TEAM☆7-②(七班バンドより愛を込めて)番組後半
TEAM7の新曲『ありがとう!』は恋をする女の子の切なさと喜びや、恋愛の持つ素晴らしい力をヴォーカルのナルトの明るい声によって信じさせてくれる、女子だけでなく恋する男子の味方にもなってくれるような青春ラブソングであった。
拍手とともにTEAM7の四人とカカシがスタジオの席に戻ってきた。
「とっても素敵な歌とパフォーマンスをありがとうございました!」
特集ゲストである彼らは生放送のトークがまだあるのだ。
「そして演奏中のサプライズ! サクラちゃんがとっても可愛い赤いドレスに着替えるのはコンサートでも披露されたことがあるそうですが、今日はなんと演奏の最中に、あの! テンゾウさんが、すみません今はヤマトさんですね。あのヤマトさんがカカシさんの演奏に参加されたと思ったら、ナルトくん達三人がシャツを脱いで、上半身裸でのパフォーマンスを披露しくれました! もう、客席の皆さんも大興奮です! もちろんサクラちゃんの演奏を止めないで行われる生着替えにもドキドキです! あんなに可愛いのにドラム演奏はとってもパワフルで! あの細い腕からどうしてあの迫力のある音がでるのか、生で見られてこれも大興奮でした! あ、皆さん衣装をちゃんと着替えていらっしゃいますね。ちょっと残念な気もします」
皆は最初のTシャツ姿から脱いだ分だけ衣装を変更している。
ナルトはオレンジのタンクトップがとてもよく彼に似合っている。真夏の日差しのような健康的な明るさが彼にはある。反対に寒色が似合うサスケは青のベストにチェーンという、いかにも渋いベーシストらしい。まだ若いのにクールな佇まいが実に様になっている。サイは艶なしの黒のノースリーブ。チャイナカラーのそれは丈が短くて、腹見せは彼の定番である。(サスケもベストの隙間から腹が見えたりするのはあまり表立って言われないがFANにとっては刮目すべき点だ。今日もやはり座った瞬間にちらりと見えて、女性FANは押し殺した声で喜色を噛みころしている。)
男三人は演奏中に服を脱ぎ捨てたが、サクラは演奏中の早着替えだ。バスドラを力強く踏みながらである。彼女の右足は正確無比なリズムを刻みつづけ、はたけカカシとヤマト(テンゾウ)がソロ演奏をしている姿にカメラアングルが集中するバックで、彼女がドラムセットの上にスティックを置いてシャツを脱ぎ、すばやく肩紐を腕に通して前の留め金を締めて完成。カメラが一瞬の隙に収めた映像はすでに衣装が変わった後だったが、その姿さえ収めさせまいとするかのように男どもは、自分達を映せとばかりにシャツを脱いだ。皆若いながらに逞しい上半身である。
カメラマンが裸の男たちを次々と映し、最後にスティックを手にしたサクラが映し出され、彼女の両手が目まぐるしい動きを操りながらカメラに向かってウインクをしたとき、サクラはティーンの女の子でありプロのドラマーだった。
サクラさん、可愛いです! そして、イケメンです! サクラFANどもがスタジオと画面の前で正座待機の気持ちで雄叫びを上げる瞬間である。
実際に生着替えを見れた客席は、サクラがちゃんと見られてもいいような腹まできっちり長さのあるチューブトップ(黒)を身に着けていることに安堵した。彼女に腹チラなどありえない。死角はないのだ。
演奏後は実用重視の革グローブからスパイダー柄の肘まで覆う黒レースのグローブに変わっているのもFANには見逃せない、サクラの隙の無さである。
ちなみにカカシは何も脱がず、衣装チェンジもなかった。
それぞれの衣装がよく似合っているとスタジオでの様子も映し出され、新曲についての話が再開される。
「あんな切ない女の子の気持ちをどうしてナルトくんが、明るく、気持ちを込めて歌えるんでしょう、すぐ隣で本当に男の子に背中を押してもらってるような、そんな勇気が湧いてくる、素敵な楽曲ですね」
MCとは別の女性アナウンサーがお世辞とも思えない興奮気味に会話をふる。
「実は、オレも切ない恋ってのはあんまよくわかんないだけどよ、恋をしてる女の子がすっげえ可愛くってキレイなんだってことはわかるってばよ! だから、恋でも、恋じゃなくても、誰かを大切に思う気持ちってのは、どんなときでも大事にして欲しいなって、そう思って歌ってんだ」
へへっ、と少年のように照れ笑いをする19歳のストレートな言葉に、大人たちは青かった時代を思い出してほっこりする。
「うわぁ~、これまた十台の少年らしい素敵な恋愛観を聞かせてもらいました。今日の放送でますますTEAM7のFANが増えてしまいますね。いかがでしたかカカシさん、ご自分の教え子たちといっしょに演奏された感想は?」
先ほどとは違い、前列にナルトとカカシが座り、後列には司会者側からサイ、サクラ、サスケの三人が並んで座っている。演奏する前、前列に座っていたのはナルト、サクラ、サスケの順だったが、サスケは常にメインから遠い位置に座るのだ。
話を振られ、今までニコニコと話を聞いていたカカシはのんびりと答えた。
「ん~、ま、今日のところは合格、かな。ナルトも、他のみんなもずいぶん緊張していたみたいだけど、こいつららしさが出て良かったと思いますよ」
「緊張? ぜんぜんそうは見えませんでしたけど、緊張されていたんですか?」
「してたってばよ! 演奏の途中でシャツ脱ぐタイミングとかすっげえ緊張した。サクラちゃんいっつもよくやってるよなあ」
「そっちかい!」
サクラが今度は裏拳まではいかない程度に後列から突っ込みを入れる。
「なんだよナルト、おまえが言い出したことだろ?」
「カカシ先生はなんにもやってねえじゃん」
「オレはギターで参加しただろう」
「あの、お話中すみません、あの男性陣の生肌披露は、ナルトくんの発案なんですか?」
もしや、演奏前に話していた、サスケだけが最後まで嫌がっていたナルトの提案というのは、これだったのか?
「だってよ~、サクラちゃんがライブんときタンバリン持ってモデルみたいに歩いたの、すっげえカッコよくてめっちゃキレイだったけど、テレビで一人だけやってたらなんか寂しいからオレらもなんかやろうぜって言ったのに、サスケのやつがそんな器用なことはどうしても出来ないって言うから、じゃあ脱ぐかって。ま、オレもやってみたらギター持って服着るとかぜんぜん無理で焦ったけど、ヤマト隊長がフォローに入ってくれて助かったんだ」
ナルトくんありがとう!
FANとスタジオの心の声が一つになりました。
「へぇ~、それでサスケくんが最後まで反対してたんですね。カカシさんのFANは懐かしい姿が見られてとても喜んでると思いますが、そういう裏話もあったんですね。では、無事終えられてどうでした?」
「いやぁ~緊張したってば! でもお陰で後半は集中が増した気がすっから、結果オーライだってばよ」
「オイ、てめえ、まさかそれまで手を抜いてたんじゃねぇよな」
サスケの声の鋭さに緊張が走る。
「んなわけねえだろ! 歌はいつでも本気でやってる! つうか、歌ってる最中はすっかり忘れてたからな、おまえがオレにそろそろだって合図くれたろ。あれマジ助かったってばよ」
サスケの指摘にほんの一瞬スタジオが静かになりかけたが、ナルトはちゃんと、TEAM7のメインヴォーカルであったようだ。しかもサプライズを忘れそうだったナルトにフォローを入れていたと言われては、冷たく見えるサスケの内面が垣間見られたようだ。さすがの幼馴染である。
「おっと、これまたサスケくんが唐突に会話に参加してくれました。音楽のことについては、黙っていられないようですね。こうした飾りのなさも、幼馴染でありバンド仲間というものでしょうか?」
「………」
話を振られてサスケは、敵に遭遇したような厳しい表情でMCを見る。
これは誰がフォローをしてくれるんだと、耐えていると、
「サスケくん、キミちょっと緊張しすぎなんじゃない?」
マスクのなくなったサイからのフォローである。ほっとしたMCがサイにも話を振る。
「サイくん、マスクもないし、もうしゃべってもいいのかな?」
「サクラもマスクしろってうるさく言わないし、いいんじゃないかな」
「サイくんの話し方は美形らしい落ちついた感じですが、物静かなタイプのイケメンに見えるのに、サイくんは下ネタが出ちゃうんですかね? 女性はこのギャップにドキドキしてしまいそうですね」
女性アナは何故か嬉しげである。
「もう、変に煽らないでくださいよ。サイってほんと空気読まないし、自分じゃよくわかってないから性質がわるいんです」
「サクラの心配は尽きないね~」
「カカシ先生が放任主義だから、わたしが苦労することになるんです」
「カカシさんは放任主義なんですか?」
「子ども達を信じてますからね」
「上手いこと言いましたね。実際にカカシさんとTEAM7の皆さんはまさに先生と生徒の関係に近いそうですが、どうしてカカシさんはこの青春まっさかりのバンドにぴったりの楽曲を提供できるんでしょう、確か、作詞もカカシさんが手がけてらっしゃるとか」
「いやぁ~、プロデューサーという名前ではいますけど、本当にオレはこいつらの先生っていうポジションに過ぎなくて、一応こいつらも、ちゃんと自分達になりに曲を作ったり、歌詞を考えたりしてるんですよ」
「えっ、そうなんですか? では、いつか彼らのオリジナルを聞くこともできるんでしょうか?」
「ええ、いつか発表できると思いますよ。もしかしたら、結構すぐにそうなるかもしれません」
「これは素晴らしいお話を伺いましたよ。では、今の曲なんかもナルト君たちと、カカシさんの合作の部分もあるんでしょうか?」
「ん、それは秘密なんですけどね。実際オレがこいつらに作ってる曲は、こいつらのおしゃべりなんかを聞いて、参考にしてます。なんたってオレが青春してたのは、かなり昔ですからね」
カカシは隣に座るナルトの頭をぽんと撫でた。同じ列に座っていれば、きっと全員の頭を同じように撫でたことだろう。余談だが、サイはそうしたスキンシップのされ方にまだ慣れない。
「そんな! カカシさんはデビューされたときから何一つ変わってませんよ! 今だって、マスクで隠されてたってメイクなんかなくたって、その眼元だけでもわたしとってもときめいています!」
なるほど。後半になって女性アナが妙にぐいぐい来たかと思えば、カカシFANか。音楽業界における妙齢の女性ならば仕方のないことである。
「ハハ、ありがとうございます」
カカシはマスクをしていても笑顔だとわかる優しい表情をする。これがまたFANの心を掴んで一生好き宣言をさせるのだ。
「まぁ、オレはともかくこいつらは、いつまでも子どもじゃなくって、一日一日成長してますからね。来月のナルトの誕生日から三月のサクラの誕生日まで続く限定ライブツアーでも、面白いものが見せられると思いますよ」
「そうでした! 来月の、十月十日のナルトくんの誕生日一日限定ライブを初日、十一月のサイくんの誕生日に十二月のクリスマス、来年一月のニューイヤーライブに、二月のヴァレンタイン、そして三月のサクラちゃんの二十歳の誕生日、二十八日を最終日として限定ライブを連続して行うそうですね」
「ハイ。半年間ですが、それこそ一月ごとに成長している姿を披露できればと思ってます。ま、オレもこいつらの成長をすぐ側で見守るって感じでとても楽しみです。音楽に限らず、きっと恋とか悩みなんかを抱えて大きくなってくれるでしょう。ミュージシャンとしても、人間としてもね」
「一日ずつの限定ライブツアーという感じでしょうか。楽しみですね。しかし、どうして七月のサスケくんの誕生日は日程に入っていないんでしょう?」
「ま、単に思いついたときはサスケの誕生日が過ぎてたってことです。発案者がサスケなんでね、自分のことは勘定に入ってなかったんでしょう」
「こんな面白い企画をサスケくんが、これは確かに将来有望ですねえ」
「ええ、言ってみればサスケから、メンバーへの誕生日プレゼントみたいなものですよ。な、サスケ」
もはやサスケの眉間の皺はくっきりと深く、彼から発せられる不機嫌オーラは可視化できそうなものだが、非常に迫力のある照れ隠しも含まれていることは、テレビスタッフにも何となく察せられた。
「カカシさんは、本当に彼らの先生、先輩として、TEAM7の皆さんの音楽や人生を導いているということですね。素晴らしいお話でした」
サスケ以外のメンバーは全員、このとき満足げに頷いていた。
「さていつまでも聞いていたい楽しいお話ばかりで本当にお名残惜しいですが、彼らのデビュー曲で今夜はお別れです。今日は素敵な歌と、素晴らしいお話をたくさん聞かせていただきまして本当にありがとうございました。今日の放送でますますTEAM7の魅力に引き込まれてしまったFANの方も大勢いらっしゃるでしょう」
「わたしも、実は昔からカカシさんの大FANだったのですが、カカシさんが彼らを見守る姿や、自分と仲間の力を信じるナルトくん達の少年らしい真摯な姿にとっても魅了されました。カカシさんだけでなくTEAM7のことも、これからはずっと応援していきたいと思います!」
「それではTEAM7のデビュー曲で、四人からの『アイシテル』です!」
楽屋
収録、三十分後。
TEAM7の男子楽屋にて。
「サスケどこ行ってたんだよ」
「野暮用」
「すかしてんなって。どうせサクラちゃんのとこだろ」
「サクラだけ別室にしたのってキミの要望なんだろ。ほんと過保護だよね、キミもカカシさんも」
「アイツだけ女なんだから当たり前だろうが」
「サクラはそれが寂しいのに、サスケくんのはレディファーストというより単に独占欲じゃない?」
「…てめえの口のわるさが電波に乗らなくて良かったな」
「なぁなぁサスケェ、おまえ、今日の収録でサクラちゃんとつきあってる宣言すんのかと思ったけど、いつ言うんだ?」
「うっせぇウスラトンカチ。てめえ妙に煽って来たのはそれが目的か」
「口で言わなくても、あのナルトからサクラ引き剥がしたのなんて、『サクラはオレのもんだ』って言ってるようなもんじゃない? なんで言わないのさ。サスケってチンポついてないの?」
「サイてめえ」
「いや、オレもチンポは違えけど、サイに賛成だってばよ。おまえのそういうとこ絶対バレてるぞ、わざとか」
「フン。当然だ」
「だよなあ。サクラちゃん、オレにだけ言うけどっつって、すっげえ嬉しそうにおまえと両思いになったって言ってたけどよ。なんで隠す必要があんだよ。言っとくけど、カカシ先生もわかってるってばよ」
「ボクには言ってないんだよねサクラ。サスケのチンポがないせいでさ」
「うっせえぞサイ。サクラ自身が秘密にすべきだと言ってるんだ。オレが強制したわけじゃねえ」
「でもキミ隠す気ないよね。サクラをきちんと見てるFANだってサクラの気持ちはわかってるし、サクラを応援するひとばっかりだよFANの子達」
サクラはあの外見とドラムテクで華奢な女の子とガチムキ系の男に人気があり、彼女らは問答無用でサクラの味方である。(サスケのFAN層とは種類が違うのだ。)
「キミの熱狂的なFANだって、なんだっけ? えっと、サスケ様のなさること全て糧となる、だっけ? キミが女の子入れ食いしようとホモだろうと文句なんて言わないんでしょ。言っとくけど、キミのことはFANの子達だってボクより何考えてんのかわかんないって言われてるからね」
彼らのFANはそれぞれの特色があり、サイは意外とFANとの交流が多く情報に通じている。もちろん、あらゆる層から人気があるのがヴォーカルのナルトである。
「てめえはケンカ売ってんのか。オレの好みがあいつ以外にいるかよ。…オレだってさっさと言っちまいたいんだが、サクラのやつがな、」
カメラの前では無表情クールのサスケだが、楽屋でナルトたちとダベリながら着替えている姿は歳相応だ。今も、何を反芻しているのか、抑えきれないニヤリがその表情に滲んでいる。初見の業界人にはバレなくとも、7つの歳からの付き合いのナルト、サスケの性格と彼を見詰めるサクラのことをよく知っているサイは、今の言葉とサスケの表情から大体察した。
ああ、うん。隠れてサクラとイチャイチャすんのが楽しいんだな。リア充め。
「それにあいつは会社がどうのFANがどうのと変な心配もしてるからな、サクラが逃げ出せないように、公表は派手にやるつもりだ」
この天然ドSめ。
「おまえ、サクラちゃんは至極全うな女の子なんだからな、たとえ怪力でも」
「サクラの怪力には敵わないからって、サクラいじめて喜ぶのもたいがいにしなよ」
ありがたいダチの忠告に。
「おまえらは知らねえだろうがあいつの怪力はオレにだけ通用しない。…三月のライブで言うつもりだから、それまで黙っとけよ」
彼女の二十歳の誕生日にFANの前で公開サプライズか。
意外にセオリー踏むんだなサスケェ。
つうか今のってノロケ? わかりにくいけどもしかしてノロケか、おい。
リア充爆発しろ!
TEAM7はリアル青春まっさかりである。
遡ること二十分ほど前。
つまり収録十分後のサクラの女子楽屋の様子。
カカシが、自分の分は良いから女の子の控え室を用意してもらえる? と口を利いて用意してもらった楽屋は広くはないが、収録前は気兼ねなく女性スタッフが出入りして衣装合わせなどをしていた。(カカシだけでなく、サスケの意向も反映しています。)
正直男子班と別でサクラはちょっと寂しいと思い、準備が終わってからはカカシ部屋(ヤマトもいた)に行ったり男子部屋にも遊びに行っていた。
それどころか収録が終わり衣装を着替えて撤収しようかというときに、サスケはサクラにつづいて女子楽屋に入り込んで来た。
「サスケくん?」
楽屋に入ってすぐ扉に鍵をかけ壁ドンしてサクラを囲う男。別に変質者ではありません関係者です。
「なぁにサスケくん。びっくりしたよ」
ここはテレビ局の楽屋だし誰か来ちゃったらどうしよう、でもドアに鍵はかけてるし、今ドアに背中つけるわけだしサスケくんの手がドア押さえてるし大丈夫かな、でもすぐ後ろで人がざわざわしてる気配もあって、距離の近さにどきどきする。
「カカシのやつ、しゃべりすぎだ」
あ、なんだ。疲れてるから、ちょっと甘えに来たのかな。
ほんわかした気持ちのサクラは自分の疲れもふっとんで、自分に迫るように立ってるサスケの服のすそ、ベストの下辺りを軽くつまんだ。彼女はこれで良いらしい。
「わたしは、カカシ先生が言ってた限定ライブの話、サスケくんからの誕生日プレゼントっていうの、とっても素敵だと思ったな。ナルトもサイも、聞いててすっごく嬉しかったと思うよ。…来年のサスケくんの誕生日には、きっと大きな会場で、FANのみんなとも一緒にお祝いしようね」
オレはおまえと二人きりがいい。
というのがサスケの本音だが、まぁたぶん今年のツアーの流れから言って自分の誕生日にはきっと仕事が入るだろうし、誕生日プレゼントの予定は(たぶん今後もずっと)目の前の少女と決まっているので問題はない。
「そうだな。先にやるおまえの誕生日ライブでは、特に気合を入れるから、覚悟しておけよ」
普段クールなくせに、さらりと熱い感情を見せるサスケにサクラの心は跳ねる。
ただでさえ近い距離にいるのにサスケは額を合わせてサクラを補充しようとする。ますます密着する体にサクラの瞳が泳いだ。
「ダメだよこんなところで」
「何もしてないだろ」
「してるよ」
わたしをドキドキさせてる。
「………」
仕事中は手を出さないことに決めているサスケだが、今は終わったからいいか。
男子楽屋のナルトとサイが、サスケの不在にいぶかしむほどの、僅かなようで少しばかり長い時間、二人の距離が全くのゼロになったのは、今のところ二人だけの秘密である。
と、思っているのはメンバー内では実はサクラだけである。
その頃の男子部屋。
「ねえナルト、サクラとサスケが付き合ってるの知らないひとって、まだ誰か残ってるの?」
「あー、綱手のバアちゃんが知らねえと思う」
「ああ、綱手さま。あのひとサクラのこと可愛がってるのにまだ気づいてないのかい?」
「や、なんつーかバアちゃんは、サクラちゃんのこと可愛すぎてサクラちゃんの気持ちの方に肩入れしてっから、まだくっついてないと思ってるだけだってばよ。バアちゃんだって、サスケがサクラちゃんのこと好きなのはわかってっから、」
「じゃあまだ綱手さまに報告はしてないんだね」
「うーん、でもサスケのことだから、絶対バアちゃんには言いに行くと思うってばよ。会社関係なくこれは男のケジメってやつだな」
「うん。そういうとこ、サスケも(サクラも)堅いもんね。ヤマト隊長なんて、最初っからあの二人は付き合ってると思ってたみたいだよ」
「あー、隊長に聞かれたとき、オレも特に否定しなかったってばよ」
「面倒くさいよね。さっさと公表しちゃえばいいのに」
「あいつはほんっとうに面倒くせーとこあるからなー。公表すると同時に結婚ぐらいしちまいそうだってばよ」
「え、そういう性格だっけ?」
「そういう性格だサスケは」
幼馴染の見る眼は正しい。
三月二十八日の春野サクラ二十歳の誕生日ライブにて、公開プロポーズをしたうちはサスケは、指輪を手にドヤ顔だった。
リア充の二人が末永く幸せになりますように!
FAN一同より心を込めて。