりに好きだったんですけど、サスケくんがヴァイオリンやめたって聞いて、なんだかわたしも今までとは違うことやりたくなっちゃって、ナルトがバンドやりたいってギター始めたから、なんかドラムって面白そうでカッコいいなって思ったんですよ」
「へ~、ドラムに目をつけるなんて男気を感じるな~。でもサスケくんがベースでナルトくんがギター、それでサクラちゃんがドラムを選んだってことは、もしかして、憧れの男の子の真似ってやつ? 背中追いかけちゃった?」
「なっ、ちっ、ちっ、ちがいますよ!」
「え~? ほんとにぃ~? なんか急にサクラちゃんてば女の子の顔してない?」
「やだな~ほんとにほんとに違うんですよ~」
だがサクラの頬は真っ赤だ。火照った顔が自分でもわかるのか、両手を頬に当てて誤魔化そうとしている。
サスケは満更でもない顔でそんなサクラを見ている。そんなサスケとサクラを、ナルトが呆れた顔で見ている。
「サクラちゃんがサスケを好きなのは今更だってばよ。サスケのベースとサクラちゃんのドラムの打ち込みラインは超繋がってる感じするし、サクラちゃんのドラムのこと一番気に入ってんのもサスケだもんな」
「ちょっ、そんな話じゃなかったじゃん! ナルト変なこと言わないでよ。も~!」
サクラは許容量を超えたのか、今度は女の子らしくぽかりとナルトの肩を叩くとその背に隠れるように、顔を背ける。
「FANのみんなも知ってるし、テレビだからって照れることねえじゃんサクラちゃん」
「あっ、やだなーサクラちゃんその反応カワイイ、」
ナルトが、自分の背中に頭をくっつけてくるサクラの肩に、ぽんぽんと手を置いて宥めるように語りかける。
空手女子からピアノ女子っぽいサクラの反応に場がぐっと和んだと思ったら、
「離せ、ウスラトンカチ」
秀麗な顔はそのままに、少し不機嫌そうに眉間を寄せて、サスケはサクラの肩をナルトからぐいと己の方へ引き寄せる。彼はそのまま彼女の肩に手を置いて離さない。
そんなオレ様サスケ様な行動に、客席から悲鳴と歓声が上がる。サクラの顔はサスケの肩に寄せられてよく見えないが、耳も首も真っ赤だ。
貴重なサスケの発声とパフォーマンスにすかさずMCが突っ込みを入れようとしたが、
「おっと、ようやくサスケくんの声が聞けたところで残念。時間が来てしまいました。皆さんには歌のスタンバイをお願いします」
全員揃いの白いTシャツに黒のパンツ。ナルトはハーフ丈のデニム(黒)だが、サスケはぴたりとした細身のレザーで、サイは反対に少しゆったりとした形のアンクル丈の黒だ。サクラはミニのホットパンツから伸びる美脚のうえに、単なる紐にしか見えない大きなダイヤ型の網タイツが這っている。肌の色と不規則な太さの黒い紐の対比がちょっとエロカワイイ、脚の形が良いから似合う柄タイである。なのに黒のグローブを嵌めてスティックを持つ姿はどこか凛々しいのだ。
全員の胸元にはそれぞれのイメージカラー、オレンジ、赤、青、黒で、☆に7がプリントされている。カカシもTシャツ(プリントの色はグレー)と黒のパンツスタイルだが一人だけジャケットつきだ。(彼のマスクはそのままである。)
準備の最中に、サクラから「演奏中は取りなさいよ」と、サイはマスクを注意されている。サクラが年下ながら面倒見の良さでお姉さんの位置にいるのはこんなところだ。(このマスクは途中で客席に向かって投げ捨てられた。)
「それでは今日披露してくれる新曲は、いじっぱりの彼とそんな彼を一途に思い続ける女の子の恋を、ナルトくんが元気いっぱいの声で応援してくれるラブソングです! 間奏でのサクラちゃんの可愛い衣装チェンジもご注目くださいね!」
「TEAM7の皆さんから、『ありがとう!』」